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第十話 複数の帥丙

お久しぶりです。新しい話書いてみました。

 大量の機械がゴミのように置かれている狭苦しい部屋で一人、鉄でつくられた巨大な輪を弄っている老人がいた。

手を休まず巨大な輪の右端を修理している時に、勝手にこの部屋へ侵入してきた若い青年が姿を現し老人に話しかける。

 「・・・それは何でしょうか?」

 「・・・・・君には・・・・・関係のない・・・・・ことだ」

老人の声は弱弱しく、まるで風邪をひいているかのようにガラガラだった。

老人が事が終わったかのように輪から離れ始める。すると、輪の周りのミゾから青い光が放ち、輪の中から青い渦が現れた。

 「うわ!!」

 「・・・・成功だ・・・・・。」

老人がその渦の中へ入ろうとしている。青年は行かせないと老人を呼びとめた。

 「待って下さい!! 私は夜月新聞の者です!! この廃れた病院で不審者の目撃情報が入ってきているんですがその不審者は貴方ですか!?」

老人は足を止めて青年の方へ向いた。

 「・・・・・この六十数年間、誰もその事に・・・・・・・・気づいてなかったのかい?」

再び前を向き、渦の中へ入ろうとする。

 「待って下さい!! 話はまだ終わっていません!!」

青年が再び呼びとめようとすると、老人はそのまま渦の中に入って行き姿を消した。

渦が消滅し、巨大な輪は黒い煙を出してきた。焦げ臭いにおいが部屋の中に広がる。

 「なんなんだこれは・・・・?」

その時、輪の煙の影響か周りの機械も黒い煙を放出してきた。

 「ん?」

青年はその事に気づいていない。

巨大な輪は赤い光を出すとともに周りの機械も赤い光を出し、老人がいた部屋は大規模な大爆発を起こした。



フジシマ高校


 勝谷が携帯を取り出してあるサイトに手元に持っているクローバーの様なマークをしたカードの下に記載されているコードを入力している時、帥丙と松沢が後ろから現れる。

 「何してんだ勝谷。」

帥丙はつまんなそうな顔でそう勝谷に問いかけた。

 「ポイントば集めとーだけばい。」

 「あっ知ってるこれ。確かクローバーっていうデパートで買い物したら貰えるカードでポイント集めるとお皿が手に入るんでしょ?」

 「へえ~。」

松沢は知っていたようだが帥丙は全く興味が無い反応を見せた。

 「でも勝谷さんがそれ集めるなんて珍しいね。そんなにそのお皿が欲しいの?100円ショップで良いじゃん。」

 「にしゃには関係無かやろ。あいらしかけん欲しかだけや。」

勝谷は少しイラっとした表情を見せながらそう言い返した。すると、紫記羽が自慢したかそうに帥丙の方へ歩みでて上から目線で話しかけてきた。

 「へえ~。でもボクはそんなお皿よりも金でできた高級品の食器がたーんまりあるのよ?そんなポイント溜めて手に入れる貧困な皿よりずっと価値があるわ」

 「へえ~そうなの。くれるなら評価するわ。」

帥丙が真顔でそう返す。

 「はあ!? くれるわけないじゃないアンタみたいなチンピラに!!」

 「じゃあ話しかけてくんじゃねえよ俺達は勝谷と話してんだ。自慢話なんて自己満足誰が聞きてえよ?お前が金持ちだってこと誰だって知ってんだからな?」

紫記羽は涙目を浮かべながら下を向き、そのまま自分の席へ戻った。友達の輪に入りたかったのだろう、失敗に終わったようだ。

チャイムが教室中に鳴り響き、帥丙達は自分の席へ戻る。

教師の田ノ村がドアを破壊し、教室へ入っていく。帥丙にとっては見慣れた光景だ。

 「今日は粉砕・・・か。」

 「はい、国語の103ページを開いて。え~とあっこれだ。『何故人の物を壊してはいけないのか』」



放課後


 玄関で自分の棚から靴を取り出して、靴を履き替え松沢と勝谷三人で下校した。

 「そういえば帥丙君、この手袋いらない?」

 「あん?」

帥丙は松沢が差し出した黒い手袋を手に取った。すると、かなりの電気が帥丙の指にきて「きゃぁ!!」と高い声を上げながら思いっきり放り投げた。

 「ああ、投げないでよ~。」

松沢がその手袋を取りに戻ると、帥丙は目を見開いた状態で松沢の襟首を掴みだした。

 「お前喧嘩売ってんのか!?」

 「何が? イタズラグッズ欲しいか聞いただけだよ?」

 「だったらまず最初に電気来るって言えやクソヤロオオオオオ!!!」

 「びっくりしたー。高か声上げて何があったかて思うたばい!」

 「まあまあこの手袋、多分帥丙君気にいると思うよ?」

松沢は帥丙の手を払いのけて手袋を帥丙に渡した。帥丙はあまり嬉しそうではなかった。

 「嫌な奴の股間握って急所を感電させるのも面白いよ。」

 「じゃあお前からやってやるわ。」

さっきの電気で帥丙はキレたのだろう。すぐさま手袋をはめ、松沢の股間を握ろうとする。だが失敗に終わった。松沢は帥丙の腕を曲げさせ帥丙の顔を掴ませた。電気が顔じゅうに流れ帥丙は悶絶する。

 「あああああああああああああああああ!!!」

顔を手で煽ろうとするが手袋を脱ぐという行動が思いつかない為、何度も何度も顔に電気を流して叫び続ける。

 「わあ~帥丙君手袋しながら顔当ててる―面白ーい。」

 「おい帥丙! 早う手袋脱げ!」

勝谷は急いで帥丙の手袋を脱がし、木で出来たくまちゃんアクセサリーを帥丙の顔にあてた。

 「お前残酷ばい・・・」

 「僕何もしてないよ?」

松沢は何か心を持ってないように見える笑顔をしていた。



帥丙の家 玄関


 「くそったれあの野郎・・・覚えてろよ。」

帥丙が松沢を復讐するかのようにブツブツと独り言を呟いて靴を脱ぎ、自分の部屋へ入る。

部屋の中にはTシャツと青縞パンしか着ていないチムピスが一人でトランプをしている。一人7ならべのようだ。手元にはトランプ全部持っている。

 「あっおかえりーご主人様。」

 「お前それ楽しいか?馬鹿なの?」

帥丙はチムピスに対し冷たい返しを出した。

 「7並べしてるんだよー。ご主人様もやろうよ~。」

 「なんで今時トランプなんか遊ばなきゃいけねえんだ。ネットゲームやるわ。」

 「ネットゲーム?」

チムピスはネットゲームを初めて聞いたので首をかしげた。帥丙はチムピスに何も言わずカバンをベッドの上に放り投げ、パソコンの電源を点けて『ワールド・ウォー・タイタン』をプレイする。ゲーム画面は斜め上から見た町にデフォルメされた騎士と戦士とモンスター騎士が俳諧していた。

 「わ~。なんか私が住んでた世界とちょっと似てるね~」

 「お前の世界なんて知るかよ。」

チムピスを気にせず帥丙は『マグマウンテンのマグマドラゴン倒しに行こうぜ』と書きこむ。すると帥丙のアバター(パッとしない騎士)の頭の上に吹き出しが現れ帥丙が書きこんだ言葉が出てくる。チムピスはそれに興味を持ち、帥丙の肩に顎を乗せて画面を見る。

 「え? 騎士さんの上から何か変な枠とメッセージが出た。」

 「おう俺の肩に顎乗せるの止めろや気が散るだろうが。」

だが画面上に存在する他のアバターの返しは『一人で行け非課金』『300万ゴールドならいいよ~』『お前が女の子なら考えてやる』『へぇ!? マ○コ見せてくれませんかあ!?』という辛辣なコメントばかりだった。

 帥丙はそのコメントに対し『あら、私の為に戦ってくださる人たちがこんなに! 倒した人には私の下着をプレゼントいたしま~す!』と気持ち悪い書き込みをした。だが周りのアバターは図ったかのように『よおオカマ!』『お前が男だってこと始めから知ってんだよ』『やっぱ1000万ゴールドだ。払えば考えてやる。』『へええ!? ア○ル見せてくれませんかあ!?』と帥丙を煽った。

 「え? ひっ酷過ぎるよこの人たち。初対面のご主人様に対してなんでそんな事が言えるの?」

 「まあ分かってたけどなこんな結果になるの。」

帥丙は真顔でパソコンの電源を消し、ベッドの上で横になろうとする。だが1階から母の声が廊下から鳴り響く。

 「水人~チムピスちゃ~ん。御飯よ~。」

 「あっはあ~いお母様!!」

チムピスはウキウキしたテンションで部屋から出ようとすると帥丙がベッドから起き上がらずにチムピスに話しかけた。

 「後で食うって言っとけ。俺は今いらん」

 「どうして?」

チムピスは帥丙の方に振り向き不安そうに言う。帥丙は、

 「食欲無いからに決まってんだろ。」

と言い返した。チムピスは「分かった」と返し、部屋から出て行き母親の元へ向かった。

 

 帥丙がベッドの上で携帯を弄って30分が経つ。階段を上る音が聞こえ、帥丙の部屋のドアが開く。

 ドアの前に居たのは帥丙の父親、帥丙明人だった。

明人は不安そうな顔で帥丙に話しかけた。

 「なあ、お前夕食食べないのか?」

 「食欲無い。後で食べる。」

 「そうか。今日の夕食・・・クローバーで買ったイナゴ50パックだったから食べないのかなと思って直接お前に聞こうと思ったんだ。」

イナゴ10パックを食べさせようとしたのか?帥丙はガバっと起き上がり「はあ!?」とキレた。

 「何でイナゴなんて買ってきたんだよ!!」

 「いやだって・・・安かったし。300円だったし商品10個でカード貰えてポイント溜まるし・・・」

 「親父あの皿欲しいのかよ!?」

 「欲しいよ! だってあれ大麻で作ったお皿だぞ!! 日本じゃ違法だった大麻が合法的にあるんだ!!」

信じられなかった。まさかあの親父が大麻の為に応募してるなんて・・・。

 「イナゴなんて食わねえ。勝手に集めてろよ。」

帥丙はそう言って再び横になり携帯をいじる。明人は「そうか。じゃあ残りのイナゴはチムピスに食わせるか」と言って下に降りて行った。



翌日


 帥丙はベッドの上であぐらを掻きながらまだぐっすりと寝ている。チムピスも帥丙を抱き枕のように抱きしめてスースー寝ていた。

二人の幸せな睡眠時間を奪うように1階の明人が大声を上げた。

 「ふぅぅぅぅあああああああああああああああ!!」

帥丙は少しイラつきながら身体を起こし、頭をかく。

 「やべえ今日締め切りだってのにポイントが足りねええええええええええええええええ!!」

 「朝からうるさいわよ貴方!!」

 「叫ばずにいられるかあああああああ!!」

部屋の外から階段を乱暴に登る音が聞こえる。だんだん大きくなっていきドアが乱暴に開かれた。それと同時にチムピスがびっくりして起き上がる。

 「水人! 今日の夕食チキンラーメンだ! それが一番安い!!」

それを帥丙に伝えた後、思いっきりドアを閉めて急いで階段を下り、玄関のドアを開けて出て行った。

チムピスはどういう状況か全く理解できなかった。

 「・・・どうしたのお父様?」

 「それを伝える為だけにわざわざ起こしたのかクソ野郎」


 明人は車を出して急いでクローバーに向かっている。前にいる車も抜き、渋滞の時は別の車道に入り死に急ぐ。

 「待ってろよ。俺の大麻ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

前に来る車をハンドルやブレーキでコントロールし、アクション映画のように華麗に避けながら目的地へ向かった。

トラックの運転手が炭酸水を飲みながら運転していると前から逆走してる車がぶつかろうとしている。

 「あっぶねえええええええええええ!!」

運転手は避けようとハンドルを切った。だが切った先にはファミリーレストランと近距離だった。



ファミリーレストラン


 「お待たせしました~。お子様ランチでございます。」

窓際に居る3人家族の前に店員がお子様ランチを持ってきて4歳児と思しき男の子の前に置いた。

男の子がトラックの形をしたカップの中に大好きなスパゲティやハンバーグ、プリンがあってとても喜んでいる。

 「うわ~い!トラックのお子様ランチだ~。」

男の子は前にあるスプーンを片手に取り、まずはハンバーグから食べようとすると窓からトラックがガラスを突き破って突っ込んできた。

両親は全ての骨が砕けゴム人形のように吹き飛び、男の子は身体がバラバラになり頭部が回転しながら飛んでいく。彼の頭がふと突っ込んできたトラックに目をやると次第に笑顔になっていた。

 (うわ~い。本物のトラックが映画みたいに出てきた~。)



クローバー デパート


 明人は走りながら麺コーナーの棚にあるチキンラーメンを10個籠の中に入れて早くカウンターに向かった。店員が落ちついて会計してるのが遅く感じたのか、明人は店員の襟首を掴み「マジで早くして!」って伝えた。

 会計が終わり、すぐ携帯を取り出し貰ったカードのコードを急いで入力した。それが終わるとお皿の写真の下に交換と書かれたボタンをタップした。

ポイント全てを交換しますか?と表示されると「当たり前だ馬鹿野郎!!」と必死に何度も『交換します』をタップした。だが何故か弾かれてしまい交換できませんと出てくる。

 「嘘だろ!? 一体何が起こってるんだ!! 締め切りは明日なのになんで弾かれなきゃいけないんだよ俺だって生きてるんだぞ早く完了しろやあ!!」

画面をくまなく見て、何が足りないのか調べてみる。だがどこにあるのか見当たらない。もう一度『交換します』をタップしようとする。

そこで明人は見落としてたのを見つけた。それは、『上記に同意する』のチェックだった。

 「え・・・?」

明人はゆっくりと『上記に同意する』をタップし、チェックが入った所で『交換する』をタップ。すると『完了しました。翌日にお届けします。』と出てきた。

それが出てきた瞬間、明人は出口を見つけたかのような感動を感じながら出入り口の方へ向かう。外へ出た後、明人は青い空と広がるコンクリートジャングル、車が走ってる光景を見て自由というのを感じ、全身に外の空気を感じる為に両手を広げた。彼の頭の中には壮大な音楽が流れていた。

 「俺は!! 世界を!!! 見つけたぞおおおおおおおおおおおおお!!」

明人は叫びながら自分の車まで走っていく。

 「日本で大麻を手に入れたああああああ!! 合法的にいいいいいいいいいいい!!!」



帥丙の家 居間


 「お父様、何してるの?」

チムピスが学生服に着替え終えてカバンの中に弁当を入れる。そこで明人が大麻の形をした置物をテーブルの上に置いていた。

 「大麻がウチに届くんだよ。」

 「大麻ってなに?」

明人は携帯を取り出し、チムピスに応募したお皿の画像を見せた。

 「お皿じゃん。」

 「ただのお皿じゃねえ。大麻で出来たお皿だ。これでどんな食品も大麻に付着し、気持ち良くなれるんだ。」

 「知ってるぞこれ。勝谷が欲しがってる皿じゃねえか。アイツ、ラリりてえのか?」

帥丙が言うと、明人はこう返した。

 「まあ社畜地獄の世の中じゃ嫌になるんだろ。お父さんもそうだ。早く学校へ行きなさい。お父さんは部屋中を大麻グッズに飾りたいんだから。」

帥丙は「あっそ。」と言い、カバンを持って居間へ出ると玄関で母がハイヒールを履くのに苦戦していた。「ふん! ふん!」と強引に押しこんでいるとようやく入って重い腰を持ち上げた。

 「また太ったのか。」

 「うるさいわね! アンタもお父さんに言いなさいよ! 大麻グッズ飾るの止めてって!!」

 「何で? どうせ捕まるし親父いなくなれば一石二鳥じゃね?」

 「何が一石二鳥よ! 大黒柱を失ったら暮らしていけないわよ!?」

母が怒鳴ると居間から明人が大声で叫んだ。

 「そうだぞ水人!」

 「アンタは早くそんなもん全部捨てなさい!!」

明人は「ヤダ!!」と言い返す。

 「ああそうなのもう好きにして! 後で取り返しがつかない事になっても知らないから!!」

母は怒ってドアノブを握り玄関のドアを開けようとした。その時、大量の銃弾がドアを破壊し母を蜂の巣にした。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 「きゃあああああああああああああああああああ!!!」

帥丙とチムピスは急いで居間へ逃げた。それでも銃声はまだ続いて居間から見える壁が銃によって引き裂かれた傷が次々と現れる。

 「な・・・なんだ!?」

銃声が止むとズカズカと何者かが家の中に入っていく音がした。走る音がこっちに近づいてくる。チムピスは帥丙の後ろにしがみついて怯えていた。

サブマシンガンを持った軍服の様な男が構えながら二人の前に現れた。

 「そこにいたか帥丙明人!! てめえをぶっ殺して世界を救う!!」

明人はビビりながらテーブルの下に隠れた。

 「お・・・俺を撃つのは止めてくれ!! お願いだ!! 命だけは助けてえええええ!!」

あまりにも情けない姿だったが帥丙は目の前に銃を持った男がいてそんなこと気にもしてなかった。怖くて膠着して動けない。

 「み・・・水人! お父さんを助けて!!」

帥丙に助けを求めると銃を持った男はさらに激怒し天井を乱射した。チムピスは怖くて叫び出した。

 「なぁぁぁあにがお父さんを助けてだ出来そこないの人間がぁぁぁぁぁぁぁ!! てめえのせいで自分の息子がてめえを殺さなきゃいけなくなってんだよゴルァァァァ!!」

 「息子・・・? 黒潮か!? やせたなあ~。水人助けて!!!」

父が黒潮が帰ってきた事に懐かしがった後、再び情けない声を出して帥丙に助けを求めた。すると銃を持った男は床を思いっきり踏んだ後こう叫んだ。

 「俺は未来からやってきたてめえの息子、帥丙水人だ!!!! ここから10年後に大麻の皿のせいで親父の店に来た客は全員大麻賛同過激派になって大規模な内戦を繰り広げる事になった!! そして俺は政府に家族から切り離され、過去の親父を殺すことだけに育てられた暗殺兵士になったのだ!!」

3人は話が見えてこなかった。未来からやってきた帥丙が内戦を終わらせる為に親父を殺しに来た? そんな馬鹿な話があるのだろうか?

