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後輩様はかく出会いき

辻さんのお話です。

まあ彼女も最初はこんな性格だったわけです。

え? 今も変わってない?


とりあえずどうぞ。

「ねーねー、いっつもお弁当ひとりで食べてるよね?」

「……はい?」

 私がある高校に入学してから1ヶ月ほど経った頃、いつものように自家製のスペシャル弁当を食べようとしていると知らない女子生徒が話しかけてきました。ああ、知らないというのは失礼でしたね、同じクラスの女子生徒が話しかけてきました。どちらにしろ今まで話したことはなかったので顔を知っているレベルですが。

「もしよかったら、一緒にご飯食べない?」

「……なんでですか?」

 なんなんでしょうこの人は。一人でご飯を食べるのが寂しいと思ってたら同じく一人でお弁当を開こうとしている私を見つけて同じ一人者同士仲良くしようとか思ったんでしょうか。

「おーい藤阪、何やってるんだー?」

「あ、拓斗くん、ちょっと待っててー」

 ピキッと来ましたね。どうやら私の予想は大きく外れたようです。よそのクラスの男友達がいるのに私に話しかけてきたみたいです。なんなんでしょう、単に一人者を哀れんでいるのでしょうか? だったら大きなお世話です。

「彼氏との楽しいひとときを邪魔するつもりはありません。どうぞ2人で楽しんでください」

「ほえ? 彼氏?」

 ……完全に意識なしのようです。本当にこの人はなんなんでしょう。

「えーとね、なんだかいつもひとりだったから、一緒にご飯食べてみたいなーって思ったんだけど……迷惑だった?」

「迷惑です」

「えぇー……」

 そんな本気で落ち込まれても困るんですが。

「おい藤阪、お前何やってるんだよ」

 と思ったら痺れを切らした彼氏がやってきました。

「遅かったですね。早いところ彼女引き取ってください」

「か、かの……! バ、バカ、違ーよ!」

「あれ。私はSheの意味で『彼女』と言ったんですけど。何を一人で勘違いしてるんですか?」

「なっ……! お、お前、あんな言い方したらそう取られるだろ!」

「そう取られるってどう取られるんでしょうか? 詳しく教えてください」

「ぐ……」

 この女子はよくわかりませんが、こっちの男子は面白いですね。いじり甲斐がありそうです。

「気が変わりました。ご一緒しましょう」

「え? ほんと?」

「はい。どこで食べるんですか?」

「えっとねー……」

 

 

「やられた……」

 まさかその混雑ぶりが早くも1年の間で評判になっている学食に連れ込まれるとは思いませんでした。どうやらあの2人は前からこうやって昼食をとっているらしいですが、私はずっとお弁当だったのでこんな配給に群がる難民の集団みたいな環境に慣れているはずもありません。あっという間にはぐれました。

「というかテーブルが見えないほどの混雑って何? 改築した方がいいんじゃないの?」

 周りにクラスメイトらしい人はいないので敬語を使う必要はありませんね。文句を言いながらあの2人を探します。

「いない……」

 ええ。全然いません。からかわれている気になってきます。まさかどこかから見て楽しんでいるのではないでしょうか。

 その時、私は2人を探すことに気を取られていて重大なミスを犯してしまいました。

「わ……っ!」

 そう、いい加減鬱陶しくなってきたこの人混みに足を取られてしまったのです。

 私はその時お弁当を持っていました。

 そのお弁当は私の手を離れ、放物線を描いて飛んでいき。

――グシャ……!

「…………」

「…………」

 あろうことか途中で包みが解けて空中分解を始め、どっかの誰かの頭に直撃しました。どっかの誰かと言ったのは恐らく男子生徒であろうその人が後ろを向いていて同学年か先輩かわからなかったからです。

「…………」

 さて、どうしましょう。

 できることならこのまま何事もなかったかのようにこの場を離れたいのですが、せめてお弁当箱を回収しなければなりませんし、何より私はまだ転んだままです。

「…………」

 その人はゆっくりとこちらを振り向きました。そして人混みの中転がっている私を発見したようです。

「……お前か、これ」

「…………」

「おーい。お前かって訊いてるんだがー?」

 その人は何か言っているようでしたが私にはどーでもいいことでした。

 普段は無神教な私ですが、今日ばかりは神様に感謝です。

 

 ぶっちゃけて言いますと、ど真ん中ストレートでした。たとえ髪の毛に卵焼きとブロッコリーの破片がぶら下がっていようが制服の肩からご飯が零れ落ちていようがど真ん中ストレートです。

「おいこら、いい加減に返事しろ。そろそろこの不名誉な弁当の残骸を処理したい」

「……お名前をお聞きしてもいいですかー?」

「なんでやねん」

 

 

「いやー、すみませーん。人混みに足をとられちゃってー」

「まったくだ。おかげで昼飯が台無しだ」

 うーん、顔つきはタイプなんですが、性格に難ありですかねー。『そんなこと気にしなくていい、それより君のお昼ご飯を台無しにしちゃってごめんね』くらい言って欲しいんですけど。まあ本当にそんなこと言われたら引きますが。

「……何か言いたげな顔だな。言っておくが弁当の中身弁償しろとかだったらぶっとばすぞ」

「あははー。まあそれは置いといて」

「否定はしないんだな」

「ほんとに大丈夫ですかー? なんかまだ髪に卵焼きついてますよー」

「誰のせいだと思ってるんだ……」

 さあ。誰でしょうね?

