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第六話 チムピス・ペイント

この作品のヒロインが登場する話です

特徴

・ヤギの目

・頭上左にS字型の黒いツノ

・歯は全て尖っている

・天然

・セクハラに鈍感(性欲行為されても抵抗しない。スケベでもない)

勝谷は脇役であるためヒロインではありません

私は今どこにいるの?

ここはどこなの?

もう世界は救われたの?

ねえレプラ、私をどこへ行かせたの?

何でこの場所なの?

誰もいないよ

私一人だよ

さみしいよ

会いたいよ

レプラ



帥丙の部屋

 帥丙が1人でTVゲーム[地底戦艦マガト]をやっている時、ベッドの上で横たわり、ただボーっとコントローラーを握って無意識にボタンをポチポチ押していた

「くそ!マガリンド強ぇ」

中ボスを倒せなくてそう言った。が、その後怒りに任せてコントローラーを床に投げ出してゲームの電源を消した

「まだ10時だけどもう寝るか」

両手を挙げてあくびをした後、布団もかぶらず横になって寝た。その8秒後、携帯電話が鳴る

 帥丙はイラついたように携帯を取り出して耳に当てた

「今何時だと思ってんだ死ね!!」

 『ちょっ死ねはなかやろ! そげなこつより来週んテストあっけんがら、明日、新宿第二図書館で勉強会やるけん。いんたも来て・・・』

ブツッ

帥丙はイラついたまま電話を切った。

携帯をベッドの近くの勉強机の上に放り投げて再び眠りにつく。するとまた電話が来た。強引に取り電話にでる

 「何なんだよ!! ああ!?」

 『帥丙君。露出狂って知ってる? パパが窓を見てそう言ってるんだよ』

帥丙は聞く耳持たずに電話を切った。もう今度こそ寝よう。ベッドの横になり強く目をつぶった。また電話が鳴った

 「もう我慢できねえ。マイクの音量MAXにしてやる」

帥丙は携帯の横についてる音量ボタンの上を押しまくって電話に出た

 「やっほー!! 帥丙でーす!!」

 『おおその声は水人かい? ずいぶんと声が大きくなったのう』

 「あ、おじいちゃん? こんな夜中にどうしたんだよ眠いんだよ」

 『あら急に声小さくなったな。まあいいか。明日土曜日じゃし、親戚の狩生ちゃんと宝林島へ行かんか?』

 「あ、行く行く! 宝林島行きたい!」

 『そうかよし分かった! 明日車で迎えに来るから準備して待ってろよ!』

帥丙の祖父はそう言った後に電話を切った。

 「宝林島か、何年振りだろうなあ」

宝林島は、帥丙が5歳の時に同じ年の親戚の狩生と一緒に行ったことがあるハワイのような場所である



今から11年前

 帥丙と狩生は頂点の近くの崖の真ん中にある縄カゴスライダーの行列に並んでいた

 「うわーすげえスピードー!」

 「早く乗りたーい」

二人は線路の下で繋がれている縄で出来たハンモックのような乗り物を見て目を輝かせていた

 「次は私たちの番だね!」

 「じゃあ俺前で狩生後ろね!」

そう言って帥丙はすぐ縄カゴに乗って、狩生は帥丙の横に乗ろうとしたが滑って落ちそうになった。運良く両手で縄にしがみつき助かった

  「じゃあ滑るよー!」

  「え!?待っ・・・!」

縄カゴが上の線路に従い滑り出した

  「ぎゃああああああああああああああ!」

  「楽しい~♪」

ジェットコースターのように恐ろしいほどのスピードを出して滑っている。帥丙のみ楽しんでいるときに20秒が経った

 「ちぇ、何だよ短いな」

帥丙は不満そうな表情をだしたが、狩生は死にかけたゴキブリのように気絶していた

 「おら立てよ狩生」

狩生は帥丙の言われたとおりに立ち上がり、気を取り戻ろうと首を振った

 「貝殻集めしようぜ」

辺りを見渡すと、そこは海だった。観光客に溢れて海は少数が泳いでいる

 「うん!」

狩生はスライダーの恐怖を忘れたように貝殻を探し始めた。帥丙も同じく元気そうに走って貝殻を探し始めた

貝殻集めから3分後

 「水人見て見て! 大きな貝殻~!」

狩生が青いハイレグを着ながらホタテの貝殻を持って帥丙の方に自慢しに走った

 「何だそれ?」

 「分かんない」

 「そんなくだらないもんより俺はこんなもん見つけたぜ」

帥丙の右手には海までつながる鎖だった

 「鎖?海まで続いてるすごいね」

 「持ってみる?」

 「いいの!?わーい!」

狩生は喜んで鎖を手に持った。すると海の方からの観光客たちが何かに追われるように海から上がり逃げていた

 「逃げろ―!!」

 「サメが現れたー!!」

二人はその騒ぎを気にしなかった。鎖がどれだけ続いてるか見ていた

 「すごいね~どんだけ続いてるんだろう」

海の方を見るとサメのヒレのようなものが見えたが鎖の近い位置ですぐに引っ込んだ。その時、狩生がもの凄いスピードで海に吸い込まれていった。サメが鎖に食いついたからだ

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

鎖は狩生の腕に絡まり取れなくなっていた。狩生はサメに引っ張られて海に叩きつけられている

 「楽しそ―」

帥丙がそうつぶやいた



現代

 「あのあと狩生の奴、アフリカ大陸のどっかで見つかったんだっけ? ミイラ状態で。まあそんなことより楽しい久々のバカンスだ!」

タンスの上の段から腰くらい大きくて黒いバッグを取り出して着替えやゲーム機を入れ始めた

 「楽しみだぜ!! また宝林島で狩生に合えるからな!! ヒッヒッヒッヒ!!」

笑いながら着替えを入れる。ポケットゲームも入れようとしたときにまた電話が鳴った。着信先を見て見ると勝谷からだった。マイクの音量を上げて電話をかけた

「オッス! おら帥丙! よろしくな!!」

バチュン!という音を出して電話が途絶えた。電源ボタンを押してベッドの上に放り出し、旅行に行く準備をした

 「うぜえんだよ博多弁野郎」



翌日

玄関の前で帥丙がサングラスをかけてヤンキーにしか見えないアロハの服と海水ズボンを着て待っていた

 「おっせえなあじいちゃん」

日光に当たって暑い

 「あっちぃ、もういい家に入ろう」

家へ引き返そうとしたら後ろから車が止まる音がして祖父の声も聞こえた

 「待たせたの帥丙君! さあ宝林島へ出発じゃ!!」

 「遅えよじいちゃん! 何時間待ったと思ってんだ!! 3時間だぞ!」

帥丙は祖父の方に振り向き低レベルの怒りをぶつけた

 「悪い悪いのう。帥丙君の家がどこかわかんなくて、ミニストップ行ってたんじゃ」