 「嘘つかないで!! ご主人様が貴方みたいな人殺しになるわけないじゃない!!」

 「未来じゃこうなるんだよ分かるよな?」

未来の帥丙がチムピスに銃を突きつけて言う。チムピスは更に帥丙の後ろに引っ込んだ。

このままじゃ殺される。帥丙は物事を掴めてないが何もしないよりはましだと思い言いたい事を考えて必死に口を動かす。

 「おっおい待てよ未来の俺・・・。」

未来の帥丙は帥丙の足元に銃を突きつけ乱射した。帥丙は叫びながら後ろに避ける。チムピスは帥丙が後ろに下がる直前に両足を帥丙の腹に組んだ。

 「なんだ!!?」

未来の帥丙は恨みが籠った怒鳴り声で帥丙に質問した。帥丙は膠着する身体に抵抗し、未来の帥丙に喋ろうとする。

 「過去に行けたんだろ? だったら親父がデパートに着く前に阻止したらどうなんだ?」

 「いい!! この場で殺した方が早い!!!」

再び明人の方へ銃を向けた。

 「ここの水人の意見に賛成だ!! ここの水人の意見に賛成だ!! そうした方が平和的に終わるだろ!? お前は平和を取り戻す為に戦ってる!! そうじゃないのか!?」

 「平和的に終わるだと!? それだったらアラブ共和国との戦争もとっくに終わってる筈だ!! 解決は人を殺すしかねえんだよ!!」

明人の方に乱射する。が、明人はその玉を全て必死に避けた。

 「でもそれで解決したら親父もおふくろもいないで俺達どうやって生活すんだよ!! 未来の俺あほだな!!」

帥丙は未来の帥丙に力いっぱい怒鳴った。

 「養護施設ってもんがあるだろ。そこで社会に向けて頑張れや。」

未来の帥丙は乾いた表情で帥丙に顔を向けて言った。その心の無い言葉を聞いたチムピスは帥丙から降りて何かを訴えようとする。

 「やだよ!! 貴方がお父様を殺して私達は何が残るの!? お母様も殺して私とご主人様だけの生活なんてやだ!!」

 「頼むから親父がデパートへ行く前に阻止しに行こうぜ? お前のタイムマシンはオンボロか?」

二人の意見を聞いた未来の帥丙は少し悩んだ。今、明人を殺したら母は戻ってこず帥丙とチムピス二人で養護施設暮らしになるが両親を失った傷は戻らないだろう。ただ、俺という未来の帥丙がいたということで政府で管理されているタイムマシンを強奪し、俺を殺しに来るかもしれない。だから腰につけてる政府から貰ったタイムマシンで平和的に明人をデパートに行かせないようにする。そうすれば未来の帥丙がたどった過酷な運命は辿らず平和になるかもしれない。

未来の帥丙は持ってる銃を背中に仕舞った。

 「過去に行けば元に戻るんだな?」

 「当たり前だろ。」

帥丙がそうツッコむと未来の帥丙は腰につけてるタイムマシンを取り出し、起動させた。

 「親父! この時間帯からいつ頃デパートに着いた!?」

 「えっ? 確か3時間前。」

タイムマシンの画面に表示されている今の年代と月日と時間を3時間前に戻し、下にあるマップを指で動かしクローバーデパートがある場所に二回タップした後、右下にある丸い緑色の表記をタップした。緑色から青色になり未来の帥丙の前から1m離れた場所に渦の様なものが現れた。やがてその渦は次第に薄れて別の景色が見え始める。

 「うわ! クローバーデパートだ!」

一番最初に驚いたのはチムピスだった。他の二人は唖然としていた。その時、映し出された先から3時間前の明人らしき人物が何やら急いでいた。それを見た未来の帥丙は銃を取り出し構える。

 「待て待て待て!! 俺が説得するから止めて!!」

明人は命の危険を感じて焦りながら未来の帥丙に叫んだ。急いで映し出されたクローバーデパートの方に走り出し、中へと入る。

そして明人は過去の明人に慌てながら告げる。

 「やめろ!! ポイントを集めるな!!」

過去の明人は立ち止まって平然とした態度になる。

 「ん? お前、俺とそっくりだな? もしかして俺の料理が美味かったから整形手術で俺を真似たの? いや~人気者って辛いね~。」

 「馬鹿野郎!! 俺は未来のお前だ!! お前がデパートで買い物してポイント溜めてあの皿を応募したせいで未来の帥丙が俺を殺しに来るんだぞ!! 今すぐ買い物を止めて帰れ!!」

明人は必死に過去の自分に告げたが相手はおもしろおかしく笑いだした。

 「はっはっは。悪い冗談だな。お前も皿が欲しくてそんな事言ってるのか? お前も買い物して応募すれば良い。」

 「ああ皿は当たったさ、3時間後にとんでもないことが起きたさ!! 服を見て何も思わないのか!?」

どんどんど怒鳴り声を上げるが、相手は深いため息をした後オニの様な表情で言い返してきた。

 「悪いけどこっち急いでんだ!! 落ちついて話そうと思ったけど我慢の限界だ!! 早くどっか行って!!」

過去の明人は走りながらラーメンコーナーの方へ向かって言った。明人は過去の自分に目を追って唖然としていた。それを見た未来の帥丙はデパートに入ってきて怒った顔で明人に声をかけた。

 「おい!! 何してんだクソ親父!!」


 「あれ過去の俺じゃ無かったかも。」

 「お前何言ってんだ!! 正真正銘俺の親父だぞ!!」

 「いやだってアイツ全く理解できてねえんだぞ!? 俺だったらこの状況分かってる筈だ!!」

未来の帥丙は父の馬鹿発言にかなり呆れ、右手に顔を覆った。

 「もういい分かったよ。強硬手段だ!!」

いきなり銃を取り出し天井を乱射、2秒後に刺身コーナーや生肉コーナーを乱射した。その場にいた人達は必死に逃げ出す。

 「おらあああああああ!! 全員出て行きやがれえええええええええええ!!!」

まるでテロだ。未来の帥丙が銃で辺りを無茶苦茶撃ちまくって大勢の人も撃ち殺し蛍光灯も所々当たって割れていた。

暴れたままラーメンコーナーへと向かう未来の帥丙。そこで過去の明人が出口の方へ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と叫びながら逃げて行く光景を見た。

 「これでよし。おい親父行くぞ!!」

未来の帥丙は自分の家の中が映し出されている渦に入っていった。明人は呆然としながら渦に入っていく。


 家の中はまだ未来の帥丙が撃った弾で荒れ果てていた。帥丙とチムピスは立ってる状態で全く動いていなかった。

 「おい・・・あれで良かったのか?」

帥丙が未来の帥丙に問いかける。

 「これで皿が届くのは免れた。もうすぐ俺も消える筈だ。」

未来の帥丙は過去の自分に言い、立ち止まって消えるのを待った。

10秒後

20秒後

30秒後

一分たっても全く消える気配が無かった。

 「未来のご主人様消えないね・・・。」

未来の帥丙は自分が消えない事にブチギレ、椅子を蹴りあげた後蜂の巣にした。

 「どういうことだ!! 親父は買うのを止めたんだぞ!!!」

再び明人の方に銃口を向けた。

 「てめぇぇぇ!! あのデパート出ていった後、別のデパートいきやがったなああああああ!!!」

 「ちっちがう!! あれは多分俺じゃ無かったんだ!! だって読み込み悪かったじゃねえか!!」

明人はそう未来の帥丙に納得させるように言ったが逆効果だった。更に未来の帥丙は鬼の様な表情になる。

 「読み込み悪いのは元からだろうが!! 今ここでお前の人生に区切りつけてやるぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 「ご主人様止めて!!」

チムピスは未来の帥丙に向かって父を殺すのをやめさせるよう叫んだが、今の帥丙が返事した。

 「あっ?」

 「違う!!」

その時、巨人が踏んだような揺れが帥丙達を襲った。

 「なっ何だ!?」

明人は今の揺れに大変驚く。未来の帥丙は辺りを見渡し警戒しながら確認した。

 「廊下からだ・・・。」

廊下からだと気付いた未来の帥丙は慎重に音を立てず居間から顔を出して確認した。玄関には母の血だらけの死体だけで誰もいない。後ろの方を確認した。サイバーパンク風な人型ロボットが立っていた。

何かコーホーコーホーと悪の皇帝の様な呼吸リズムが奴の頭から響く。

 「ブルァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

人型ロボットは未来の帥丙に向けて走ってくる。未来の帥丙はそれを見て即座に頭を引っ込めて三歩下がり銃を構えた。奴の姿が見えた後、すぐに銃を乱射するが全くびくともしない。

 「なっなんだこいつ!?」

帥丙は人型ロボットの姿を見て凄く驚いた。

チムピスは情けない声を上げて再び帥丙の背中に隠れた。

 「帥丙明人ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 「なっなんで俺を狙ってんだよ何かした!?」

明人は必死に人型ロボットに問いかける。すると人型ロボットの頭が縦に割れ、煙を出しながら横に開いて中身を見せた。その中身は皮膚が焼けただれて目がカエルのように飛び出てる男の頭が不気味に歯をギシギシしながら明人を睨んでいた。

 「お前は!! あの!! デパートテロの後!! 別のデパートで!! 買い物して!! 皿を!! 手に入れた!!!」

 「やっぱりかお前!!」

未来の帥丙は明人の方に顔を向け、大声で怒鳴った。

 「何で!? あのテロをお前が起こしたから俺は真っ先に家に帰ったろ!? 別のデパートに行く暇なんてあるか!!? ・・・いやあるな大麻だし。」

明人が未来の帥丙と人型ロボットに訴えるが後から自分の過ちを認める様に顎に手を乗せてふと考えた。

 「お前が!! そうした!! せいで!! 未来は!! ハルマゲドンが!! 始まった!!!」

 「は!? なんでそうなる!? 俺の世界は大麻過激派との内戦が始まってるんだ!! 別のデパートに行っても結果は俺の所じゃないのか!?」

未来の帥丙はその人型ロボットの言葉に疑問を感じてそう言い返すと、人型ロボットは大砲の様な管に改造された右手を未来の帥丙に向けた。

 「お前!! デパートで!! 中国の!! 偉い人!! 殺した!! 中国!! ブチギレたからだあああああああああああああ!!!」

人型ロボットの右手から尖ったロケットが発射され、未来の帥丙に向かっていく。それを避けると後ろが大爆発し、巨大な穴が出来て隣の家にも穴ができ、そこから部屋と下半身全裸でAVを見てる男性が見えた。男性は後ろを見た後、叫びながら穴から出ていった。

 「おい!! 親父関係ねえじゃねえか!!」

帥丙は人型ロボットにそう訴えた。チムピスは帥丙の後ろから怯えた表情で人型ロボットを見ていた。

 「中国との戦争を呼び掛けたのは!! 中国貢献派の糞政治家共だ!! 親父の皿で!! 客ラリって!! それを原因に突きつけやがった!!」

 「じゃあその政治家共殺せばいいだろ!!」

 「数が!! 多すぎる!! 手っ取り早い方法で!! 親父を殺す!!」

再びロケットが発射された。ロケットは未来の帥丙ではなく帥丙とチムピスの方に飛んでいく。

 「危ない!!」

未来の帥丙はそのロケットを横から蹴って窓から放り出させた。ロケットはその先の家の二階に激突し、大爆発した。二階から沢山のゲームソフトや粉々になったフィギュア達、所々の肉片が舞っているが帥丙達は気づいていない。

 「俺の名は帥丙水人!! ハルマゲドンを止める為に!! レジスタンスに!! 改造された!! 機械人間だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

人型ロボットは今度は未来の帥丙に狙いを定め、もう一度ミサイルを撃つ。

未来の帥丙は急いで防弾チョッキを脱ぎ、ロケットに突き刺して身体を一回転させた後、人型ロボットの方へロケットをぶん投げた。

 「伏せろ!!!」

その後、帥丙とチムピスを両手で地面に倒れさせ、自分もうつぶせになる。ロケットは人型ロボットの大砲の様な管の右手の穴にすっぽりと入り大爆発を起こした。

未来の帥丙が奴の様子を見ると、階段もろとも巨大な穴が出来ててそこにあるのは煙だけだった。

 「おい!! 怪我はねえか!!」

 「な・・・なんで俺を助けたんだ?」

帥丙は未来の帥丙に疑問を話すと凄く睨みつけて大声で言ってきた。

 「俺はお前の未来だ!! 死んじまったら俺も消えちまうんだよ!!」

 「父さんも大丈夫だ水人!!」

明人がテーブルを縦にしながら未来の帥丙達にそう元気に声かける。未来の帥丙は明人が生きているのを見て強い舌打ちをした。

 「もう一度やり直しだ。今度は絶対に止めてやる。」

未来の帥丙はまたタイムマシンを取り付け、時刻を変更させないまま丸い緑色の表記をすぐにタップし渦を出した。

 「今度は俺一人だ。誰ひとり入るんじゃねえぞ!」

未来の帥丙は渦の中に入っていった。奴一人で変えるって・・・一体何をしようとしてるんだ? テロか? 帥丙とチムピスは正直不安でいっぱいだった。

 「ご主人様・・・大丈夫かな?」

 「知るかよ・・・まさか親父だけ殺そうとしてるのか?」

そう不安を抱えている時に、未来の帥丙が急いで渦に飛び込み家へ戻ってきた。そしてすぐタイムマシンを取り出し画面を二回タップするとデパートの外側が映し出される。その後、未来の帥丙は手元にある黒い棒らしき機械を持ち上げ先端の赤いボタンを押すと、デパートが大爆発した。

 「これでよし!!!」

 「・・・何がよしだよお前俺の癖にケロイド状態の未来の俺の話を聞いてなかったのか!?」

帥丙が未来の帥丙に怒鳴ると、相手は因縁つけた顔で返してきた。

 「あぁん!? 大爆発おこしゃ犯人分かんねえだろ!! 親父も死んで客ラリらねえで第三次世界大戦も防げて一石三鳥じゃ!!」

 「一石三鳥!? どういう意味!? そんなことよりデパートが大爆発しちゃったんだよ!? 貴方は血も涙もないの!?」

 「未来が華やかになればそれでいい。それ以外は何も望まんわ!」

帥丙、チムピス、未来の帥丙の三人の良い争いの中、人型ロボットは家の外から10m先の茂みに半障状態で倒れていた。醜い姿をした顔は半分ぐちゃぐちゃになっていてピクリとも動いていない。だがしばらくすると全身の隙間から赤い光が放ち、『帥丙水人の生命活動が停止されました。人工生物襲撃機能を起動します。』という機械アナウンスと共に腹から翼の生えた醜い人造人間達が次々と現れ空に向けて羽ばたいた。



フジシマ高校 教室


 「今日、帥丙君休みかな?」

松沢は誰も座られてなくカバンもかけられてない帥丙の机を見て勝谷にそう質問した。

 「知らんばい。仮病使うとーんやなかと?」

勝谷は興味が無さそうな返事で返す。

 「手袋で感電死してたりして。」

 「にしゃん手袋、どげん電力してんばい。」

 「ジョークだよ。あんな手袋、静電気より強いだけで他に使い道ないんだよね。でも本当に仮病だとしたらばれたとき田ノ村先生に粉砕されるね。」

 「あっそ。あいつが来ようがあたしにはどげんでんよかことばい。」



帥丙の家 居間


 いくら待っても未来の帥丙が消える気配がない。未来の帥丙はタイムマシンの画面を見ながらイライラしている。

 「どういうことだ!? 何故変わらん!! 親父は殺した筈だぞ!!」

 「運よく生き残ったからじゃねえのか?」

 「ありえねえ!! あんな爆発で生き残った奴はいないし仮に生きてたとしても身体の所々が欠損してるだろうが!! 親父全然無傷じゃねえか!!」

顔真っ赤にして明人の方に指を指しながら帥丙に怒鳴り散らす。どう考えてもデパートの大爆発で生き残った奴はいない。そんな確信を避けられないという結論にある疑問を感じた。未来の帥丙は顎に手をやり考える。

そもそも本当に未来は変わってるのか?過去の帥丙もチムピスも変化が見られない。既に現場に居るか、家は半壊して滅茶苦茶になんかなってない筈・・・だよな?

未来の帥丙は腰からサバイバルナイフを取り出し、帥丙の右手を取り壁にひっつかせた。

 「おっおい! なんだよ・・・?」

 「穴を開ける。これで変わらなかったらこの世界は何かがおかしい。」

 「はあ!? おっ俺の手に穴を開けるだと!?止めろ!! 俺はお前だぞ!!」

 「知ってるから確かめようとしてんだろうが。それに俺は自分の身体に穴が開こうともなんとも思わねえよ。」

 「やめろ!! ふざけるなてめえ!! お前頭イカレてるのか!?」

帥丙が説得しているにも関わらず未来の帥丙はサバイバルナイフを振りかざそうとする。

 「ご主人様止めて!!」

チムピスがそう叫ぶも未来の帥丙は聞き入れなかった。そして振りかざして帥丙の手に穴を開けようとしたその時、

 「やめろ。」

聞き覚えのある声が聞こえ、未来の帥丙のサバイバルナイフが消えた。しっかりと握ってたはずなのになぜ消えたのだ?

後ろを振り向くと、ボロボロのTシャツと藍色のジーパン、腕に機械の様なものが巻かれている未来の帥丙が現れた。


ややこしくなるのを防止するため、ここからは軍服姿の帥丙をAに、腕に機械の様なものを巻かれた帥丙はBをつける。


 「別の未来の俺が来た。これで証明されたろ。」

帥丙Bがいきなり現れた事に帥丙Aはまた混乱した。

 「しょっしょっ証明!? 更に混乱したじゃねえか!! お前はどこの未来から来やがった!?」

 「俺はあのデパートの爆発で行方が分からなくなった親父を捜す為に国立化学大学大学院に入り、タイムマシンとブラックホールを作った。」

帥丙Bは機械で埋め尽くされた右腕からブラックホールを作りだした。

 「まさかお前がデパートを爆発させたなんてな。これでスッキリしたぜ。」

そのブラックホールで帥丙Aを忘却の彼方へ引きずり降ろそうとするのかと思い帥丙Aは戦闘態勢に入ろうとした時、帥丙Bはブラックホールを消した。

 「だが何故か親父が生きている。ということは、俺の時代にはまだ親父が生きているってことだ。」

 「あの爆発で生きてるなら身体の一部が欠損してなきゃおかしいだろ。」

 「タイムマシンで三時間前のデパートに行けるようにしてくれないか。俺のタイムマシンは燃料切れで使えなくなったからな。」

帥丙Aは帥丙Bの言う通り、タイムマシンで三時間前のデパートを映し出した渦を出した。

 「燃料切れって、どんな燃費の悪いもん使ってんだよ。ほらさっさと行け。」

 「いやいい。ここで充分だ。」

帥丙Bは両手を前に突き出すと、渦に移されているデパートが巨大な黒い渦に飲み込まれていく。ブラックホールが駐車場や隣の建物ごと吸い込んでいった。

 「よし。」

 「・・・お前何やってんの? 親父も吸い込んでいったけどお前いいの?」

どういうことか全く理解できない帥丙Aが帥丙Bに問いかける。

 「何を言っている。俺は別に親父を助ける為に来たんじゃない。ディストピア化した日本を変える為に来たんだ。」

 「はあ!? なんでよ!?」

帥丙はどういうことか分からず帥丙Bに怒鳴った。

 「いいか。ここから先の未来は、こいつが起こした爆発でテロ完全対策条例が出来上がったんだ。」

 「テロ完全対策条約? 素晴らしい事なのになんでこんなことしたの!?」

テロ完全対策条例。確かに聞く限りでは現在でも同じような事は起きている。チムピスが帥丙Bになぜデパートをブラックホールに飲み込ませたのか聞くと帥丙Bの顔はどんどん鬼のように憤怒の表情を浮かべていた。

 「素晴らしい事だと・・・? お前ら知らないからそんな事言えるんだ! あの条約が出来たせいで交通も娯楽も何もかも全てが規制だらけになったんだよ!! この気持ちお前に分かるかああああああ!!!」

 「小せえなあお前の恨み!! 俺の方が大規模な内戦で人が死にまくってんだぞ!! そんなどうでもいいことで過去に来んな!!」

 「うるせえええええええええ!! 進○の巨人奪った政府の悪行、お前に分かるかああああああああ!!」

帥丙Bの頭の毛が立ち、ドラ○ンボールに出てくる王子の様な髪になり両手からおにぎりサイズのブラックホールが0.1秒で出来上がり、帥丙達にぶん投げた。

 「避けろ!!」

帥丙とチムピスがブラックホールを避けると、ブラックホールは後ろの壁を飲みこみさらに後ろの壁も瓦礫も飲み込んだ。帥丙から5m離れた所までが綺麗になくなり砂利だけが残った。

 「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

チムピスが恐怖で叫ぶ。

 「嘘だろ? これ違法じゃねえのか?」

帥丙が驚いて胸が引き締まってしまい叫ぶこともできなく小声になる。

 「ふぅおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

帥丙Bは更に憎悪を高め、複数の小型ブラックホールを作りだした。

 「ドラ○ンボール規制した恨みぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

複数のブラックホールは帥丙Aに目かげて猛スピードで突進してきた。帥丙Aは必死に右に走りながら避ける。次のブラックホール2つが足と肩を狙ってきたからジャンプして壁を蹴ってローリングしながら避ける。

