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ウンチばあさんのお話

『ウンチばあさんのおはなし』


 あるところに、へんなおばあさんがいました。

 一日中外に出て、小さなほうきで地面をはいているのです。

 小さなせなかをもっとまん丸にして、地面に顔がくっつくほど身をかがめてそうじをします。

 ですから、おばあさんの顔はよく見えません。

 おばあさんの家がどこなのか、だれも知りませんでした。

 おばあさんの名まえも年も、どういう暮らしをしているのかも、だれも知りませんでした。

 人びとはそんなおばあさんをふしぎに思いましたが、だれも見て見ぬふりをしていました。

 おばあさんはへんな人だったので、みんなは話しかけたくなかったのです。




 ある日、おばあさんは地面にあいた小さなくぼみにほうきをつっ込んで、そうじをしていました。

 くぼみの中には何もないのに、おばあさんはひっしになってほうきではきつづけました。

 ひとびとはおばあさんをふしぎに思いましたが、だれも見て見ぬふりをしました。

 おばあさんはへんな人だったので、そのくらいのことはするだろうと思ったのです。




 ある日、おばあさんはぞうきんを持って地面をこすっていました。

 ぞうきんは砂とどろだらけになっていましたが、おばあさんはおしりを高く持ち上げて、ぞうきんがけをするようにせっせと地面にぞうきんをおし付けるのでした。

 ひとびとはおばあさんをふしぎに思いましたが、やはりだれも見て見ぬふりをしました。

 おばあさんはへんな人だったので、地面のぞうきんがけくらいはするだろうと思ったのです。




 ある日、おばあさんはお姫さまのかっこうをしてそうじをしていました。

 しわくちゃのかおをしたおばあさんがお姫さまの服を着ているのを見て、人びとはおどろきました。

 けれども、おばあさんはいつもどおりにそうじをしていたので、人びとはやはり見て見ぬふりをしました。

 おばあさんはへんな人だったので、お姫さまのかっこうくらいはするだろうと思ったのです。




 ある日、おばあさんが犬のウンチを食べていました。

 人びとはそれでも見て見ぬふりをしました。

 おばあさんは変な人だったので、犬のウンチを食べて生きているのだと思ったのです。

 その日から人びとはおばあさんのことを、ないしょでウンチばあさんとよぶようになりました。




 ある日、ウンチばあさんが地面にたおれていました。

 けれども、人びとはやはり見て見ぬふりをしました。

 おばあさんはへんな人だったので、地面にたおれることくらいはするだろうと思ったのです。




 ある日、ウンチばあさんがまっ白な骨になっていました。

 けれども、人びとはやはり見て見ぬふりをしました。

 おばあさんはへんな人だったので、さわったら呪われると思ったのです。

 その時、一人の男の子がウンチばあさんの骨の中からきれいな宝石を見つけました。

 おばあさんは宝石を食べていたのでした。

 そのとたん、ようやく全ての人びとがウンチばあさんにむらがり、つぎつぎに宝石をうばい取ってしまいました。




 あとに残ったのは、おばあさんの白い骨だけでした。


近所に住む、実在のおばさんがモチーフになっています。天涯孤独になって病んでしまい、まるで壊れた機械のように、どんな寒空の下でも地面を掃き続けているんですね。一度だけ声をかけたのですが、私の足元を延々と掃き続けるだけでした。おばさんには何も見えていないのです。それ以来、今でも私を含む全ての人々がおばさんの横を「素通り」しています。きっと無理が祟って彼女が倒れるまで、誰も彼女に歩み寄ることは無いのでしょう。

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