第8話 セレンティシア学園長のご挨拶
セレン魔法学園。300年程前に魔女セレンティシア・ティファレントによって創設された学園であり。
この魔法学園在学中に彼女に師事し、大成していった卒業生は数千人いや、数万人にも及び、セファルレギアの歴史に名を刻む者までいる。魔道具師ミコトや剣聖フライ一族などがそれに該当するだろう。
毎年、『セファルレギア』の世界の生息地分断起きていない国々から、彼女自身に魔法を教わりたいと願う入学希望者が後をたたない。
万能の魔女セレンティシア・ティファレントに師事した者で大成しないものなどいないだろう。
なにせ彼女は世界最強の魔法使いにして、最高峰の知恵者であり。心の真実を視る眼を持っているのだから。
《セレン魔法学園 入学案内資料より》
《学園長室》
「何これ? 詐欺みたいな事しか書いていないじゃない。セレンティシア様が最高峰の知恵者? 最高峰の変態の間違いじゃないのかしら?」
「だぅ!」
「シ、シオンもそう思うわよね。セレンティシア様はいつも変態だもの」
「失礼ですね。私はセクハラする相手は気に入った人にしかしないと決めているんですよ。それに可愛い弟子さん達には、これまで一切のセクハラをした事はありませんよ」
まあ、シェリーは可愛い弟子さんでもないので、セクハラしまくりますがね。
「コ、コイツ。やっぱりただの変態だわ」
「あぅ……」
「ええ、お師匠様は変態的で天才的な魔法使いです。お手元の入学資料にも、この世界を幾度となく救った凄い人なんですよ。セレン魔法学園の仕事は私に丸投げですけどね」
弟子のシャーロットちゃんが何か言っていますがスルーしましょう。今はシェリーにこの学園の事を詳しく教えてあげておいた方が良いでしょう。
「シェリー、セレン魔法学園には6歳で入学できます。なのでシオン君もその歳になったら、この魔法学園に入学してもらう事になりますが宜しいですか?」
「宜しいですかって……私達に拒否権なてないわよね?」
「ぅ!」
不安そうな顔で言われちゃいましたよ。シェリーは何か変な誤解をしているんですかね? 私がシオン君を強制的にセレン魔法学園へと入学させようとか勝手に思ってそうですね。
「いいえ。アナタ達に拒否権はちゃんとありますよ。ただ世界中に点在する数多の魔法学校でも、私が創設したセレン魔法学園はあらゆる分野で最先の研究や勉強ができます。四大魔法学園のトップとも言われるくらいですからね」
「四大魔法学園? それって龍国の中にある学園と同じって事?」
「ドラグニカ学園ですか。たしかにあの学園は魔法戦闘の分野が秀でている名門ですね」
シャーロットちゃんが目を輝かせながら私達の話に割り込んできましたね。これだから学園マニアは空気が読めないですね。全くもう。
「……シオン君が無事に自衛できる位に強くなったら、龍国に戻りドラグニカ学園に入学するのもアナタ達の自由ですよ。時間はまだありますからね。6年後に決めると良いでしょう」
最初は無理矢理にでもシオン君をセレン魔法学園に入学させたいとも思っていましたが、シオン君は私が想像していたよりも才能の塊でした。
赤ちゃんの状態でも、私が課している修行に付いてきていますからね。厳しい日課にもかかわらず体調も崩さないですし、日に日に成長速度が増しています。
……これもシェリーの竜星の一族の力なのでしょうか? 彼女は風系統魔法が得意です。
特殊な風系統魔法の使い手は病気、厄、感染などの危険な物を防ぐ力があるとされています。
シオン君の周囲には常時、風の防壁が施されていて、彼にウィルスや感染源が届かない様になっています。
シェリーもシオン君もまだ気づいていない様ですがね。この2人は数年間に渡って私が修業を付ければどこでもやっていけるでしょう。
追われてしまった龍国に戻っても大丈夫な程に……
「拒否権があるの……良いの? シオンは愛弟子候補とか散々言ってたじゃない。近くで成長を見届けるんじゃないの?」
「おぅ?」