 「・・・何のためにミニストップ行ったんだよ」

帥丙は真顔でそう祖父に言った

 「まあ帥丙君の分は車の中にあるから大丈夫じゃ。乗れ」

 「え~へいへいわかったよ」

帥丙は祖父の車の後ろのドアを開けた。そこには魔法少女のアニメに出てくる小学生の恰好をした痛々しい恰好をした狩生がいた

 「ヤッポー水人! チョンマゲプリピュ!」

帥丙は思いっきりドアを閉めて何事もなかったかのように引き返した

 「ゴミが乗ってた帰る」

 「なんじゃなんじゃ! 引き返すとはどういう風の吹き回しじゃ!!」

 「じいちゃん。まずは粗大ごみを川に捨ててきてから来てくれよな」

「狩生ちゃんのことか? 確かに粗大ごみじゃけど、この粗大ごみは捨てられないんじゃ。法律に引っかかるわい」

 「そもそもなんで狩生がそんな粗大ごみになっちまったんだよ」

帥丙が狩生にゴミ扱いしたら狩生が帥丙にこう言い返してきた

 「粗大ごみじゃないよ!私は魔法少女狩生ちゃん! 天の使い達が悪党だったから私は逃げてきた! そしたら雲の隅っこから落ちて気が付いたらアフリカ大陸の隅っこにいたの! だから私は悪党の天の使いから世界を救うためにこの格好で悪い奴らをボッコボ・・・!」

 「黙ってろゴミクズ!!!」

ウザかったのだろうか帥丙は狩生にそう怒鳴った

 「おじいちゃん。まずはこのゴミを捨ててきて。じゃないと汚くて乗れない」

 「ダンボールで壁を作ればいいじゃろ。早く持ってきなさい」

帥丙は舌打ちした後、一旦家に戻る。1分経った後、ダンボール4箱持ってきて現れた



車の中

 後ろの席の真ん中に折りたたんだダンボールで二人が顔を合わさないように壁になっていた

 「ねえ水人! ダンボールこんなに積んで何してるの! はっもしかして水人は天の使いの下部・・・!?」

 「おじいちゃん何か飲み物ない?喉乾いた」

 「ほれスターバンクスのミルクラテじゃ」

祖父は帥丙の方に振り向かずにミルクラテを渡した。帥丙はそれを手に取りストローを指して飲む

 「水人危ない!!」

狩生がダンボールの隙間から手を差し伸べ、帥丙が持ってるミルクラテを弾き飛ばした。ミルクラテが帥丙の服にぶっかかって北アメリカ大陸のような汚れが出来た

 「いい度胸してんじゃねえか!!」

帥丙はダンボールをこぶしで破り狩生の襟首を掴んだ後、すぐに離して殴った

 「ぐえっ!このマークは私の天の使いのシンボルマーク! それを飲んでしまうと奴らの思い通りに操られてしまって世界征服されちゃう! 水人は少しだけ飲んだから大丈夫だけど、油断しちゃだめよ!! もしかしたらもう奴らに取り込まれたのかも!」

 「おじいちゃん縄持ってる?」

 「何に使うんじゃ?」



パーキングエリア

 車から降りて狩生を車の天井に縄できつく縛りつけて身動きが取れないように胸から腰まで回した

 「なっなにするの水人! まさか奴らの洗脳で私を連れ戻そうと!」

 「お前が洗脳されてんだよ脳という精神障害に」

 「昔の狩生ちゃんはどこ行ったんじゃ?」

 「くそう! 天の使いめ! 私のいとこまで洗脳しやがって!! 絶対に倒して世界征服を阻止してやる! 待っててね水人!! 私が天の使いをやっつけて君の洗脳を解いてあげるから!!」

 「それじゃあ出発しようぜ」

 「天井が車位のトンネルの時はどうすればいいんじゃ?」

 「そのまま突っ走ればいいじゃん」

帥丙は車の中へ戻る。祖父も狩生を気にせず車に戻り運転を再開してパーキングエリアから出た



新宿第二図書館

 本棚と8個の6人用机が部屋一つ半分に分かれて出入り口側が机となっている。8個の机は縦4個、横2個となっている。松沢が出入り口側の右から三番目の席で1人で勉強をしていた

 優等生のように両手でノートに書いている。右手は国語、左手は数学

 「何やってるんだろう勝谷さん遅いよ」

そうつぶやく。数学が終わり現代社会の教科書をかばんから取り出そうとすると、右手にギブスをしている勝谷が入口から現れた

 「遅いよ勝谷さん。もう数学の範囲終わっちゃったよ」

 「うちば見てなんもゆう事なか・・・・?」

 「何が?新しい服買ったの?そんなことより勉強会でしょ?早く席座って」

松沢は勝谷がどういう目にあったのかどうでもいいらしい。昨日、勝谷の携帯が帥丙の爆音量により、許容範囲を超え、爆発していたのだ。


高速道路

 「水人、ちょっとその赤いCD入れてくれんか?」

祖父が帥丙にハードロックバンドのCDをCDレコードに入れるよう指示した

 「ああ、いいけどなんで?」

 「やっぱ旅行はロックで行かんとな」

帥丙はハードロックバンドのCDケースを開けてCDをレコードに入れた。しばらくすると再生されていかにもクールでスピード感が溢れるハードミュージックな曲が流れ始めた

 「うおおおおおおおおおお!! みなぎって来たぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

祖父はアクセルを思いっきり踏んでスピードを上げた

 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

屋根の上にいる狩生がいきなりのスピードに驚きそう叫ぶ

 「おじいちゃああああん!スピード上げないでぇぇぇぇぇ!!」

車にいる二人は狩生の声など音楽で聞こえなかった

 「お願い車止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 「ん?狩生ちゃん何て言ってるの?」

祖父は狩生の声がほんの少しだけ聞こえたようだ

 「もっとスピード上げろだってよ」

帥丙がそう適当に答える。祖父はノリノリにもっとアクセルを深く踏む。狩生はスピードが上がったのを感じ、物凄く叫びだした

 上を向くと低いトンネルが現れる。ギリギリな幅で入る事が出来たが狩生の目線ではヤスリが高速移動しているように見え、恐怖が増してオペラの様な高い声で叫びだした

 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!」

 「ノリノリじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 祖父はいきなりテンションをあげ、アクセルを更に踏んだ。車のスピードは時速200㎞まで達し、帥丙はシートベルトもしていなく、強力な重力が後ろに変更した様にソファーにめり込んだ