全部避けきった後、帥丙Aは銃を帥丙Bに向けて威嚇した。

 「今すぐ手を下せ!! 少しでもブラックホール作ったら股間がブラックホールの形の穴が出来るぞ!!」

 「やってみろ。お前も政府に抹殺された漫画アニメゲームと共に消えてしまええええええええええ!!!」

頭上にブラックホールが現れ。どんどん大きくなっていく。

 「うおおお!!」

帥丙Aの靴が自動的にスパイクモードになり地面を深く刺したがあまりの膨大さに銃が吸い込まれてしまう。その影響で引き金が親指を強く押しこんでしまい乱射状態になっているが全てブラックホールの中へと吸い込んでいく。

帥丙は壁の瓦礫の端に掴まり重力に逆らうように両足が真横になっていた。チムピスは帥丙の右足を掴んで吸い込まれないようにしている。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 「お願いだから止めてご主人様ああああああああああああああああああ!!」

明人はいつのまにか帥丙Bの後ろにいて帥丙Bを応援してた。

 「いけえ!!あの軍服姿の水人を吸い込んでしまえぇぇ!!」

 「うるせえお前ももうじき消えるんだよ!!」

ブラックホールがどんどん大きくなっていき天井もベキベキと崩れていく。吸引力もどんどん高くなっていき、とうとう帥丙が掴んでる瓦礫もバキッと折れてしまった。

 「うおああああああああああああ!!」

 「いやああああああああああ!!」

二人がブラックホールへ吸い込まれようとしている。帥丙Bも明人もその事に気付いてない。その時、いきなりブラックホールが爆散した。

帥丙とチムピスはそのまま地面に激突する。

 「ふにゃ!」

着地した同時にチムピスが猫の鳴き声みたいなのを発した。

 「なっなんだ!? 誰だ俺のブラックホールを消した奴は!!」

 「・・・また別世界線の俺かよ。」

帥丙Aは疲れきった声でボロッと言う。

 『帥丙水人達ヨ、醜イ争イハ止メルノデス。』

辺りからエコーが響く。どこを探しても別の帥丙らしき奴が見つからない。

 「どこだ! 何だ今のムカツク声は!!」

帥丙Bが両手に小型ブラックホールを作りながら辺りを見渡す。すると、ブラックホールが一瞬にして煙のように消えた。

 『水人同士争ッテモ、何モ生マレマセンヨ。』

エコーが響くと同時に、足を前へ組み合唱をして空を飛んでいる仏姿の水人(帥丙C)がいた。顔つきがまんま大仏で髪の毛がまんま大仏ヘアーだった。

 「何も生まれないだと・・・? お前に何が分かる!! 大好きなゲームとアニメと漫画が規制される苦しみを!! ワールド・ウォー・タイタンも消えジャン○も消えNAR○TOのアニメも突如打ち切り!!」

帥丙Bは帥丙Cに大好きな作品が消えてしまった事を訴える。

 『確カニソレハ ディズトピア ノ世界デスネ。モシ当時ノ私ダッタラ練炭自殺シテタ事デショウ。シカシ、貴方ガヤッテイル事ハ間違ッテマス。』

 「間違ってる・・・?」

 『暴力ハ何モ生マナイ事ヲ。私ガ過去ヲ改変シテ見セマショウ。軍服姿ノ水人サン。 タイムマシン ヲ起動シテクダサイ。』

 「・・・お前がやればいいだろ。そもそも過去へ行けるなら別にここに来なくてもいいじゃねえか。」

 『私ノ タイムマシン ハ一度キリナンデスヨ。ダカラ貴方ノタイムマシンの方ガ燃費モイイシ消化モ悪クアリマセン。ダカラココヘ来タノデス。』

 「何で知ってんだよ。」

 『私ハ神ノ使イダカラデス。』

帥丙Aはしぶしぶとタイムマシンを取り出し、設定を変えず渦を出そうとする。その間に帥丙が外から叫び声が聞こえたのを周りの奴らに聞きだす。

 「なあおい、外からすげえ断末魔聞こえるんだけど。お前ら来たから何か起きたんじゃねえの?」

未来の帥丙達は「それがどうした?」「こっちには関係ないだろ。」と因縁つけた態度で帥丙に返す。

 『オ祭リヲヤッテルノデショウ。今日ハ縁日ダカラ御御輿カ大勢ノ人ガ道路デ踊ッテルンデス。心配スルコトハアリマセンヨ過去ノ私ヨ。』

帥丙Cだけは帥丙に優しく声をかけて安心させていた。帥丙も「そうか・・・。」と軽く納得した。



街中


 「逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

翼の生えた醜い人造人間達が一般人達を襲っていた。

女子高生を攫い空中で引き裂いて内臓を掴んで食べ始め、逃げてるサラリーマン男性の頭上から高速で踏みつぶし、脳みそと眼球を貪り食う。

二人の親子が必死に化物達から逃げる。逃げる。しかし、後ろから羽ばたいてきた化物が子供を攫って空へ飛んでいく。

 「ママアアアアアアアアアアアア!!」

 「ぼおやあああああああああああああああああ!!!」



フジシマ高校 教室


 異様に外がやかましかった。どっかの教師が現実離れした技で生徒に体罰してる割には子供の声も混ざっている。


 「何と? 何と? 何ん騒ぎと?」

勝谷が外を見ると、人の形をした翼の生えた大勢の化物が街を襲っていた。中には大量の血を浴びた化物が空中で羽ばたきながら血を舐めている奴もいた。

 「凄いねこれ。夢じゃないのかしら?」

松沢も外を見て化物共を見ていた。他の生徒達も唖然としながら見慣れない残酷な光景を一ミリも動かず見ていた。するといきなり黒板の上にあるスピーカーから校長先生の声が教室内に響く。

 『え~みなさん。外が何故か未確認飛行生物共によって危害を加えているそうなので超強力なバリアを貼ります。みなさん絶対に外へ出ないでください。生き返らせてくれる保健室の先生の気持ちも考えて。』

アナウンスが終わると、勝谷は一旦外を見る。蜂の巣のような6角形の模様のドームが学校を密閉し奴らから守っていた。少し透明だから外の光景が見えるが化物達は学校に近づこうともしない。むしろ街中の一般人を食い散らかしているようにも見えた。

 「帥丙君は残念だね~。アイツらに食われちゃうなんて。」

 「ちょっと待ちんしゃい? うちん家族はどげんなると?」

 「食べられて死んでるんじゃないかな? それか地下鉄に逃げてるかだね。」

勝谷はすぐに携帯を取り出し、父に電話した。が、電話に出てくれない。

 「くそ!!」

次は母に電話する。するとすぐに電話がかかった。

 「お母!! 今どこに居ると!?」

 『地下鉄に逃げてるわ!! 何!? 一体どうなってるの!? 翼の生えた化物が人を・・・食ってる!!!』

凄く慌ててる状態だった。当然だ。空を飛んでる化物が一般人を襲って食べてるんだから。・・・しかし妙だ。小さいが何か他の人の声が聞こえる。

何やら「ふざけるな!」「開けろ!!」「助けてええええ!!」「ああああああああ!!」などの断末魔がはっきりと聞こえる。

 「お母・・・どこしゃぃ隠れとーと?」

 「事務室にいるけど? シャッター閉めて。」

 「何してんばい!! 早う他ん人も中に入れぇ!!」

 「何言ってんのよ開けたら死ぬじゃない!!」



フジシマ高校 職員室


 校長は言い終えたようにマイクの電源を落とした。ひとつきため息をしてから教師達の方へ向く。

 「誰がやったんですか? あれは?」

窓の方に指をさして教師達に質問した。窓の外には化物達が街中に羽ばたいて人間を食べている光景が映し出されている。

 「私ではありません。ずっと保健室にいました。」

赤髪で一重まぶたの白衣を来た女性がそう答える。

 「俺じゃありません。確かにあのようなモンスターは作りだせますがなぜ人を襲わなきゃいけないんですか? 理由が無いのにやるわけないじゃないですか。」

2年5組担当の詩善コトギはそう答えた。

その他の教師達も同じような答えが返ってくるので校長は物凄く悩んだ。

 「じゃああれは一体何なんでしょうか? なぜあのような下等生物がいきなり現れ人を襲い始めたのか、思い当たる人はいませんか?」

 「それよりあのモンスターを全て駆除するのが大事でしょ? このままだとアメリカ政府がアイツらの駆除の為に原爆使いますって。」

詩善コトギはやる気がなさそうに答えた。校長は彼の言葉を聞いて納得した反応を見せた。

 「それもそうですね。では、超高性能のレーザーシステムを使ってあの変な糞生き物を全て死滅させましょう。詩善先生はあの時計台のてっぺんにこの血液検査で使った生徒の血液をセットしてきてください。」

壁際にある段ボールの中に血液検査の時に使った血液入りの容器を取り出して説明する。

 「上に乗せるだけでいいんですか?」

校長は驚いた表情で詩善コトギを怒鳴りつけた。

 「そんなことすれば時計台ごと吹き飛んで東京都庁から賠償請求がくるじゃないですか!! 貴方がてっぺんに設置して木を生やすんです!! 勿論、10m以上に伸ばして!!」

 「分かりましたよ。でも、本当にうまく行くんでしょうか? あいつら、肉が好物かと。」

 「肉食生物は血で興奮して肉ごと食べます。血がないと食べませんからね肉食は。」

そう言って詩善コトギの方に血液入りの容器を放り投げる。詩善コトギはそれを上手くキャッチした。容器の中の血液が激しく揺れるが一滴も漏れていない。

 「さっ詩善先生行ってきて。こっちはレーザーシステム起動しますんで。」

 「あーハイハイ分かりました。歩くのめんどくさいからこれで行きますわ。」

詩善コトギは窓を開け、底から木を生やして通路を作った。詩善コトギはそれに乗ると木は蛇花火のように猛スピードで詩善コトギごとウネウネ進んだ。

 「さて、私達もやりますか。」

校長が自分の机の方へ戻って行き、引き出しからボタンを取りだしてそれを押すと、上や下や壁から3つのモニターがサイバーパンクのようにデカイ音をだし、画面が映し出される。一つはレーザーシステムの全体が映し出され、二つ目はメーターの様なものが表示されて三つ目は薄い十字の下に外の風景が映し出されていた。



帥丙の家 居間


 『サア軍服ノ私ヨ。トットト過去ノ扉ヲ開ケルノデス。』

帥丙Aはタイムマシンで言われた通り渦を出した。渦からデパートが映し出され、帥丙Cは浮遊したまま渦の中へと入っていった。

 「何をするつもりなんだ?」

 「さあ・・・何であのご主人様は足を組んだまま浮いてるの?」

帥丙とチムピスは帥丙Cがやろうとしている事がイマイチ分かって無かった。他の帥丙達もそうだった。帥丙Cはデパートの真上に着いた途端、金色の光が現れ帥丙Cを包みだした。

 『帥丙明人ヨ。母ナル姿ニ帰ルノデス。』

エコーが帥丙達にも響き渡った。その瞬間、デパートから大量の花蓮が生え始めた。それだけではなかった、車や隣の建物、近くに歩いていた一般人も滑らかに花蓮になっていた。

 「なっなんだ!?」

明人がその光景を見て驚く。帥丙Aはタイムマシンで急いで映し出されてる場所をデパートの中に設定した。中に居る一般人も食品も商品も装飾も全て花蓮まみれになっていた。

その中に居た過去の明人が動揺してる。

 「おっおい!! なんだこれぇ!? うわああああああああああああああ!!!」

明人の叫び声と共にどんどんと花蓮になっていった。ついには他のより凄く大きい花蓮が出来上がった。

中一面が花蓮まみれになりデパートの原型が無くなった。帥丙Aは画面をタップしデパートの外を映し出すとデパートは巨大な花蓮になって辺りが花蓮まみれになっていた。まるで侵略されたかのようにピンクまみれで帥丙達は不気味に見えた。

全員異様な光景にポカンと見ていた。何が起こったのか分からない。これは帥丙Cがやったことなのか?帥丙Cはいつのまにか帥丙達の後ろにいた。

 『コレデ、未来ハ明ルミニナルデショウ。醜イ争イノナイ、素晴ラシキ神秘ナ世界ニ。』

 「人類全員花蓮まみれにしたこの世界が素晴らしい世界か?」

帥丙Bは威喝した顔で帥丙Cの顔を見る。

 『細カイ事ナド気ニシテハイケマセン。人類ハソレヲ視野ニ入レズ文明ヲ作ッタノデス。』

 「どこの国の話だよ。」

帥丙が呆れたように帥丙Cにツッコんだ。皆が唖然している中、帥丙Aが銃を再び構える。

 「どうしたの未来のご主人様?」

 「また別の俺が来たかもしれねえ。」

帥丙Aがまた別の帥丙が来たと思い警戒している。帥丙Bが帥丙Aの警戒を見て悟ったように両手にブラックホールを出した。

 「あっそうか! どこだ!! おい!! 襲ってくる前に殺す!!」

 『ゴ安心ヲ。私ノ神ノ力デカカッテクル糞野郎ヲ花蓮ニ変エテアゲマショウ。』

帥丙Cの身体から光が放たれる。その光はどんどん大きくなっていき帥丙達を包み込んだ。

 「おい眩しい止めろ!! お前は何もするな!!」

帥丙Aが帥丙Cの光がまぶしい事に訴えるが帥丙Cは聞く耳を持たずさらに光を放つ。眩しすぎて帥丙もチムピスも明人も右腕で目を隠した。

明人が下を向くと小さな花蓮がたくさん生えて来て急スピードで成長していく。

 「なんだこれ!?」

帥丙が下を向く。

 「止めろエセブッタ!!」

帥丙Cに大声で訴えるが帥丙Cはうんともすんとも言わなかった。

 「待て待て待て待て!! 俺は何もしない!! 大丈夫だから!!」

帥丙達の方から声がした。明らかに帥丙の声だった。

 「・・・誰が言った?」

帥丙Aが帥丙達に言うが誰も状況が読めないでいた。全員首を振る。するといきなり帥丙の横から手が現れ、横に押し込まれて一歩二歩勢いで歩いてしまう。スーツ姿の帥丙が姿を現した。

 「やあ。俺はお前達と同じ帥丙水人だ。ハッハッハ。そう固くしないでくれよ。別に僕は何もしないから。」

帥丙Aと帥丙Bが戦闘態勢になり帥丙D(スーツ姿)を殺そうとする。

 「おい止めろよ! 俺の話聞いてた!?」

 「随分幸せそうな世界線じゃねえか。何しにココヘ来やがった?」

 「ああっ!?」

二人は戦闘態勢を解こうとしない。いきなり現れた帥丙Dを警戒してるのだろう。

 「おいおいおいおい。俺がお前らより強そうに見えるか? 逆だ。何か話したいが為になんにも持ってきてない。タイムマシン以外はな。」

 「要件を言え。妙な真似したらぶっ殺す!!」

帥丙Aは帥丙Dの方に銃を5発乱射した。

 「やめろ当たるだろうが!!」

凄くてんぱって訴えたが、深い深呼吸をした後正気に戻った。

 「俺はな、親父が行ったデパートが花蓮まみれになってるってニュースを見て俺とおふくろはもうなんか変な気持ちになってどうでもよくなってチムピスを生物研究所に売ったんだ。ノリで。そしたら政府から未確認生物発見者として600億の資金を手に入れた。とりあえず、この時代に行こうと気楽な考えでタイムマシンを買ってこの時代に来たってわけ。でも・・・なんでこんなことになってんだ?」

帥丙Dは異様な光景を見て不思議で仕方なかった。家が半壊し、複数の帥丙がいて過去ではこんな事が無かったように思えた。

 「・・・何が言いてえんだ。」

帥丙Aが銃を突きつけながら帥丙Dに問いかけた。

 「お前ら誰だ?」

 『私ハブラックホールガデパートヲ飲ミ込ンダ世界カラ来タ帥丙水人デス。』

 「ごめん意味分からない。」

帥丙Dは帥丙Cが何を言ってるのか分からなかった。

 「俺は親父が大麻の皿手に入れて内戦が始まった未来から来た帥丙水人だ。」

 「へぇ? 親父が大麻の皿手に入れて内戦が始まる? こっちじゃそんなことないけど。」

帥丙Aの言葉に対して帥丙Dは否定する。

 「そりゃそうだ。周りからして俺達は別の世界線の未来から来てるんだよ。服装もこのブッタ見てえな俺も、未来であり得るか?」

帥丙Bが帥丙Dに自分の弁論を放った。

 「・・・おいちょっと待て。それじゃあ俺とお前らがやってきた過去改変は全くの無意味ってことになるじゃねえか?」

帥丙Aは悟る。過去を改変して本当に自分の結果に繋がるのか?

 「あっ? どういう意味?」

 「お前らがどうしてここに居るかまだ分からないの? デパートを爆発させたらお前(帥丙B)が来た。ブラックホールに飲み込ませるとお前(帥丙C)が。そしてお前(帥丙C)がデパートの周辺もろとも花蓮まみれにしたらこのリッチな俺(帥丙D)がきやがった。よく考えてみろ? どうして俺は消えないんだ? お前(帥丙B)もお前(帥丙C)もお前(帥丙D)も! 何かおかしい!!」

帥丙達は帥丙Aの議論に納得がいって全員目を丸くした。

 『確カニ。』

 「じゃあ何か!? 俺達の努力は全くの無駄って事じゃねえか!!」

帥丙Bがそう言うと、帥丙Aはいかつい表情で大声で怒鳴る。

 「お前分かってたならどうして言わなかったこの野郎!! 別の世界線から来た帥丙水人が来るならいくら過去改変しても俺達の過去に影響がいつまで経っても来ないじゃねえか!!」

 「そこまで頭に来なかったんだよ!! お前だってたった今気付いたくせに攻めてんじゃねえよ!! 出来の悪いラノベの主人公かお前は!!」

二人の口論に、帥丙Dはどういう状況か更に分からなくなってしまった。

 「え? すなわちどういう事?」

帥丙に問いかけた。

 「知るかよ。俺が一番知りてえよ母ちゃんアイツ(帥丙A)に殺されちゃったし。」

今の帥丙の言葉に帥丙Dは事態がようやく分かったような表情を浮かべる。

 「・・・あ~そう言う事。何で?」

今度はどうしてタイムマシンでこんなめんどくさい事が起きたのか疑問を感じた。

 「あ~あ~!! お前のタイムマシンの不具合で別の世界線の俺達が来てこんなことになってんの!! なぁんですぐ気付かねえんだよ俺の癖に!!」

 「お前こそタイムマシン持ってんだろうが!! てめえの奴が正常なら初見の時に俺が2人いちゃおかしいだろ!!」

 「お前の世界じゃ完全にテロ戦争起きてんだろ!? 法律も規制も糞もないから俺の様な低性能のタイムマシンなんか作らんだろ!! よく考えて作ってんのかお前の低脳化学チームは!!」

 『ヤメナサイ。』

帥丙Cが二人の話を切り上げる。エコーのかかった声が響き帥丙Aと帥丙Bは帥丙Cの方を向く。

 『ココデ争ッテル場合デハアリマセン。何故コノヨウナ結果ニナッタノカハ分カリマシタ。解決策ヲ考エルノガ先デハアリマセンカ?』

 「解決策・・・?」

 「お前はどうなんだよ? 何か思いついてんのか?」

 『ソウデスネ・・・一旦、帥丙明人ヲブッ殺スノハドウデショウカ?』

明人は眼を見開いた。

 「え? 親父をぶっ殺す? アイツら自分の父親に何言ってんの?」

帥丙Dは理解していなく困惑していた。

 「そうだな。」

帥丙Aは帥丙Cの提案に賛成し、何の抵抗もなく、すぐさま銃を明人の方に突きつけた。帥丙Bもつられて手にブラックホールを作りだし今にも明人にぶん投げそうな体制に入っている。帥丙Cは背中から複数の手が生えて千手観音のようになっていた。

