第16話 夜のストレス発散日
《ティファレント家 セレンティシアの部屋》
カチッコチッカチッコチッ!
全然眠れません。いけません。真夜中なのにムラムラします。お腹のした辺りがムズムズします。
私の四分の一はサキュバスの血が流れているんですから当然といえば当然なんですけどね。
「最近はベヒーモスさんや魔笛車の件でごたついてましたからね。ストレスもやばやばです……発散したい。誰かの何かを色々と弄んでストレスを発散したいです!」
助けた弟子達や私に会いたがる弟子達が毎日の様に押し寄せては、連日の様にお茶会を開いていましたからね。可愛い女の子を弄ぶ暇もありませんでしたよ。全くもう!
シェリーは……嫌ダメですね。治療はもうとっくに終わっているんでした。弄べません、あぁ~! 3ヶ月前に戻りたいですね。あんな人妻で可愛い娘を好き放題できたなんて最高でした。
ならばラニーちゃんでしょうか?………いえ駄目ですね。あの娘は元弟子ではないのでした。あの娘はちゃんとした私の弟子です。
変な事をしちゃいけません……正式な弟子にはイヤらしい事をしてはいけないと、かつて師匠にも言われていた事でした。
「ならば、この際仕方ありません……真紅さんを弄んで……いえ。駄目ですね。返り討ちにされるだけでした。真紅さんって夜は無敵状態でしたものね」
他のメイドちゃん達は……真紅さんの部下達なので無理ですね。
「…………………こういう時は女性専用の娼館に行くしかありませんね。原初白蛇。夜の繁華街に行きましょうか」
「シュル~!」
この白い蛇は私の遣い魔の一体であるアスクと言います。この子に乗って、空の夜を駆け回りましょうか。
◇
《セレス国 上空》
「シュルルン~! シュルルン~!」
「機嫌が良いですね。アスク」
「シュル~!」
「はい? 久しぶりに私と二人きりだから嬉しいですか……あ、ありがとうございます」
「シュル!」
「え、ええ。最近はずっと忙しかったですからね。私も少々疲れが溜まっているみたいですね」
「シュルルン?」
「え? また旅にでも出てリフレッシュしないの? ですか………それは無理ですね。やっと真なる愛弟子候補のシオン君も見つかりましたし、『歪みの刻』もいつ始まるか分かりませんからね。あの子が成長しきるまで旅はできませんよ」
「シュル」
「そうですか。魔笛車の……テュエルブさんを送った事で『歪みの刻』がだいぶ先になりましたか。それはホワイスネルさんの報せですか?」
「シュルルウゥ!」
「………天啓ですか。成る程成る程です……残り9人ですか。たしかにベヒーモスさんはこちら側に引き込む事に成功しましたからね。1人減ったのは納得ですが。ファーストさんが何故、カウントされているんでしょうかね? あの人は最後に私の前でお別れした筈なんですけどね……」
「シュル……」
◇
《セレス国 繁華街ランデブー 娼館エリア》
セレス国一番の繁華街にして、世界屈指美少女や美女達が集まる娼館が幾つもある場所。その名もランデブー……今日はここで可愛い可愛い女の子達を侍らせて楽しみたいと思います。朝までずっとです!
「フフフ。ティアラ王国と魔笛車破壊の報酬でたんまり稼げましたからね。今日は朝明けまで散財しまくりますよ~!」
「あら? セレスちゃんじゃない。久しぶりね! 寄っていきなさいよ。良い娘揃えているわよ」
「セレス~! うちの店に来なさいよ。サービスするってば!」
「砂漠の国の踊り子達を買ったんだ! 寄っていかねえか。セレ~!」
「皆、ごめんなさい。今日はあそこに行くって決めているんで、また別の日に顔出しに行きますよ~!」
そうです。今回はこのランデブーで最も高級な娼館で可愛い可愛い女の子を選んで朝まで、一緒にランデブーするんですよ。
「ではでは、夢の世界へ行っちゃいましょう~!」
カラン~!カラン~!