 「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!」

 「見ろ水人! これが男の運転だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

祖父は目の前の車を華麗に避け、4台目の右のトラックはハンドルを引き挙げてジャンプし、トラックの上に乗ってそのまま前進して左の一般車に飛びかかる。一般車は祖父の車が乗っかった後、全部のガラスが割れ、潰された缶のようになった

 それでも祖父は謝りもせずアクセル踏みっぱなしで前へと進んだ

 しばらくしていると、立ち入り禁止と書かれてある横一行に並べられた通行止め看板が現れるが、祖父は音楽に乗りながらそれを吹き飛ばして進む。その先に進むと、緑色に変色している橋に突入した。目で見る限り30㎞もある

 「見えて来たぜ!! あれが宝林島じゃぁ!!」



新宿第二図書館

 「なあ松沢、カンボジアっちどこ?」

勝谷は地理の教科書を広げ、世界地図を見せて質問した。松沢はその教科書を見ずにカナダの方にシャーペンを指す

 「ここ」

 「そこカナダやろ」

 「なんだよ僕が間違えるわけないじゃん」

すると松沢の隣からビー玉が石ノ森の漫画10冊を持ち上げたまま座りに来た

 「邪魔するぜ」

 「あれ?君ってビー玉君だよね?」

 「勉強しに来よると?」

 「漫画読みに来ただけだ。勉強なんてボイコット中だよ」

そう言ってサイボーグ009の一巻を読み始める

 「気が散るけんどっか行っち!」

 「何で?」

 「勉強の邪魔になるからね。人の気持ち考えてから隣に座ってよ。勝谷さんの席の隣に座ってくれない?」

 「仕方ねえな」

ビー玉は松沢の言葉を耳に入れて勝谷の席に座ろうと立ちあがった

 「そん本借りてどっか行け。漫画読むなら家で読んでくれんね」

ビー玉を図書館から追い出したくて、勝谷はそうビー玉に言った。ビー玉は「分かったよ帰ればいいんだろ。ちっ県外者が」と言って席を外し、読んでるページにチケットを挟む

 「あれ?そのチケットって、宝林島のじゃない?」

松沢はそのチケットを見てそう言った。確かに半券には宝林島と書かれてあった

 「ああ、俺がまだ小学5年生の時にお婆ちゃんから貰った一泊二日チケットだ。お小遣いで電車賃払って行ったんだがな。宝林島は6年前に廃島になってた。その時だな、お婆ちゃんを行方不明にしちゃったのは」

 「宝林島って、僕が幼稚園児の時に廃島になったと話題になった島じゃないか。知らない人がおかしいよ」

 「石油が尽きんちゃっち住民どいでん逃げ出したこつで有名ばい」

 「ニュースとか見てねえから気付くべきだったよ。知ってたら行ってなかったのに。今でも宝林島行ってる奴いんのかなぁ?」

「いるわけないよ。宝林島に行く人なんて廃島になってから一人も居なくなったよ。もし廃島と知らず旅行に行く人がいたらその人頭おかしい」



宝林島

 緑色に変色している橋は後ろから襲ってくるようにどんどん壊れ始める。祖父の目の先には、橋が崩れておりその先は海だ。島まで1㎞

 「しっかりつかまってろ!!」

そう叫び、先の無い橋へダイブした。当然届く事も無く海に落ちる。それでもアクセルを踏んで意地でも進む

 狩生は海の中で泡を大量に出して暴れている

 「ひゃっはあ! リアル水族館だぜ!! 絶対に窓開けるなよ!!」

 「え?」

帥丙は祖父の話をよく聞いてなかったらしく、窓を開けてしまった。窓から大量の水が吹き出た

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 「窓開けるなって言っただろうが!!」

ほんの少しあけられて滝のように流れている。祖父は急いで宝林島へ急いだ


 2分後

 ようやく陸に上がる事ができ、宝林島に辿り着つくことができた。開いてる窓から大量の海水が滝のように吹き出ている

 運転席のドアや後ろの席のドアから祖父と帥丙が現れる

 「何すんじゃよ水人。死にたいの?なあ死にたいの?なあ?」

祖父は帥丙に因縁をつける

 「やめてくれよじいちゃん。聞こえなかったんだよ」

 「聞こえなかったんだ!?きちんとお前に伝えたのに聞こえなかったんだ!!お前の耳はロバで出来てんの!?お前の父ちゃんロバなの!?」

車の上に縛り付けられている狩生はピクリとも動いていなかった。二人は狩生の存在を忘れかけている

 「うるせえなあ! ちょっとしたミスで怒るんじゃねえよ!」

それを聞いた祖父はエンジンを開けて帥丙に見せた

 「ミスどころじゃねえだろ! 見ろ! エンジンが水びだしになっちまったじゃねえか! どうやって帰れってンだ糞野郎!」

祖父はそう叫びエンジンを右手で素早く上にあげた直後に振りおろし、少し凹ませた

 「・・・つうかじいちゃん。ここどこ?」

帥丙は辺りを見渡した。どう見ても雰囲気も風景も昔の宝林島には見えない所だった。全て廃墟になっておりゴーストタウンの様であった

 「あ? 宝林島に決まってんじゃろうが。そんなことより車どうすんの?」

 「ちょっと待ってちょっと待って? 宝林島って、観光客賑わってなかったっけ? ここ観光客一人もいないよね?じいちゃんもしかして宝林島の場所忘れた? ボケた?」

 「馬鹿やろう! カーナビを見て運転してたのに間違えるわけ無いじゃろうが! 宝林島は元々こんな島じゃろ!」

 「俺そこまで馬鹿じゃねえぞ? 明らかにこの島、無人島じゃねえか。明日欠席したら殺される行事があるってのにこのスルメ肌老人めぇ!! 場所間違えやがったなぁぁぁぁぁ!!」

帥丙がぶち切れて祖父の数本しか無い髪の毛を握って振った

 「やめろ! わしの髪の毛に触るんじゃねえ!」

 「何言ってやがんだ神経繋がってすらないのに抜いたって死なねえだろが!!」

帥丙が思いっきり祖父の髪の毛を引きちぎろうとした。一本抜けた時に車の方から物が落ちる音が聞こえた。車の方を振り向くと、狩生が馬かがみの状態で海水を口や鼻から水風船が破裂したかのように吐きだした

 「水人・・・・! おじい様を許してあげて! ここは本当に宝林島よ。ここは11年前にこの島の石油が底を尽きてしまって住民たちの生活が苦しくなってみんなこの島から出て行ってしまったのよ。見間違えるのも当たり前よ」

