第一章 第二話 彫刻家エメライン・ミケランジェロ
ハルモニアたちが、プリシラの案内で彫刻家エメライン・ミケランジェロの工房を訪ねたとき、彼女は手持ち切削ドリルで、クリスタルを彫刻していた。
「むっふふふ・・・たまらんにゃ・・・この透明な鎖骨・・・この透明な肋骨・・・」
妙に、ほれぼれとした声でのたまっている。
なんか、アブない。
「きれいだにゃあ・・・「スケルトン」で「骸骨」っていいにゃあ・・・」
ここに、ライテスがいたら、「水晶髑髏ならぬ、水晶骸骨か?」と言うだろう。
「アブない仕事、してるわね・・・エメ・・・」
「これはこれは王太子殿下。お言葉なれど、あちしは「芸術家」だにゃ。芸術家の「売り物」は、「感性」だにゃ。」
お前は、その「感性」がアブないとプリシラは心の中でツッコんだ。
「ところで、このお姉さんは誰にゃ?教科書やニュースの映像で観た様な・・・」
「にゃーははは・・・!まさか、「ニート」になりたいってバカ正直に言って王様に怒られる奴なんて、なかなかいないにゃ!それが、「大総合導師」の孫で「勇者の娘」ならなおさらにゃ!」
「他でも、言われましたよ・・・」
「「外聞が悪い」?それこそバカでもわかるにゃ!にゃーははは・・・!」
そんなときだった。
「し・・・師匠・・・」
一人の弟子らしき少年が、エメラインに声をかけてきた。
「か・・・かつおぶしの彫刻・・・終わりました・・・」
彼は、ひどく消耗している。
「反省したにゃ?」
「は・・・はい・・・」
そこには、見事な猫神姿のノワール二世像・・・
「ここでは、懲罰で、かつおぶしで「偉人像」を彫らせるにゃ。」
きつい・・・
かつおぶしは、人猫にとって好物の一つである。
これを、彫刻しろというのだ。
「怖ろしい拷問ですね・・・」
「ま、「人間族」や他の種族にはわからないにゃ。けど・・・」
「いや・・・「コレ」がどれだけ怖ろしいかは・・・」
食べたい衝動を極限まで抑えて、えんえんと彫るのだ。
手持ち切削ドリルがある現在でも、これはキツい。
「反省したようだから、食べていいにゃ。」
「わーん!鬼!悪魔ァッ!できがよくて食べたくない!でもかつおぶしだから食べたい!」
「ほんとに、拷問だわコレ・・・」
ラナが呟いた。