第二章 兎の神聖騎士
「ま・・・まさか・・・あのババアによもや、気付かれるなんて・・・」
息を切らしているのは、神聖騎士の一人、ピーター・ネザーラントドワーフである。
ライテスの先輩であり、エリーの護衛騎士をしていたつわものである人兎だ。
「珍しいですね・・・あなたがこんなに慌てるなんて。」
ルミナリアが、紅茶を飲みつつ言った。
「実は私の、「ネザーラントドワーフ姓」は、偽名だ。」
「はい。「偽証罪」。陛下か裁判所に・・・」
「違う!そっちじゃない!」
「冗談です。」
この女・・・顔が笑ってねえ・・・!
ピーターは、思った。
蛙の子は蛙とは、この一族のためにある言葉だと・・・
「・・・ワンダーランド・・・という家系を知っているか・・・?」
「ん・・・確か・・・勇者エミアの時代の神聖騎士・・・」
「そうだ・・・武功をあげるも、勇者エミアやその夫ヘイゼル、後の女王の夫の護衛騎士ウィルには及ばんと、引退して郊外で農場を開設・経営・・・代々の当主は女性に限り初代の名を名乗り、「農場公」と呼ばれるようになった。」
「ま・・・まさか・・・あなたのことは、母が「にんじん畑が似合うやつ」って言ってましたけど・・・」
「そう。家を飛び出した頃は、「この親不孝者が!」だった・・・」
「「疾風の白兎」・・・アリス・ワンダーランド・・・」
「そう・・・俺から見れば、恐怖のクソババア・・・周囲から見れば、脅威の美魔女・・・」
ここで言う、美魔女とは、21世紀の日本におけるそれである。
「娘が、「アリス十九世が、ファルスト一族にアポをとっていた。」と言ってきたわ。」
すると、玄関のほうが騒がしい。
「わーっ!」
「ち・・・父上がやられたッ!」
「ぎゃーッ!」
「まさか、僕ら「レーザーパンダ部隊」がやられるなんて!」
「こいつ・・・ほんとに「兎」か!?うッ!詐欺だ!」
くだらないことを言っている奴もいるが・・・
「はッ!これが、ライテス卿自慢の「レーザーパンダ」かい?所詮ただの愛玩動物のレッサーパンダだね!」
「き・・・来やがった・・・まさか、レーザーパンダを破るなんて・・・」