その狩生の説明を聞いた二人は目を見開いた

 「なんで出発するまえに言わなかったんだ狩生てめえ・・・・!」

 「だってこの島は・・・。天の使いの居場所をワープ出来る遺跡があるからよ! その遺跡を利用して天の使いを私の魔法でボッコボコにして世界を救うのだぁぁぁ!!」



1分後

狩生はリンチされたような血だらけの顔をして、立てられた太い丸太に縛り付けられていた

 「他に言い残したい事ある?」

帥丙は車から水が少々混ざったガソリンを灯油ポンプで取り出して空にしたアイスボックスに入れている

 「ごめんなさい調子こいてました巻き添えにしてごめんなさい」

 「謝んなくていいよ。何したってその先の結果おんなじだから」

溢れるまで入れ込んだガソリンを狩生にぶっかけた。狩生は思わず「きゃ!」と叫んだ

 「おじいちゃん、ライターってある?」

 「全部海に流れちまったよ。マッチも水びだしになって使いようもないし」

車のガソリン入れの逆の方に座っていた祖父がそう帥丙に言う

 「何だよ糞が。じゃあこの島で火を起こせる奴があるか探してみようよおじいちゃん」

 「お願い止めて!!」

 「え? なんでわしと一緒?」

帥丙は祖父の方に歩き、座り込んで祖父の右腕を帥丙の両肩に担いで立ちあがった

 「だってこうなってしまったのは全部狩生が原因だろ?それに食料も全部海の中だから魚を捕るやつも探さなきゃな。おまけにおじいちゃんは生命保険や死亡保険を18歳の頃から始めてるって親父が言ってたから都合がいいしさ、ここで置いてけぼりに出来ないよ」

 「水人。お前幼稚園児の時と変わらず本当に良い子じゃ。そこまでわしを親孝行するなんて、いい孫を持った」

「じゃあ網と槍と火がつくものを探しに行こうぜ」

帥丙と祖父はΩの様な崖の中に崖を上る階段が付いている旅館へ向かって行った



新宿第二図書館

 「それじゃあな、俺ぁとっとと帰って漫画読むわ」

ビー玉は二人にそう言って図書館から出て行った

 「気を付けて帰ってね」

松沢はビー玉がこの場から消えた後、すぐ勉強の続きを始めた

 「宝林島かぁ」

勝谷はビー玉の宝林島という言葉を聞き、何やら少し事情を思い出したそうだ

 「ん?」

 「うちのお父しゃんの仕事場の壊そうっちしとる所ばい」

 「へえ、君のお父さんってどこの仕事場?」

 「廃棄処分清掃会社社長」


 

 ボート

  宝林島の北の海から30㎞離れた所に赤くて派手な船が宝林島に向かっていた

 ボートの中には、ボロ雑巾のような服を着た社員らしき10人の人々が椅子に座って待機している

 ボート運転しているのは、名札に社長と書かれている人だ

「あ~いつになったら宝林島に着くんだろうなぁ。5時間も経った」

「仕方無いすよ社長。都庁という税金泥棒からの依頼ですから逆らえないっすよ」

「もう石油も何にも無くなってしまって死人も出た島ですからねえ」

「まずはアメリカ政府から例の物を貰えって言ってたけど、これは何だろうな」

黒い肌の社員が巨大な木箱を見つめてそう言った。そして軽はずみにその木箱に触ろうとした

 「馬鹿触るな!!」

眼鏡をかけた社員が黒い肌の社員に爆発したかのような大声で叫んだ。黒い肌の社員はその言葉に身体を一瞬震わせ、手を引っ込めた

 「な・・・・何すか佐倉部長・・・?」

 「その箱の中は爆弾だぞ。しかも核の方の一番危険な方だ」

 「!?」

「島一つを海にさせるほど大量の有害物質が混ざっている。もしこの船の中でドカンしたら俺達全員骨ごと消され、海に巨大な穴が出来る」

全員巨大な箱から4m離れた

 「それ・・・・どうやって運びこむんすか・・・・?」

 「まずは無事島に着いたら爆発しないように慎重に島の頂点まで持っていく。それが出来たら後は島から脱出して見えなくなった所でこの自爆装置を作動させる」

佐倉部長がポケットから自爆装置を取り出す。ボタンが赤と青に分かれていて青が非常にデカかった。赤いボタンはミニトマトの大きさで青いボタンは玉ねぎの様な大きさをしていた

 「青いボタンは非常ボタンだ。もし謝って押してしまったとしても4分以内もう一度押せば大丈夫だ。もし俺がこれを貴様らに手渡したら赤いボタンは設置完了して十分な距離で離れた時に押せ。物凄く堅いから両手でな」

全員にそう警告した佐倉部長は自爆装置を胸ポケットにしまった。社員達はその自爆装置の説明で目を丸くした

 「カッケエ・・・!」



???

・・・・・・・

足音が聞こえる

誰か来たんだ

この世界に来てから

初めて他の音が聞こえた



宝林島 廃旅館 2F 廊下

帥丙は崖に通じる階段の出入り口の近くにいた。一階は既に探し終えたらしく、次はこの二階に辿り着き、辺りを見渡して火が付くものを探していた

 「火ぃ付くもんどこにあんだ?全部探し回ってもライターもマッチも見つからねえ。槍と釣り針は見つけたけどな」

帥丙と祖父は距離を離れ、引き出しを開けたり下を見渡したりして火がつくものを探していた

 「それにしても、随分来ない間にこんな可哀想な襲撃後みたいになっとるのう。一階のほとんども全部屋天井に埋め尽くされてたけどな」

祖父は割れた複数の穴から外の光が漏れている光景を見て言った。前回この島へ旅行した時は物凄く豪華な旅館でお城のように綺麗だったのだが、今となっては茶色の染みが目立ち、草が所々生えて人が住める環境では無くなった

