後輩様はかく過ごせり
長らくお待たせいたしました。
やっとこさ更新です。
え? 待ってない?
というわけで後輩様の日常をどうぞ。
皆さんこんにちはー!
我らがアイドル、辻満月でーす!
今日は私の日常をほんのちょっぴりだけ教えちゃいましょう!
朝は意外と早いんです。お弁当を作らなければいけませんから。
「うーむ……ブロッコリーかアスパラか……」
詰める物を迷う時って結構楽しくないですか?
「おはよう」
「おはようございまーす」
お父さんが起きてきました。ちなみにお母さんはいません。私が小さい頃に死んでしまったそうです。
「お父さん、ブロッコリーとアスパラどっちがいい?」
「うーん……お父さんはアスパラかな」
はい決定。アスパラを炒め始める。
「それじゃ、お弁当は冷蔵庫に入ってるから」
「ありがとうね。行ってらっしゃい」
「いってきまーす!」
お弁当を作り終えたら、学校の支度を済ませて出掛けます。
――ガタンゴトン。
この音は私の足音なんかではありません。そう、実は私は電車通学なのです。
おかげで毎日若くして人生に疲れたかのような顔をしているサラリーマンやOLの人たちに影響されてしまいそうです。どうしましょう。
駅から学校までは歩いてだいたい10分くらいです。もうちょっと近くてもいいのですが。
――ガララッ!
学校について教室に入ります。まだ生徒はほとんどいません。HRの30分も前ですから当然ですけどね。
このヒマな時間をどうするかというと勉強に使います。授業を真面目に聞かなくても済むようにです。予習しておけば分からないところだけ聞いて終わりですから。
「おはよー」
ゲルマン民族大移動の軌跡を眺めていると横からのんびりした挨拶が聞こえてきました。
「おはよう、すみれ」
「満月ちゃんえらいよねー。ちゃんと予習してるもん」
ならすみれもやりなさい。それに目的を考えると多分偉くはない。
「分からないところがあったんだけど、お姉ちゃんに訊いても教えてくれないの。満月ちゃん教えてくれる?」
そう言って英語の教科書を出される。まあ藤阪センパイに文系科目を訊くのは間違っている。どうせ訊くならセンパイにしろ。
「ここは倒置が起こってるから……」
「あ、そっかー! ありがとー」
いえいえ、お礼は学食のデザートでいいですよ。
「え、え〜……」
――ガラッ!
「よし、セーフか……」
HRまであと3分を切った頃に馬鹿が来ました。
「あ、拓斗、今日体育あるけど着替えは?」
「そんな見えすいた嘘に引っ掛かるか。取りに帰らせて遅刻させる気だろ」
ちっ、前回に課題提出と言って帰らせたときに学習したか。
「拓斗くん、おはよう」
「お、おう、おはよう藤阪」
「チキン」
「何言い出すんだお前はぁぁ!?」
煩いチキン。
「拓斗くん、どうしたの?」
「い、いや、なんでもない、なんでもないぞ!?」
明らかに狼狽してるじゃん。
「おい満月! 余計なこと言うな!」
――ガッ!!
