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退魔士様はかく出会えり

お久し振りです、ガラスの靴です。

結局これ以上番外編で作品数を増やすのもなんだかなという気がしたので、番外編はここで載せていきたいと思っております。

では過去話第1弾、どうぞ。

 それは中学に入って暫くしてからのことだった。

「お、おい! 今、1年の男子が3年の先輩数人に囲まれて……!」

「え!? せ、先生は!?」

「今呼びに行った! でも間に合うかどうか……!」

 どうやら1年が3年に生意気な態度を取ったらしい。いつの世でも権威に逆らう奴はいるようだ。

 私は退魔士だ。人に害悪をもたらす存在を断ち切る者。無用なことに使うべき力ではない。

 だからその時、その現場に行ったのは、本当に気まぐれと、そしてほんの少しの偽善からだった。

「オイ! 1年の分際でずいぶんナメた態度取ってくれるなぁ!?」

「2年やそこら早く生まれただけだろ。今の世の中年功序列は通用しないぞ」

「こん……のクソガキ……!」

「だいたい集団で女子をナンパするなんて脅迫罪に近いことを平気でやる奴らに礼儀を教えてもらう筋合いはない」

「正義の味方気取ってられるのも今のうちだぞ……!」

 どうやらちょっかいを出されている女生徒を助けに入ってこうなったらしい。

「誰が正義の味方か。俺はただ通行の邪魔になってたから無理やり通ろうとしたら偶然持っていた筆箱に入っていた鉛筆がお仲間の脳天を直撃してしまっただけだ」

「なんで昼休みに筆記用具持ってうろついてるんだよっ!?」

 ……おそらく、いや、たぶん。

「……ところでさっきから俺たちのことをじっと見てるあの女子もお前らの仲間なのか?」

「あん?」

 1年の男子がこちらに気付く。不良たちも一斉にこちらを見る。5人か。まあ問題はないだろう。

「なんだ嬢ちゃん。見せ物じゃないんだぜ?」

「帰んな帰んな。それともお嬢ちゃんが俺たちの遊びに付き合ってくれるか?」

 私を知っている人間ならば素直に退いてくれるだろうが、そうもいかないらしい。

「その男子は悪気があってやったわけじゃないだろう。離してやったらどうだ」

「そんなん嬢ちゃんに言われて従うことじゃねえなあ」

「そうだな。少なくとも俺は狙ってやった」

「…………」

 なんだというのだろう、この男は。このまま男達に殴られるのが目的なのか?

「そこの1年。そうしているのはもしや殴られたいからなのか?」

「お前も1年だろ……。残念ながら俺に被虐趣味はない。だから出来る限り言いたいことを言って鬱憤を晴らしている真っ最中だ」

 なんとも捻くれた頭をしているらしい。

「で、お話は終わりかな?」

「お嬢ちゃん、あんまり関わると痛い目見るぜ」

「ふう。正直こうなるとは思ってなかったな……」

「はっはっは! 軽々しくこういう現場に踏み込むとこうな――ガッ!?」

 詰め寄ってきた男に回し蹴りを喰らわせる。

「……誰でもいいから助けて欲しいと言うくらいやられきった後だと思っていたんだが」

「んだこの女!?」

「このやろう! 怪我したってしらねーぞ!!」

「私が相手になろう。話はそれからだ――」

 

 

「おお……まるで映画だな……」

 1分後。私の周りには先ほどの不良たちが5人、大の字になって倒れていた。

「大丈夫か?」

「正直これだけ見るとお前の方が大丈夫かと訊きたい」

 手を伸ばすがそれを無視して立ち上がる。随分余裕だな。

「こんな頭の悪い連中に舐められたら不愉快だからな。お前こそ――」

 ストン。

 男子は再びへたりこんだ。何をやっているんだ?

「……笑うなよ」

「出来る限りはな」

「……腰が抜けた」

 …………。

「……ぷっ、クスクス……!」

「わ、笑うなと言っただろうが!」

 その男子――狭山直樹と会ったのは、この時が最初だった。

 

 

「くそ……俺は頭の悪い連中なんかに……」

「馬鹿なことを言っていないで大人しく寝ていろ」

 ここは保健室。先ほどの男子をベッドまで運び、保険医を呼んだところだ。

「それじゃああとはわたしに任せて、あなたは教室に戻りなさい」

「わかりました」

 保険医の指示に従って教室へ戻る。

――ザワ……!

 私がドアを開けた瞬間、教室の空気が変わった。恐らく私が不良を倒したということが知れ渡っているのだろう。

「…………」

 そういったところで今までと何も変わることはない。今まで通り、誰も私に近寄らないだけだ。

「えー、狭山はちょっとした事情でいま保健室にいる。5時間目が終わる頃には戻ってくると思うから、心配しないようにとのことだ」

 5時間目、入ってきた教師がクラスにそう伝える。あの男子はここのクラスだったのか。それさえも知らなかった。

 

 

――ガラッ!

