第6話 愛弟子幼児を連れて式典へと赴きます
この世界には魔法の国セレス国と言う国があります。
セレス国は私、セレンティシア・ティファレントの故郷であり守護領域となっています。
だってこの国は私の産まれた場所であり、大切な人達が沢山住んでいますからね。守って差し上げなくてはいけません。
おっとお話がそれてしまうところでした。
今日は愛弟子候補のシオン君と私の専属人妻メイドのシェリーを連れて、私が進行して来た敵対者の方々を全て殲滅し、解決した大魔連合討伐を祝う式典に来ているのです。
なにやら私の代理出席者として、式典に出てもらっている弟子の魔剣使いのジルさんが何やら困り果てていると、真紅さんが私に報告してくるので仕方なく様子を見に来てみたのですが………
◇
《大魔連合討伐 式典会場》
「魔剣士ジル・リオラ殿。どうか万能の魔女セレンティシア殿にお目通りさせて頂きたい。是非、是非に我がヤラナ国に国賓として、お招きしたいのです」
「いやいや。それならば我が国、サイバルき是非とも」
「それならばフリスフォロ国にも来て頂きたいですな」
俺の目の前には今、うるさい奴等が沢山いる。そして、俺は今、物凄くコイツ等にイラついている。あ〜! ぶち殺してぇ〜! 偉そうに自分達の意見しか言わねえんだわ。この隣国の来賓共はよぅ〜!
「はぁ………そういうのは本人に聞いてみないと分からないですな。なんせうちのセレンお師匠はお忙しい方なんで、今も世界のどこを忙しなく動き回ってると思いますよ」
セレンお師匠があんた等の国に来た途端に捕縛して、セレンお師匠で研究したいだけだろうが。魂胆が見え見えだっつうの。腹立つ〜!
誰がうちの国の至宝《セレンお師匠》をわけも分からん奴等に会わせるかよ。たくっ!
昔からそうだ。セレンお師匠は強く花がある……それに俺達凡人が知らない意味の分からん力と知識を持っている。
それ故なのか知らんが。今、俺の目の前にいる頭の可笑しな奴等に日々狙われている。
まぁ、そんな事、俺を始めとしたセレンお師匠の歴代の弟子達が許すわけねえもんでね。セレンお師匠の悪口を言う奴や、連れ去ろうなんて考える奴がいれば地の果てまで追いかけて狩られるぜ。
「な、ならば。セレンティシア殿の現在の居場所を教えて頂きたい」
「そうだそうだ。どこに居る? 我等はこの式典の来賓として来ているのだぞ」
「教えてくれるだけでよい。その後はこちらで探す故な」
「……はぁ、だから分からないんですって」
めんどくせえ。めんどくせえよ。隣国の来賓共の相手をなんかよう。あ〜! 娼館のララミーちゃんと一夜のランデブーしてえよ。なんで俺がアンタの変わりに式典にでないといけねえんだよ。セレンお師しょ……う?
「どうかされたかね? 魔剣士ジル・リオラ殿」
「やっと教える気になったかえ?」
「ではさっそく言ってもらいましょうか。私達は貴方の様に暇を持て余しているわけじゃないのですよ」
「はぁ……そうですか。俺も忙しいんですがね」
あ、あれ。セレンお師匠だよな? なんで赤子なんて連れてるんだ? 誰の子だよ?……まさか俺との子か? いや待て! 俺はたしかに小さい頃はセレンお師匠に発情していた。
だが今はどうだ? 俺も年取り見た目は30代前半のおっさん。かたやあっちは莫大な魔力で年齢操作を意図も容易く年齢をごまかし、見た目が数十年前から一切変わってないロリババだ。
金髪碧眼のあの見た目、ガキの頃の俺にはドストライクのだったんだぜ。昔はよう。今じゃあセレンお師匠を見てもドキドキもしなくなったな。
だってよう、あのロリババ。俺が幼少の時から見た目が全然変わってないんだぜ。詐偽だろう?……自分が大人に成長したら気づいちまったぜ。俺はセレンお師匠に一切発情しなくなった事をな。
