表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
信じた世界の、その先へ  作者: 琴乃
第一章 夢と現実
1/3

前世の夢


 火が、炎が、空を見上げると出ていた。


「おい!街に火が出てるぞ!!」

「門を突破された!!」


 叫ぶ騎士達は皆、動揺している。

そうしている間にも、彼らを炎が包んでいく。


 そんな嫌な光景を、自分は見ていて、自分の剣を強く握り締め、そして、敵を斬りつけ、大声で叫びながら指揮を執っていた。


「何をしている!?」


 緊迫した中、自分に声を掛けてきたのは長い髪の女性だ。

とても凛々しい顔だが、いつもより切羽詰まった様子でこちらを見ている。


 そんな彼女を見て、不覚にも俺はなんて美しいのだろう、と場違いな事を思った。


「急げッ!!敵襲だ!門に向かうぞ!!」


 彼女の美しい声が、いつもよりも焦っていて、そんな声もまた美しいと思う自分が居た。

 こんな事を思える自分は何て呑気な人間なのだろう、そう思った瞬間、名前を呼ばれた。


「エル!エルバート!行くぞ!!」


 自分を見つめながら、門を後ろに背を向ける彼女。


 そんな彼女を見つめつつ、エルバート、と言う名が自分の中に引っ掛かる。

なぜか?そう考え、俺の名前は田中浩平だからだ。


 そうだ、これは夢だ。

俺は夢を見ているんだ、そう自覚した瞬間、彼女が目の前で、倒れた。


 全てが、美しかった。


 金色のシルクのような髪が揺れ、鮮血が彼女の腹から飛び散り、白い肌を濡らす。

そして銀の鎧を纏った細い身体が、赤い世界で崩れ落ちた。


「え、るッ!」


 何もかもが美しい彼女から、自分だった名前を呼ばれ、自分は心の中が、震えた。


 怒りでも、悲しみでも、喜びでもなく、ただ、ただ、彼女が名前を呼んだ事に、恐怖し、そして戦慄した。

 そして、剣を刺した敵が、その彼女を見つめ、歓喜に打ちひしがれている所を、俺は、自分は、そんな事も御構い無しに、彼女へと斬り掛かった敵へ躊躇う事もせずに、剣を振り下ろした。


「える、ばーと」

「喋るな、シャルッ!すぐに、すぐに、城へ…!」

「むりだ、わかるだろ?」


 確かに彼女を見ると、鎧の隙間を刺された傷口から大量の血が、流れ滴っていた。


 生暖かい血が、彼女を抱きしめる自分の手を染める。死ぬのは時間だと、本当はわかっていた。

 それでも諦めたくないと、自分は、俺は思った。


「大丈夫だから、シャロット!城へ!」

「なあ、けっこん、したかったな」


 彼女が、自分を見つめる。


「ッ結婚するだろ」

「おまえの、こを、うみたかったな」


 彼女が、自分の頬へと手を弱弱しく添える。


「バカ、何人でも産めるだろ」

「えると、いっしょにいきたかったな」


 彼女を、自分は抱きしめる。


「何言ってるんだ、お前は団長だろ?生きなきゃいけないんだ」

「えるばーと、おまえのしあわせを、ねがって、る」


 彼女が笑って、そして、目を閉じていく。


 自分の視界がぼやけて見えない。


 俺はどうすればいいんだ、と彼女に言ったのかもしれない。

この後の事など、覚えていない。




 ただ、ただ、彼女が死んだのだと、そう思った。



初めての小説です。

とてもドキドキしていますが、楽しんでいただけるよう頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