 「ま待って!! 何でよ!!」

明人が焦りながら帥丙達に命乞いをした。

 「元と言えばお前が原因だ。ここで殺さず解決策を考えていたが俺の頭はもう限界が来たようだ。」

 『大丈夫デス。一旦貴方ヲ消滅サセルダケデスカラ。』

 「しょ消滅!? 何も起こらなかったらどうすんだよ!!」

なんとか三人の攻撃態勢をやめさせようとするが、

 『何ノデメリットガ生ジルノデスカ?』

三人は明人に対してどうでもいい反応だった。

 「お願いご主人様止めて!! お父様を殺さないで!!」

チムピスが訴えるが三人は聞く耳を持たなかった。

 「親父が死んだら良い施設紹介するから安心しろ。」

 『サア糞親父。死ヌ覚悟ハ整イマシタカ?』

帥丙Cの手が発光し始め、周りのものや壁がどんどん白くなっていく。

この時、明人は走馬灯が見え始めた。小さい頃、カメムシを大量に捕まえて嫌な奴の家に放り込んだ思い出や、中学生の頃に嫌いな奴の家の前にあるマンホールにゴキブリ撃退スプレーを使って大量発生させる思い出、高校生の頃に家庭科の調理の授業でオムレツに下剤を入れて嫌な先生に食べさせて英雄扱いされる思い出、大学生の頃に冨美子に出会う前はアパート前によく出てくるヤモリを焼いて食べて腹を壊して地獄を見た思い出。

走馬灯が終わった後は、チムピスが明人の前で大の字になってかばっていた。が、光がどんどん大きくなっていく。ああ、俺はここで死ぬんだ。

明人はチムピスがいる事に全く気付いていなかった。

 『発射』

帥丙達も目の前にチムピスがいる事に気づいていなかった。チムピスは目を思いっきりつぶり死を覚悟し、明人は頭の中が真っ白になっていた。

もうすぐで発射される。その時に、帥丙達の前に随分と歳をとった男が現れる。

 「これ。やめなされやめなされ・・・。そんなことしても未来も過去も変わらないわい・・・。」

帥丙達は目の前に居る老人を見て攻撃を中断した。光が無くなり三人の戦闘態勢が解かれてチムピスは放心状態になり尻もちをついて荒い呼吸をした。

 「何だジジイ邪魔だ!!」

 『死ニタイノデスカ? イイデショウ。』

 「お前達は何もわかっとらんようじゃな・・・・。わしは・・・父とチムピスがお前らによって殺された80年後の未来からやってきた・・・・・帥丙水人じゃ・・・・。」

目の前の老人(帥丙E)がそう言うと、帥丙Aは呆れかえった。

 「あ~!! また俺と同じタイムマシンを使った馬鹿が出てきやがった!!」

 「黙らんかい・・・。よいかよく聞くのじゃ・・・・・・お前等のタイムマシンには・・・・・・あるデータが欠落しとるんじゃ・・・・・」

 「あるデータが欠落?」

帥丙Eは弱々しく猫背で帥丙Aの所に向かい、タイムマシンにUSBを指し込んだ。

 「わしは・・・お前らが父とチムピスを殺し、未来へ帰って行った後、施設でタイムマシンの事を必死に調べたのじゃ・・・・・。ケンブリッジ大学で隅々まで勉強し・・・・時空や5次元の世界、タイムマシンの仕組みまで研究し尽くしてようやく分かったんじゃ・・・・・。お前らのタイムマシンには・・・・・・時空のデータが甘すぎるってことじゃ・・・・。」

USBのコードの先には帥丙Eのカバンの中から出したPCに刺さっていた。帥丙Eはキーボードを打ちこみ、データの改変を行っている。

 「あっ? 時空のデータのせいでこんなに俺が来たってことか?」

 「いかにも・・・・。」

キーボードの入力が終わったのか、USBを抜き取りPCとUSBコードをカバンの中に仕舞った。

 「これでデパートにいる父を阻止できれば必ず過去も未来も改変され、お前らは消えてなくなる・・・・・・。だが気をつけろ・・・・・・・。一度失敗したらどうなるかわしにも分からんが、タイムマシンそのものが無くなりどうしようもない事にもなり得る・・・・・。」

 「なっ・・・なあじいさ・・・俺、本当にうまくいくのか?」

他の帥丙達が過去改変をやらかしてまた次の帥丙が来て襲ってくるのか分からない。帥丙は自分の身が心配でそう帥丙Eに言った。

 「大丈夫じゃ・・・・。でも・・・・早くせねばこ奴らの世界線がここに紛れ込むかもしれん・・・・。すぐにやるんじゃ高校生のわし。後・・・そうじゃ・・・お前、絶対死ぬんじゃないぞ? もしお前が死んでしまったら・・・・」

その時、後ろから帥丙Bが帥丙Eの背中を思いっきり叩いた。

 「やるじゃねえか爺さん!! これだけでようやく規制だらけの世界とはおさらば出来るなんてサイコーだぜ!!!」

 「おい喜ぶのはまだ早いだろブラックホールの俺!! んなことより世界線が紛れ込むってどういうことだ?」

帥丙Aは帥丙Eにその事を聞くが、帥丙Eは全く微動だにしない。

 「おい、聞いてんのかジジイ。」

帥丙Eの手を取ると、帥丙Aは見開いた。

 「脈がねえ!!」

 「えっ!?」

 「えっ!?」

帥丙Bとチムピスが帥丙Eの脈が無い事に驚く。帥丙Aは急いでポケットから医療キットを取り出し、AEDの様な小さな機械を取り出した。

 「何勝手に逝ってんだジジイ!! まだ聞きてえ事が山ほどあるのに急に死ぬか!?」

強引に帥丙Eを倒し、服をビリビリに破き上半身裸にした後、小さなAEDの小さなパッドを胸に取り付けた。

 『私ニ任セナサイ。』

 「下がってろ!! 誰も手え出すんじゃねえ!!」

その時、帥丙Eの全身から緑色の蓮が生え始める。ついには花蓮になり、消滅した。

 「うおおおおおおああああああああああああああ!!!」

帥丙Aは怒り狂って銃を取り出し帥丙Cを乱射した。が、撃った弾が帥丙Cの身体に触れた瞬間、粘土のように全て吸収されていく。

 「何しやがんだてめええええええええええええええええ!!!」

 『ダッテ生キ返ラセタトシテモ、マタドウセ死ヌジャン。未来ヲ変エル データ ガ入ッタノナラモウソレ以上ノ説明ナドイリマセン。』

 「そんな信憑性のねえデータで未来が変わると思ってるのか!?」

帥丙Aが狂ったように帥丙Cを敵視している。だったら見せてやろうと帥丙Cが手を差し伸べ、念力で帥丙Aのタイムマシンを起動させる。目の前の渦が出現したそこには全く破壊されてない綺麗そのままの居間が映し出されていた。

 『今カラ4時間前ノコノ部屋デ、私ノ銅像ヲ作リマス。』


そう言って帥丙Cは両手を強く合わせ、乾いた音が部屋中に響く。すると台所から帥丙Cと思しき銀の像がニョキニョキと現れた。母親はびっくりして居間から出て行った。

 「貴方ああああ!! どこおおおお!? どこおおおおお!?」

母親が慌てて明人を探そうとすると上の部屋から帥丙の声が一階に響く。

 「親父ならデパートだっつうの!!」

もう一度、居間の方へ向くと台所から帥丙Cの像が母親の方を向いている。母親はゆっくりとその像に近づいて恐る恐ると触ってみた。

 「・・・・何これ?」


渦が消えてなくなる。台所の方へ向くと、少々荒れぎみであるが帥丙Cの像がはっきりと出現していた。

 『ドウヤラアノ爺サンノ言ッタ事ハ本当ダッタミタイデスネ。』

チムピスはいきなり帥丙Cの像が現れた事に恐怖し、顎を震わせながら帥丙の後ろにさらにせがり込む。

 「だったら早く三時間前のデパートに行って親父を殴ってでも止めるぞ。早くしろよ軍人の俺!」

帥丙は帥丙Aにお願いした。帥丙Aもすぐタイムマシンを取り出して起動させようとする。

 『私達モ協力シマス。』 

 「いらねえ。止めるだけなら俺で充分だ。」

 『ソレデ父ガ納得スルトハ思エマセン。モウ一度デパートヲ破壊スルノガ一番手ットリ早イデス。』

 「いや必要ねえ!! それしたらお前らみたいになっちまうのが目に見えてんだよ!!」

 『・・・何カ問題デモ? 皆サンヨク考エテ見テクダサイ。明人ヲ止メルダケダッタラ私達ノ薔薇色人生ノチャンスガ失ウカモシレナイ。本当ニソレデイインデスカ?』

帥丙Aは帥丙Cの議論を聞いて手を止めた。警戒するような顔で帥丙Cの方を向きこう口にした、

 「・・・何考えてんだお前?」

 『貴方ハ本当ノ幸セヲ取リ逃ガソウトシテイル。』

 「知るかよ! 俺は、内戦が無くなればそれで良い。それ以上の幸福なんていらねえわ!!」

 「俺もチムピスで大金持ちになったけど、昔より楽しいとは全く思えなくなったから別にいらんよ。」

 「俺だってお前らみたいな未来なんて御免だし、特に軍人とか規制まみれとか宗教とか滅茶苦茶最悪じゃねえか。」

 「俺が死ぬなんてふざけてんの? 父親を殺すなんて正気の沙汰じゃないだろ。」

 「私は・・・元の生活に戻りたい!!」

5人は元の世界に戻ればそれでいい気持ちでいっぱいだと言う事を帥丙Cに伝えた。だが、帥丙Bだけはなぜかダンマリとしている。

 『・・・ソウデスカ。普通ノ暮ラシ・・・・私ハゴメンジャイ!!!』

帥丙Cの周りから花蓮が現れ、花が完全に開かれ牙だらけのエイリアンの様な口が姿を現した。そいつらは帥丙達を襲いにかかった。

 「うおおおおおおおおおお!!」

帥丙達は叫んだ。帥丙Aは銃を取り出して急いで化物の花蓮を全て撃ち尽くした。

 「何しやがんだてめえ!!! 元の暮らしに戻りたくねえなら一体何しに来やがった!!」

 『私ハ私ノ世界ヲ作ル為ニ過去ヘ舞イ降リタノデス。今イル私ノ世界デハモウ既ニ全テヲ支配シ尽クシテ退屈ダッタンデスヨ。ダカラ過去ヘ行キ、今イル世界ト同ジ支配ヲシタラ未来ハドウ進化スルノカ見テミタカッタンデス。デスガ、貴方達ヲ見テカラスグニオカシイト分カリマシタヨ。ソモソモ別ノ世界線ノ未来カラ来タ私ナンテ、パラレルワールド状態ダ。何デ気付カナカッタノ? 馬鹿ジャネエノ?』

その時、タイムマシンが画面の中で勝手に動き出し、渦を出した。

 「うおっ!!」

 『ブラックホールノ帥丙ヨ。君ガデパートヲ破壊スルノデス。』

 「は!?」

 『私ハ貴方ガデパートヲ無ノ領域ニ放リコンダ世界カラヤッテキマシタ。私殿ノ世界ハ貴方ノ言ウ規制ナド一ツモ存在シマセン。ユエニ、更ニ過激ナ漫画ヤアニメガ増エ続ケテ人間ノ醜イ欲望ヲ抑エテイルノデス。』

 「なんだって・・・?」

帥丙Bは帥丙Cの語った世界に驚きを隠せなかった。

 「おいブラックホールの俺!! ソイツの言葉に惑わされるな!!」

 「そうだよ機械をつけたご主人様!! 自分の為なら平気で嘘をついてるかもしれないんだよ!?」

 『ハハハハハ。私ガ嘘ヲツイテル? バァァァァァァァァッカジャネエノ? 真実ダヨ? 何デ嘘ツク必要アルノ? 私ノ世界デハ禁止令モアリマセンシ死ンデモ記憶ヲ受ケ継イデ新シイ身体デ蘇リマス。ブラックホールノ帥丙水人ノ言ウディストピアナンテコッチニハ一ツモアリマセン。サア、ブラックホールデアノデパートヲ殺風景ニ変エナサイ 今スグニ。』

 「ねえ機械をつけたご主人様ったら!! 私は・・・私達は元の生活に戻りたいの!! 確かにそっちの未来の方が幸せかもしれないけど、道徳も成長も感動も失ってるんだよ!! そんなの嫌だ!! お願い!! 止めて!!」

チムピスが帥丙Bに必死に訴えた。

帥丙Bは迷わず両手からブラックホールを作りだしてどんどん巨大化させていく。

 「うおおおおおおおおおおおおお!!! 無規制世界ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 『エエ、無規制世界。思ウ以上ノ天国デス。』

チムピスの言葉に全く心が動かされてなかったようだ。

 「おいまずいぞ!! 早く渦を消せ!!」

帥丙が帥丙Aにそう怒鳴り、帥丙Aは帥丙の言う通り、急いで画面操作を行うがいくらタップしても反応がない。

 「くそっ!! このブッタ野郎勝手にハッキングしやがった!!」

 『無駄アガキハ止メルノデス帥丙水人ヨ。』

帥丙Aは焦る。必死に押し込んでもボタンを押しても反応がない。このまま帥丙Cと同じ結末を迎えると本当に父親がいなくなるかもしれない。帥丙Aにとっては元いる世界の元凶であるから死んだら好都合だが、他の世界線から来た帥丙みたいになるかもしれない。帥丙Dになるならともかく帥丙Cになるのだけは嫌だ。

急いでタイムマシンの下側にあるカバーを外し、中身がむき出しの青い電池を強引に引っこ抜いた。タイムマシンの電源は落とされる。勿論、渦はちぎれるように消えた。

帥丙Bはブラックホールを急いで消し、帥丙Aの方に睨みつけた。帥丙Cは表情を変えずに帥丙Aの方を向いた。

 『今スグ電池ヲ戻シナサイ。』

 「この貴族の俺からタイムマシン使えばいいだろ。」

 『使ッテモ未来ガ変ワラナイノハ知ッテマス。アノネェオ前馬鹿ニシテルノカ?』

 「来い!! こっちだ!!」

帥丙Aはチムピスの角を握って急いで二階へ向かう。

 「痛い痛い痛い痛い!!」

チムピスは痛がっていたが帥丙Aは全く気にしていなかった。帥丙と帥丙Dと明人も帥丙Aに走ってついていく。

 『逃ガスナァ!!!』

帥丙Cは全く表情を変えず、声だけ威喝に帥丙Cに命令した。

 「何だお前ら!! 娯楽を殺したいのか!! 進○の巨人規制まみれになってもいいってのかクソヤロオオオオオ!!」

二人は帥丙A達を追いかける。



帥丙の部屋


 ドアから帥丙A達が現れ、帥丙とチムピスと明人が部屋の中に入った後ドアを蹴って閉めた。

 「窓から飛び降りるぞ!!」

 「はあ!?」

 「早くしやがれ!!」

帥丙Aはまだチムピスの角を握っていた。チムピスも帥丙Aに強引に引っ張られていたがってる。それを気にする奴は誰ひとり居なかった。

帥丙が後ろを振り向くと、ベッドの上にカバンを見つけ無意識に手に取る。そういえば松沢と勝谷から何か貰ったなとふと思ったのだ。


中にあったのは電気が流れる手袋と勝谷のハンカチが入っていた。


「飛べえ!!」

無いよりはましだ。帥丙はそのかばんを方にかけて帥丙Aについていき、窓から飛び降りた。


飛び下りて人一人居なくなった部屋からドアが吸い込まれるように破壊された。廊下が見えた時には人の頭くらいのブラックホールがドアを飲みこんでいた。

ブラックホールが消え、部屋の中へ入ろうとすると、

そこは廃れた会社の仕事場だった。古びたPCやほこりまみれの書類が散らばっている。血痕の跡が部屋中に散らかっていた。

 「俺の部屋こんなだっけ?」

 『貴方ハ自分ノ部屋ヲ忘レテルノデスカ? ドウミテモ帥丙水人、私達ノ部屋デショ?』

 「それにしてはパソコン多すぎるんだけど?」


窓から飛び降りると、着地する所は瓦礫まみれだった。全員瓦礫の上に着地してしまい瓦礫は衝撃で崩れてしまった。その影響で全員バランスを崩して倒れてしまった。

 「ぐああ!!」

帥丙はうつぶせになり、すぐさま顔を上げた。目に移る光景が見慣れた風景ではなかった。

ビルや建物が機能してなく崩壊してて電柱も斜めになって電線が所々ちぎれていた。

 「は・・・?なんじゃこれ?」

帥丙Aも帥丙と同じく周りを見渡して目を丸くした。

 「おいどういうことだ・・・? なんで俺の世界に戻ってやがる!?」



フジシマ高校 職員室


 「あの・・・校長先生。」

一人の女性教師が校長に声をかける。

 「ん? どうしたのかね?」

 「真ん中のメーター、電力が70%になってるんですけど大丈夫なんですか?」

 「ああ、これはわざとなんです。100%に設定しちゃいますと学校ごと吹き飛んじゃいますからね。」



フジシマ高校 教室


 「お父などこしゃぃおると!?」

 「京都!! 京都に仕事で居る!! もういいでしょ切っても!! ぁぁぁぁあああああ割れる割れるドアとシャッターが割れるうううううううう!!!」

 「京都!? 何で言わんかったと!?」

その時、電話越しからガラスが割れる音と金具が爆発する音が響き、母の断末魔が5秒間聞こえた後『ツーッ ツーッ』と通話が切られた。

勝谷は気が動転して窓の外を見ると、時計台の上から何やら木の様なものが生えている。化物達はその頂上に向かって行くと木は丸まった。

 「何ばと?」

窓を開けて上半身を出すと、自分が何かの影で暗くなったのが分かる。上を見上げると何やら電波を拾う鉄でできた巨大なアンテナが屋上から出ていた。

 「何ばあれ!?」

 「えっ? 何?」

松沢も勝谷に連れて窓から顔を出し、上を見た。

 「あーっ多分あれを吹き飛ばすんじゃない?」

松沢は時計台の上に丸くなった木と化け物達が鉢のように集まってくる方向に指を指した。



フジシマ高校 職員室


 一人の男性教師が誤って、何か変なボタンを押した。

 「ん?」



フジシマ高校 教室


 『本当に70%の電力でアレを吹き飛ばせるんですかね?』

 『やるしかないでしょ・・・ん? あれ? なんか職員室、エコーに響いてない?』

 『あっやべっ! マイクがONになってた!?』ブツッ

70%の電力であの化物達を吹き飛ばす、その話の内容が全生徒にスピーカーから耳にした。

 「70%の電力で・・・アイツらを吹き飛ばす?」

勝谷が目を丸くして呟いた。

 「70%かあ・・・足りるのかな?」

松沢はさっきのアナウンスに少し不安を感じていた。

 「たった70%でアイツらば全員殺しぇるとは思えん・・・。」

勝谷は急いで後ろを振り返り、教室から去ろうと走る。

 「おい! どこ行くんだよ!!」

 「あんでかかアンテナがある所!! 100%やなか理由が分かる筈や!!」



帥丙Aの世界


帥丙BとCから逃げてきた帥丙達は辺りを見渡しながら瓦礫が錯乱した道路を歩いていた。

 「・・・マジで俺の世界じゃねえか。どうなってやがる?」

 「・・・老けたご主人様、別のご主人様の世界に紛れ込むかもしれないって言ってたけど・・・まさかここまで分かりやいなんて・・・。」

 「ああ、そういえばそう言ってたなジジイの俺」

 「伏せろ!!」

帥丙Aがいきなり帥丙達に叫び、帥丙達はビックリした。

 「は!? どうした!?」

帥丙は伏せずに帥丙Aに質問すると、帥丙Aはすぐさま銃を取り出して獣の様な怖い顔で威嚇した。

 「全員伏せろ!! 死ぬか!?」

帥丙達は言われたとおり急いで伏せた。帥丙Aは全員座ったその瞬間に辺りを乱射する。

 「立て!! ここから逃げるぞ!!」

 「は!?」

 「早くしやがれ!!」

帥丙Aの指示に従い、帥丙達は帥丙Aの跡を追うと後ろから銃声の音が聞こえた。

 「何あれ!? 何で入国審査が厳しい日本にあんなテロリスト軍団がいるんじゃい!!」

帥丙Dが叫びながら必死に逃げる。

 「ねえ!! 一体どこに行くの!?」

チムピスは帥丙Aにどこへ行くか尋ねると、帥丙Aは「黙ってついてきやがれ!!」と大声で黙らせようとした。

後ろから「大麻万歳」と叫びながら銃を乱射し続ける世紀末の恰好をした奴らが車に乗って追いかけて来ている。

 「うわああ!! 何でアイツら俺達を撃ってくるんだ!?」

明人が情けない声を出して帥丙達に言った。

 「おい止めろ!! 俺達を撃っても大麻なんかねえぞ!!」

帥丙が後ろの奴にそう叫ぶと、「うるせえ大麻反対派共!!」「武力で対抗しないと大麻は解禁されねえんだよ!!」「大麻解禁するなら考えてやる!!」「へぇ!? LSDも合法化してくれるんですかぁ!?」と身に覚えのある対話が聞こえた。