 「俺は昔来た事あんまりよく覚えて無いけどな。つうかじいちゃん火が付くもん探してる?」

 「探しとるわい」

 「じゃあこの部屋の中調べて来てくんねえ?今にも天井が崩れそうだけどまあ大丈夫だろ」

 「分かった」

祖父は帥丙の言われたとおりに今にも崩れそうな天井の部屋へ向かう。部屋の扉は上半分半U字型に割れてて部屋全体見えていた

 「本当に崩れそうなんじゃが、落ちてこないよな? 大丈夫だよな?」

 「何のためにじいちゃん呼んだの? 早く入って探してこいよ」

帥丙は血も涙も無いような言い方で祖父に言った。祖父は気に食わない表情で上半分ぽっかり空いている扉を足で開けた

 その衝撃で部屋の天井が崩れ、二度と入れないように大量の瓦礫で埋め尽くされた

 「なんだよもう!」

帥丙はあともう少しだったのに!に等しい表情でそう叫んだ

その言葉と同時に、崖を登る階段から平たい石を叩きつけるような音が聞こえる

 「あ?」

 「なんじゃ?」

帥丙達は崖へ登る出入り口の方に向かいそこから外へ出た。その1秒後にまた同じような音が階段の先から響いた

 「野蛮人か?」

 「宝林島にいるわけねえだろボケた? 誰かが遭難して石で火を付けてんだろ。火ぃ借りれるかな?」

二人は音の正体を探るべく階段を上った



新宿第二図書館

 「どんな事するの?」

 「いろいろ。例にすみゃー、いらのーなった島や建物ば意地ばってん処分したりするんばい」

 「生ゴミと大型ゴミは?」

 「にしゃ一人で出来るやろ。うちは一般では廃棄不可能な仕事を引き受ける仕事ばい」

勝谷は会話を終わらせようとそう松沢に言った。その後ペンを上にあげて勉強を再開したら、勝谷の携帯が鳴った。マナーモードにしてあったからバイブのみで済んだ。勝谷の父親からだった。勝谷は携帯を取り出して発信ボタンを押して耳にあてた

 「もしもし、今図書館にいんけど何ばい?」

小声でそう言った

 『ああ淳希か。ちょっとお前に頼みたいことがあってな、荒木さんとこのスーパーコンピュータを処分してくれねえか?』

 「は? うちば今松沢っち勉強しとるばい無理」

 『うるせえなあ勉強なんてどこでも出来るだろうが。訛った声出しやがっていい加減博多弁卒業しろ。母ちゃんだって9歳の時に標準語になったんだぞ』

 「せからしか! うちば福岡から生まれたんばいや。一生訛ったっち構わんばい」

 『まあ取りあえず仕事よろしくな。報酬はやるから』

その言葉を耳にした後、電話を切られた。勝谷はあきれたようにため息をした

 「松沢、悪かばってんお父しゃんに仕事ば押しつけられたとたい」

 「別にいいよ。一人でも勉強できるし」

 「ちが、やから松沢も一緒に・・・」

 「僕は医学大学へ行きたいんだよ。一点でも逃したらものすごいプレッシャーかかるんだからね。勝谷さん一人で行けよ」

 「一人でやっちっちゅうと?」

 「勝谷さんの仕事じゃん。何友達に任そうとしてるんだよ」

松沢はどうも勉強がしたいらしい。一歩も動きそうもない気配だ。勝谷は舌打ちをしながら立ち上がり「腹黒野郎が」と呟いて図書館から出た



宝林島 反対側

 「社長! 宝林島へ到着しました!」

 「え?やっと着いた? よっしゃ佐倉部長! 爆弾を持ち上げる準備だ!」

 「はい! よし貴様ら! 慎重に持ち上げろ!」

社員たちは分かったようにゆっくりと爆弾を持ち上げた

 「ゲートを開け!」

一人余った社員が壁についているバスによくある停車ボタンを押した。すると後ろの壁が外に向かって倒れていく

 30度の坂が出来た

 「いいか! 絶対にしくじるな! しくじったら香ばしい焼き具合じゃ済まないぞ! その爆弾をこの島の頂点に持っていき、それができたらこの船にすぐ戻れ! ルートは知っているな!? 森を抜けたら15mもある崖がある!かなり遠回りになるが崖の端には道がある! そこに辿れば頂上はすぐだ! 人数を確認したら俺がこの自爆スイッチを押してやる! 分かったな!」

社員たちは「はい!」と大声をあげて坂が出来たところから降りて行った。すると一人が捻挫した

 「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 「坂本さん!」

社員全員坂本に目を入れる

 「馬鹿目をそらすな! 爆弾が倒れて爆発したらどうするんだ!」

 「ですが坂本が!」

 「あれほどカルシウム取れと言ったのに低脳な奴だな! 坂本は船に戻ってろ! 俺が代わりに持ち上げる!」

佐倉部長はそう言って坂本が持ち上げていたところに行き箱を左肩を乗せた

 「前進前進! イライラ棒の間隔で持ち上げろ!」

佐倉部長はそう叫んだ。社員とともに森の中に入っていく



宝林島 神殿

 そこはさっきよりも古びた場所で、見た限りコンクリートか石でできている建物であった

 「宝林島にこんな場所あったか?」

 「こんなゲームの神殿のような場所、観光ブックにも書かれてなかったぞ?立入禁止という雑誌には書かれてあったんじゃけどな。野蛮人がいるからかな?」

帥丙たちはその建物に見に覚えがないようだ。この建物から石の音がする

 「とりあえず入ってみるか」

 「火を使ってたらいいんだけどな。儀式とかなんとか書いてあったし。正直ここには入りたくないんじゃけどな」

 「大丈夫だよ。危なくなったときにはいつでもおじいちゃんを盾にするから」

 「本当に心強い孫に育ってくれたのう水人」

二人はその古びた神殿の入口らしき穴に入った。中はあの廃旅館よりもさらに古びた光景になっており天井に半分の穴が開いていた

協会にも見えなくはない。だが十字架は無く、あるのは太陽に顔を描いた変な紋章しかなかった

 「あれ? 野蛮人は?」

どこにも原住民らしき者はいない

 「あ、何かいるぞ水人」

祖父が何かを見つけたそうだ。まっすぐの先の壁に地面に石を叩く人影があった

 「なんだありゃ?」

よく近づいても陰で見えなかった。すると影がこっちの気配に気づき、二人のほうへ走りだした

頭の左のほうにS字型の角が生えた少女のようだった。短い髪で前と後ろの髪の色が異なっている。前は白、後ろは薄青。服は青くてボロボロでワンピースのようにも見える。胸は少しは膨らんでいた

すると少女は何者かに足を掴まれたようにいきなりこけた。右足には鎖が繋がれており、その先の鎖は、集まって柱の様な形となった瓦礫の下敷きになっていた

 「うわぁ! なんだこいつ!?」

 「野蛮人か!? 野蛮人か!?」

祖父はいきなり襲ってきた衝撃でものすごく焦った行動を取った

 すると角の生えた少女はゆっくりと体を持ち上げ、帥丙のほうに顔を向けた。少女の顔はまるで10代のアイドルの様な女の子の顔だったが、人間にはない特徴なものが二つほどあった

 まずは黄色い目の瞳孔が山羊のように貯金箱みたいに横長く、歯がすべて犬の様に尖っていた

 それを見た祖父は

 「うわあ! 間違えた宇宙人じゃった! きっとこの世界を征服しに来たんじゃぁぁぁぁぁうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

