第三章 第一話 レポート5キティルハルムの闇鍋
キティルハルム逗留二日目の夜・・・
ハルモニアたちは、王宮前広場に、女王・前女王連名の書状で呼ばれた。
広場の、いわばアリーナ席には、王族や評議会の面々が座っている。
「今宵は、王太子夫妻の釣果を記念して、闇鍋大会を主催します。そして・・・今回はゲストとして、トラルティールの「観光調査員」ハルモニア・ライテス嬢、コハル・ライテス嬢、ラナ・ティアムル嬢そしてトラルティール王立総合学院校長ユイ・アイン・ライテス氏、ハルモニア嬢の使い魔ヤタノ・カラス嬢をお迎えしています。」
上座に立っていた前女王ノワール二世が、音頭をとる。
「無礼講にゃ!食うにゃ!飲むにゃ!」
今だ、商工ギルドマスターを務めるファミリア・ミケランジェロの掛け声で、国を挙げた「食事会」が始まった。
「いつもこうなんですか?」
「いつもって?」
ハルモニアが、プリシラにたずねた。
「そうです。これは、初代女王ノワール陛下が始められた、由緒正しき行事です。「無礼講」「あけっぴろげ」「分け合う」「楽しく騒ぐ」のがしきたり。これは、全てノワール陛下が「国民全ての母」であったことに由来します。」
要は、そういう国民性である。
「母親が・・・そして、「家長」が、家族に食事を振舞うのは当然でしょう?仕事から帰った妻、あるいは夫に・・・やはり仕事や学業から帰った子供たちに・・・そうして、「キティルハルム」は、王家を「家長」とする国家となりました。対して、他の国は「雇用主」「被雇用者」でいうくくりです。それが悪いとはいいませんが。」
「「キティルハルム」が、ここまで発展したのは、そういう思想ゆえだったのですね・・・うらやましいなァ・・・トラルティールではしがらみばっかり・・・」
「肩の力をお抜きなさい。あなたは、「それでも自由な仕事」をしているのですから。」
ハルモニアは、目から鱗が落ちた思いだった。




