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ギルドinバーミィーシティ ~翡翠~  作者: 星見つむぎ
第1章 『青年』 in バーミィーシティ
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第0話 溺れる

 



 ――どぶん。

 


 何かの音で、彼はやっと自分が妙な浮遊感に包まれている事に気が付いた。

 彼の眼がゆっくり開いて、深く蒼い色を映し出す。

 ぴりぴりと滲みて動けない左手に気付いて、彼はハッとした。



 ここは、海の中だ。



「あ、わっ」



 水、水!?  水は、水は嫌だ!



 彼を強烈な恐怖が襲う。思わず開いた口から泡が漏れて、上の方へと上がっていった。

 頭の中を言葉が埋め尽くすのを感じながら、彼は動く方の腕で必死に水をかく。



 出ないと…ここから出て、水面に上がらないと! 



 何故かはわからないが、その直感に突き動かされて彼は水面に上がろうとする。

 

 ――足元から冷ややかに迫りくる、とたんに現実味を帯びた息苦しさと、恐れと焦り。

 それにつかまった後の事は、彼には考えられない。

 いや、考える事すらも『今の』彼は忘れていた。


 ……彼の体は、確かに上へと上がっていたはずだ。

 しかし、水面は一向に近づいてこない。

 まるで、鎖で縛られているように。


 いつの間にか、彼はもう息ができなくなっていた。逃れようもなくなったその苦しみが、どんどん彼の視界を奪っていく。



 ――苦しい、息が、できな―――――。



 必死に伸ばした彼の手の先に、蒼い水面が――世界が見える。



 ――あ、きれいだ。



 妙に間延びした思考が、彼の意識の最期だった。




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