第23話 あれから時が経ちました
シオン君とシェリーがティファレント家に来て早くも3年の時が経ちました。
「マホウ……ハツドウ……『火球』」
ボッ……ドガァァンン!!
「セレンシェんシェイ でけました」
「はい! 素晴らしいですよ。シオン君! 経ったの3年で殆どの基本魔法を覚えられるなんて天才です。流石、私の愛弟子君」
「……あ、ありがどおございましゅ。エヘヘ」
か、可愛い。流石、私の愛弟子君です。なんて素直な子に育ってくれているのでしょうか?
「………何でこんな変態しかいない屋敷で育てられてるのに、うちの子はすくすく育っているのかしら?」
◇
言葉もたどたどしいですが、喋れる様になってきましたね。月日が経つのは早い早い。
「………凄い威力ね。これ火球じゃなくて爆炎じゃない。3歳でこれって……我が子ながら恐ろしい子」
シェリーはシオン君の放った火球を見て引いていますね。何故でしょうか?
「おかしゃま。シオン、ちゃんとヤれてまちた?」
「う、うん。やっぱり凄いわ。シオンは……流石、リンクの子供ね。凄い凄い」
「エヘヘ、嬉しい……おかあしゃまにホメラレました」
シオン君はシェリーに抱き付きながら顔をスリスリしてますね。可愛いらしいです。
「しかし……シオンは成長してるけど私達は見た目全然変わらないわよね。真紅様もセレンティシア様の専属メイドのラニー達も」
「まぁ、私やシェリーは長命種ですし。この世界の女の子は歳を取りづらい生き物ですからね」
「そうなの? 私、そんな話始めてしったんだけど」
「まぁ、そうでしょうね。これはあんまり知られていません……世界の禁忌に触れますからね。年齢の遅延を気にしない様にあの人が世界に魔法をかけましたから」
「あの人?」
「いえ、こちらの話ですよ。それよりも今日は久しぶりに実戦に行きましょうか。シオン君。この3人だけで」
「は~い! 分かりましゅた。セレンシェんシェイ」
◇
《輝星の最果て》
「ね、ねえ……セレンティシア様。コイツを本当に復活させる気? それも3歳になったばかりのシオンと戦わせるとか。馬鹿なの?」
「ぁぅ…おっきいでしゅ」
「本気も本気ですよ。今のシオン君でしたら、ライアノル程度倒せます」
「ライアノルさん程度って……この石化した竜人種。ここの守護者みたいな者なんだけど」
「何かあれば。私とシェリーで対処すれば良いだけですよ。この3年間で私達も強くなりましたからね……封印を解きますね。『解放』」
『………………ル………オ………ルオオオォオオ!!!』
〖輝星の最果て〗の管理者〝輝龍ライアノル
「うるさいわね……」
「機嫌が悪そうですね。覇気が凄いです……」
「…………『爆裂』」
『ルオオオォオオ………許さぬ。許さぬぞ。貴様等!! 何故、石化を解いたのか知らぬが。我を石化した恨み晴らしてくれ……』
ドゴォオォォンン!!