 「どっかで効き覚えがあるメンツだなお前ら!! つか大麻なんて勝手に海外でやってろ!!」

そう4人集に怒鳴っても世紀末は止まろうともしなかった。あたりまえな結果だった。「日本だけ取り残されてんだよ!!」「日本以外の国は大麻合法化して日本だけ大麻規制強化してんだよ!!」「全国民に大麻チップ埋め込ませるのを義務化して取り締まるって馬っ鹿じゃねえの!? 馬っっ鹿じゃねえの!?」「へぇ!? 日本政府潰していいんですかぁ!?」と叫び返された。

 「おい未来の俺!! お前の未来こんなディストピアになってんのか!? 大麻合法化進んでんのに日本だけ大麻規制強化ってあいつらの言う通り馬鹿じゃねえのか!!」

 「知らねえ!! 俺は国の指示にしか従ってねえんだよ!! 大麻規制なんか知るか!!」

走りながら帥丙Aを罵倒している時に、帥丙Aは右の通路に曲がった。帥丙達もそこに曲がるとそこはコンクリートで出来た壁の行き止まりだった。

帥丙Aが壁に手を当てると触れている手の周りが青く光り出した。

 「おい何してんだよお前!! 思いっきり行き止まりじゃねえかどうすんだ引きかえす暇ねえぞ!!」

 「何してんの!? ねえ!? コイツ何してんの!?」

帥丙Dが明人に声をかけて慌ててる。明人も「知らねえよお前だろお前自身だろ何してんだよ!!」と動揺しながら帥丙Dに向かって襟首を掴んで叫んでいた。

 「ご・・・ご主人様!! アイツら来てるよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

チムピスが後ろを向きながら恐怖を感じ帥丙達に告げる。後ろにはさっきの世紀末の奴らがこっちに曲がって銃口を帥丙達に向けていた。一斉にフォアエンドを引き、弾が込められた音が帥丙達の耳に届く。

 「くたばれテロリスト共ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

帥丙Aが世紀末の奴らに向けて叫んだ時だった。触れてた壁が一辺そのものトランスフォーマーのように変形し、両サイドに巨大なマシンガンとコックピットの下に大砲が設置されたロボットアニメに出てくる戦車へと姿を変えた。

変形が完了した後、大砲は爆発音とともに砲弾が発射され目の前の世紀末の奴らに直撃した。

帥丙A以外の帥丙達は何が起きてるのか全く分からなかった。気が付くと世紀末の奴らはもういなかった。

 「乗れ!!」

帥丙Aが戦車の横の凸った板を手に乗せて光らせながら横にスライドすると戦車の内部の入口になった。帥丙達は帥丙Aの命令を聞き、すぐ中に入った。一番早く行動したのは明人だった。

 「何が起きたの?」

チムピスだけ膠着してて動こうとせず、恐怖にひきつった顔で帥丙Aを見た。

 「乗れっつってんだろジンギスカン!!!」

帥丙Aの威喝な叫びにびっくりし、チムピスは急いで戦車の中へと入る。

全員は行ったところで扉が閉まられ、真っ黒のモニターから地図が出てきた。

 「ここなら安全だ。今すぐ親父がデパートで買い物してる時間帯に行くぞ。」

帥丙Aはそう言ってタイムマシンを取り出し、中身が見えてる青い電池を入れ電源を入れた。

 「おい・・・こんな税金の無駄遣いをしてまで大麻を取り締まってんのか? おかしいだろおい。」

 「親父に言え!! こんな日本にしたコイツに!!」

帥丙の突っ込みがうっとおしかったのかタイムマシンの操作をしながら大声で帥丙を黙らせた。

 「ええと、お前の時代の時間帯はこれであってるよな?」

タイムマシンの画面を帥丙に見せた。その瞬間だった。いきなり上から物凄い衝撃が出て辺りが真っ赤になった。チムピスは衝動でこけてしまう。

 「うわ何だ!?」

 『上からの衝撃を確認。ここからおよそ300mの上空に巨大な飛行物体を検知。』

 「飛行物体!?」

帥丙Aが画面の近くにあるコントロールパネルを複雑に操作すると画面から外の空上の景色が映る。そこには三角形の形をした戦闘機が五機以上飛んでいた。

 「なっなんだこれ!?」

 「はあ!? 知らねえの!?」

帥丙は帥丙Aが映像に移っている戦闘機を全く知らなくて凄く目を丸くした。

 「知るかよ!? なんでこんなもんが飛んでんだ!? 逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

帥丙Aは近くにあるハンドルを握り、戦車を運転する。動いた衝撃で帥丙A以外はバランスを崩すがチムピスだけ後ろの壁に叩きつけられた。

 「ぐぅえ!!」



フジシマ高校 廊下


 勝谷がアンテナがある場所まで階段を上って探すがどこにも見当たらない。

 「くそ!一体どこしゃぃあるって言うんばい!!」

アンテナが丁度ある位置に居てもそれらしき部屋は見つからなかった。それでもどこかにあるか調べようと走ると、黒田に掴まった。

 「ちょっと勝谷さん!! 一体どうしたのそんなに慌てて!?」

 「アンテナがある部屋はどこしゃぃあると!?」

 「え!? そこに行ってどうするつもりなの!?」

 「たった70%ん電力であん化け物ば一掃するって言うとったばい!! 100%完璧でなきゃ絶対あいつら全滅できんやろ!! アンテナのある部屋はどこばい!!」

勝谷は必死だった。70%の電力では不完全すぎて30%無駄になってたら外に居る化物達を駆除出来るわけないと思いこんでいる。黒田の両肩を掴み、腹から力を入れて声を上げた。

 「・・・地下にあるけど。」

 「地下!? ぁぁぁぁああああ!! ここまで登るの無駄やった!!」

黒田の発言に凄く後悔し、頭を抱えて絶叫した。怒りを吐いた後、急いで階段の横の柵に乗り滑りながら下って行った。

 「ちょっと!! あぶないよ!!」



???の世界


 「なあ!! なんか赤い長方形の中の端に星が5つないか!?」

帥丙はモニターに移っている上空の戦闘機をズームすると妙な模様を見つけた。帥丙Aがその模様を見る。

 「ふぁっ!? なんで協力関係にある国の戦闘機が日本を攻撃してんだよ!?」

帥丙Aは凄く驚いた。まさか支援関係である隣国が日本を攻撃するなんてありえない話だからだ。

 『周囲に未確認物体を5体検知。』

いきなりロボットの音声が響き、モニターからサイバーパンク風の人型ロボットの様なものが映し出される。

 「おいコイツらもしかしてあの・・・」

見た事がある姿だった。帥丙Aが来て未来を変えた後に現れた人型ロボットに非常に似ていたのだ。その人型ロボット5体がモニターに映し出され、こちらの方に右手を構えているのが分かる。その右手から尖ったロケットが発射された。

 「なあ、あれ大丈夫か? 戦車に当たってもびくともしねえよな?」

 「大丈夫だろ。俺んとこの戦車なめんな。政府が高額で作りあげた日本産の高性能戦車・・・」

左の壁から爆発音が響き、尖ったロケットが貫いた。半分以上が内部に入り込んでいた。帥丙Aは急いで銃を逆手にとって壁から貫いてきたロケットをバットのように振りかざして外に放り投げた。その衝撃でロケットは大爆発を起こして穴から超強力な風が入り込み、明人が壁に仰向けで宙に浮いたようにへばりついた。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 「全力モードに搭載しろぉぉぉぉぉぉ!!」

帥丙Aはすぐにハンドルを握り戦車を前進させながら一人で叫び出した。すると『全力モードに切り替わりました。運転席以外の方は吹き飛ばされないよう固定された物にしがみついてください。』とアナウンスが流れると共に強い振動が襲いかかり帥丙A以外バランスを崩した。

モニターを見るとこの戦車が物凄く走っているのが分かった。まるで早送りのように前進しているからだ。

 「ひぃぃぃぃぃぃぃぃちょっと止めて止めて止めて!!」

チムピスが戦車の速度によって壁にへばりついたまま帥丙Aに止めるよう要求したが帥丙Aは「うるせぇ!!」と返した。

帥丙Aは必死にハンドルを握って前の巨大なシャッターにぶつからないように左折しようとするがコントロールが効かない。ハンドルが効かないままそのままシャッターに突っ込んだ。だが突っ込んだ先には蓮まみれの街が見えた。

戦車はなぜか飛び下りたように急落下する。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

まるでエレベーターが落下してるかのように沢山のビルが急上昇しているように見えた。

 「おいなんだこれなんだこれ!? なんで俺達落下してんの!?」

帥丙Dが浮かびながらそう言うと、巨大な落下音が鳴り響き浮いていた帥丙達は地面にぶつかった。

 「おいここさっきの場所じゃねえよ・・・また変わりやがった。」

モニターを見ながら帥丙Aは驚いた表情で言う。外の光景は帥丙が住んでいる街と変わらないが自衛隊員だらけだった。

その自衛隊員が戦車を見つけると、銃を突きつけた。

 「今すぐ戦車から降りろ!! 青少年健全治安育成条例違反だ!!」

 「は!? 何!? 健全育成条例!? またあの過激派じじいがそんな条例作ったのか!?」

帥丙Aが自衛隊が言った条例に呆れながらマイクに向かって喋った。

 「あるデパートがテロで吹き飛んだ事により出来た条例を知らないのか!?」

自衛隊の一人が戦車に向かって思いっきり叫んで威嚇した。

 「貴様で58人目だぞ!!」

もう一人も同じく叫び出した。

 「知らねえな!! 俺は急いでんだよ!!」

帥丙Aはそう言ってアクセルを踏み、戦車を動かす。高い所から着地したにも関わらず何事も無かったかのように動き出した。

自衛隊員は逃げていく戦車を見てすぐに銃を連射した。勿論、戦車には傷一つ付いていない。

猛スピードで自衛隊から逃げている時、前から派手な格好をした暴徒が暴れていて別の自衛隊員達が銃をぶっ放して鎮圧させようとしている光景が映った。

 「どけどけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ邪魔だああああああああああ!!!」

帥丙Aは暴徒と自衛隊関係無く前に突っ走り両方とも多く引き殺した。骨が砕ける音やモニターから血と肉の一部がブッ掛かる。

 「いやあああああああああああああああああ!!!」

チムピスはモニターを見て発狂した。

 「よし! 大丈夫だもう人はいねえ!!」

ようやく人ごみがいなくなり、血で真っ赤なモニターをワイパーが掃除し始め、たった一回で外の光景が綺麗に映し出されたその時、天井が爆発音と共に吹き飛んだ。

 「え? 何?」

帥丙が上を向くと、そこには頭がビー玉の男が外からよじ登ってきた。ビー玉が帥丙の姿を見ると驚いた表情をした。

 「は!? お前帥丙水人か!?」

 「ビー玉!? お前ここで何してんだよ!?」

ビー玉は急いで戦車の中に入り帥丙の方に近付いた。

 「てめえぇぇぇぇ帥丙!! 過去に行ってテロ止めに来たんじゃねえのか何しに行きやがったゴラァ!!」

 「いや違う!! 俺はそいつとは違う帥丙だぞ!! ブラックホール出す奴だろ!? この中にいねえよ帥丙違いだ!!」

帥丙は慌ててビー玉にあのブラックホールの自分は居ないと説明する。

 「嘘つくなよお前を二人連れて来て一体何考えてんだ!! 進●の巨人の恨みはどうした!!!」

 「今やってるって!!」

 「今やってるだと!? 過去改変しまくって大変な事になってるんじゃねえのか!? あの二人誰だ!! 貴族と軍兵なんか連れてきやがって!!」

ビー玉は血迷ったように帥丙の襟首を掴み、思い当たって前に突進し帥丙Aに激突する。帥丙Aはハンドルを思いっきり左に回してしまいコンビニに突っ込んでしまった。

窓ガラスが散り、まるで鏡を割ったら別の光景が見えたかのように蓮まみれの世界に辿り着いた。

 「うわ!! また世界が変わった!!」

チムピスが股世界が変わった事に驚いた。

 「気をつけろ!! また別の世界に着いちゃったじゃねえかこの野郎!!」

帥丙Aがビー玉と帥丙にそう怒鳴ると二人はモニターを見た瞬間固まった。

 「え・・・何これ?」

 「何この神話世界。」

外の光景は全てのビルに花蓮が生えており、一般人のほとんどが花蓮で局部を隠していた。

 「嫌な奴の世界に着いちまった・・・。」

帥丙Aが嫌そうに呟くと同時に、吹き飛んだ天井からスピーカーの様な老婆の声が響く。

 「なんだ?」

帥丙は上を向いた。吹き飛んだ天井から見えた光景は、ビルの10階建てくらいの位置にあるテレビからビー玉の様な女性が花蓮柄の和服を着て何か喋っていた。

 『ここで我が神、帥丙水人からの伝言が入りました。』

ビー玉もビー玉そっくりの老婆が映っているテレビの方を向いた。

 「ばあちゃん!?」

 「すげえなお前のお婆ちゃん出世してんの?」

帥丙Dは真顔でビー玉に言った。

 「吹き飛ばして行方不明にしたのに生きてたのか!?」

 「ふっ吹き飛ばした!?」

ビー玉の衝撃的な発言にチムピスは物凄く驚いた。

 『戦車らしき物に帥丙水人の偽物が乗っているそうです。我が神を勝手に名乗って騙そうと、なんて無礼な糞野郎でしょう。でもご安心ください。さっき今、私が投げたビー玉を帥丙水人が自ら乗られ彼らを追いかけていらっしゃるから貴方達民間人には何も害は及びません。』

 「は?」

帥丙Aは映像に移っているビー玉そっくりの老婆が言った事が理解できない。それは他の奴らも同じことだろう。吹き飛んだ天井から映し出される空の光景に小さなガラス玉が次第に大きくなってきているのが見えた。

 「おいなんかこっちに来てねえか?」

そのガラス玉の上には人が二人乗っているように見える。大きくなっていくにつれて、その二人は帥丙Bと帥丙Cだと言う事が分かった。

 「奴らだあ!!!」

明人が腹から声を出して叫んだ。帥丙Aは思いっきりアクセルを踏む。戦車の速度は更に増し、明人はその衝撃により天井から頬り出された。

 「親父い!!」

明人は必死に天井の端を掴み持ちこたえようとしている。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

戦車の速度による強風で明人の顔は後ろに引きついてマスクのようにベロンベロンになっている。

 「タイムマシンよこせやああああああああああああ!!!」

 「花蓮花ビラクラァァァァァァァァァァァァァッシュ。」

帥丙Bが戦車に向けて必死に小さなブラックホールを大量に放出し、帥丙Cは仏混じりの棒読みで背中から沢山の花蓮を咲かせ、その花蓮から花びらを一枚一枚発射させ手裏剣のように戦車に向けて襲い出す。

 「いやあああああああご主人様ああああああ!!」

チムピスは帥丙Aにすがりつきながら大声で泣き出した。

帥丙Aは必死な目つきでキーボードを素早く打ちつけながら「後部映写モードにしろ!!」と叫びだし、モニターが後ろの画面に移り変わり巨大なビー玉とその上に乗っかっている帥丙Bと帥丙Cが映し出された。

帥丙Aはハンドルを回しながら花びらとブラックホールを綺麗に避ける。が、明人は振り払われそうになっていた。

 「おい!! お父さんの事も考えろ水人!!」

明人が帥丙Aに向けて訴えるも、帥丙Aは「うるせえ!!」と言い返した。

画面上には花びらが無くなり蓮の種だけが残ると、面が戦車の方へ向きマシンガンのように種を打ち始めた。

 「天井の穴から離れろ!!」

帥丙がモニターを見て必死に警告し、帥丙Aと帥丙と明人以外はすぐに端に寄った。天井から蓮の種が銃弾のように降りかかり中央の床が蜂の巣状態になり一秒足らずで巨大な穴へと変化した。

 「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」

明人は運よく蓮の種が全体から一ミリ離れていた。

 「ねえご主人様!! 前はどうなってるの!?」

 「そんなもん知ったって人轢こうが建物にぶつかろうがこの戦車はびくともしねえよ!! いいからしがみついてろ!!」

そう言いながら帥丙C達の攻撃を避けながら見えない先を運転する。

 「うわああああああああああ止まれえええええええええ!!」

明人が何か必死な顔で帥丙Aに訴えるも無視して攻撃から避けている。その時だ。


道路を走る音が止んだ。アクセルは踏んでる筈なのに音が止むなんておかしい。

 「ん? 何だ? 故障か?」

帥丙Aは運転席の配線を確認すると、後ろの帥丙達は宙を浮いていた。

 「おい!! この戦車落ちてねえか!?」

帥丙が吹き飛んだ天井を見るとさっきまで空だった光景が山と森が下から出て来てる様に映し出される。

 「え?」

帥丙Aがモニターを見ると、空が映し出されたと同時に下から岩まみれの道路が映し出され空に向かってる様に見える。それが崖と認識したのは1秒かかった。

 「ウソだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

今度は戦車が激しく震動し始め、帥丙Aと明人以外が落ちていく勢いで後ろの壁にへばりつく。

帥丙Bと帥丙Cを乗せた巨大なビー玉はお構いなしに崖の下に直球で角度を変え襲いかかってくる。

 「今ソノ枠ヲ破壊シテチリチリニシテヤル。」

帥丙Cが再び蓮の種を戦車に向けて発射し始めた。

 「おい後ろから撃ってきてるぞ!!」

帥丙Dは蓮の種が後ろに乱射していてそれが次第に音が大きくなっていくのを感じた。削り取られているのが分かったのだ。

 「ハンドル効かねえ!!」

帥丙Aがハンドルを回しても後ろの光景が変わらない。

 「おい前はどうなってんだよ!! 地面近づいてねえのか!?」

帥丙が帥丙Aにそう叫ぶと帥丙Aは急いでモニターの映像を変えた。

映し出された映像は宮殿の中だった。

 「え? 何これ?」

 「え!? 俺の家!?」

一番驚いたのは帥丙Dだった。金色に輝く廊下、全て金で出来ていた柱の数々、天井には天使と神様が描かれていた。帥丙A以外が重力が戻ったかのように地面に立っていた。

 「おい!! 執事が目の前にいるぞ!!」

帥丙Dが急いでハンドルを掴み軌道を変えさせようとするがハンドルが効かなかった。戦車は執事達をどんどん撥じき飛ばし3人は戦車の下に潰された。戦車の中から骨が砕ける生々しいが響いた。

