第1話 最高の物語には、最高の悪役を
みんな、魅力に溢れたカリスマ性のある悪役は好きかな?
俺は――大好きだ!
今も、これからも変わらない。
悪役という存在が、俺は心の底から好きで堪らない。
パッと思いつかない?
それなら例えば、B○○ACHの藍○○右介。
P○○CHO-PASSの槙島○護。
もっと有名どころなら、ホームズシリーズのジェームズ・モリアーティ。
日本なら怪人二○面相でもいい。
彼らに共通しているものは何だ?
圧倒的な存在感。
揺るがない思想。
そして、主人公ですら物語の一部に組み込む支配力。
改めて聞こう。
みんな、魅力に溢れカリスマ性のある悪役は好きかな?
何度でも言う。
俺は、大・大・大好きだ!
――だが。
同時に、みんなが嫌いな悪役も思い浮かぶはずだ。
実力はない。
カリスマもない。
その癖、態度だけは一丁前。
甘ったれで、負け犬根性に溢れ、
足を引っ張ることしか考えず、
芯がなく、性格が悪く、ヘイトだけを撒き散らす。
主人公の踏み台になるためだけに存在し、
最後は黒幕に利用され、
情けなく切り捨てられる――ショボイ悪役。
物語上、必要な存在なのは分かる。
だが、好きかと聞かれたら答えは一つだ。
NOだ。
断じて、俺はそんな悪役を好きになれない。
だからこそ、この話をしている。
◇
どうやら俺は、事故に遭って転生したらしい。
詳しい状況は覚えていないが、気付いたら異世界にいた。
しかも、俺がよく遊んでいたゲームの世界だ。
ここまでは最高だ。
夢にまで見た異世界転生。
たとえモブだったとしても十分すぎる。
――ただし。
転生先が問題だった。
俺の名前は、アルフレッド・アドラー。
響きだけは最高にイカしている。
だが何が問題か?
俺が転生したのは、
俺が1番嫌いなタイプの悪役だったからだ。
アルフレッド・アドラー。
【エーデルワイス・クロニクル】――通称エデクロに登場する典型的な小物悪役。
主人公に僻み、蹴落とそうとしては失敗し、
物語中盤で黒幕に利用され、
最後はポイ捨てされるように殺される。
一応、公式設定では「主人公のライバル」。
だが実態は、公式が勝手に言っているだけの噛ませ犬だ。
黒幕も黒幕で残念な存在だが、
それでもアルフレッドよりはまだマシだろう。
俺がプレイしていたエデクロは、
アクションRPGとしても、
学園編や恋愛要素を含めたストーリーとしても超大作だった。
だからこそ、余計に際立つ。
悪役だけが、本当に、本当に酷い。
正直に言おう。
悪役がもう少しでも魅力的だったら、このゲームはさらに評価を上げていた。
――だから、俺は決めた。
せっかく悪役キャラに転生したんだ。
なら、俺自身が最高の悪役になってやろう。
ゲームの世界に転生したからといって、
元のアルフレッドになりきる必要はない。
俺は俺だ。
そして、俺が目指すのは噛ませ犬じゃない。
カリスマ溢れる、本物の悪役だ。
なんなら、ショボい黒幕なんて蹴散らして、俺がその座に座ってやる。
そして――主人公。
お前を、最高の英雄に磨き上げてやる。
最高の主人公には、
最高の悪役が必要だからな。
その逆も、また然り。
俺が最高の悪役になるためには、
主人公にも最高でいてもらわなければならない。
それが、
俺がアルフレッド・アドラーとして自覚し、
本当に生まれ変わった瞬間だった。
その歳、六歳。
木の上から落ちて頭をぶつけるという、
あまりにもテンプレなスタートで。
◇
「……ア……アル……」
頭が痛い。
どうやら、相当熱く語っていたらしい。
誰かに呼ばれている声で、意識が現実に引き戻される。
「アルフ様! 大丈夫ですか!?」
目を開けると、心配そうに覗き込むメイドのミラがいた。
「……木登りしてて、失敗したみたいだ」
「そうでしたか……一先ず回復魔法をかけておきました。医者も呼びますか?」
「いや、必要ない。心配をかけたな」
そう告げると、ミラは目を丸くしてから部屋を出ていった。
――しまった。
アルフレッドは、子供の頃から傲慢な性格だ。
メイド相手に下手に出ることなどない。
アドラー家は侯爵家。
俺は、いわゆるボンボンというやつだ。
父のカレードは武芸に優れた人物で、
母セレスを亡くしてからは領地経営に専念している。
真面目な性格で、週に二度は街へ出て住民の声を直接聞く。
そのため、アドラー領は民からの評判も高い。
……全く。
これだけ恵まれた環境で、どうして元のアルフレッドはああなったのか。
いや、だからこそか。
兎にも角にも―
俺は最高の悪役になる。
そのために、これから全力で動く。
まずは、実力をつけるところからだ。
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TIPS
アルフレッド・アドラー
アルフレッドは本来、
小物ながら傲慢、怠惰で大した実力もなく、
使い捨てられる悪役ライバルキャラ(噛ませ)である。
ただし、公式設定では「主人公のライバル」とされており、
才能そのものは一級品。
本編では完全に宝の持ち腐れだった。
外見は黒髪で吊り目、瞳の色は金色。
鼻筋は高く整っており、唇は薄め。
笑うと口元が釣り上がるため、いかにも悪役然とした顔立ち。
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