「おい! 聞いているのかね? 魔剣士ジル・リオラ殿」
「暗殺旅団を倒した英雄だからと調子に乗るなよ。たかだか魔剣士ごときが」
「早く、セレンティシア様の居場所を吐きなさい。魔剣士風情が、これだから、万能の魔女の弟子は皆、癖が強いと言われるのよ」
「はぁ……そうですか……まぁ、俺への罵倒は幾らでも聞き流してあげますがね。セレンお師匠と他弟子さん達の悪口は聞き捨てならないくちなんですよ…なんでね。あんた等は式典が終わるまで機能停止してて下さいよ」
「貴様!…何だその口の利き方は……」
「いいから早くあの美少女の居場所を……」
「な、何でしょう? いきなり意識が遠退いて……」
「………『響』の力も知らんのかい。この来賓共は。さてと。俺に式典の仕事を押し付けたセレンお師匠に文句と挨拶に行ってやりますかね」
会うのは数ヶ月振りか? 相変わらず可愛い顔してやがるな。セレンお師匠はよう。
「あ! 皆、ジル・リオラの奴こんな所に居たぜ!」
「ジル・リオラ。私達に万能の魔女様の弟子にする様に頼みなさい」
「僕も僕も……」
「わ、私はジル先生に教えてほしいです」
「ク、クソガキ共。いつの間に現れやがった? 居場所がバレないように音を遮断してたのによう」
俺の目の前に現れたクソガキ共は、セレンお師匠に師事したいと世界中から集まったクソガキ共だ。
セレンお師匠に直接魔法を教わりたいと思う奴等は世界中に居る。
そして、コイツ等の親はどこの王族や貴族連中ばかりで、安全にセレス国へとやって来れる。
そんで今日はセレンお師匠が主役の大魔連合討伐の式典の日だ。
それを知った世界中の権力者達が我が子供を世界最高の魔法使いの弟子にと自分達の子供を引き連れてやって来た。セレンお師匠ではなく、中年のおっさんが変わりとして式典に出るとも知らずにな。
「おい! ジル・リオラちゃんと応えろ」
「私達を万能の魔女に会わせなさい」
「入学前からあの方に師事すれば僕は大成できるんです」
「さっさと連れて来いよ」
「あ、あの……私はジル先生に色々と教わりたいです」
このクソガキめちゃくちゃ生意気でな。1人を除いてな。
「あ〜! 無理無理だな。クソガキ共、お前等はまず礼儀作法から学び直せ。うちのセレンお師匠はそりゃあ礼儀作法に厳し……い?」
(デュへへ! オーク種とスライムで異種交配とか、させたら面白いですかね?)
(いや〜! あの国の将軍がしつこく求婚してくるんで、首都ごと焼いてきましたよ)
(ムカつく奴等は殲滅すればとりあえず万事解決ですよ。ジルさん)
……いや。駄目だ。色々駄目な人だったぜ。俺の師匠。セレンお師匠はよう。
◇
《式典控え室》
式典が始まるまでの間、シオン君に修行をつけてあげています。今は魔力増強と属性魔法の練習ですね。
「ふぐむむ!」
「はい。その調子ですよ。愛弟子のシオン君。今持っている魔力を使い果たすのです。そうすれば限界を超えて魔力が増幅しますからね。後、そこに属性変化と性質変化も付け足して下さいね」
「……赤子に何をやらせているのよ。10代の私でも難しいのに……それを普通にこなす私の子供って、どれだけ才能豊かなのよ。まだ赤ちゃんなのに」
「それだけ、シェリーの遺伝子と才能が良いのでしょう。それにシオン君は赤ちゃんでもちゃんと意識があり、私の言葉をちゃんと理解してくれますからね。覚えは早いのは当然ですよ」
「我が子ながら将来が末恐ろしいわね」
「……心がねじ曲がらないで素直に育ってくれれば良いですけどね。いえ、シオン君は闇落ちしたあの子とは違いますね」
「闇落ちしたあの子? 誰?」
「あ〜! いえ、昔の事ですよ。昔の事、オホホ」
などと昔の育成失敗の過去をうっかり思い出そうとしていたところ。控え室の扉が勢い良く開け放たれました。
バタンッ!
