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霊媒様はかく出会えり

リクエストがあった舞と神楽の出会いのお話です。

ちょっとほのぼの分が足りないかもしれないので、そういったものを期待している方はご注意ください。

何も期待していない方は進んでいいと思います。


では、どうぞー。

 雨。

 アスファルトに降り注ぐ水滴が、思わず耳を塞ぎたくなるほどの音を立てていた。

 でも、手は動かなかった。

 やけに、撥ねる水滴が顔にかかった。

 どうして、私は倒れているのだろう。

 どうして、車が止まっているのだろう。

 その時、誰かが私の隣に立った。

 雨音が、途切れた。

 

 

 ……あなたは、だれ?

 

 

「…………」

「……気がついたようです」

「……舞!!」

「よかった……」

 目を閉じて、次に目を開けたとき、そこには無機質なアスファルトはなかった。

「……ここは……」

「舞! よかった!」

 隣を見ると、お母さんが泣きながら私の手をとっていました。

「……お母さん」

 改めて辺りを見回してみると、どうやらそこは病室のようでした。

 手を取って安心しきった顔をしているお母さん。

 白衣を着た人と何か話し合っているお父さん。

 そして、入り口のところに立って私を見ている誰か。

「……私は、どうなったんでしょうか?」

「もう大丈夫ですよ。何も気にする事はありません」

 目を閉じる前の映像と今の状況を考え合わせれば大体の想像はつきますが、お母さんが話したくないのなら無理に聞く必要もないでしょう。今のところ左腕がなくなっているなんてこともないですし。

「……それでは、明日まで検査入院ということで。お話ししたいこともありますし」

「分かりました。雪絵、行こうか」

「はい。舞、それでは私たちはちょっと行ってきますね」

「はい。行ってらっしゃい」

 お母さんとお父さんが医者について病室を出ると、部屋には私と入り口傍の男の人だけが残りました。

「…………」

「…………」

「……何か用でしょうか?」

「…………」

 どういうことでしょう。私が話しかけてもその人は何の反応も示しません。にも関わらずその視線はこちらだけを向いています。

 改めて服装をよく観察してみると、その人は白いツナギのような上半身と下半身がつながっている服に同じく白いマントのようなものを着ています。怪しいことこの上ありません。

「……あの、どなたでしょうか」

 仕方がないのでベッドを降りてその人の前に立ちました。さっきのお母さんたちの話を聞いている限りでは動けなくてもおかしくないような気がするのですが、痛みすら感じません。

