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春風に 誘われ見上ぐ 夜の空 香に霞みて 朧月浮かぶ 2

香を調合し始める


朧月夜は私と暁の関係を精査していて、更に政治的な危険がないかを探っている

だから、気を衒った香を焚くのは危ぶまれる

ここは、藤壺の時のように、朧月夜に寄り添った香を焚くのが、敵意がない事、朧月夜を敬っている事と言う証明になるはず


となれば…


桜の下、春の夜に、朧月が霞んで見えるような、甘く清らかで、でも幻想的な雰囲気で雅やかさを出そう

雅な貴族達に好まれる、オーソドックスな、大衆受け、いや貴族受けする香りを…


香炉に炭を入れて香を焚く

煙がのぼり、辺りに巡る


朧月夜は目を閉じて、深く呼吸したようだった

そしてゆっくりと目を開けて、私を見る


「ふむ

そなたの香、雅を感じる」


「有難きお言葉…」


「それが暁の心に届いたのなら…身分など香の前では霞むものなのだろう

されど、暁が心を寄せた香は、また別の趣を持っていたはず

暁がそなたに託した香木、その香を焚いてみせよ」


私は息を呑んだ


それはつまり、紅葉のお方の真意

紅葉のお方に問うた…答え

けど同時に、香は正確な答えはなく、まさに掴めないもの…


右近が几帳の陰で心配そうにこちらを見ている

私は胸元の香包をそっと撫で、静かに答えた


「畏まりました

暁様より頂いた香木を、今宵の御前にて焚かせていただきます」


香炉に欠片をくべると、煙はゆるやかに立ちのぼり、甘く深い香りが部屋を満たした

その香は、春の霞のように柔らかく、しかし底に沈むような静けさを湛えていた


朧月夜は目を細め、煙の向こうでじっと私を見つめる

その瞳には、好奇と探求、そしてどこか確かめるような光が宿っていた


「なるほど…これが暁の選んだ香か

夕顔よ、そなたはただ香を焚く者ではない

香に心を映し、人の心を揺らし、確かに人の心を染める

されど、そなた自身の言葉には恋慕の響きはない

暁が心を寄せているのは事実であろうが…そなたは、その想いを受け止めてはいないようだな」


私は静かに目を伏せ、香炉に手を添えた

否定も肯定もせず、ただ煙の揺らめきを見つめる


朧月夜は扇を閉じ、柔らかな笑みを浮かべた


「ふむ…それでよい

暁の心はそなたに向いているが、そなたが軽々しく応じぬなら、政に波風は立たぬ

香を焚く者として、務めを果たすのみ…

その姿勢、私も認めよう」


その言葉に、胸の奥の緊張が少し解けるのを感じた


煙は夜空へと溶け、月が霞の中に浮かび上がる

その光は柔らかく、二人の間に漂う疑念を包み込んでいった



帰りの牛車

霞む月を見上げながら、私は静かに息を吐いた


紅葉賀の貴人

紅葉のお方

右大臣家の貴人…暁

朧月夜の弟

やっぱり、物語改編によって生まれた人物だった


紆余曲折はあったけど


『夕顔の君

もしそなたが困ることあれば、私はいつでも力を貸そう

先日の香木も、その印

他意はなき』


仲間と言ってるから害はないと思うけど

油断は出来ない人物ではあるな…

香木の重みは、私を試すものでもあるのだろう


流れる景色の中で、その場に留まっているかのように朧月が浮かんでいた

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