「ええ、言いましたが……シオンなら魔法学園入学前の5〜6年位で大成してくれますよ。修業完了後、シオン君は自分の生きたい場所で力を伸ばす方が良いと判断したまでです。その方が正式に私の愛弟子となった時のこの子には、その教育方針が合っていますよ」
「シオンに才能があるのは私も分かってるけど……この子が外の世界に出てグレたりするのは嫌かな。シオンも嫌よね? なら変態でも私達の命を救ってくれたお師匠様が作った学園に通いたいわよね?」
「まぅ!」
「へ? シェリー。今、貴女なんて言いました?」
シオン君と拳を突き合わせていますね。竜星の一族のコミュニケーションの取り方の1つなのでしょうか? 興味深い仕草ですね。
「6年後、シオンをセレン魔法学園に通わせるわ。だからこの子がちゃんとひねくれない様に見守っていてね。セレンティシア様……だからこの子をこれからもよろしくお願いします」
「まゅ!」
「……シェリー、シオン君」
……シェリーが私に頭を下げるなんて思いもしませんでした。てっきり私がシオン君に修業をつけた後は龍国に帰りたいと言うかと考えていたのですがね。
予想が外れてしまいましたね。
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします」
「うん。ありがとう」
「ぉぅ!」
な、なんでしょうね。この心の中のムズムズはなんとも言えない気持ちになります。ポカポカすると言うか……
「フフフ。良かったですね。お師匠様、長年探していた正式な愛弟子候補の子の方から魔法学園に通いたいなんて言ってもらって」
「シャーロットちゃん……何をニヤニヤしているんですか? このヤンデレ弟子の分際で」
「はいはい。ツンデレお師匠様は相変わらずですね……それよりも2日後にある入学式の挨拶よろしくお願いします。お師匠様……私では選定はまだ無理そうですので」
「いえ、それはリーゼロッテちゃんの心の持ち様なだけな気がしますが……まぁ、良いでしょう。愛弟子候補のシオン君にも選定の場面を見せてあげる良い機会ですからね。やりましょう、入学式の挨拶を」
私達はその後、入学式の細かい段取りを決めて、数日間を教員寮の宿舎に寝泊まりしました。
そして、セレン魔法学園の入学式当日になりました………
「今年度ご入学の新入生の皆様。セレン魔法学園へようこそ。私がセレン魔法学園の学園長。セレンティシア・ティファレントです。皆様のご入学を心からお待ちして下りました……」
「相変わらず。お美しい……女神の様だ」
「美少女か。是非、今晩、お会いしたい」
「数百年前から姿が変わっていないとは本当なのかね?」
来場された入学生の保護者や来賓の方々が、私の美貌にメロメロですね。凄く良い気分です。フフフ。
《別館休憩室》
「いやいや。あの清楚な女の子、誰?」
「ばぅ?!」
「お師匠様ですよ……始まりますね。選定が」
「選定?……あの。その選定ってなんなの? 貴女とセレンティシア様が話している時に暗い顔になりながら会話していたのが凄く気になるんだけど」
「……選定はお師匠様の敵となる方々のあぶり出しです。今、始まります」
◇
「では今後の素晴らしい学園生活をお楽しみ下さい……悪意のある方達意外ですが。『深淵眼』」
「何だ?……突然眠気が……」
「わ、私も……目眩が……」
「これは魔眼か? くそ! 油断していた」
次々と来賓の方々や入学生の保護者の数名が倒れていきますね。この人達は私の命を狙う暗殺者なのでしょう……選定はその選別です。
「ヴァルキリーの皆さん。あの方達を捕縛して下さい。そして、記憶の改竄を入念にお願いしますね」
「承知しました」「師の思いのままに」「殺さぬ程度にします」「後で頭を撫でて下さい」「私は太ももを……」
後の事は私専用の私兵『ヴァルキリー』の子達に任せて起きましょう。
「『瞬間移動』」
◇
《別館休憩室》
「セレ!」
「……シオン君。今回もちゃんと魅ましたか?」
「うぃ!」
「フフフ。それは良かったです……魅入るというのは大切な事ですからね。それが貴方の今後の糧になります……そうやってどんどん成長していって下さい。『歪みの刻』が始まる前に……」




