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第13話 師弟共同の戦いは化物討伐


 薄紫色の体毛に恐ろしい眼光、巨大な体躯を持ち、表情豊かに笑っています。


 ティアラ王国の兵士違を玩んで虐殺しながら遊んでいますね。


「写真でも見ましたが、あれが激昂のベヒーモスですか、思ってたよりも小さいですね」


「ち、小さい? あんな大きいモンスターが小さいですって? どこがよ。あんなの龍人族の竜の姿位に大きいじゃない」


「ノンノンです。昔の私はあれよりも大きなモンスターを平気で勝手いましたよ。物理的に」


「ぶ、物理的にって……どうやってよ?」


「殴るのです。魔力を力一杯に込めて殴り魔さ」


「な、殴る? 世界最強の魔女がステゴロで? 何で?」


「ベヒーモスは耐アンチ魔力を持っているので物理や斬擊系の攻撃が一番効くんですよ。あ! 今丁度、マルス君がベヒーモスを剣で攻撃しようとしていますから、見れますね」


「ギャアア!!」

「押し潰されるぅぅ!」


『グルル!! そうそう。恨みを晴らしてやるよ。俺を無理矢理あんな汚い祠に封印しやがって、虐殺対象はお前ら宝石の国の奴等全員だ。時間をかけてなぶりながら殺してや……』


「情けない国だと思うが、その事をやられれば隣国や世界経済が後退するだろう………仕留めさせてもらう。『水擊の太刀』」


 英雄マルスの水の太刀が静かに振り下ろされた。これにより激昂のベヒーモスの左腕が切断され、ベヒーモスの切断された断片から血渋きが舞う。


「ひ、ひいぃぃ! た、助かった!」

「こ、この隙に逃げるぞおぉ!」


『………あん? 何で俺の左腕が斬られてやがる?』


「俺が貴様の腕を斬ったからだ。俺を無視して弱い奴等を追いかけるな。先ずは俺の相手をしろ。ベヒーモス」


「……他国の奴等に興味なんてないんだよ。俺は宝石の国の奴等を殺したくて仕方がねんだ。俺をこんな姿にしたアイツ等を俺は絶体に許さねえ。『再覚の左腕』」


 ベヒーモスの固有能力『細胞活性』により、切断された左腕が光の粒子となり消えた瞬間。ベヒーモス本体に新たな左腕が生えた。


「ちっ! これだから古代モンスターには関わりたくないんだ」


『グルル! だろうな。俺達・・はファーストの眷属だった。アイツに仕える事で異能の力を与えられ、あり得ない程の再生能力を得た』


「その為に封印という手段しか取れなかったんだろう? 知っているよ。俺のお師匠に散々教えられたからな」


『ほう。それはなかなか博識な師だな。俺の存在を知っているとは……長生きなのか? そいつは今も生きているか?』


「……あぁ、今もご健在だ。そして、来て下さった」


『あん? 来て下さっただと?』


「はいはい! 来ましたよ。マルス君! 『錫杖の擊』」


『ゴルァアアア?! この力……まさか?!』


 上空からの襲撃があった。万能の魔女 セレンティシア・ティファレントの……彼女が持つ杖に魔力を持たせた一撃がベヒーモスの頭部に大打撃を与えられた。


「お久しぶりですね。ベヒーモスさん……封印解けちゃったみたいですね」


『グルル!!……貴様はセレンティシア!! 何故、ここに現れやがった?!』


「……貴方を倒しに来ましたよ。300年振りに」


《300年前のティアラ王国》


『グルルルオオオオオ! ふざけるな! 俺のどこが狂ったというのだ! 許さねえぞ。てめぇ等!! ティアラ王国!! 貴様等全員皆殺しにしてやるうぅ!!』


「いいか封印の洞へとさっさと入れ半化物が」

「臭い臭い獣臭い化物が」

「おぞましいお身体になりましたね。ベヒーモス」



「奴を封殺した我々でなくティアラの民を恨むか。よく分からんな。のう? セレンティシアよ」

「派遣された私達よりも。英雄だったベヒーモスさんを裏切った国民を裏切ったのでしょう。お可愛そうに」


『グルル!! セレンティシア、ナルカミ。俺は正々堂々の勝負に負けたゆえ、恨みはしないが覚えておけ。俺は必ず戻ってくるぞ。戻りこの国民共を皆殺しにしてやるからな!!』