 「そっ空が・・・絵になってる!? え!? 今さっき全裸のご主人様がいたよ!?」

 「絵師に頼んだ絵だよ!! 今それどころじゃねえだろ何とかしろ!!」

その時、後ろの壁から爆発音と同時に花蓮が生え始めた。

 「え!? 何!?」

 「おい嘘だろ・・・。」

その花蓮が完全に満開になり種が見え始めると後ろから帥丙Cの声が響く。

 「蜂ノ巣ダァッ!!」

花蓮から種が発射されそうな時に帥丙Dが帥丙Aの襟首を掴んで何やら揉めている。

 「おいこの先やばいって!! 突っ込んだらお前らの命ねえって!!」

 「うるせえ!! ハンドルが故障しちまったしどうしようもねえだろ!!」

 「お前の戦車だろ!! あの先は火薬室だぞ!! この戦車が突っ込んだら屋敷ごと吹っ飛ぶ!!」

何度も帥丙Aに訴えても解決策が見つかるはずもなく、立ち入り禁止と書かれたドアをぶち破ったと同時に大爆発を起こした。

戦車は完全に吹き飛び、帥丙達はロケットの様なスピードで外に放り出された。

地面に着地した後はもう屋敷の姿は無かった。あったのは崩壊した沢山のビルだけだった。

 「なっ何が起きた!?」

 「確か凄い爆発が起きて戦車が無くなって・・・って、ここって軍服のご主人様の世界?」

 「また戻ってきちまったのかよココに。」

 「・・・奴らはどこだ?」

 「さあな、ここは廃ビルの屋上だから心配する必要ねえんじゃねえの?」

ビー玉が辺りを見渡しながら言う。確かに帥丙Bと帥丙Cの姿が見えないからこの世界には居ないのかもしれない。

 「それより俺の屋敷どうなったの?」

帥丙Dが目を見開きながら帥丙Aに向けて言う。帥丙Aは帥丙Dを全く気にせず無視をした。

 「そもそも何で火薬室あったの?」

明人が帥丙Dに問いかける。

 「ちょっと財産やばくなってきたから銃を作って海外に売るために。」




フジシマ高校 職員室


 「あ~いいですねえ詩善先生。どんどん化物共が集まってきますよ。」

時計台の上に化物共を集める作戦は成功していた。化物達は時計台から少し上に離れて巨大な玉の集まりになっていた。

 「そろそろ発射した方がよろしいのでは?」

教師が校長に言うと校長は少し頭を悩ませる。

 「う~ん・・・・・もう少し待ちましょう。」



フジシマ高校 地下


沢山のスーパーコンピュータが並び大量の配線が全て繋がっており地面が見えなかった。

 「うわ・・・どこしゃぃあるんばい。あんデカイアンテナに繋がっとー機械。」

勝谷はお構いなしに配線を踏みながらアンテナに繋がってる機械を探す。すると、一部の配線が渇いた音と共に千切れる。

 「何や!? もしかしてアンテナん配線ちぎれたと!?」

配線が千切れた先のスーパーコンピュータに向かい確認すると、2-1と書かれてあった。あのアンテナを操作するにはこれでは足りないし違うだろうと安心する。

 「びっくりした。アンテナかて思うたばい。」



フジシマ高校 教室 2の2


 窓から頭を突き出してる男子が右を向くと隣の2の1から膨大な爆発音と共に炎と生徒の肉片と内臓が大量に吹き出した。

 「うわああああああ何だ!?」

 「隣の教室が爆発したあああああああああ!!!」



フジシマ高校 地下


 「黒田ん奴、本当にここしゃぃあるんか? それらしいものが見つからんばい。」

勝谷はズカズカと歩きながらアンテナに関係するスーパーコンピュータを探し続ける。すると、ボタンが多い機械を見つけた。そこには一つだけ点灯していない機械だった。

 「これか?」

そのボタンを押すと点灯したが、その機械をよく見るとクーラー調整機と書かれてあった。

 「違うか・・・。」

だが押したボタンが気になる。勝谷はそのボタンに何が書かれているか調べると下に人工生物部と書かれてあった。

 「やっぱり違うばい。本当にややこしすぎるばいここ。アンテナば操作する奴はどこばい!!」



フジシマ高校 廊下


 人工生物部の教室からトカゲ頭の生徒とカレーパンの様な頭で目が4つな生徒が大慌てで飛びだして何かから逃げているようだった。

 「逃げろおおおおおおおおおおおお!!!」

 「ライオンと象のキメラが暴走したああああああああああ!!」

人工生物部の教室のドアが破壊音と共に一瞬に瓦礫化し、巨大な頭がライオンで体が象のモンスターが現れ二人を追いかけている。

 「誰だクーラー点けた奴はああああああああああああ!!!」



帥丙Aの世界


 しばらく待機していると、何やらヘリコプターのような音が近づいてくる。帥丙達全員気づき始め、辺りを見渡した。

 「何だ?」

 「何の音?」

ヘリコプターの音が近づいてくる。その音は真後ろから聞こえる。強い風が後ろから来て帥丙全員後ろを振り向くと、帥丙達を追いかけていた4人組がいた。一人はマシンガンを持って狙いを定めている。

 「ま・・・またお前らか!!」

 「大麻の恨み!!」「大麻の恨み!!」「こっち側につけば考えてやる!!」「へええ!? それは無理なんですかぁ!? 死ねえええええええええ!!」

最後の奴がマシンガンを打ち始める。帥丙達はその銃弾から必死に避ける。

 「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 「いやああああああああああああ!!」

 「まっ待ってくれ!! 俺の世界じゃ大麻は合法だ!! 俺の世界に来ればたらふく吸わせてやる!!」

帥丙Dが4人組にそう説得するが相手は聞き入れなかった

 「この世界で吸わねえと意味ねえんだよ!!」「頭パープリンかてめえ!!」「お前の思考が理解できん!!」「へええ!? 井の中の蛙ですかあ!?」

それ以前に別国だと勘違いをしていた。マシンガンの男は帥丙Dに狙いを定め即乱射した。帥丙Dは原型をとどめて無く肉片が大量に散らばり、複数の皮が地面に落ちて大陸みたいになった。

 「ひいいいいいいいいご主人様あああああ!!」

 「ご主人様いっぱいいるだろ!!」

帥丙Aは恐怖で怯えているチムピスに正論をぶちまけた。4人組は帥丙達を狙い撃ち殺そうと乱射している。

 「調子に乗るなあああああああああ!!」

帥丙Aがマシンガンの玉を避けながら銃をヘリコプターに乱射している。が、ヘリコプターは無傷だった。

帥丙と明人とチムピスがマシンガンから必死に逃げている。帥丙Aはそれでもヘリコプターを打ち続けた。

その時、マシンガンは乱射を止めた。しばらくするとそのままゆっくりと着地する。

 「・・・・なんだ?」

帥丙Aが恐る恐る近づくと、マシンガンが突き出ている所から仏さまの姿になって輝いている4人組が足を組みながら浮遊して姿を現した。

 「おいなんだ!?」

 「ココマデデスヨ。別世界ノ私ヨ。」

帥丙達の後ろから聞き覚えの声がした。帥丙達は後ろを振り向かなくても誰か知っていた。帥丙Cと帥丙Bが来たのだ。

 「大人しくそのタイムマシンを渡せ。断ったら分かるよな? これが見えるかな!?」

帥丙Bが右手からブラックホールをだしてさらに巨大にした。

 「まっ待て待て!! お前、俺の世界の帥丙か!?」

ビー玉が帥丙Bに説得すると、帥丙Bは驚いた顔でブラックホールを消した。

 「ビー玉? お前・・・俺ん所のビー玉か?」

 「こんな所で何やってんだよ! 規制の無い世界はどうした!?」

 「ソイツ、軍服の俺が持ってるタイムマシンでデパートをブラックホールに飲み込ませればこれで全てが解決する。もう規制に苦しむ事なんて無くなるぞ。」

 「え? マジで?」

 「マジデスヨ。」

帥丙Bの横から当たり前のように帥丙Cが出て来てビー玉に言った。ビー玉は帥丙Aの方を向く。

 「お前、あの仏の奴の世界見ただろ。ああなりたいのか?」

帥丙Bの方を向く。

 「でもそのおかげで漫画やアニメの規制は全くなくなった。」

それを聞いた瞬間、ビー玉はすぐにビー玉を大量に取り出し指の間にビー玉を挟み帥丙A達に向かって威嚇した。

 「今すぐタイムマシンをこっちによこせ!!」

帥丙Bも連れて両手からブラックホールを出し、巨大化させている。

 「頼むよ~でないとこのブラホちゃんお腹空いてるから君達食べちゃうよ~?」

 「オヨシナサイ。」

帥丙Cが帥丙Bのブラックホールを花蓮に変えて無効化する。

 「彼ラ4人集ヲ見テ、コノ状況ハ貴方達ハモウ既ニ不利ナンデスヨ? 分カリマスヨネ軍服ノ私ヨ。」

確かに不利だ。帥丙達は帥丙Cの力を完全に理解していない。どれほどの力を持っているのかまだ分からないのだ。それがあの4人組に分け与えてしまったのだから攻撃したらどうなるか検討がつかない。帥丙Bとビー玉も威嚇しながら帥丙Aに近づいてくる。

 「そのタイムマシンさえ手に入ればお前らには何もしない。いいか。俺はただ規制まみれのディストピィアを滅ぼしたいだけなんだ? 分かるだろ?」

 「俺は今すぐ血が見たいんだ。漫画のな。な?」

帥丙Aがとった行動は、タイムマシンを取り出し膝でへし折ろうとする体制を彼らに見せつけた。

 「近づいてみろ!! 何かしてきたらこのタイムマシンをへし折ってやる!!」

帥丙Bは彼の行動を見て驚いた声を発し、一歩後ろに下がった。帥丙と明人は「はあっ!!?」と大声を出して驚いた。

 「おっお前正気かよ!? 俺がやろうとしているのは救うことだぞ!? まああの仏野郎の俺は嫌だって分かるけど漫画とアニメは規制されずに済む!! お前の所はどうだ!? 辺りを見ろ!! 大麻を規制したせいで世紀末みたいな環境になりやがった!! 北斗の拳じゃねえか!! 俺がいる世界より酷いだろ!?」

 「あんな奴の世界を見てきたが息苦しくて死にたくなるくらい悪い世界じゃねえか。」

 「お前世界の環境で決めてんの? 帥丙お前そんなキャラか? ん?」

 「俺から見たらユートピアだぞ!! 悪い事は言わねえ!! 頼むからそのタイムマシンをこっちによこしてくれ!! デパートをブラックホールに飲み込ませるだけで良いんだ!!」

 「・・・そんな世界にしてえなら自力で奪ってみろ!!」

帥丙Aがタイムマシンを仕舞い銃を取り出して帥丙Bとビー玉を乱射した。帥丙Bは急いでブラックホールを前にだし盾にして前に吹き飛ばした。ブラックホールは帥丙Aを飲みこもうと襲いかかると帥丙Aは反復横とびで避け、再び帥丙Bに乱射した。それをまた帥丙Bがブラックホールで盾にして防いでいる。

 「てめええ!! 規制された世界がそんなにお望みかあああああああ!!」

ビー玉が帥丙Aに目かげてビー玉をぶん投げて攻撃し始めた。投げだされたビー玉は2つでそれが巨大化し、まるで瞼を掻くかのように曲がりながら帥丙Aの方に向かった。帥丙Aはマシンガンの手持ちを地面に押し出しジャンプして避けた。ビー玉二つはぶつかり合いガラスの割れる音を出して粉砕した。帥丙Aは無傷で着地する。

 「もろいなビー玉!! ハッカキャンディと間違えたか!?」

すると4人組がいきなり帥丙Bの前に立つと花びらが無い蓮を大量に出して帥丙Aに目かげて打ち出した。

「コレデコノ野郎ニ復讐ガ出来ルゼェェェェ。」「ナントイウチカラ。仏ッテスゲェェェェェェェェ。」「花蓮ニナリタイナラ考エテヤル。」「ヘエエ。兵隊全員マッサツデキルンデスカァ。」とエコーのかかった棒読みで帥丙Aを乱射し続けている。帥丙Aは蓮から銃のように飛ばしてくる種を避けながら4人組に向けて銃を乱射し続けている。

 「ご主人様!!」

帥丙Aがチムピスの距離から近くなるとチムピスは急いでバリアを張った。役に立たないバリアかと思ったら蓮の種はちゃんと弾いていた。

 「えっ!? お前のバリアいつからそんな頑丈になったんだ!?」

帥丙Bがチムピスに問うとチムピスは威嚇した顔で答える。

 「変わってない!! バリアは鍛えられないんだよ!!」

 「ああ要するに蓮の種の攻撃弱いのか。」

帥丙Bは納得し、方手からブラックホールを出して帥丙に目かげてぶん投げた。ブラックホールは凄い早さでバリアに直撃し、バリアと共に粉砕した。

 「うわあああああああああ!!」

帥丙達はまだ乱射し続ける蓮の種から逃げる。

 「何でバラしてんだヤギテメエ!!」

帥丙Aがチムピスを思いっきり怒鳴った後、4人組に向けて撃ちだした。が4人組の体は弾を余裕で跳ね返していた。

 「ヤレヤレ。コノ帥丙水人ハ愚カスギマスネ。」

帥丙Cが呆れたような口ぶりで聞こえるように言う。そして後退しながら帥丙達から離れていきやがて姿が見えなくなるほど小さくなった。

 「チムピス!! もう一度バリア張れ!!」

チムピスは帥丙Aの言われたとおりにバリアを張った。「マタバリア張リヤガッタ。」「マタバリア張リヤガッタ。」「マタバリア張リヤガッタ。」「ヘエエ。マタバリア張リヤガッタンデスカァ。」とエコーのかかった声が帥丙達の耳に入ると同時に蓮の種がバリアに向けて乱射している。

バリアはびくともしなかった。

 「何の意味があるんだよ!! アイツに破壊されて終わりだろうが!!」

帥丙が恐怖でひきつった顔で帥丙Aに向けて言うと、帥丙Aは急いで4人組が乗ってたヘリコプターに乗ってエンジンをかけていた。エンジンがうまくかかり、プロペラが回転して浮き始める。

 「速く乗れ!!」

帥丙Aが帥丙とチムピスと明人に向けてそう呼びかける。帥丙と明人は急いでヘリコプターに乗るがチムピスだけがバリアを張ったままで動いてなかった。

 「おい何してんだ早く来いよ!!」

帥丙がチムピスに言うとチムピスは恐怖でひきつった顔で帥丙にこう訴えた。

 「どうやって!? バリア張ってる間は動けないんだよ!!」

 「だったらそんな役立たずなバリアなんか解いてこっちに来やがれ!! アイツらに破壊されて死にてえのか!?」

 「チムピス!! そこから動くんじゃねえぞ!!」

ヘリコプターがチムピスの方へと向かいだす。コックピット側のドアが開き帥丙Aは上半身を外に出しチムピスの腹を腕で持ち上げ膝の上に乗せた。

 「バリアは絶対に解くな!! また破壊されたらもう一度出せ!! いいな!!」

バリアは帥丙Aにチムピスが掴まれた同時に動きだしていて今はヘリコプターを覆っている。チムピスは首を縦に振り、バリアを保とうと両手を前に出した。4人組はポーズを変えずに浮遊で追いかけ、帥丙Bはビー玉が投げて巨大化させたビー玉に乗り、追いかける。

蓮の種がヘリに向けて乱射されるがバリアで弾かれている。

 「役に立たねえ蓮なんか使ってんじゃねえ!! もっと他に使えるもんねえのかネット荒らし!!」

 「ナイ」「ナイ」「ナイ」「ナイ」

 「あ~じゃあお前何もしなくていいや!! 俺がやる。」

ビー玉はポケットからビー玉3つ取り出し、ヘリコプターに目かげて野球のようにぶん投げた。

 「誰がハッカキャンディじゃおらあああああああああああああああああ!!!」

ビー玉3つは巨大化し、曲線をなぞるように追いかけてくる。

 「うわああああああああアレ無理ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 「知ってるわボケ!!」

帥丙Aは乱暴に操縦する。ヘリコプターはビー玉3つを華麗に避けるが逆さになったり急落下したりするので、帥丙Aとチムピス以外洗濯機に回されてる様に激突し続けた。

 「と・・・止め・・・!」

 「あぁぁぁ~何ぃぃぃ~!?」

チムピスが気持ち悪そうに止めさせようと言いかけるが帥丙Aは集中し過ぎて誰の言葉にも耳に入れない状態だった。巨大なビー玉が上から降りかかり、それを察した帥丙Aはヘリを真横にして避ける。と同時に二回回転した。チムピスは我慢が出来なくて帥丙Aの襟首を掴みゲロを吐いてしまった。

 「お・・・てめえ!!」

両手を離してしまったのかバリアが解除され消える。

 「バリア解除サレタ。」「今ダアアアアアア。」「今ダアアアアアア。」「今ダアアアアアア。」

再び4人組の肩から蓮が現れ種を乱射し始めた。

 「おい早くバリア出しやがれ!!」

帥丙Aが必死に操縦しながらチムピスに言うがチムピスは帥丙Aの膝の上でぐったりとしてしまった。

蓮の弾がヘリコプターを狙って乱射し続ける。それを避けながら逃げるも数が多すぎて避けきれてない。

明人が窓越しに外を見ると多くの廃れたビルから花蓮が生え始めた。

 「なっなんだありゃあ!!」

帥丙も明人と同じ驚いた顔をしている。

 「ヘリコプターから放りだすぞヤギゴラア!!!!」

チムピスの角を掴んで左耳に大声で怒鳴る帥丙A。チムピスはうるさかったのか両目を強くつぶり歯を思いっきり噛んでびっくりし、正気を取り戻した後急いでバリアを張る。

だが、蓮の種はそのバリアを簡単に破壊した。目の前にある巨大な廃れたビルから無数の爆発が繰り広げられる。蓮の種によって貫通したのだ。

 「あれ? 蓮の種弱かったんじゃなかったっけ?」

帥丙Bが4人組に問いかけると、「ナンカ知ランガチカラガ湧イテキタ。」「ナンダコノ素晴ラシキ仏エネルギーハ。」「コレナラ奴ヲ炭ニデキル!」「ゲヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ」とよく分からない答えが返ってきた。

目の前の廃れたビルはヘリコプター側に倒れ始めた。

 「おいこっちに倒れて来てねえか!?」

 「ねえこれ避けられるのねえ!!?」

帥丙と明人は帥丙Aに必死に言うが、帥丙Aは何が起こってるのか全く把握できてなく気が動転していた。

 「な・・・何が起きた?」

 「操縦しろテメエ!!」

 「うわああああああ間に合わないぞこれ!!」

帥丙は必死にハンドルを掴み、上に向かせ飛ぶとビルの隙間に入る。オフィスが見え、机と椅子とパソコンが宙に浮いているように見えた。それを避ける暇もなく当たり続け、前のガラスにヒビが割れるが壁の大きな隙間に何度も入り必死にビルから抜け出した。まるで貫通したかのように出てこれたのだ。


横を向くと、巨大な帥丙Cがこちらの方に向いている。蓮の種が強くなったのもアイツのせいだろう。

 「蓮の種強くなったのアイツのせいじゃね?」

帥丙が帥丙Aに言うと帥丙Aは帥丙と同じ方向に向いた。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

帥丙Aは状況を理解し、再びハンドルを握り操縦を開始した。後ろから撃ってくる蓮の種から避けながら。

 「ビー玉も避けてみろやオラア共産主義者!!」

ビー玉も沢山のビー玉を投げ続け、帥丙達を襲った。巨大なビー玉達がヘリコプターに向けて突進してくる。帥丙Aは歯を食いしばりながらハンドルを右に回したり左に回したり下や上に押し込んだりした。