壊れたように走り出し神殿から出て行った

 「あ! 待ておじいちゃん!」

 「お願い、この鎖解いて・・・!」

 「まあいいかあの状態だと勝手に崖に落ちて死ぬと思うし。ところでお前火ぃある?」

 「鎖を解いてほしいんだけど・・・・」

 「うるせえ。火ぃつくやつあるんだろ?今それが必要なんだよ。もしかして無いの?」

 「・・・・私誰かに助けてもらうのに1ヶ月も待ったんだよ? だからお願い鎖を」

すると帥丙は持ってる槍で少女の足に付いてる鎖の鍵穴を突いて無理やり外した

 「ほらよこれでいいか? 火ぃあるの? 3度目だぞ」

少女は鎖が外れた足を触って調べていた

 「・・・火を付くやつは持ってない」

 「ちっ! 助けるんじゃなかった。もっと早く答えろってんだバカヤロー」

帥丙は少女を無視して辺りを見渡して火がつくものを探した。すると少女の近くにある瓦礫の隣の5mもある女像の頭にマッチを見つけた

 「お! マッチ見つけた! これで魚も狩生も焼けるよ。よっこらせ」

帥丙はその一段の瓦礫に足を乗せた

 「待って! その瓦礫に乗らないで!」

少女は立ち上がり必死そうに帥丙にそう叫びだした。帥丙は少女の言葉に耳を入れてなく瓦礫2段目に足を踏み入れた



宝林島 反対側 森

 社員たちは重たそうに爆弾の入った箱を持ち上げて頂点まで登って行った

 「一体どこまで持っていけばいいんだ?」

 「部長、少し休憩しませんか?ちょっと肩が痛く・・・」

 「甘ったるいことを言うんじゃねえ! 頂点までいったら好きなだけ休め!」

 「すみません、この爆弾って放射能が入ってたりしてません?」

 「こんなところでくだらない質問なんかするな! 放射能が入ってる爆弾なんて訴えられるわ! これはただ爆発するだけ! 人間に害を与えるのは火傷だけだ!」

社員たちが少し体力がなくなっていくのが見えてくる。すると頂点への道から変な老人が何やら叫んでこっちへ向かってきた

 「うわ! なんか気持ち悪いのがきた!」

 「爆弾防止団体か?」

老人は狂ったようにあわてながら社員たちにこう言ってきた

 「宇宙人じゃ! 宇宙人が地球を征服しに来た! このままだと地球が乗っ取られてしまって世界は全て宇宙人のモノになって我ら人間は奴隷のように扱われて・・・!」

 「なんだただのボケジジイか」

 「気にしないでとっとと頂点へ行くぞ」

社員たちは老人を無視してそのまま頂点へ向かった

 「やめておけ! 宇宙人に食べられるぞ! やつは山羊のような目をしててキバが生えていて・・・!」



宝林島 神殿

 「よっこらせ」

もうすぐで女像の頭の近くに着く

 「早く下りて! 結界が少しでも破れたら大変なことになる!」

 「うるせえ山羊だな。マッチ取ったら降りるよ!」

帥丙はそう大声で少女に伝え、15段目の瓦礫を掴んだ。するとその瓦礫が取れてしまった

 「あ、くそ」

帥丙は別の瓦礫に掴もうとした、その時、さっき取れた瓦礫から怪獣のような紫色で巨大な指が現れた

 「は?」

取れてしまった瓦礫は床に付いた後、割れて砂となった

怪獣のような巨大な指は、穴をこじ開けて広げるように瓦礫を崩し下に落とした、ついには両手も現れ、すべての瓦礫を打ち壊した

帥丙は瓦礫が壊れる振動で落ちてしまう

 「ぎゃああああああああああ!」

運良く少女がマットになってくれたおかげで無傷で済んだが、少女は苦しそうな声を上げた

上を見上げると、見るからにも人型で、頭も人のようだが口裂けで肌の色が紫色だった。おかしいところは腕が怪獣のように3本指で足が鳥の足のような形だった

瓦礫の柱よりも、それ以前に女像よりも3倍の大きさはあった

「ゴォグェアギュァァァァァァアアアアアアアアアアアア」

映画の巨大怪獣のような低い鳴き声が島中に響いた



宝林島 反対側 森

 なにやら変な叫び声が聞こえる。社員たちはいったん立ち止まって上を見上げると頂点から紫色の巨人が叫んでいるのが見えた

 「何だあれ・・・・・?」

 「ほら! 宇宙人が第二形態に入った! この星を征服しようとまずは巨大化してるんじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」