石化した復活したライアノルさんが喋り終る前に、シオン君が放った『爆裂』がライアノルさんの頭頂部に炸裂しましたね。
『グオオォォ?! 何だこの威力は?……万能の魔女。貴様の仕業か?』
「そんなわけありませんよ。貴方如きに私が攻撃するわけがないでしょう。ライアノルさん」
「シオンの攻撃がライアノルに効いてる? 嘘?」
「…………お母しゃまにさついを向けないでくだシャイ」
『……グルル!! その子供は………まさかリンクの息子か………成る程。万能の魔女、貴様はその子供が成長するまで我を石化させていたのだな。そして、その貧弱な子供が我に勝てるとふみ我を石化から解放した』
「はい。その通りですよ。輝龍ライアノルさん。本当は魔法学園入学まで石化させようと思っていたんですけど。私が予想していたよりもシオン君の成長が早かったので、貴方を石化から解いて倒しちゃう事に決めました……だからシオン君の成長の為にも倒されちゃって下さい」
『……ざけ……る……な……』
「はい? 何ですか?」
『ふざけるなと言ったのだ!! そんな赤子から少し成長した貧弱な子供に我が負けるわけがない! 万能の魔女が相手だろうと関係があるか。貴様等全員殺して……』
「……『氷矢雨』」
『………がぁぁ?! 我の身体に無数の氷の槍が刺さっただと?』
「あぁ、言い忘れてましたけど、あまりシオン君をなめない方が良いですよ。この子には、この3年間でみっちりと基礎魔法と基礎の魔力学習をみっちりとしてあげてますからね」
『クゾガアァァ!! 〖空翔〗』
「ライアノルが空高く飛んだわ! 逃げる気かしら?」
「……一時的な距離を取ったのでしょう。不死性持ちは傷を直ぐに回復できますからね」
◇
《輝星の最果て 上空》
『クソ! クソ! クソ!……何故、あの貧弱な子供程度の攻撃喰らわねばならぬ。我は輝龍ライアノルだぞ。万能の魔女ならばともかく、あんな子供が数年成長した所で我に敵う筈がないのだ……(親友リンクを嵌め、その赤子を殺せばNumbersの地位を与えると誘われ、実行したものの追いかけた先には万能の魔女が居て石化された。それからは意識があれど身動きが取れぬ地獄の響きだった)』
「シュルル~!」
『む? 何だ?……こんな上空に白の遣いが何故飛んでいる? その上にリンクの息子か?』
「………『重量球』」
『ごぁぁああ?! 何故、こんな高い場所に一瞬で現れる事ができる?!』
ライアノルさんが情けない声を出して地上へと落下していきますね。あんなに勢い良く落下して行ったら相当なダメージを喰らいそうですけど、大丈夫なんでしょうか?
「うわ~! 凄い『重量球』ですね。良くできました。シオン君」
「……セレンシェんシェイ。アノヒトわるいひと?」
「そうですよ~! なにせシオン君のお母様を亡き者にしようとした。悪い人ですからね」
「ナニモノ?」
◇
《地上》
ドゴオオンン!!
『ぐおぉぉお!! 我がこんな一方的に幼子にやられるなどあり得ぬ。それに何故、我の支配領域の力が発動しなくなっているのだ?』
「それはこの場所が私の支配領域に変わったからよ。ライアノル」
『……その声はシェリー、おのれ。貴様!! 万能の魔女と組んで我を倒す気か? 元はと言えば貴様とリンクが竜星の子を勝手に産んだ事がこの争いの火種だろう! 恥を知れ!』
「つっ! 馬鹿言わないで! 産まれてくる子に何の罪があるのよ。それに龍国でもシオンを厄災の子とか言って、殺そうとし始めたのは貴方達一派が動いたからじゃない。そのせいで私の夫は……リンクは行方不明になった。返しなさいよ! 私とシオンの大切な人を返してよ!」
『……黙れ……元々、アイツが我の婚約者であるお前を我から奪ったのが原因だろう。それが全ての始まり……全ての原因ではないがぁあ! 『空切』』
「無駄よ。私もこの3年間。セレンティシア様に鍛えられて強くなったもの。風魔法『風切』」
『ふん! 貴様程度の風魔法で我の技を防げるわけが………』
丁度、私とシオン君が地上に戻った時、ライアノルさんの左腕が両断される時でした。
「うわ……凄い斬られちゃってますね」
「……セレンシェんシェイ。まえみえません」
『がぁああ!! 我の腕が……く! 何故、シェリー如きがこれ程までの力を経ったの数年で身に付けられる?!』
「努力したからですよ。シェリーさんは殺されない為に努力してきたんです。貴方みたいな命を狙って来る人達に対抗する為に、それは厳しい努力をしていましたよ」
「……セレンティシア様。シオン」