 「タイムマシンを取り出せ!!」

 「はっ!? どうすんだよ!?」

 「お前らがいる現代に設定しろ!! このままだと全員死ぬ!!」

帥丙は言われた通り、帥丙Aの腰についてるタイムマシンを取り出し言われたとおり現代に設定した。

 「時間何時だっけ!?」

 「適当に設定しろ!!」

何時にすれば良いかそんなもの知る暇が無い。12時半に設定して丸い緑色の表記をタップした。ヘリコプターの前から5m先に渦が出来始める。

 「あっ! アイツ逃げる気だ!!」

 「もっとスピード上げろ!!」

ビー玉は後ろにビー玉を投げ、それが巨大化しUターンさせて乗っているビー玉に直撃させた。二倍以上のスピードが出て今にも追いつきそうだった。

 「行かすかボケエエエエエエエエ!!!」



フジシマ高校 地下


前へ進みながら探していると巨大な円形の機械を見つけた。メーターもあり巨大な配線が沢山繋がっていた。

 「絶対こればい・・・。」

おそるおそる近づいてみると小さなモニターに[70%]と設定されていた。どこかにメーターを上げる機械がないか調べてみるがボタンらしきものは一つも見つからなかった。変わりに巨大な配線が一つだけ抜けていた。しかも差し込み口付近に置いてあった。勝谷はそれを持って差し込む口に差し込むと、電気が身体じゅうにビリビリと流れ出した。

 「うぎゃあああああああああああ!!!」

勝谷はその場で倒れ、しばらく痙攣しながら気絶した後頭を抱えながらゆっくりと立ちあがった。

 「差し込んだらメーターが少しだけ上がった。これやなあ・・・。」

あの配線を完全に差し込んだらこっちの身が吹き飛ぶかもしれない。だが差し込まなければ十分な光線が発射されないのは事実。もう死ぬことは慣れてる。再び巨大な配線を持ち、再び差し込もうとまずは深呼吸して落ちつかせた。5回で終わらせ彼女はふと呟いた。

 「やるしかなかとか・・・・。」

思いっきり巨大な配線を差し込もうとするが電力がさらに増して体が物凄く痺れる。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

それでも力を緩まさず、大声で叫びながら最後の力を振り絞って完全に接続させた。瞬間、衝撃で巨大な爆発音と共に上半身も吹き飛んだ。残った下半身はフラフラと10歩歩いた後、前に思いっきり倒れビクビクと痙攣しながら失禁した。



フジシマ高校 職員室


 「え!? どうして100%に!?」

いきなりモニターが100%に表記されて校長は凄く驚いた。後ろに居る教師たちも少し慌て始める。

 「ひゃっ100%になったらどうなるんですか!?」

女性の教師が校長に質問すると校長は窓から突き破ろうと走り出した。

 「逃げろおおおおおおおおおおお!!」

教師達もドアから逃げようとする。が、時すでに遅し、職員室内から白い光が周りを覆った。


学校が大爆発を起こしたと共に巨大な青い光線が時計台の針に向けて発射される。

 「え? 何?」

詩善コトギが後ろを振り向くと青い光線に包まれて化物達と共に消えていった。



帥丙Aの世界


 「入ったらすぐに消せ!! 渦を消すボタンはさっき押した場所だ!!」

帥丙Aは前を見ずに帥丙に命令すると帥丙は目を丸くしながら前を見つめている。

 「え? 何あれ?」

 「あ?」

帥丙Aが前を向くと、渦の先には巨大な青い丸がこっちに向かってきているように見える。

帥丙Aは無言で左に移動すると渦から巨大な青い光線が滝の様な音を出して帥丙Bに向けて発射された。

 「なっなんだあ!?」

帥丙Bとビー玉はすぐさま乗ってる巨大ビー玉から飛び下りると巨大ビー玉は青い光線に飲み込まれ消えたと同時に後ろに居る4人組も巻き添えを食らった。

 「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!」「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!」「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!」「マァアアアアアアアアアアアアアアア!!」

そのまま青い光線は帥丙Cの腹に直撃し、青い大爆発を起こした。

 「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

エコーのかかった断末魔が帥丙Aの世界中に響き渡った。帥丙Cのお腹に巨大な穴が出来て、まるで怪獣がやられてるかのようにもだえ苦しんだ。

 「おい大丈夫か!?」

帥丙Aが帥丙と明人とチムピスに問いかける。

 「だ・・・大丈夫だよご主人様・・・。」

チムピスは帥丙Aの服に掴んでなんとか耐えていた。

 「曲がるなら曲がるって言え!! タイムマシンが点かなくなったぞ!!」

 「何い!?」

帥丙が手にしていたタイムマシンの画面が付かなくなって一番びっくりしたのは明人だった。

 「おい!! お前何で守れなかった!! 自分の癖に!!」

 「俺が悪いっつうのか!? あらかじめ言ってくれればこんなことにはならなかっただろ!! 軍人の癖に頭ワリいのかてめえ!!」

どうする? 今ここで待機しながらタイムマシンを調べるか? 帥丙Aはすぐさまヘリを回転させ周囲を見渡した。帥丙Cは巨大化のまま立ってはいるもののさっきまでの金の輝きは無かった。活動を停止させているのか?

 「おい糞親父!! マシンガン構えとけ!!」

 「はっ!?」

 「あの仏野郎を殺すんだよ!! 早くしやがれええええええええ!!」

ハンドルを前に倒し、ヘリを思いっきり前進させる。帥丙Cと至近距離になるとヘリをマシンガン側に回転させた。

 「撃てえええええええええええええ!!」

帥丙Aの叫び声の通りに明人は帥丙Cの頭にに目かげて撃ち始めた。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

だが帥丙Cは無傷だった。

 「ねえこれ効いてるぅ!?」

明人が不安そうに帥丙Aに問いかけると帥丙Aは銃を明人に向けて「撃ち続けろ!!」と叫んだ。だが頭に当てても全然効いていない。帥丙Aはヘリを移動させ、腕や傷や内臓や股間に目かげて撃たせ続けたが、効いてる様子がない。それ以前に穴が塞がり始めている。


回復し始めているのだ。


 「押シツボマッサージデスカ? アリガトウゴザイマス。」

いきなりエコーのかかった声が響き始めた。帥丙Aは確信した。帥丙Cは本当に効いていない。

 「駄目だ!! もう撃つな!! 逃げる!!」

帥丙Aはすぐにヘリコプターを帥丙Cから遠ざける。なるべく遠くへ逃げようと必死にハンドルを押す。

 「おい逃げて本当にいいのか!?」

 「仕方ねえだろ効いてねえんだから!!」

その時、ヘリに近いビルの下から爆発音がし、ビルがヘリの方に傾きだした。

 「嘘だろ!?」

ハンドルを右上に傾け何とか助かるが、今度は下から巨大なビー玉がヘリの真横を通過した。下から「くそ惜しい!!」とビー玉の叫び声が聞こえた。

 「下だ!! 下を狙え!!」

帥丙Aはマシンガン側に45度傾ける。

 「うわあああああああああああああ!!」

帥丙と明人は落ちそうになるが帥丙は椅子にしがみつき、明人はマシンガンを構えていたので何とか持ちこたえている。

明人は急いでマシンガンを地面に向けて連射する。が、連射した先に巨大なブラックホールが迫ってきた。

 「ねえ水人! 黒いブラックホールこっちに来るよ!?」

帥丙Aは急いでヘリの体制を戻し、前へ前進させて何とかブラックホールを避けた。

 「全然ダメだ!! このままだと一斉逆転だぞ!? もうこの点かねえタイムマシン引き渡すか!?」

 「冗談じゃねえぞテメエ!!」

 「だって点かねえじゃん使えねえだろ!! 他にどうしろっつうんだよ!!」

 「テメエかばんの中身に使えるもんねえのか!?」

帥丙は急いで鞄の中を確認する。松沢と勝谷から貰ったハンカチと静電気の手袋と体操着しか入ってなかった。

 「ハンカチと手袋と体操着しか入ってねえんだけど!!」

 「あーそうだろうなぁぁぁ!! お前学生だもんなああああああ!!」

 「オメエ皮肉かおらあ!!」

 「自分に皮肉言って何が悪いんだ!! 損も得も俺に帰ってくるだけだろうが!!」

 「トンチ言ってる場合じゃねえだろ狂ったかお前!?」

 「ご主人様!! 争ってる場合じゃないよ!! 黄金のご主人様・・・完全に治っちゃったよ!?」

帥丙Aと帥丙と明人が窓の方を向くと帥丙Cの腹の穴が完全に塞がれて輝きだしていた。どんどんと辺りから花蓮が生え始めている。

帥丙と明人はもう何も打つ手がないと絶望の顔をした。

今度こそお終いだ。

 「タイムマシン返せ!!」

帥丙Aは急いで帥丙からタイムマシンを強引に奪い、タイムマシンのカバーを腰の工具箱からドライバーを取り出して開ける。

 「なんだただの配線切れじゃねえか!!」

工具箱から金属の棒らしきものを取り出し、ピストル型の先が尖がった工具を取り出した後金属の棒らしきものを先が尖がった工具にひっつかせて溶かして配線を固定しようとしている。

 「直せるなら早くしろ!!」

 「やってんだろうが黙ってろや!!」

全ての配線の修理があっという間に終わり急いでカバーを取り付け起動させる。が、【起動しています】と文字が現れ、固まっていた。

 「はあ!? おいこれフリーズしたんじゃねえのか!?」

 「してねえよ!! こいつは起動がおっせえんだ!! 起動が終わるまでしっかり見渡して警戒しろお!!」

帥丙Aはそう言い放したがどうするべきか分かった事では無い。もう時すでに遅し。花蓮がどんどん先始め、ヘリのプロペラにも花蓮が生え始めた。

タイムマシンの画面は未だに【起動してます】の文字のままだ。

 「くそったれ!! いつになったら起動すんだこのポンコツ!!」

帥丙Aがイライラしながら花蓮から避け続けていると、金の仏像二つが下から目の前に現れ出した。仏の姿になった帥丙Bとビー玉だった。

 「嘘だろ!?」

 「コイツハイイ。素晴ラシキチカラ。」

 「コノチカラサエアレバモウビー玉ナンテイラナイゼ。」

帥丙Bとビー玉の肩から花蓮が現れ花びらが手裏剣のように襲いだす。ヘリは必死に避けるが花びらが当たり続け表面に大きな傷が出来てしまった。

 「うおわああああああああああああ!!」

タイムマシンは未だに【起動してます】の文字のまま変わっていない。

 「頼むから起動してくれよおおおおおおおおおおおお!!」

 「なっ何か無いのか本当に!! 助かる唯一の方法は!!」

明人は必死に助かる方法を考えた。このまま扉から飛び下りれば助かるか? いや、車が豆粒に見える高さだから飛び降りたらひとたまりもない。チムピスを使ってバリアで飛び下りるか?でも衝撃で割れて助からないかもしれない。水人のバックでクッション。無理だ!! クソッタレ!! 助かる方法が見つからない!! どうして大麻で出来た皿でこんな惨劇に巻き込まれなくちゃいけないんだ!? 俺はただ大麻を体験したかっただけなのに!! 気持ちよくなりたかっただけなのに!! 何で水人達に殺されなきゃ・・・!!




水人?


明人は気を抜けた表情で帥丙をじーっと見つめた。

 「なんだよ親父・・・?」

帥丙は明人の表情を見て気持ち悪がっている。明人はゆっくりと立ち上がり、帥丙の肩をポンと叩いた。

 「そういえば、父さんを殺そうとしてたの未来のお前だったな。」

 「は? 一体何わけの分かんねえ事言ってんの?」


ヘリのマシンガン側から帥丙が頬り出されたかのように飛びだしてきた。

 「ああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・!!!」

帥丙はどんどんと地面に向かって行き小さくなっていった。


 「あっおっ・・・てめええええええええええええ何しやがんだアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 「すまない水人・・・こうするしかなかったんだ。」

明人の表情はまんざらでもない顔をしていた。これで解決できるとさわやかな表情で帥丙Aを見ていた。

 「こうするしかなかったって何!? お父様・・・ご主人様を殺したんだよ!?」

 「こうするしかなかったんだチムピス。」

帥丙Aに見せた表情と同じ顔でチムピスの方に向いて言った。

帥丙Aは凄くブチギレ、横のドアの窓ガラスを拳で割った。

 「なんでだ!! 何でだよ俺!! 何であの時とっとと親父を殺さなかったんだ!! こんな奴なんか信じないで殺せばよかった!!」

体を怒りで震わせ、銃を取り出して立ちあがり明人の方へ向ける。

 「死ねえええええええええええええええええええええ帥丙明人ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 「うわああああ待って待って待ってええええええ!!」

明人は情けなく腰を抜かしマシンガンの反対側のドアにひっつき頭を抱えて強度に怯える。

 「ご主人様!! やめてえええええええええ!!」

 「ごめんなさい撃たないでええええええええええええええ!! 父さんが悪かったアアアアアアアアアアア!!! あまりでつい・・・許してくれえええええええええええええ!! 撃たないでくれえええええええええええええええ!!!」

もう明人は絶対に助からない。自分の息子を突き落としてしまったのだから。これから明人は帥丙Aに撃ち殺される。分かってる結果だ。それでも明人は命乞いを続けた。

その時、肩を優しく叩かれた。

 「何言ってるんだ。撃つわけがないだろ?」

聞き覚えのある声だった。明人がゆっくりと顔を上げるとそこには軍服姿の明人の姿だった。

 「えっ・・・俺? どういうこと?」

チムピスも何が起こっているのかさっぱり分からなかった。軍服姿の帥丙はどこにも居なく。軍服姿の明人がいきなり現れた。チムピスは確認の為、窓を見た。

 「ご・・・ご主人様が・・・・・お父様になってる!!」

巨大な帥丙Cはゼウスの姿をした明人に変わっていた。体中から放ってる光は金色ではなく銀色に輝いている。

 「チムピス何を今さら・・・あそうか。ようやくバタフライエフェクトが発動したんだ。長かった。」

 「バタフライエフェクト!? どゆこと!?」

 「ばたふらいえふぇくと・・・? バターを揚げてエフェクトさんにあげるの?」

軍服の明人はすぐさま運転席に戻り操縦を始める。

 「いいか。操縦しながら話そう。明人、お前は軍服の水人に撃たれそうになった時、全ての水人は跡かたもなく消えた。風のように。タイムマシンも無くなり俺とチムピスはいきなり現代に戻った。だが水人を突き落とした後悔はない。ああでもしなければ俺達は仏の水人に花蓮にされていたからな。水人と妻を失った悲しみは次第に大きくなり、二人を取り戻そうと軍服の帥丙と同じ事件が起きる道筋を辿ってきた。そうすればタイムマシンで過去を変えれると思ったからだ。政府に俺がやったと誤魔化してタイムマシン手に入れるの苦労したよ。」

チムピスはもっとよく外を見渡す、すると2つのヘリがこっちに襲いかかってきているのが見えた。右のヘリからブラックホールが出現し、左のヘリから大量のロケットランチャーが発射されていた。

 「話は後で良いよお父様!! 何か恐ろしい物がこっちに来るよおおおおおお!!」

 「大丈夫だチムピス。」

軍服の明人はハンドルの下にある無線機を取り出した。

 「チムピス!! 右からブラックホール3つ!! 左からロケットランチャー40発だ!!」

 『了解した!! お父様!!』

無線機から図太い男性の様な声が聞こえると、チムピスが見ている窓側の反対側からヘリコプターがもう一台現れ、後ろの扉が開き一本のS字型角が生えたハゲでムキムキのおっさんが姿を現した。そのおっさんは両手から小さい玉の様なものをだし、押し出すように何度もエンジンのように発射させた。その玉はブラックホールとロケットランチャーの至近距離に行くといきなり巨大化し、全て包み込み即圧縮させ消滅させた。

 「やるなチムピス!!」

 「え・・・?」

おっさんが明人の方に向くと顔は女とは思えないほどたくましい男性の顔になっていた。ソイツはこっちに向けて親指を立てウィンクした。チムピスは凄く動揺している。

 「どっどういうこと? なんで私・・・こんな怖い姿になってるの?」

 「そりゃあ父さんと同じ軍兵だからねえ。」

 「そもそもアイツら何なんだ? なんで俺達を襲ってくる?」

 「ゴメンそれは知らない。話の続きをしよう。実は政府から手に入れたタイムマシンを確かめてみたんだけどね。あの軍服の水人が出てくる所の時代まで行ってちょっとあの軍服の水人殺してみたんだ。そしたらブラックホールを出す俺が出てきた。なんでだろ? そいつがなぜか俺とチムピスを襲ってくるもんだからタイムマシンで同じタイプの水人がいる時間までいきちょっとその水人を投げてみたんだ。軍服もいたからそいつもね。ブラックホールに吸い込まれて行って今度はあのゼウスの様な俺が現れ始めた。」

軍服の明人がゼウス姿の明人を窓から見る。

 「仏姿の帥丙の時間枠までタイムスリップしてぶつけてみたら雷出して来てさ。もう仏の水人チリッチリ。他の二人の水人も煙になっちゃった。そしたら今度は貴族姿の俺が出てきたからこれは安全だろうなと思ったら機関銃を取り出してきやがった。真っ先に殺しに来やがったよ。どうしても変わらないからどうしようか悩んだ時ふと思い出したんだ。80年後の水人を。」

 「80年後の水人・・・?」



80年後の世界


 か弱い老人が鉄でつくられた巨大な輪を作っている時に、二人の男性が現れた。一人は筋肉モリモリでS字型の角が生えた剥げた男性。もう一人は軍服姿の明人。

 「お・・・・親父・・・?なぜ・・・生きておるのじゃ・・・?」

老人は絶句した。別の次元の帥丙達の光線で空気になったのに生きて目の前にいるのだから信じられなかった。

 「話せば複雑になる。水人、俺が持ってるタイムマシンはお前が思ってる通りデータが欠落してるんだ。」

 「・・・・・・。」

 「それを埋めれるのはお前しかいない。出来るか?」

明人は腰に着いてるタイムマシンを老人に差し出した。

 「頼むご主人様。もう時間が無いんだ。」

 「ご主人様・・・・・・お前チムピスか?」

剥げた男性は「ああ」と答えた。老人は「最近の技術やべえな」と呟く。老人はタイムマシンを手に取り、コードに差し込むと目の前にあるキーボードを打ちこみ始めた。たった10秒で打ちこみが終わりコードを引きぬいてタイムマシンを返そうと手に取った。明人に渡そうと差し伸べるが手が震えている。老化が進んでいるのだろう。

 「もう・・・これの使い方は知っとるよな?」

 「ああ知ってる。ありがとう水人。絶対に元の世界に戻って幸せを取り戻そうな。」

明人は笑顔でタイムマシンを手に取り、渦を出しチムピスと共に入って行く。渦は役割を終えたかのようにふっと消えた。




???の世界


 「そして奴らが再び襲ってきてタイムマシン使ってないのにこの世界に飛ばされた。お前ら二人も連れていってここまで逃げてきたって事。」

 「へえ~すげえ展開だな・・・おい前前!!」

明人が前の方に指を指す。軍服の明人が前を向くと宮殿の壁が見え、激突し壁が崩壊した。ヘリは衝撃でバラバラになり3人が外に吹き飛ばされた。外の光景はビルがいっぱい立っていた。まるで元の世界のように。

そうスローモーションのように辺りがゆっくりと見えている時に後ろのヘリがビルの壁の穴から現れ、ヘリのドアからムキムキのおっさんが現れチムピスと明人と軍服の明人を素早く掴みヘリに乗せた。

 「大丈夫か!! お父様!!」

明人がムキムキのおっさんの声で正気を取り戻す。後ろを振り向くと穴が開いた壁の向こうは宮殿の中ではなくオフィスだった。ビルの後ろからヘリが二機現れブラックホールやロケットランチャーが打ち込まれる。