「はぁ……ついてこい」

 あれ? なんか歩き始めました。ひょっとしてこのまま校舎裏に連れて行かれてカツアゲでもされちゃうんでしょうか。だったら容赦しないんですけどね。

 とりあえず大人しくついていくとその人は学食に隣接した購買へ歩いていきました。なるほど、代わりのお昼ご飯ですね。

「ちょっと待ってろ」

 そう言うとその人は列に入っていきました。代わりのパン代を出せとかそんな結果が見えてきましたね。だったら大人しく待っている必要はありません。さっさと退散することにしましょう。

「待てっつってんだろうが」

「ええー、早ー」

「早くて何が悪い。逃げようとすんな」

 うわ、この人ここぞとばかりにパン5つも買ってますよ。なんてせこいんでしょう。こんな人が将来の日本を背負っていくのかと思うとぞっとしますね。

「……なんか失礼なこと考えてないか?」

「いーえまったくこれっぽっちしか考えてません」

「考えてるじゃねーか!」

 よく気付きましたね。

「もういい……ほら、選べ」

「……はい?」

「選べっての。お前も昼飯なくなっただろ」

「…………」

 この人は何を言っているのでしょう。もしかしてそのためにわざわざ5個もパン買ったんでしょうか。

「じゃーカレーパンを……」

「他にはいいのか」

「じゃー全部ください」

「あんま調子に乗るなよ」

 残念です。

「ほれ、カレーパンとメロンパンだ。足りなかったら自分で買え」

 パンの定番ともいえる商品を私に放り投げるとその人はスタスタとどこかへ行ってしまいました。お金払わせるのを忘れたようです。

「…………もしかして」

 もしかして、奢ってくれたんでしょうか。こっちがお弁当ぶちまけたのに?

「……面白いですねー」

 ただ単に性格が悪いだけではないようです。俄然興味が湧いてきました。

 顔も合格。性格も面白そう。これで他に何の問題があるでしょうか。

 経済力は様子見ですね。ひとまずはうっかり訊くのを忘れてしまった名前から調査しましょう。

 

 

「それって、狭山先輩じゃないかな?」

「狭山?」

 まずは、教室に戻るといつの間にか帰って来ていた2人に聞いてみることにしました。すると一発で出てきた候補。

「うん。わたしと拓斗くんは1つ上の学年にお姉ちゃんとお兄さんがいるんだけど、狭山先輩はお姉ちゃん達の友達なの」

 なるほど、この2人の仲の良さはそういうつながりから来ているんですか。

「何で……僕は殴られたわけ?」

「誘っておいて放置した罪は重いですけどセンパイの情報を教えてくれたので手加減しておきました」

「理不尽すぎるだろそれ!?」

 外野は無視です。

「それで、その狭山センパイはどこのクラスにいるんですか?」

「クラス……う〜んと、それはよくわからないけど、すぐに会える方法があるよー」

「その方法とは?」

「それはねー――」

 

 

「――という訳で、辻満月です! これからよろしくお願いしまーす!」

「……な……」

 おーおー、驚いてる驚いてる。

「……なんでお前がここにいるんだーーー!?」

「吹奏楽部に入りたいなーと思って。同じクラスの藤阪さんが紹介してくれましたー」

「おい藤阪妹ー! なんでよりによってこいつを勧誘してくるんだー!」

「えーっと、狭山先輩に会いたいって」

「んなっ……!」

 さて、時間はまだまだたっぷりあります。

 それまで。

「よろしくお願いしますね! センパイ♪」


顔がよかったからミーハー気分で同じ部活の同じパートに入った辻さん。

そのうち本当に惚れてしまったのはまた別の話です。


まあ彼女らしくないといいますか、遊び感覚っぽいのが若干不自然かもしれませんが、そこは作者の技量不足ということで勘弁してください。

ちなみにすみれと拓斗ともこれをきっかけに仲良くなりました。仲良く?


過去編始まりますとか言っておいてこれでネタ切れなんですが、『これが見たい!』とかありますかね……?


という訳で次回は未定です。ありがとうございましたー!

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