第一章 第五話 生ける爆薬庫
そこは、かつての交易拠点。
魔導師の塔と呼ばれる太古からの塔がある。
「ねえ・・・ここ・・・取材するの・・・?」
ラナが、コハルを見た。
「うん。」
「代々、悪名高い一族だよね・・・」
「うん。」
始祖は、反逆を企てたレイスト一族の一角、ファルスト。
だが、おかしな正義感が暴走し、歴代のレイストはおろか、レイスト一族は用があっても近寄らない。
そんな一族が、ファルスト一族である。
合成化学爆薬を多用する、奇特な科学導師でさえ液体化学爆薬には手を出さないのと同じである。
「う・・・そうしてみると・・・超魔王との戦争が、いかにとんでもなかったかがわかるわ・・・爆薬みたいな人たちを、先鋒に使ったんだもん・・・」
「はい。ラナ様の言うとおり、「核」以外の全てを投入した戦いだったと聞きます。邪馬台国の皇后陛下の「母乳」やキティルハルム女王陛下の「精力剤」が、上位ランクの「薬物」だと聞きます。」
なんだそれ・・・
キティルハルムの技術者の技術と、ライテス卿の発想力を兼ね備えたマッドサイエンティストでもあるとさえ言われる。
「でも・・・」
ハルモニアには、別の想いがある。
「ファルスト一族の、二代目当主・・・ファルストの子は、一体どんなことを考えて一族を築いたんだろう・・・産まれる前に、父親が「大悪党」だったのは、どういう気持ちだったのかな・・・」