「うん? 余計なことってなにかな?」
「ぎゃあああああ!! 痛い痛い!! 離せこのバイオレンス女!!」
額を掴んだ手に力を込める。
「んがあぁぁぁぁ!?」
よし、制裁終了。
「た、拓斗くん、大丈夫……?」
なんかピクピク動いてるし平気でしょ。
「そ、それって痙攣じゃ……?」
「よーし、HRを始めるぞー、席につけー」
すみれの弱々しい主張は担任教師の声に掻き消されました。
「おし、学食行くか」
「うんっ」
「すみれ、ちゃんとデザート買ってねー」
「う、うー……」
お昼になりました。私は自分のお弁当を持って2人の後に続きます。
「よし、ハヤシライスでいいか」
「わたしはA定食〜」
2人とも食券を持って列に並びます。それにしてもすごい人です。これだけいると知ってる人も……。
「なにぼけっとしてるんだ。邪魔だ邪魔」
「ちょっと考え事してただけですよー。センパイこそぼうっとしてると頭からお弁当かぶりますよ」
「ぐぬ……それは言うなとあれほど……」
私が列を見ているとセンパイがポンと現れました。思わぬ幸運です。
「いやぁ、あの時はびっくりしましたねー。足をとられて転びそうになったと思ったら……」
「それ以上言ったら殺すぞ」
はいはい。わかりましたよ。
隠している必要はさらさらないのでキッパリと言いましょう。私はセンパイが好きです。無論恋してるってほうの好きです。
少女漫画のヒロインならもう恋をしたというだけでその相手と結ばれるのは決定事項なのですが、どうやら現実はそう甘くはないようで、センパイは意外ともてているようです。
まああの女装がとても似合いそうな中性的な顔立ちとか、本人は悪役ぶりたいのでしょうがその顔に似合わない性格の悪さとか、それにも関わらずそんじょそこらの善人よりお人好しな本性とか、魅力的な要素は山ほどあるので当然かもしれません。なんせ私が好きになったのですから。好みがおかしいとかそんな文句は受け付けません。
「直樹、なんかあんたの後輩がずっと私を見てるんだけど」
「気にするな。そいつの奇行は今に始まったことじゃない」
「ひどいですよー」
目下最大のライバルはこの人でしょう。下の2人ではありません、上の人です。私やセンパイを勝手にナルシストにしないでください。
「で、なんなのよ? さっきからずっと見てたみたいだけど」
「藤阪センパイって理系科目は学年トップですけど文系科目はからっきしなんですよね?」
「……何か悪い?」
「で、センパイは文系はそこそこいけて理系はちょっと苦手」
「だからなんだ。文句でもあるのか」
「じゃあ2人を足して2で割った人ならちょうどいいですよね!!」
「ぶふっ!!」
「あ、あんた何言ってんのよ!? あんまり変なこと言うな!!」
「えー、変なことですか? 私はそんな人がいたらっていう話をしただけですけどー」
「そ、そうだけど……」
「阿呆なことばっかり考えてるんじゃない! 練習しろ練習!」
なんかもうこの反応見ただけでバレバレです。しかもセンパイも若干反応が見られるあたり要警戒ですね。
「あなたたち、また騒いで。後輩が見てるでしょ」
と思ったら部長の登場です。
「これは満月の起こした騒ぎよ」
「またそうやって人の責任にして。少しは最高学年の意識を持ちなさい」
「あんたねえ……」
いやあ、今回はほんとに私が起こしたんですけどねぇ。
「い、いや、確かに辻が馬鹿な話をしてからだったし、それに乗った俺達もどうかと思うしな!」
センパイが仲裁に入ります。なんか部長相手に強く出れない感じがしてますね。弱味でも握られているんでしょうか?
「……分かったわ。狭山くん、貴方がしっかり指導して頂戴」
行ってしまいました。
「やあやあ直樹氏! 今日も相変わらず静流君の言葉が耳に痛いね!」
「いるのが当然みたいな登場の仕方をするな」
部長が行ってしまったと思ったら今度は神楽センパイがやってきました。生徒会長ってヒマなんでしょうか?
「ああこんにちは!」
「お前は黙れ」
センパイが神楽センパイとお話ししていると時々意味不明な発言が飛び出します。なんなんでしょうか。
「というわけで、舞さん、あれはどういうことでしょう?」
最近入部した舞さんは神楽センパイのお知り合いらしいのできっとあの現象も説明してくれるでしょう。
「……心も体も繋がっているのでしょう」
「……そ、そうですか……」
うーん、独特の観察眼を持った人ですね。
部活が終わると再び駅へ。
家へ帰る前にスーパーで買い物をして帰ります。
「ただいまー」
まだお父さんが帰ってくる時間帯ではありませんが、家に入る時には挨拶を。基本です。
「ただいまー」
お父さんが帰ってきました。
「おかえりなさーい」
私の生活はこんな感じです。
他にも色々なことがある時もありますが、それはまたの機会に。
ではではー。
という訳で作品で初めて主人公への好意を表明しました辻さんです。
彼女も頭はいいのですよ。授業聞いてなくても学年で10位以内には入りますし。
次回は部長様のお話の予定です。