 「しつけえお父様共だぜ!!」

ムキムキのおっさんはまた両手から玉を出しギャリック砲のように攻撃し始めた。ブラックホールやロケットランチャーを包み込み圧縮させ消滅させる。相手は何度も何度もブラックホールやロケットランチャーを撃ち続け、ムキムキのおっさんは両手から玉を何度も投げて消滅させている。

 「もうアイツら殺しちまえよチムピス!!」

 「無理だ!! お父様が全て消滅する可能性がある!!」

 「まっ前えええええええええ!!」

チムピスが大声で前の方に指を指す。明人は振り向いた。大量のロケットがこっちに向かっている。

 「飛び降りろおおおおおおおおおおおおおお!!」

軍服の明人がそう全員に叫んだと同時に明人とおっさんとチムピスと軍服の明人が急いでヘリから飛び降りた。

ヘリは大量のロケットに直撃して大爆発した。

地面が何故か瓦礫まみれでビルがいきなり全て廃ビルになっている。明人達はいきなり別の世界線に移動していた。

 「ぱっパラシュートはどこだ!?」

 「必要ない!!」

 「必要な・・・なっなんで!? いやああああああ死んじゃうううううう!!」

チムピスが大声で泣き出した。パラシュートが無い。着地する場所が固い瓦礫だから死ぬのは確実だからだ。死ぬ。絶対死ぬ。

 「安心するのだ私よ!! バリアは鍛えられないと思っていたが筋肉モリモリになると共にバリアもレベルアップしたのだ!!」

おっさんがそう言うと、大の字になり分厚いバリアが現れ明人達を包み込む。地面に着地した後、瓦礫はほとんど粉砕しクッション状態になっていた。明人達もバリアの影響で浮いており、バリアが消えるとそのまま地面にぶつかった。

 「でっ!!」

 「凄いだろ?」

おっさんがチムピスの前で笑顔で言った。

 「凄いけど・・・ここまで鍛える自身が無いよ・・・。」

 「心配するな。私は君だよ。出来る!!!」

おっさんは自信満々な顔でチムピスを応援した。チムピスはおっさんのその表情を見て凄く怯えている。

 「おいどうすんだよ俺・・・もう奴らから逃げられなくなったぞ・・・!」

明人は軍服の明人に不安たっぷりにそう問いかけた。確かに絶体絶命状態だった。

 「安心しろ。寧ろ好都合だ。奴らがまだいない今、このタイムマシンで過去を変えれる。」

軍服の明人は腰に巻いてる水人のカバンからタイムマシンを取り出し起動させる。

 「元々、水人達は元の暮らしに戻る為にタイムマシンを使ったんだ。あのデパートで俺が大麻の皿を当てない為にアイツらは必死に阻止しようとした。俺を殺そうという近道を利用したけど。過去を完全に改変できるタイムマシンを手にした今、今度こそ成功させなきゃいけない。」

 「・・・どうやって?」

 「いやそれがね・・・平和的に終わらせるのが一番なんだけどそれをどうすればいいのか分からないんだ。」

解決法が分からなかったらタイムマシンを起動しても意味が無い。下手をすればまた最悪な結果を生むだけになる。要するに、明人を買い物させずに大麻の皿が当たるのを阻止するだけ。そんな簡単な事に見えるが今まで改変してきて全く良い変化が見られなかった。寧ろ悪い変化ばかり起きている。どうにかそれを回避できる方法が無いか、軍服の明人はそう考えていると、ヘリコプターの音が近づいてくる。ロケットランチャーが発射される音が聞こえた。チムピスは必死におっさんから離れ逃げた。

 「考える暇は無いみたいだな!! チムピス!!」

軍服の明人は銃を取り出し、ヘリに向けて乱射する。チムピスもこちらに迫ってくるロケットランチャーを手から玉を出し投げ巨大化させ圧縮し消滅させる。

 「逃げなくていいぞ過去のチムピス!! こいつは強いから大丈夫だ!!」

 「いくらでもかかってきやがれ!! このチムピスペイントは無敵だ!!」

そう言って両手から玉を出し打ち出してくるロケットランチャーとブラックホールを消滅させていく。その時、おっさんの上から巨大な雷が打ち出され、黒炭だけが残り完全にいなくなった。

 「ヨウヤク狙イガ定メタ! 判事ノ裁キ!!」

エコーのかかった大声が巨大なゼウスの明人の方から聞こえた。

 「逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

軍服の明人が明人達にそう叫び必死に逃げた。明人とチムピスも軍服の明人に全力で走りながら着いていく。

 「死ねえええええええええええええ俺ちゃあああああああああああああん!!」

ヘリの方から明人の声がし、ロケットランチャーが打ち出される。もう玉を出して無効化できるおっさんがいないからどんどん明人の周りが爆発していく。

 「うわああああああああああああああああああ!!」

チムピスが頭を抱えて怯えて泣きだしながら走っている。

軍服の明人は明人とチムピスに武器を渡そうと腰に着いてるものを調べるが帥丙のカバンしかない。武器は全部あの爆発したヘリコプターに置いたままだったので酷く後悔した。だが落ち込んでる暇などないからカバンの中を漁ると強い静電気が走った。

 「うわっ!!」

それを取り出してみると、黒い手袋だった。手先の先端から強い電気を発しているのかと思い、それを明人の方に投げた。

 「これを使え!!」

明人はそれを上手くキャッチする。

 「手袋!?」

 「先端から強い静電気が出る!!」

 「静電気なんて攻撃に入らんだろ!!」

 「それしかないから仕方ないだろ!! くそっ他にはハンカチと体操服か!! いらん!!」

ハンカチと体操服を後ろに放り投げると、爆風で空に舞い上がり、ロケットランチャーを撃ってくるヘリコプターの開いてる窓に全部入り、中に居る貴族の明人の顔に当たった。

 「うわ何だ!?」

貴族の明人は顔に覆われたハンカチと体操服を両手を使って引きなはそうとする、ようやく辺りが見えるようになった時には廃ビルの壁だった。直撃してロケットランチャーと共に軍服の明人のヘリより5倍の大きさの大爆発が起きた。

 「え? 嘘!? 一機倒した!?」

 「奇跡だ!!」

明人は一機破壊した事にとても喜んだ。しかもあのロケットランチャーを頻繁に撃ってくる野郎だから大幅に助かる確率が上がったのだ。

そう思ったのは一瞬だった。

この先は瓦礫で行き止まりになっていた。

 「奇跡は一瞬だった。」

明人はそう世界の終わりのように呟いた。

 「コレデオ前ラニ狙イヲ定メラレル。最後ニ言イタイ事ハアルカ!!」

巨大なゼウスの明人が明人と軍服の明人とチムピスに向かって叫び出した。

 「お前らを殺せばどうなっちまうか気になるぜ~。軍服の俺ぇ~。てめえが軍服の息子を殺した時にタイムパラドクスの事が気になって気になってしょうがねえんだよな~。」

ヘリコプターから明人の声が響く。どうやらブラックホールを出す明人はそんなくだらないことの為に殺そうとしていたのだ。帥丙Bより達が悪すぎる。

 「おい!! そんなくだらない目的の為に殺そうとしてたのか!?」

 「悪イカ!!! 我モ気ニナルノダ!!!」

ゼウスの明人とブラックホールの明人の目的を聞いて明人は唖然とした。こいつらはタイムパラドクスを楽しみたいだけの屑になり下がっていたのだから呆れて物が言えない。

 「なんて奴らだ・・・普通の暮らしなんてどうでもいいのかよ・・・・。妻と子供はどうすんだよ!!!」

 「水人ハ居ルゾ!! キリストトシテ!!」

 「俺も水人はいたけどブラックホールの実験で消えた。もういいよね。お前らも消して。」

ブラックホールの黒い声が明人達の耳に響き渡る中、軍服の明人は銃を取り出して撃ち続けた。だが当たり前のようにヘリコプターはぴんぴんしている。

 「無駄だ無駄だ無駄だそんな銃でヘリに勝てるわけねえだろバカカ!!!」

 「おい俺!! タイムマシンでお前たちの時代に戻れ!!」

軍服の明人はそう明人とチムピスに聞こえるように命令した。

 「は!?」

 「ぐ・・・軍服のお父様はどうするの!?」

 「俺は奴らを引きとめる!! 行け!! 戻って未来を変えろ!! お前たちならできる!!」

 「分かった!!」

明人はお構いなしに軍服の明人の腰に着いてるタイムマシンを取り出した。だが、水人が持ってたタイムマシンと画面が違うからどこを押せばいいのか分からない。

 「どこ押せばいいの?」

 「”発射”って書かれてるボタンだ!! 早く!!」

 「分かった!!」

発射と書かれたボタンを押す。すると、水人が持ってたタイムマシンのように渦がちゃんと現れた。が、一つ違う点を言えばその渦は野球ボールほど小さかったことだ。

 「ねえどうやって入るのこれ?」

明人が軍服の明人に言うと軍服の明人は後ろを向いた。

 「あっやっべ!! 使い過ぎてちっちゃくなってる!!」

そう驚いたその時、両腕と腹の前部分と右足がブラックホールに飲みこまれ、大量の血が噴き出した。後ろに倒れた後、腹から大量の内臓が外にはみ出た。

 「おっ俺ぇ!!」

 「お父様あ!!!!」

チムピスが軍服の明人の方にすがりつこうとする。すると、明人はチムピスの角を掴んで後ろに引っ張った。いつブラックホールが攻めてくるのか分からないからだ。

 「行くな!! お前も巻き込まれるぞ!!」

チムピスが明人を見て状況を理解し怯えながら大人しくなった後、明人は渦の枠を掴み広げようとするがびくともしない。

 「くそったれええええええ!! ねえこれどうやって広げるの軍服の俺ぇ!!!」

その時、小さなブラックホールが明人の両手の全ての指を飲みこんだ。

 「うぎゃああああああああああああ!!」

明人が指が無くなった両手を股の中に挟んだ。はめ口が少し削り取られた手袋だけが渦の中に入ってしまった。渦の中はあのデパートの麺類コーナー、手袋は商品の上に置かれ、もう取れない位置に置かれた。

 「さあ~タイムパラドクスを始めるとするか~!! こいつ消えたら俺はどこに行くのか!! 楽しみだぜえええええええ!!」

 「最後ニ何カ言イタイ事ハアルカ? 聞イテヤルゾ!」

明人とチムピスは絶望の淵へと追いやられてしまった。目の前にはヘリ一機と巨大なゼウスの明人、虫の息になって死にかけているぐちゃぐちゃの軍服の明人、野球ボールと同じ大きさの渦。もう勝つ術はどこにもなかった。

 「お・・・お父様・・・・。死にたくないよ・・・・・。」

チムピスはガチガチと震えながら明人の右腕にすがりつく。明人も激痛と悲しみを同時に涙を流している。とても情けなく。渦をチラチラと見てどうするべきか必死に考えてるが頭の中はもうグッチャグチャだった。

渦の先には急いで商品を手に持っている明人がいた。その明人が思いっきり手袋が乗っかっている商品を上から手にやると凄く感電したかのように。痙攣しだした。

 「ひぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

感電した明人は白眼を向き後ろに倒れ込み、泡を吹き出しながら痙攣、失禁脱糞している。店員が慌てて駆けつけ、「どうしましたか!?」と必死に明人に声をかけるが返事が無い。

 「誰か!! 救急車!! 救急車を呼んでください!!」

周りの店員も駆けつけてきた。AEDを持った店員も現れ大騒ぎになっている。

渦が映し出されているそれを見た明人は、ゆっくりと敵側の明人の方に向き、震えながら笑顔になると乾いた声で、

 「タイムパラドクスが始まった。」

そう口にした瞬間、周りの廃ビルや瓦礫が分解するように天に登っていく。

 「なっ何が始まった!?」

ヘリに乗ってるブラックホールの明人が怯え叫んだ。ゼウスの明人は自分の身体が分解し始め、天に直進で飛んで行くのを見て発狂した。

 「ウワアアアアアアアアアアアヤメロオオオオオオオオオオオオオオオオオ!! マダ未知ナル世界ヲ見テナイゾオオオオオオオオオオオオオ!!!」

分解は早く、巨大だったゼウスの明人はあっというまに姿を消した。街もどんどん分解していき天に行く。

 「はは・・・やった・・・やったぞおおおおおおおおおおお!! 平和的にクリア出来たああああああああああ!!!」

 「ねっねえお父様!! 何が起きてるの!? 私消えて・・・!!!」

チムピスが自分の身体が分解され天に登って行くのを見て怖くなり明人に問いかけるもすぐに消える。残ったのは明人とぐちゃぐちゃの軍服の明人だった。

 「おい俺!! やったんだ!! これで元の生活に戻れるぜえええええええええ!! はっはああああああ!!!」

明人が凄く喜びながら軍服の明人に言うと、軍服の明人は次第に笑顔になっていき、何やら伝えたそうに口を動かしている。


や  っ  た  ぁ


そう伝えた後、軍服の明人は完全に分解され天に飛んで行った。

 「戻れええええええええええ!! 俺の生活うううううううううううううう!!!」

明人が完全に分解されるまでそう叫び続けた。辺りが真っ白になっていく。

自分だけになっていく。

明人は完全に分解され、

完全に真っ白な空間だけが残った。



帥丙の家 居間


 そこには母が当たり前のように出し巻き卵を作っていた。帥丙Cの銅像もない。

 「本当に・・・戻った・・・・・か?」

明人は辺りを見渡してみた。銃で蜂の巣になった壁の跡も荒れた形跡も一つもなく元通りになってた。

 「全く、大変だったんだからね明人。アンタがデパートで感電して、病院まで行くの。命に別条はなかったからよかったけど、もうあの皿を買うなんて馬鹿な事止めてよね。」

 「ああ、二度と買わねえ。」

明人はこれまでにない満面の笑みを母に見せた。母は明人の笑顔を見て凄く気持ち悪がっていた。

 「それより・・・もうすぐ朝ごはんだから水人とチムピスちゃん呼んできて。このままだと遅刻するって。」

 「おう。」

父は母の言われた通り、二階へ上がり帥丙の部屋のドアを開ける。そこには二人共とっくに学生服姿だったがチムピスは帥丙の胸に抱きつき大声で泣いていた。

 「うわあああああああああああああご主人様ご主人様ご主人様あああああああああああ!!!」

 「おっ親父!! どうなってんだ・・・? 俺確か親父に突き飛ばされて・・・・。夢だったのか? いや夢だったらコイツでっけえ声出して泣き叫んで俺に抱きつくわけねえよな。おいいい加減に離れろヤギ女!!」

チムピスは抱きしめるのを止めなかった。涙を流しながら泣きべその顔で帥丙を見る。

 「ご主人様・・・・・死んだかと思った・・・。エグ・・・・もう会えないかと思った・・・・・ヒック・・・・。」

 「夢じゃねえ。元に戻ったぜ。水人。」

明人が笑顔で親指を立てる。

 「ああ、やっぱ夢じゃなかったのか。覚えてろよ?」

 「お前も俺を何度も殺そうとしたの覚えてるからな? それより朝食が出来るから下降りろ。」

明人が朝食の事を伝えた後、帥丙は舌打ちしてチムピスの角を掴み引き離そうと強引に前へ突き出す。すんなりとチムピスの腕が解かれた。チムピスも帥丙と一緒に階段を降りようとした。

 「ああチムピス。朝食終わったらちょっと一緒に行って欲しい所があるんだけど。」

チムピスは明人の呼びかけに反応し振り向き、首をかしげた。

 「?」



生物研究所 廊下


 「帥丙さん。あなたふざけてるんですか?」

研究員らしき老人の男がチムピスを見て呆れていた。彼にとってはチムピスが特殊メイクをした人間にしか見えないからだ。

 「いやあの~冗談じゃ無くて~。この子の角と目と牙は~マジモンなんすよ~。」

 「特殊メイクをしてなかったら手術でこうしたと言う事ですね? 虐待です。 警察呼びます。」

 「待って待って待って待って待って待って!! よく見ろよチムピスを!! これが特殊メイクとか整形手術で出来るわけねえだろ!!」

 「出来ます。」

研究員らしき老人の男は即答に答えた。

 「いいからこいつを隅々まで研究しやがれ!!」

 「出ていきなさい!! 今度こそ警察呼びますよ!!」



車の中


 「お父様? どうしてあのドルーラみたいな人怒ってたの?」

チムピスは後部座席から顔を出して明人を見ながら質問した。

 「おかしいな。貴族の水人では売れたのになんで追い出されるんだ?」

明人は険しい顔で独り言をつぶやいた。



フジシマ高校 教室


 「あ? おいその皿・・・。」

勝谷が親父が当てる筈だった大麻の皿を持っているのを見つけドン引きしていた。

 「あっこれ?ポイント溜めてようやく当たったばい。ギリギリやったけん焦ったばい。」

 「その皿調べてみたけどね。大麻入ってた。」

松沢は容赦なく勝谷に大麻が入ってる事を教えた。

 「・・・布作る奴ん?」

 「ううん。ガチの奴。その皿の上に料理置いて食べると気持ち良くなるんだ。大麻を吸う時みたいに。」

勝谷は松沢の話を聞いて当たった皿を見る態度が一変した。凄く嫌がる顔になり、帥丙に差し出した。

 「・・・・いらんばい。大麻なんてふじゃけんで。」

 「は? いらねえよ持って帰れ。」

 「いらんかったら捨てれば良か。アタシは持っとーだけで嫌と。」

 「・・・・あっそ。」

帥丙は渋々とその皿を貰いカバンの中に入れようとすると、何者かが教室のドアを突き破ってきた。バイクに乗った世紀末の暴走族が帥丙を殺そうと金棒と鎌を持っていた。

 「ひゃっはああああああああああああ居たぜえええええええええええええ!!!」

 「死ねえええええええええ水人おおおおおおおおおおおおおお!!!」

 「うわああああああああああ何ばとおおおおおおおおおお!?」

勝谷はその光景を見て凄く驚いた。一体何が起こったのかさっぱり分からないからだ。帥丙は世紀末の暴走族を見た瞬間、父が大麻の皿持ちこんだ事を悟りすぐ皿を勝谷に返した。

 「返す!!」

 「はあ!? 何ば言い出すん!?」

するとバイクの音が止み、世紀末の暴走族はいなくなっていた。破壊された筈のドアも元通りになっていた。

 「あれ? 確かにおったっちゃんね・・・・・?」

 「嘘だろなんだよこの皿・・・・・」

帥丙は大麻の皿を見て勝谷から距離を引いた。勝谷が持ってる皿が厄災を生み出す呪いの皿に見えて気持ち悪いからだ。

 「まっ松沢!! お前が貰うてくれん!?」

勝谷は怖くて松沢に渡す。松沢は嬉しそうな顔で「いいの?」と聞いてきた。

 「構わん!! 構わ・・・!!」

帥丙がいる側の窓から大量のガスマスク戦闘員が突き破ってきた。帥丙はガラスの破片がささり戦闘員の足にほぼ押し出され、即死した。

戦闘員達が松沢に銃を突きつけ、一人の戦闘員が松沢の前に歩いていきマスクを外す。松沢と同じ顔をしていた。

 「それを勝谷さんに返せ。」

 「え?」

 「勝谷さんに返せと言ってるんだ過去の僕!!!!」

松沢は未来の自分が怒鳴ってきた事にびっくりして急いで勝谷に大麻の皿を返した。すると戦闘員達はいなくなり、ガラスも帥丙も元通りになっていた。

 「なっ何が起きた? 皿がこいつに返ってるけど。」

 「なんか未来の僕みたいな奴が皿を勝谷さんに返せって言ってきた。帥丙君いつ生き返ったの?」

 「は?」

帥丙に渡せば世紀末の暴走族が来る。松沢に渡せばガスマスクの戦闘員が現れる。勝谷は一体何が起きてるのか全く理解できなかった。もしかしたら、この皿を誰かに渡したら飛んでもない事になるのか?勝谷は恐怖で震えながら皿を見つめた。

 「一体・・・・誰に渡しぇばよかと・・・・・・?」

いつになるかわかりません。では

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