第一章 第三話 王立学校
キティルハルム王立学校。
この国の学校制度は、かなり進んでいる。
「ママーパパー。」
校門から出ようとした仲の良さそうな少年少女に、子供が飛びついた。
「いい子にしてた?」
「うん。」
「じゃあ、駄菓子屋でお菓子買って帰ろうな。おじいちゃんとおばあちゃんが待ってるぞ。」
「うん!」
他国では、見られない光景だ。
まだ年端のいかない少年少女の半数が、夫婦として学校に通っているのだ。
「すごいですね・・・」
ルミナリアが言った。
「大体、この年頃って、「溜まって」いるでしょ?だから、この時期に「婚約」「結婚」をさせてしまう親もいるわ。だからこの国には「性犯罪」「ストーカー被害」がない。」
プリシラは、腕を組みつつハルモニアを見た。
「ま・・・世界広しと言えども、「学校」に託児所があるのはここだけよ。」
「なぜ、こんな政策を?」
コハルが、尋ねた。
「決まっているわ。「あなたの伯母様」の夢をこの国は「建国時」から実現しようとしているのよ。そもそも、超魔王が誕生した原因も「それ」だから。」
応えたプリシラの表情は、硬かった。
「誰だって、人の家庭は壊したくない。誰だって、人の仕事を邪魔したくない。なら、どうするの?私も思うわ。「間違った愛」で、世界を滅ぼすなんてあってはならないし、許してはいけない。超魔王ガルアレート・・・科学導師ハルカ・オガタ博士は世界を滅ぼそうとした。けど・・・正しいことをしたと私は思う。」
プリシラは、宮殿を見た。
「トラルティールの前騎士団長が、証言しています。大魔王の一人が、「もっと人間は理性的であるべきだ。」と言っていたと・・・我々、キティルハルムの民は「言われるまでもない」といった感じでやってきましたからね。」
俄然、ノワール初代女王のことに興味が出てくる、ハルモニア。
「ノワール女王のことが、少し知りたくなりました。」
「おや・・・「蛙の子は蛙」ですね。ライテス卿も、ルミナリア卿も、ノワール女王には興味を持たれたようです。一言で言えば・・・そう・・・「母親」のような人物だったようです。でも・・・「古代文明時代」は、のんびりとした方だったようで・・・「この世界の礎」となるために、「母親」である道を選んだと聞きます。もっともこれは、前女王がパスキールから持ち帰った資料からわかったことですが・・・
それが、幸せだったか、不幸だったか・・・それは考古学者の意見が分かれることです。」