「…………もしもし?」

「……ん? ひょっとしてそれは僕に言っているのかな?」

 やっと反応したと思ったらそんなことをいい始めました。自分の1m手前で目を合わせて発言している人が自分以外に語りかけていたら恐怖です。

「その通りです。あなたは誰ですか。そして何故こんなところにいるんですか?」

「ふむ、余計な力を移してしまったかな……?」

 質問に答えてほしいです。

「まあよかろう! こうして知り合ったのも何かの縁だ! 君に少し協力してほしいことがある!」

 この人はどうやら人の話を聞く習慣がないようです。一方的な話は続きました。

「僕は……そうだね、うん、一種の幽霊さ!」

「そうですか」

「そしていわゆる不幸を運ぶ悪霊なのだよ!」

「そうですか」

「そして運良く君が不幸にも車に轢かれてしまったのさ!」

「そうですか」

「だから、僕は君にとり憑くことにするよ!」

「そうですか」

「……ふむ、意外と驚かないものなのだね。なら次からその手でいこうか」

 要するに、可哀想な人のようです。

 まあここは病院ですから、そんな人もいるでしょう。

 そしてそんな人に対する私の反応はひとつです。

「では、さようなら」

「……君、話を聞いていたかね?」

 残念ながら幽霊なら見飽きていますので。

「……君、霊魂が見えるのかね?」

「はい。多少は」

「それはすごい! ならば僕のことも分かるだろう!?」

「あなたは普通の人間です。幽霊とは見え方が違います」

 幽霊(と思しき人)を見ると、その密度というか、そういったものがなんとなく薄く、動き方も若干生きている人と違います。

 それに対してこの人は完全に私やお母さん、お父さんと同じ動きで、とても幽霊とは思えません。

「……そうか、そこまで違うものなのか……。シー君も同じ手でいけると思ったのに……」

 再びブツブツと独り言を唱え始める幽霊の方(自称)。もう帰っていいのでしょうか。

「ならば君! 改めてお願いがある! 僕に協力してくれないかい!?」

 何に関してでしょう。どうもこの人は自分のイメージを他人に伝える能力が欠如しているように感じます。

 もっとも、それはこの人だけの話ではありませんが。

「ん? どうかしたのかね?」

「いえ、なんでもありません」

 その幽霊の方は暫くの間何かを考え込んでいるようでしたが、やがてパッと私の方に向き直り、こう言いました。

「君は神様を信じるかね!?」

「いいえ」

「…………」

 何かの宗教団体の方でしょうか。そう思ってみると、確かにこの謎な服装もそれらしく見えてきます。

「……じ、実は、僕は神様なのさ!」

「さっき幽霊だとおっしゃってましたが」

「そ、それはう……え? なに? ダメなのかね?」

 誰に訊いているのでしょうか。

「……む、しかたあるまい。……とにかく、幽霊と神様の間くらいの存在なのさ!」

「想像できません」

「つ、つまりだね――」

「意味が分かりません」

「その――」

 

 

「あら舞。立ち上がって大丈夫なんですか?」

「大丈夫です。もう傷も塞がったようですので」

「そうですか……。じゃあ、これからもう一度検査をするそうなので行きましょう?」

「分かりました。ちょっと待っていてください」

 お母さんが部屋からいなくなると、私はゆっくりと横を見ました。

 そこには肩で息をしている神様と幽霊の間の肩(自称)が。

「ど……どうかね……? あの、母君にも、見え、なかっただろう……?」

「最初からそうすればよかったと思うのですが」

「僕も、そう、思うよ……」

 なんにせよ、この人が人間ではないということだけは分かりました。先ほどのお話も多少は信憑性を増したことでしょう。

「それで、結局あなたは私にどうして欲しいのでしょうか?」

「そうだね、まずは君の家で暮らしたい」

「……プロポーズでしょうか」

「はっはっは! そうだとしたら僕も君も困るだろう!? ただ寝る場所があればいいのさ!」

「分かりました、自称幽霊と神様の間の方」

「……その名前は少しばかり分かりづらいね……」

 名前を聞いていないので当然です。

「私は市原舞といいます」

「ふむ……僕の名前は……」

 少しばかり考えた後、その人は誇らしげにこう言いました。

「……そう、神楽龍一さ!」

 

 

「――と、そうして私と神楽さんは出会いました」

「そうだったんですかー。不思議な感じがしますね!」

「そうだな。俺達の最初の出会いがぶっとんでなく見える」

 とある部活中。狭山さんに、『私たちはどのように知り合ったのか』と聞かれたので答えてみました。狭山さんは同情の眼差しを向けてきます。気持ちは分かりますが。

「その後で今の狭山さんのような説明を受けていったんです」

「……どのくらいまで信じた?」

「いいえ、信じていませんでした」

「なんと!? 僕の言葉は舞君の心には届かなかったというのかね!?」

「お前、いたのか」

 一応最初から私の話を横で聞いていた神楽さんが大袈裟に反応します。

「お前な、よりにもよっていきなり事故なんて不幸をもたらすな。一歩間違ったら死んでただろ」

「はっはっは! そうだね! そのくらいの事故だった!」

「笑い事じゃないんだが……」

「最終的に舞さんが無事だったからよかったじゃないですか」

 今、狭山さんはおそらく私と神楽さんの関係と今の自分たちの関係が同じものだと思っているでしょう。

 ですが、おそらく私たちと狭山さんの間にはわずかな、そして致命的な違いがあるような気がします。

「……神楽さん」

「ん? どうかしたかね舞君!?」

「……私たちと狭山さんたちは、一緒にいられるでしょうか」

「……はっはっは! 何を言っているのかね!? 当たり前さ!」

 私の予感を吹き飛ばすように、神楽さんは豪快に笑いました。

「心配はないよ。君は笑っていられる。絶対にね」

「……そうですか」

 

「貴方たち、練習しないのならここに来る必要はないんじゃないかしら」

「い、いや、あれだ、今後の方針について話し合いを……」

「だったら尚のこと神楽くんは話に参加する必要はないわよね?」

「ま、まあ……」

 松崎さんに見つかってしどろもどろの言い訳を始める狭山さんと、それを微笑ましげに見つめる小夜さん。

「……心配はいらない。きっと彼らも、笑っていられる」

「……そうですね」

 いつか来るであろう予感を胸の奥に押し込め、私は大人しく練習を始めるのでした。

 

 

3年前のある梅雨の日。

彼女はこうして出会いました。


なんとなく回想風にしてみたのですが、どうでしょう?


最後の舞と神楽の対話は意味があるようでないかもしれません。実は本当に意味があるかもしれません。

つまるところ深く考えなくてもいいでしょう。


では、次回もテーマが未定ですが、何か読みたい話などあればどうかひとつ教えてください。

全力で実現したいと思います。


ではでは、さよーならー!

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