第一章 第三話 レポート2ウズドガルド次期大公
ウズドガルド次期大公レミナリア・ウズドガルド。
彼女は、旧ウズドガルド貴族をまとめる立場にあった。
夫レサル・ウズドガルドの協力のもと、旧鎖国派貴族を解任し、労働省で管理職教育をさせ、起業させている。
無論、旧開国派貴族は、州知事に任命している。
「どうぞ。」
レミナリアの長女エルナリアが、ハルモニアたちに紅茶を出す。
「んッ!これは・・・!」
ハルモニアが、目を丸くした。
むちゃくちゃうまい。
「これ・・・お爺様が地球から持ち込んだ製法に、手を加えましたね!」
「はい。ライテス卿は、「ウズドガルド大公領」に、多くの産業を与えてくださいました。それでできた町の一つが、「アルミニア」です。」
ライテスは、「アルミニア計画」の際、資源の枯渇を気にしていた。
そのため、「アルミニウム再加工計画」「新素材開発計画」といった計画さえも打ち出していたようだ。
「なくなりそうもないのに、そんな先のことまで・・・」
「お言葉ですが、ラナ様。地球に、資源枯渇で、「国民が「労働」を忘れてしまった国家があった。」と大旦那様が、教えてくださったことがあります。」
感心したラナに、ヤタノが注意した。
「一見、国民の労働は、国家の収入と混同されがちです。しかし、国民に職を与え、「食」の面倒を見るのも国家の仕事です。」
「また・・・ヤタノは、お爺様の「親父ギャグ」を・・・でも、そういうことなのよね。例えば、「金鉱」で潤っている町が、金が出てこなくなったら、どうするの?そこの人たちは、生活できないじゃない。」
「ヤタノさんと、ハルミモニア嬢の言われる通りです。人は、やることが無くなれば、生活できません。国王陛下も、要は、そのためにこそあなたがたを「観光調査員」に任命されたのでしょう。」
「「へっ?」」
コハルとラナが、唖然とした。
「これまでは、「戦争特需」で、「アルミニア」みたいな発展が期待できたわ。つまり、何もしなくても「労働」と「収益」が、皆に分配できたわけ。けど、これからは違う。皆、気のいい人たちが大半だから、戦争なんて起こらない。せいぜい各国の軍のにらみ合いだけ。だったら、「余裕のあるときは、遊んでお金を使い、経済を刺激しましょう。」ってこと。」
ハルモニアは、ユーフェルの「遊びが仕事の職」の言葉の意味を理解していた。
「お爺様が、皆「学ばない」「遊ばない」って言ってた意味がこれなのよ。引きこもっていたかったのに、嫌な職に就けられたなァ・・・」
蛙の子は蛙・・・
よく言ったものだ。
「だめよ。ハル。お爺様もお母上も「働き者」だったわ。せっかく「遊びが仕事」の職を賜ったのだから、しっかり働きなさい。」
レミナリアは、ちょっと口うるさい叔母のような人である。
「そうよね・・・今じゃ、地球のように、「望まずして」ニートになったって人、増えてるから贅沢ですよね・・・」
ふう・・・とため息をついたハルモニアだが・・・
そのとき・・・
「奥様。山田三十六世と、家令のヒグチ氏がお見えになられました。」
執事が、レミナリアに声をかけた。