『……貴様は万能の魔女……嘘をつくな。シェリーにはこれ程の戦闘の才能はない。だから婚約者だった我が幼少の頃からシェリーを守っていたのだ。シェリーが嫌な思いをしない様に我が一番近くで彼女を守っていた。それがあんな男に……竜星のリンクなどに取られ、忌々しいその子供産まれた。リンクとの間に産まれた。我に憎悪を抱かせるその災いの子が』
「………ライアノル」
「なんですか。それ、そんなのただの逆恨みじゃないですか。カッコ悪い」
『何だと? 万能の魔女。貴様に我の何が分かると言うのだ』
「何も分かりませんよ。貴方がシェリーに選ばれなかったのは、貴方に魅力がなかったからです。それでシオンが産まれたら、シオン君を恨みの対象にする? ふざけないで下さい。この子は私の愛弟子君です。貴方の一存では殺させませんよ」
「……セレンシェんシェイ」
「グギギギ!! 厄災の魔女が何を言う! 貴様こそ勝手に竜星の一族に加担しおって、絶対に許さぬ……貴様等3人は必ずここで始末してやる。我が死んだとしてもな……龍魔法奥義『龍勢爆破』」
ライアノルさんの意識が消えた?……それにライアノルさんの身体から凄まじい量の魔力が溢れだそうとしていますね。
「……これは龍国に伝わる。最終奥義技? 何でこんなタイミングで使っているのよ」
「……おかあしゃま。あぶにゃいです。はなれて~」
「……やれやれ。最後まで激昂しやすい方でしたね。まぁ、でもシオン君の現在の力を確認するには良い相手でしたよ。ライアノルさん……貴方にも貴方の事情があったのでしょうけど。Numbersのあの人と繋がっているのなら話は変わっていきます……さようなら。Numbers見習いのライアノル。夜空の花火となりなさい。『瞬間移動』」
私はライアノルさんの爆発寸前の身体を輝星の最果ての上空へと、静かに転移させました。
「………あれ? ライアノルの身体は?」
「あぅ……いなぃ」
「夜空に行ってもらいましたよ。巻き込まれたくありませんからね」
「……夜空?」
◇
クソ!……石化から甦ったと思えば、いきなり赤子に翻弄され。最後は自爆など……情けない情けない情けない。
「そうですか? 最後に私の役に立ってくれましたよ。ライアノル」
その声は……貴様か! 貴様のせいで我は、厄災の魔女と相対する事になったのだぞ。そして、もうすぐ死ぬ。
「ええ、私がそうなる様に貴方を洗脳しましたからね」
洗脳だと? 貴様はいったい……我に何を……
『何をしたのだぁぁ?!!』
「ほう。激昂して死ぬ間際に細胞が活性化しまたしたか……ですがもう遅いです。ライアノル」
『がぁああ!! 身体が破裂して……我は……我はぁぁあ!!』
ドゴオオンン!!
「輝龍ライアノルの最後が自爆とは情けない…君もそう思いませんか? 万能の魔女セレンティシア・ティファレントさん」
「………気配を察知して来てみたら。やっぱり貴方でしたか。フィフスさん」
「そうそう。久しぶりだね。相変わらず美人さんで安心したよ」
「お世辞は良いですよ。龍国の異変……貴方が関係していたんですね。何が目的ですか?」
「そんなの昔から変わっていないよ。世界の転覆……かな」
「またまたご冗談を……新世界でも造る気なんでしょう? あの人達と一緒に」
「フフフ……そこまでは教えられないかな。それにテュエルブやイレイブ君は君に倒されて、ベヒーモスは取られちゃったしね。これじゃあ君とNumbersの取り合いみたいだね。ナルカミとシノノメは僕に貰えるかな?」
「……渡すわけありませんよ。それに貴方が本当の黒幕とは思っていません」
「強情で冷静沈着になったんだね……まぁ、良いや。またいつか合おうよ。残りのNumbersを賭けてさ。この勝負はどちらがより多くのNumbersを確保できた方が勝つ勝負だからね」
「だから渡しませんよ。世界も私の大切な仲間達も」
「……我が儘だね。ファーストさんそっくりだね。本当にそっくりだ。憎たらしい程にね。フフフ」
「あ! 待って下さい。フィフスさん! 話はまだ……行ってしまいましたか。龍国にフィフスさんですか……時間ができたら久しぶりに行く必要があるかもしれませんね。竜星の里に」
私は夜空の流星を見上げながらそう呟き。私を待つ竜星の親子の元へと戻りました。
◇
流星が落ちる夜空にライアノルの放った最後の攻撃が散っている。そして、私はそんな夜空を悲しそうに見つめる。
「ライアノル……呆気ない最後だったわね」
「……お母様。ないてらっしゃいましゅか?」
「ううん……泣いていないわよ。シオン………さようなら。ライアノル……私の婚約者だった人。さようなら……」
私は静かに一滴の涙を流して、ライアノルに最後のお別れを伝えた。