宝林島 廃旅館付近

 紫色の巨人を見た狩生はビビっていた。それでもヒーロー気取りでこう叫ぶ

 「でっでっ出たな天使の使いめ! この私が成敗してやる! ふん! ふん! 縄よ解け!」

解かない

 「仕方ない! こうなったらアイ・レーザァァァァァァァァァァァァァ!」

出ない

 「だったら最終奥義! メロメロクラッシュ破壊光線!」

出ない

 「・・・分かってたよ非現実な技なんて持ってないこと・・・・・・」



宝林島 神殿

 「え? 何これ? どういうこと? どうやったらそうなんの?」

帥丙は自分がしたことに疑問を持つより、何が起きたかそれだけを考えていた

少女はその化け物を見て口を開けながら体が震えていた。のちにそのままの表情で帥丙のほうに顔を向き思いっきりビンタした

 「なんで降りなかったの・・・・? あんたが登らなかったら結界は破れなかった!」

 「いや・・・・だってマッチがあったから」

 「その一つのために結界を解いたの!? このままにしておけばあの巨兵は結界の中で永遠に封印されてたのよ!? それをあんたは・・・・!」

その一瞬、少女は帥丙の左腕に噛みついた。想像を絶する痛さだった。まるでブルドックに噛まれたのと同じ痛さ

 「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!! やめろボケやめろ!!」

帥丙は必死に右手で少女を引き剥がした。肉が少し持っていかれて歯形の跡が5cmもあった

 「てめえ・・・これ冗談じゃすまねえぞ・・・! なんちゅう歯してんだ父親ピラニアか!?」

少女は何やらショックを受けた状態な立ち方で止まらない涙を両手で拭きながら帥丙に背中を向けた

 「あんたに助けて貰うんじゃなかった・・・・! 二度と私に近づかないで・・・・!」

少女はそう言って巨人の振動で穴のあいた壁のほうに入り出て行った

 「ふざけるな! てめえを助けてやったのに腕噛んだ奴が言う言葉か!? 今すぐにでも借りを返してもらうからな変な角野郎!!」

帥丙は噛まれた左手の出血を抑えながら少女を追いかけた



宝林島 反対側 森

 「早くなんとかしてくりゅりゅりゅりゅりゅううりゅryる!!」

 「すっごい映画のセットっすね」

 「最近の映画会社は進化してるなあ。映画の撮影してるなら少し待機した方がいいかな?」

 「話し合って撮影が終わるころに爆破するというのはどうでしょうか?」

社員たちは巨人を見ても何にも警戒心を抱かなかった。すると巨人は右足を上に持ち上げて、それを地上に思いっきり落下させた

その直後ものすごい地震が起きた。地面のヒビが頂点からこっちに凄い速さで追いかけてくる

 「何だ!?」

 「どんだけ金かけてんだ!?」

社員たちはバランスを崩し、ついには倒れてしまった。爆弾の箱はヒビの中に入ってしまい下へ落下するたび幅が狭くなり、マグマギリギリな所で挟まった

 「なんてこった・・・・」

 「これじゃあ任務が成功しないじゃないか」

 「だから言ったじゃろう宇宙人が攻めて来とると・・・・! このままじゃと地球は乗っ取られて人間は奴隷にされて・・・・」

 「黙ってろ老害! これは多分高度な撮影をしてるんだ。きっとCGでは再現できない特殊な着ぐるみや火薬を使ってる。だがこれではもう仕方がない。このまま引き返して爆発させるしか・・・・赤沢はどうした!?」

佐倉部長は赤沢の存在を忘れていた。社員たちが赤沢の名前を叫んで首を回しながら探す。するとヒビの方から赤沢の声がした

 「おーい! おーい!」

社員たちはヒビのほうに顔を入れ、中をのぞいた。赤沢は爆弾の箱の上に乗っていた

 「助けてー! 落っこっちまった!」

 「赤沢か!? おまえ落ちてしまったのか!?」

 「そうなんだよ! ロープを引き上げてくれ!」

 「そっそんなこと言ったって任務が・・・・!」

 「馬鹿か貴様! たとえこんな危険な状態でも任務より先に仲間を助けるのが常識だろうが! 早くロープを出せ!」

佐倉部長は厳しくそう社員に怒鳴った。その時、巨人がこちらの存在に気づき巨大な石の塊をこっちに投げてきた。社員たちの近くの森林が大きな衝撃ですべて遠くへぶっ飛んだ。その衝撃の影響で中くらいの石が佐倉部長の右胸部分を狙った。機械が当たったような音がした。

それを見た社員たちは何かを悟った

 「あ!」

 「まっまさか!」

佐倉部長は急いで右胸のポケットから自爆装置を取り出した。青いボタンが埋まれていて壊れていた

 『非常ボタンが作動します。4分以内に爆弾から3km以内に離れてください』

 「なんてことだ! 奇跡すぎる!」

 「運良く小さいボタンに当たったんだ!」

 「でっですが爆弾が作動してしまったら赤沢はどうやって救助を・・・」

一人が心配そうに佐倉部長にそう言った。佐倉部長の答えは

 「身捨てろ! 人の命より自分の命が大切だ! 赤沢のために命を捨てるのか!?」

社員たちは5秒間、間を開けた

 「そうですね!」

 「やっぱり自分がかわいいです!」

 「おいてめえらふざけんな!!」

「赤沢! おまえと過ごした日々楽しかったぜ! あばよお前のフェラーリ永遠に借りとくからな!」

 「それじゃあ貴様ら! 一刻も早く船へ逃げるぞ!」

 「はい!」

社員たちは船に向かって逃げ出した

 「おい待ってくれ! 俺を置いていくなくそったれぇぇぇぇ! 覚えてろよ俺は必ず蘇ってこの借りを返してやる!! それまでには俺を忘れるな!! きっと戻ってくるぞ!!」

そう叫んで訴えたが、社員たちの気配は全くなくなった。一人残らず船に戻ってしまったのだろう



宝林島 神殿付近

少女は巨人の前に立っていた。巨人を倒そうと挑んでいるのだ

「レプラ、せっかくミアンが自分自身を犠牲にして封印してくれたのに。封印が解かれてしまったね・・・・。大砲でさえ効かない巨人を私が倒せるかな・・・・?」

そう独り言をつぶやいているときに上から巨人の足が少女を踏みつぶそうそした。少女は体からガラスのような2㎡の円型バリアを発動した。踏まれてる割にはすごく辛そうだった

 「絶対無理、無理だけど、やるしかないよね? この巨人を倒さなきゃ!」

最後の文節で力強く叫んだあと、左に思いっきり横転してバリアから離れた。バリアはガラスのように割れて消えた

 そして少女はそこらじゅうにある石を持って巨人に目かげて投げた。当てているのに巨人はまるで効いていない。当たり前だ。石なんかに攻撃を与えられるわけがない

 「えい! えい! 喰らえ! 化け物!」

 それでも少女は石を投げ続けた。その時、巨人が左膝を地面につけて右手をゴルフのように右から降り始めた。少女は即バリアを張るが、バリアがまるで効かなく吹っ飛ばされた

地面に叩きつけられた少女は左の崖に落ちそうになった

 立ち上がろうと両手を使うと左の崖の近くの地面が崩れバランスを崩す。体ごと落ちてしまった。それを回避しようと両手で崖の端を必死に掴んだ

 だがもうすぐで崩れ落ちる。これ以上持たない

 「お願い・・・・・だれか・・・・!」

崖の端が崩れ、少女は落ちてしまった

 「きゃあああああああああああ!」

その時、誰かに手を掴まれて助かった。助かったのだ。掴んでるやつの手をよく見ると、封印を誤って解放した帥丙だった

 「え・・・・?」

 「手え離すんじゃねえぞ!」

 「あんた・・・・なんで・・・・・?」

少女は驚愕した。腕の肉を一部食いちぎったにも関わらず助けに来る奴がいるなんて思いもよらなかったのだ

 「借りを返してもらうまでは死なせねえからな。痛かった分返してもらおうか」

ものすごく怒っているような表情をしている帥丙を見たが、少女は恐怖を感じなかった。助けてくれたから帥丙が怖くないのだ

 「いくらでも返すよ。まずは私を引き上げて。巨人を倒してから何でもするから」

帥丙は少女の思い通り、引き上げようとした。肘が少し曲がった時に巨人が帥丙の近くに左足をドン!とした。その振動で帥丙は少し宙に浮き、帥丙もろとも崖に落ちてしまった

 「うぎゃああああああああああああああああああ!!」

 落下しているときに少女は帥丙にしがみつく。帥丙は何も掴むものがないから焦っていた。このまま落下すれば重症じゃ済まない。急いで掴むものを探した。両手を広げて鳥のように羽ばたいたりもしたが鳥じゃないから飛べるわけがない。