《ランデブー最大の娼館 スターライト》
「おや? こりゃあ珍しいお客さんが来たね」
「セレスさん……お久しぶりですね」
「フリン店長さん、ウワキ副店長さん。お久しぶりです! 可愛い女の子と遊ばせて下さい!」
娼館スターライトの店長のフリンと副店長のウワキさんです。このおお二人どちらも、かつてはこの繁華街ランデブーのアイドルとして名を馳せた経歴があります。
私も昔は凄くお世話になりまたよ。今は老けておばさんに……
「チョイと! セレス。あんた。今、私達に対して失礼な事を考えたね」
「全く……昔からセレスさんは感情が表情に出やすいですね」
「へ? そうでしたか。それよりも可愛い女の子はいませんか? 可愛い女の子と遊ばせて下さい弄んでも良いんですよね?」
私は鼻息を荒らしてお二人に問いただします。
「馬鹿言ってんじゃないよ。うちの娘達は国宝級の代物だよ。大切に扱いな。全く。これだからサキュバスの血を引く娘は女の子の扱いが荒いんだよ」
「誰にします?……極東の花魁ちゃん、雪国の元姫ちゃん、南国の踊り子ちゃん、現在繁華街ランデブーNo.1人気の《シュミレン》ちゃん。誰と遊びたいですか? ちなみにどの女の子も高額過ぎて待機中になって……」
「全員でお願いします! お金ならいっぱい稼ぎましたから!」
私は背負い込んでいたリュックから大量のお札を取り出して、二人の前に差し出しました。
「こりゃあ凄いね。これなら数週間は遊べるよ。セレス」
「セレスさん。相変わらずのお金持ちですね。早速、ご案内しますね。では先ずは極東の花魁カンミちゃんの所へご案内します。高額な接客費でお客さんなんて来なかったんで、セレスさんが来て下さって良かったです」
「ニュフフフ! 可愛い事遊べるならな何でも良いですね。さあ、弄んであげますよ」
「弄ぶ? あ、あのセレスさん。ここは遊女達ととお茶や遊戯を遊ぶ場で、そういうのはうちは……てっ! もう居ませんし」
◇
《スターライト 最上級部屋》
ガチャッ!
「こんばんは~、極東から来はりました。カンミ言います。今日はあんはんとお茶が飲めて嬉しいわ~!」
「こ、これは、か、かわ、可愛いい……」
扉を開けた瞬間、そこは桃源郷でした。エッチで際どい和服を着た黒髪美少女が立っていたのです。
「雪国の元姫アナスですわ。こ、今夜は晩酌をさせて頂きますわ。お客様……てっ! 男性ではないのですか? 何故、こんな可愛らしい方が」
「銀の絹の様な髪を持つ美少女~! さ、最高です!」
布生地面積が非常に少ないドレスを恥じらいながら私を見詰めています。
「リリムよ! 久しぶりのお客様ね。今夜は一緒に踊りましょうね……てっ! 何? その蛸の脚みたいなニュルニュルは?」
妖艶な踊り子の服を纏った褐色肌の美少女。クルクル回っているのでミニスカートの中が見えちゃってますね。
「こんにちは~! 久しぶりのお客様~! 私は繁華街ランデブーの人気No.1シュミレンです。今夜は楽しい思い出にしましょうね……あら? 何で貴女裸になっているの?」
「元気な金髪美少女……最高ですね。こんな愛らしい娘をおいしく頂けるなんて」
健康的な肌に明るい金髪の可愛らしい女の子。清楚なドレスが逆にイヤらしいですね……頂きます。
「………『叡知触手』」
私の秘匿魔法の1つ『叡知触手』は、触れた人の身体の感度を徐々に上げていき、媚薬効果も有する至宝の魔法の1つなのです。
「お客はん! これ何なん?……着物の中に入って……くるでありんす~!」
「わ、私のドレスにも……いいえ。お尻。お尻は駄目です~!」
「この触手で一緒に躍りたいんだよね? この触手で私と躍りたくて、魔法で作りだし……ンモモモ?!」
「この魔法……貴女まさか世界最高峰の変態で有名なセレ……ちょっと……お腹の下は触っちゃラメえぇぇ!!」
「美少女さん達が私の『叡知触手』で凄い状態になっちゃってますね。最高です」
「最高じゃないでありんす。カンミの褌を返しなんし」
「最高じゃありません」
