星の光 雲に紛れて 見えねども まことの星は 空にたたずむ 3
「ここで犯人探しをするより、確定された未来を変える方が、夕顔は得意なんじゃないか?」
なんだか楽しそうに笑った暁の笑顔に、ちょっと驚く
確定された未来を変える…
確かに、そうかも…
原典では変えられなかった未来を、私は香で少しずつ変えてきた
そして、夕顔の…自分の死の運命すら、変えたのだから
『陰陽寮より、香の封じを命じられました』
『近いうちに陰陽師殿達が、夕顔様の香を封じに来るそうです』
”誰かを救いたくて焚いてきた香
それが、誰かにとっては恐れるべきものとなっている
香そのものが妖術なのではない
香に触れた人の心が揺らぐことを、誰かが恐れているのだ”
ならば私は、身の潔白を証明すればいい
「香を使えずとも、香を使わずとも、香を焚けば…
疑いの煙は晴れるかもしれない」
「香を使わずとも、香を焚く…?」
暁と右近は訝し気な表情で私を見た
「うん
私は妖術なんか使えないし、使ってない
ただ、香を焚いているだけ…
私の香を恐れる誰かが、私の香を妖術と噂し、陰陽寮に進言したのだとすれば…
香を使わずに香を焚けば、私の香は妖術なんかじゃないと…証明できるんじゃないかと思って」
暁は手を顎に置いて撫でた後、私を見た
「でも、香を使わずに香を焚くって…
どうやって実現するんだ?
それが出来たら、逆に妖術だって証明になっちゃうんじゃないか?」
「それが狙いよ…
妖術に、見せかける」
暁は目を細め、ゆっくりと息を吸った
「妖術に…見せかける?」
私は頷く
「そう
陰陽寮が恐れているのは、香そのものじゃない
香に触れた人の心が揺らぐこと…
つまり、私の香が、説明できない現象を起こすことを恐れている」
右近が小さく息を呑んだよう
「夕顔様…まさか…」
「だから、逆に利用する
香を使わずに香を焚く
香木も、香材も、何も使わずに…
香が立ちのぼったように見せる」
暁は顔を上げると、腕を組む
その口元は、わずかな笑みを含んでいた
「なるほどね
陰陽寮が「妖術だ」と決めつけた現象を、夕顔は再現すると…」
私も微笑みながら暁を見る
「そう
香を使わずに香を焚くなんて、普通に考えれば不可能だけど…
でも、私ならできる」
右近が不安げに眉を寄せる
「されど夕顔様…
どうやって、そんな…」
私は右近の手をそっと握った
「大丈夫よ、右近
私に策がある」
右近は目を瞬かせる
「策…」
私は声をひそめ、二人に耳打ちするように、その内容を伝えた
「なるほど
そう言う作戦でいくのか」
「うん
それには、味方、仲間とまで言わないけど、協力者が必要…」
その瞬間、閃く




