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退魔士様はかく過ごせり

日常ほのぼの、第4弾です。

でも今回あんまりほのぼのしてません。

お気をつけ下さい。

 私の一日は早くから始まる。

 まず早朝。太陽が昇らない内に起き、日課の鍛錬を済ませる。この時に行うのは素振りなどの基礎的なものが中心となる。

「643……644……」

 このようなものは無心で行うのが大事だ。ただただ決められた通りに体を動かす。

 それを2時間程続けると朝食に丁度良い頃合いだ。母上が作ってくれた料理はいつも美味しい。

「凛、学校はどうだ?」

「普段通りです。小夜も特に周りの人間に影響を与えている様子はありません」

「そうか……」

「凛、狭山くんとはうまくいってる?」

「ぶっ!?」

 吹いた。しまった、汚い。

「な、な、何を言っているのですか母上!? わた私は別にそのようなことは……!?」

「なんだとぉ!? 凛、まままさかお前あの小僧と付き合っているのか!?」

「ち、父上! 変なことを言わないで下さい!」

「み、認めん! 認めんぞ! あんな軟弱な小僧……」

「あなた、凛が選ぶ人なら大丈夫ですよ。力だけが全てではありません」

「し、しかしもしもの時にしっかり守る事が出来る漢でなければ……」

「あなた?」

「う、うむ……」

「ち、父上も母上も、余計な事を言わないで下さい。別に私と狭山はそのような関係ではありません」

「あらあら、照れちゃって」

「むむむ……」

「だ、だから!!」

 

 

 はあ。朝から疲れた。

 朝食を食べ終えた後は学校へ向かう。

 学校までは若干遠いがせいぜい20分程度だ。歩いていけばすぐに着く。

 

 

 教室の中は今日も同級生がそれぞれの会話を楽しんでいる。といってもわざわざ話しかけて来る者もいないので私にとっては静かな朝だ。

――ガラッ。

「ふう。最近は元通りの時間に来れるようになってきたな」

「そうですね。あまり変なことも起こらなくなりましたし」

 始業ベルが鳴るより15分程早く狭山が登校してきた。小夜も毎日ついてきている。

「…………」

 無意識に狭山を目で追ってしまう。すると小夜が気付いて手を振ってくれた。

「……ふふ……」

 いい子だ、と思う。

 私と話をする人は本当に少ない。そんな中で休み時間などにちょくちょく話しに来てくれるのは性格の表れだろう。

 と、小夜が狭山を呼び止めてこちらを指差した。ちょっと待て。

「ん? どうした碧海? 何か用か?」

「い、いや! なんでもない!」

「そうか。……ところで碧海、3限の英語の予習してきたか? ちょっと分からなかった所があるんだが、分かるか?」

「あ、ああ。ここは……」

 狭山は普段から性格が悪い、振りをしている。

 善人は嫌いなのだそうだが、本人は誰よりも面倒見がよいのに気付いていないのだろうか。私なんかと話をしてくれる人など狭山以外にはいないというのに。

「……誤解……してしまうぞ……」

 

 

「だぁーー! 危ねえぇぇぇ!!」

「し……死ぬかと思ったわ……」

 我がクラスの遅刻魔ふたりも今日は間に合ったようだ。桜乃はいかにも遅刻しそうな雰囲気を漂わせているにも関わらず実はあまりしていないのだが。

「だからな、アレに意味がないならやめるぞ」

「気合いが足りないのよ! もっと起こす気で送りなさい!」

「なんだなんだ? なんの相談だ?」

「お前には関係ない」

「消えなさい」

「……ひどくない?」

 彼女らと狭山は高校に入ってからの付き合いのはずだ。それにもかかわらずあんなにも気心の知れあった仲になっているのはその社交性故だろう。

 ……私とは正反対だな。

「はい、HRを始めますよ。おや、今日は全員揃っていますね」

「こっちみるな」

 やがて担任の先生が教室に現れ、いつもと変わらぬ一日が始まった。

 

 

「狭山」

「ん? どうしたんだ?」

 昼休み。私は以前借りた金を返しにきた。

「この前の金だ。助かった、ありがとう」

「……忘れてた」

 お前が忘れてどうするのだ。貸した金が返ってこないかもしれないぞ。

「……不覚だ」

「狭山さん、お体の調子でも悪いんですか? 顔が赤いですよ?」

「煩い。黙れ。碧海、次からは気をつけろ」

 気をつけなければならないのはどっちだ。性格に合わない身の振り方をするからこうなるんだ。

 まあ、性格通りに振る舞って私のようになるよりいいのかもしれないが。

 

 

「それでは、今日はここまで」

「起立、礼」

「「ありがとうございましたー」」

 6時間目まで授業が終わり、放課後となる。剣道部に行くために教室を出る。

「碧海、今日は部活か」

「ああ」

「そうか。頑張れよ」

「……っ!」

「頑張ってくださいね!」

「……あ、ああ……」

 どうかしている。

 これでは日常生活もままならないではないか。

 どうかしている。

 

 

「……無様だ……」

 胴着に着替えたまではいいが、忘れ物をしてしまった。忘れ物を取ってくると部員に告げた時の恥ずかしさは言葉では表現できない。

――ガラッ!!

「おりょ」

「桜乃か」

 教室のドアを開けると先客がいた。恐らく吹奏楽部を少し覗いてこれから帰るのだろう。

「碧海か。胴着姿なんて珍しいな」

「……そうか」

「ま、あれだろ。忘れ物でもしたんだろ」

「む……」

 言葉に詰まる。

「あら? 図星? 碧海なんかでも忘れ物するんだな〜」

 だからなんだというのだ。

「まあまあ。いいじゃないの。ボケた所の1つや2つないと面白みにかけるっしょ」

 別に面白さを求めてるわけではない。

「はいはい。ここにいたのが狭山じゃなくて残念でした」

「なっ……な、何を言っているのだ!? 私はそのようなことは……!」

「いや、もういいっす……。んじゃな。とっとと忘れ物見つけた方がいいんじゃねえの?」

 そうだった、私は忘れ物を取りに来たんだった。

 忘れ物を回収し部活に戻る。

 今日の練習は余り手応えはなかった。

 

 

「只今帰りました」

「お帰りなさい。ご飯できてるわよ」

 夕飯を食べて後は、夜の稽古。父上が直々に稽古をつけてくれる。

「……はぁっ!」

「動きにムラがある。まだ感情を制御しきれていないな」

「……はいっ!」

「感情を完全に制御出来れば笑いさえも力に変えることができる。覚えておけ」

「はい!」

 そこまで出来たら人間業ではないだろう、とも思ったが言わないでおく。

 ……そもそも父上が笑うこと事態殆どないのだし。

 

 

「お休みなさい」

「はい、お休みなさい」

「うむ」

 私は8時頃に床につく。

 以前それを狭山に話したら大層驚かれたが、狭山も就寝時間を藤阪や桜乃に驚かれていたので、おそらく寝る時間というのは聞いた時に驚かなければならないのだろう。私もきちんと驚けるようにしておかねば。

 こうして何もない日が過ぎていく。

 この時間は、きっと大切に過ごさなければならない時間なのだろう。

 そんな気がする。


というわけで退魔士様の一日でした。

全然ほのぼのしてないのは気のせいです。

やってられないのも気のせいです。

最近あとがきが適当なのも気のせいです。

作者が風邪を引いているのも気のせいなのでしょう。


というわけで次回は後輩様の一日をお送りする予定です。

ありがとうございました。

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