「へ、変態さん! こんなの出禁よ。出禁……ンニャアア。中に入ってくりゅう?!」
「わ、私の身体にも巻き付いてくるわ! ニュルニュルして変な気分になっちゃう」
「はい……一緒に楽しくランデブーしましょうね。もうサキュバスの血が騒いで仕方ありません。皆さん。優しく優しく弄んであげましゅ」
「「「「いや~ん!」」」」
「フリンさん。セレスさんの部屋。凄く騒がしいんですけど」
「あん? なんだい? 私は今、金勘定でいそがしいんだよ」
「いえ……あれ。絶対にお茶とか遊戯なんてしてないですよね。ルール違反じゃないですか? 出禁にしなくちゃ……」
「別に良いさ。ここは万能の魔女様セレンティシアの店だからね。その親友とか言うセレンにはこの店の女の子達に何をさせても良いって許可貰ってるらしいからね」
「……そんなの横暴じゃないですか? それじゃああの娘達が壊されちゃったら……」
「セレンはどうしようもない変態だけど、娘達を壊すまでは絶対しないよ……随分と大金を稼いでくれたね。あの娘達……うちにしてた借金返済できちまったよ」
「え?……それじゃあ。あの娘達は……」
「あの娘達は自由になれるって事だわね。まぁ、これで新しい娘達が雇えるから良かったねぇ」
「……えっと。借金返済はできたとは思えますけど。あの娘達の今後の生活費や住まいはどうなるんですか?」
「そんなの知るわけないよ。あの娘達と私等は雇い主と雇われる側の関係だろう……この繁華街ランデブーで情なんて持つんじゃないよ。他の店につけいれられるよ」
「で、ですが……あの娘達は元々はどこかの王女や貴族なんですよね? そんな娘達がこんな危ない外の世界で生きていけるわけがありません」
「大丈夫だよ。その為にあの変態セレンがいるんだからね」
「……それはどういことでしょうか?」
「あの変態は相当な金持ちだよ。だからアイツが気に入られた娘達は、そのままあの変態に召し上げられるのさ」
「召し上げられるって……それて夜のお供ですか? あの人って女の子ですよね?」
「夜のお供? アハハハ! 違う違うよ。メイドとして雇うのさ。そこであの娘達が自立できる様になるまで働かせるのさ。それが私との契約になっている」
「……メイドですか。それは良かったです」
「だねぇ……そうやってあの娘は昔から不憫な娘達を救って来たからね」
◇
「あら? カンミさん。漏れ漏れですね」
「セレンはん……アカンよ。それ以上刺激されたらウチはウチはああぁんん!!」
どうたんでしょうか? カンミさんが昇天しちゃいましたね。
「こ、こんなのお茶飲みじゃないです……」
「踊るどこか踊らされちゃったわ」
「わ、私なんて色々と始めてだったのに」
こうして、私はサキュバスの血の本能で溜めに溜め込んでいたストレスを大金をはたいて発散する事ができたのでした。それから……
《数週間後》
「はい? この子達の借金は私のせいで返済されたんだから、この娘達の今後の面倒は見るですか?」
「そうだよ。それがアンタの親友のセレンティシアオーナとの約束だろう? 忘れたとは言わせないよ。セレン……いや、セレス」
「宜しくお願いしますでありんす。セレスはん」
「新しい働く場所決まって良かったです。このままでは別の場所で身体を売ることになってましたから」
「踊り子からメイドになるとは思わなかったわ」
「セレス……セレス……セレンティシア? まさかね」
私と毎夜ランデブーした4人の美少女達が、私の身体を掴んで離しません。着いて来る気満々ですね。
「ぐぬぬ! そうでした。久しぶりに来たので忘れていましたよ……また良い娘を雇ったら手紙を下さい。フリンさん。ウワキさん……また来ますね。さようなら。ではカンミさん、アナスさん、リリムさん、シュミレンさん、帰りましょうか。新しい家に。『瞬間移動』」
こうして私は楽しいランデブーを共にした4人の美少女達を、ティファレント家の新たなメイドさんとして雇うことになり、共に屋敷へと向かったのでした。