「お、狭山。生きてたのか」

「人を勝手に殺すな。別になにもされてない」

「でも保健室にいたって……」

「……それはまあ、大事を取ってというやつだろう」

「なんで自分のことなのに推量形なんだよ……」

 狭山というらしいその男子は教師の言っていた通り5時間目が終わるとすぐに教室へ戻ってきた。もうすっかり立てるようになったらしい。

「お、いたいた。なんだかんだでさっきは助かった。礼を言う」

「え……?」

 ちらりと見ただけですぐに顔を窓の外へ向けた私に、そんな言葉がかかってきた。

「……わ、私に言っているのか?」

「他に誰に言えばいいというんだ。影武者でも雇ってたか?」

「い、いや、そうではなく、私は礼を言われるようなことはなにも……」

「ま、お礼っていうのはする方がお礼だと決めればお礼なんだ。気にするな」

 なにやらよくわからないことを言って狭山は自分の席へ戻っていった。

「お、おい、狭山。よく碧海に話しかけられたな……!?」

「あいつ、なんだかよくわからない暗さがあるじゃん……」

 背後から声が聞こえる。本人達は聞こえないように行っているつもりなのだろうが、幸か不幸か私の耳は鍛えられている。全て聞こえてしまうのだ。

「なんだそれは。そんな評判関係あるか。助けてもらったから礼を言う。それのどこがおかしいんだ」

「いやまあ、おかしくはないが……」

「だったら変なことを言うな。あまり変なことばかり言っていると変な人間になるぞ」

「いや、狭山も充分変な人間だからさ……」

「なに!? 俺はまともだ!!」

 絶対に違う。

 そう突っ込みたくなるのを必死にこらえるその気持ちは、初めて起こったものだった。

 

 

「大変だ!! 狭山がまた3年に!!」

「あいつは……」

「なんか呪われてんのかね……?」

 数日後、再び教室に危険な知らせが飛び込んできた。恐らくまた何かやらかしたのだろう。

「お、姉ちゃん。来たな」

「俺たち、お前さんに用があるんだよ」

 この前と同じ場所にいってみると、この前と同じ不良たちがいた。どうやら用があるのは私の方だったようだ。

「よかったな。『嬢ちゃん』から『姉ちゃん』にレベルアップしたぞ」

「なんでお前はそう余裕なのだ……」

 そして不良たちに胸倉を掴まれながらも平然としている狭山。なんとなく3年の神経を逆撫でするのも分かる気がする。

「この前は随分と恥をかかせてくれたじゃねえか。今度は本気で行くぜ」

「そうか。まだ懲りていなかったか。では行くぞ」

 

 

「せ……戦闘シーンすらねぇ……」

 意味の分かりかねる台詞をつぶやいた不良はそのまま崩れ落ちた。

「おお、やっぱり強いな」

「……これくらい普通だ」

 そう。私にとってはこれが普通。

 周りの人間にとっては脅威に見えるだけだ。

「……よし、決めた」

「何をだ」

「お礼がしたい。今日の放課後ちょっと付き合ってくれ」

 狭山はそれだけ言うとさっさと教室へ帰ってしまった。何をしたいというのだろう。

 そして、放課後。

「さ、狭山! 私はこんなところに来た事は――」

「それは良かった。お礼としての価値も生きてくる」

「わ、私が言いたいのはそういうことではなくだな……!!」

 狭山に無理やり連れて来られたのは駅前にあるファーストフード店。こんなところに来たことはないから、どうすればいいのか全く分からない。

「まあまあ、注文は俺がするから、何を食べたいか選んでくれ」

「……といっても……」

 色々な食べ物の写真が並んでいるが、どこがどう違うのかすら分からない。

「……すまない」

「いや、何故謝る?」

 結局狭山に選んでもらい、狭山の案内に従って席まで移動する。

「……ず、随分と辛いのだな……」

「慣れてない人間にはそう感じるかもな」

 これがファーストフードというものなのか。不思議な味だ。

「少なくとも家ではこのようなものは食べたことはないな」

「……お前の家、ひょっとして金持ち?」

 違う、と、思う。

「それにしたって、お前ってなんか変な奴だな」

「どういう意味だ」

「いや、普通わざわざ不良に絡まれてる人間を助けに来たりしないだろ。いくら強いって言ったって」

 ただの気まぐれだ。

「……俺は気まぐれで助けられたのか。なんか一気に捨てられたのを拾われた子犬みたいな心境になってきた」

「……お前も、変だな」

「俺は変じゃない! 普通だ! 平凡だ! 烏合の衆だ!」

「そこまで言わなくても良いのでは……?」

 その後も狭山は面白い話を沢山してくれた。私もそれにつられて笑った。

「それじゃ、これからよろしくな。碧海」

「ああ。よろしく頼む」

 どうやら私という人間にも、親しい友人というものが出来たらしかった。

 両親に話すと大変喜ばれた。男だと言った時の父上の顔が少し気になった。

 それは中学に入って暫くしてからのことだった。


彼らは中学1年の時に知り合いました。

そのまま同じ高校に進み、今の状況にあるわけです。

本当はもっと『人を寄せ付けない感じ』を出したかったんですが……えらくお人よしな性格に。

ま、いいとしましょう。

とりあえず次回は藤阪、次々回で辻と、時系列にそって書いていきたいと思います。

では次回をお楽しみにー!

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