 「くそ! 俺が鳥だったら!」

 その時、左手から何か縄のようなものを掴んだ

 「!」

縄カゴスライダーだった

 「最高の鳥かごに出会った!!」

11年間廃島になってさびても線路は海まで続いていた。左手で掴んでる縄も健全に線路に辿って滑って行った

 「きゃああああああああああ!」

 「11年間待ち続けて久しぶりに乗れた縄カゴスライダー気持ちィィィ! しっかり掴まってろよ!」

帥丙がそう興奮して叫び終えると、終点からあと50mの所で巨人が線路に目かげて岩を思いっきり投げた。帥丙から20m先の線路が岩にぶつかって折れ、少し上向きに折れて無くなった。

 「ん?」

そのまま線路から脱退してしまって思いっきり遠くへ飛んで行く

 「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!」

その勢いで船の上に落っこちてしまう



船の中

 「早くしてください! 爆弾があと20秒で爆発します!」

 「分かってる! 今エンジンをかけたところだ!」

 佐倉部長が運転手の社長に早くしてほしいと必死に伝えているときに後ろの社員が待機している所からものすごい音がした

 「何だ!?」

佐倉部長はその音に気づき、すぐさま社員が待機している所に向かった

 「どうした!? 何の騒ぎだ!?」

その光景は、天井に大きな穴が空いてた他に横に抱き合ってる男女が倒れてる4人の社員の上に乗っていた。少女の角には一人の社員の背中に刺さっていた

 「な何だお前ら!!」

そう叫んだときに船がいきなり動き出す。佐倉部長は少しバランスを崩したがなんとか倒れずに済んだ

 「おお水人! お前生きてたのか! あ・・・! 宇宙人だぁぁぁああぁああああ!!」

祖父は船の中に社員たちに助けられていた。少女を見た祖父は発狂しだして窓を突き破り海の中に入って行った

 「ん? ここどこだ?」

まずは帥丙が立ち上がる。後に少女が咳払いしてゆっくりと体を起こした

 「君たち、もしかしてあの島にいた者か?」

 「ん?ああまあ親戚のくそアマのせいであの島に連れていかれたんだよね」

 「ここ・・・・どこ?」

 「ああ、ここはボートの中だ」

 「ボート? 何それ?」

少女はボートのことがよく分からなかったらしい

 「あ! そういえば巨人!」

少女は割れた窓に向かって急いで顔を出して島の様子を見た。その1秒後、島が大爆発した

巨大な半円型の光が島を包む。何か棒に括られた少女のようなものも一瞬飛んで行ったが

少女は気付かなかった。やがて島は光が消えていくにつれ、巨人もろとも姿を消した

少女は何が起きたか分からなかった



新宿 民家 2階 男性の部屋

 「こりゃあでっかい廃棄物やね」

 「うん。いきなりハードディスクがオジャンになって起動しなくなったんだ。健全だった時は役に立ったのに壊れてしまっては超邪魔ものにしかならないからね」

 「分かりました。父ん社員ば呼び出してからお運びいたするけんが料金ばお支払くれんね」

勝谷は相手に右手の内側を見せた。料金のお支払という意味だ

 「慎重に運んでよね。ちょっとでも衝撃を起こすと爆発しちゃうから。一号機でそうなったから気をつけて運んでよね」

 「はいはい」

男性が財布を取り出して10万位財布から出して勝谷に渡そうとした。スーパーコンピュータからドラム缶を思いっきりたたく音がした

二人はスーパーコンピュータを見た。人が括られていて燃えている木の棒がスーパーコンピュータの埃を出す部分にぶっ刺さっていた

 「どうも空から飛んできました! いきなりだけど縄を解いて!」

 「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

二人は一刻も早く玄関から逃げて行った。狩生は「あ!待って!私を助けて!」と呼びとめようとした。その直後に、外からの風景では玄関に二人が現れた後、一般住宅が大爆発を起こした。二人は爆発の犠牲になった。0.5秒後、跡形は黒い煙しか残らなかった



ボートの中

「え? 何これ? どういうこと?」

「ああ、政府からあの島いらねえという依頼が来て強力な爆弾で処分しろと言われたんだ。だから言われたとおりに爆弾を設置した」

別の社員も窓を開けて島のその後を見た

「すっごい威力っすね。団体が動きだしそうなレベルっすよ」

その後、社員たちが大笑いした。角が背中に刺さった男以外は

帥丙は疲れたように壁にもたれかかった

「あ~疲れた。宝林島は11年前に閉鎖するわこいつに噛まれるわ巨人に襲われるわ、一番楽しかったのは久しぶりに縄カゴスライダーに乗った事だわ。そういえば、おい角ガキ。お前が俺にやったこと、ここで借りを返してもらおうか?」

少女は一瞬ぴくりと反応して、帥丙のほうに向かった。帥丙の前にしゃがみこみ少し悲しそうな顔でこう言った

「約束は約束だよね。何でも受けるよ。殴っても蹴ってもいい、あんたの好きにすればいいよ。私耐えるから」

 その時、帥丙が右腕で壁をドンとデカイ音になるようにぶっ叩いた

社員たちは驚いて帥丙のほうに顔を向いた

「誰に口きいてんだてめえ、ご主人様だろ?今日からお前は俺の奴隷だ。実家に着いたらまずメロンパン買って来いや」

帥丙はえらそうな態度で少女にそう言った。少女は次第にに泣き出していく

「泣いたってダメだよ?好きにすればいいって言ったんだから」

「ううん・・・・・・嬉しいの。私ね、前の世界では家畜だったから・・・・。いつ殺されるんだろうって、いつも思っていた。そんな中、私をそこから救い出してくれたレプラっていう人に、君を見たら生きているように見えて・・・・・。」

周りは重い空気へと変化する。一人の従業員が「何言ってんのこの子。痛いなぁ・・・・・。」と呟いた

「おいおい泣くな嬢ちゃん。船が汚れるだろ?」

佐倉部長がそう泣いているチムピスに注意した

「別にいいだろ。こいつ男じゃねえんだし」

帥丙は佐倉部長に言い返した

「それにこいつ別に奴隷になること嫌がってないしな。おい女。名前まだだったな」

チムピスは、右腕で両目に溢れている涙を拭き取り、帥丙の方に顔を向けた

「私の名前はチムピス。チムピス・ペイントだよ。私、ずっとご主人様の為に役に立つように頑張るから。よろしくね。ところでメロンパンって何?」

第6話 終わり


投稿範囲の話はこれで終了です

次は投稿範囲に入らなかった三話分を投稿していこうと思います

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