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咲きし間に 名も告げぬまま 香は残り 風にまぎれて 人を誘へり

二条院の奥

香の間で、薄っすらと香炉から立つ煙を、目を細めながら見つめた


夕顔が昨夜焚いた香…

どこか懐かしく、しかし見知らぬもの

まこと、不思議な香りであった


夕顔…「香の才ある者」やもしれぬ


それに…


昨夜、拝借した品のひとつ

夕顔がばら撒いていた古布を手に取る


“悪霊退散”


筆跡はやや拙いが、意は明らか

すなわち、霊を祓う呪文なり


『ケセラセラー!ケセラセラー!』


祈祷とはまた異なるものの、 陰陽師の業を心得ているようにも思える


徐に口角が上がった


夕顔…

やはり、素性知れぬ女


だが、それが…

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