「セレンお師匠! アンタが式典に出ないからもうメチャクチャだぜ!」
「おや? これはこれは。弟子のジルさん。お久しぶりですね。元気にしてましたか?……後ろの子供達はジルさんのお弟子さん達ですか?」
「お、おい! 今、ジル・リオラの奴。あの女をセレンお師匠って言わなかったか?」
「え? じゃあ、あの綺麗な人が万事の魔女様?」
「で、弟子入りしないと……」
「俺が先だ」「いや、私がぁ!」
「あ、あの。私をジル先生の弟子にしてほしいです」
「あ〜! うるせぇぇ! うるせぇぇぞ! お前等! お前等じゃ無理なんだよ。諦めろ。セレンお師匠は忙しい方だし、弟子なんてそうそう取らねえ……てっ! セレンお師匠。その両手に抱いてる赤子は誰との子です? まさか俺とのですか?」
「は? 何? この疲れた顔をしたおじさんは? シオンは私の子よ」
「ん〜? 相変わらず。馬鹿な頭をしているんですね。弟子のジルさんは、この子は私の愛弟子候補君のシオン君ですよ。シオン君、はい。挨拶しましょうか」
「だう!」
「お、おう! そうか。新しい愛弟子候補か……よろしくな。俺はギル・リオラ、セレンお師匠の3番目の弟子だ」
「ぼぁ?!」
「ハハハ! 凄いな。お前、赤子でもうそこまで聴こえてるのか……成る程。これはセレンお師匠はさも自分で教えたがるわな」
「なら才能溢れる俺も教わる権利がある」
「わ、私もよ」
「万能の魔女よ。私に魔法を教える権利をあげるわ。光栄に思いなさい」
「さっさと講義を始めろ。弟子になりにわざわざ赴いてやったんだから」
なんだい? 私が教えても意味がない子達は?
「この子達はジルさんの弟子ですか? 駄目ですよ。弟子選びはもっと真剣に選ばないと……後悔しますからね」
「ちげえっての。アンタ宛に送った手紙に書いてあっただろう。弟子入り志願者だ。ここに入る数十人……いや式典に付いてきた王族や貴族関係の子供達の殆どがセレンお師匠に弟子入りしたいんだとよ」
「弟子ですか?……ん〜! 無理ですね。私はこれから数年はシオン君一筋で魔法を教えていくと決めているので」
「な、何だと? そんな赤ん坊に何ができるだ?」
「そうよ。いいからさっさと私に魔法を教えなさい」
「金は出してやる。さっさと俺の家庭教師になれ。世界最高の魔女」
「アンタに教われば箔が付くからな」
「さ、さっきから何なのこの子達は何で皆、上から目線で言ってくるのよ?」
シェリーの言う通りですね。恐らくはここに来たお子様達の殆どがお金持ちのお子様なのでしょうね。
「そうですか。それではセレン魔法学園で皆さんの入学をするのをお待ちしてますよ……では、私はこれでここから去ります。これ以上ここに居ても不愉快極まりないですからね。ジルさん」
「は、はい。何でしょう? セレンお師匠……(こ、怖ええ。いや。まぁ、自分で育てると決めた愛弟子候補を馬鹿にされりゃあ。切れもするわな)」
「……あの黒髪眼鏡の子だけはキープですね。ジルさんの弟子にして色々と教えてあけでおいて下さい。セレン魔法学園の入学前に」
「へ? 私、ジル先生の弟子になれるんですか?」
「リズですか?……いやたしかにこの子は才能がありますが。何で俺が?」
「そろそろ貴方も弟子を取った方が良いですよ。私に依存しない為にもです。では皆さん。式典の時にまた会いましょう。行きますよ。シェリー、シオン君。『瞬間移動』」
「へ? どこによ?」
「あぅ!」
「この国のトップの元へです……それでは生意気な皆さん。その傲慢さが治ったら、また会いに来て下さいね。その時にまたアナタ達の素直さを見てあげますよ。ちゃんと自分と向き合って成長して下さいね。ではまた何処かでお会いしましょう。心汚きお子様達。さようなら……」
私はそう告げると竜星の親子を連れて、とある方の元へと飛んだのでした。
……しかし、真紅さんに有望な子が居るかもしれないから、式典へと行って来いと促されて来てはみたものの。
どの子も才能はありますが心が駄目ですね。心が、この世界も昔よりも平和になり豊かになったからですかね?
この少しずつ壊れていく世界の未来の事なんて考えず、自分中に物事を考える人達が増えたのは? そんなのではいずれこの世界は闇へと誘われるでしょうね────