「ベヒーモスさん。ブチギレてますね。ナルカミさん。メチャクチャ私達を睨み付けていますよ」


「半獣化した姿になり暴れ回ったから仕方あるまいよ。あれがベヒーモス限界だったのだろう……そして、我々もいつかあちら側にならない様に、今後は力の制御を徹底しなければなるまいよ。ファースト達の様にならないようにな」


「ですね……力を持ちすぎるのも困ったものですよ。古代の血の暴走した時の反動は怖いですからね」


「うむ……」



『セレンティシア……まだ変貌してなかったのか? 何故、もその姿で入られるのだ?』


「貴方と違って私は力の制御をちゃんとできますからね。暴走なんてしませんよ。ベヒーモスさん」


『……グルル! ファーストとナルカミはどこだ? 他の奴等は今、どこに居やがる?』


「ファーストさんは知りませんが。他の方々は世界各地で細々と生きているんじゃないですか? 私は私のテリトリーしか管理していませんから、詳しくは知りませんけどね」


『ほう……かつての同士共は生きているのか。それは良いことを聞いた』



「……セレンお師匠。来てくれましたか」

「何? セレンティシア様とベヒーモスが仲良く喋ってる? 知り合い同士なの?」


 ここで、セレンティシアに話しかけようとした弟子マルスと風魔法で上空から飛来して来たシェリーが鉢合わせた。


「……貴女は誰た? 何故、空に上から現れた」


「(何このイケメン。夫のリンクに少し似てるんだけど)……えっと。私はセレンティシア様専属のメイドです。今回はセレンティシア様のお供で付いてきました」


「専属メイド?……ああ、真紅様の手紙で書いていた同族の方か」


「(同族の方? どういう事かしら?)えっと。はいそんな感じですね。貴方はセレンティシア様のお弟子のマルスさんで宜しいんですか?」


「あぁ、ティアラ王国の監視を任されている。マルスだ。以後、宜しく頼む……シェリー殿はセレンお師匠とベヒーモスの関係について何か知っておられるか?」


「い、いえ。何も私、3か月位前からセレンティシア様のお付きになったので分かりません」


「そうか……(嘘は言っていないか。頭頂部に瑠璃色の角があるという事は希少種系の龍族の方だろうか?……新たな弟子候補の類いなのだろうな)」


「あ、あの。マルスさん。セレンティシア様とベヒーモスはどうするんですか? たしかベヒーモスは倒す予定なんでしょう?」


「あぁ……祠の封印が切れた今、倒すしか方法はない。先程までは不可能だったが、セレンお師匠が来てくれたお陰でそれも可能になった」


「そうなんですか……それは良かったですね。(切断された腕を一瞬で治せる化物を倒す? そんな事本当に可能なのかしら?)」


 シェリーとマルスはセレンティシアとベヒーモスの方へと目を向けた。


「ベヒーモスさんが暴走してから300年経ちましたよ」


『グルル!! 300年だと?……そんなにも時が経ったのか?……それにしては貴様の容姿は変わっていないな。セレンティシア』


「私の血筋にはサキュバスとエルフの血が入った混血種です者。長命なんですよ。老化もゆっくりなので、後数千年は生きる予定です。貴方の様にならなければですけどね。暴走はしたくありませんから」


『俺の様にだと? 暴走……違う。俺の今の姿は……これは宝石の国に嵌められて巨獣化したのだ。だから俺はこの国の奴等を全員皆殺しにしなければ気が収まらん』


「いやいや止めて下さいよ。そんな事をされたら私が守護領域にしている隣国のセレン国の経済まで可笑しくなっちゃうじゃないですか。ティアラ王国とは鉱石や宝石の貿易をしているんですよ。それがなくなったら加工している工場の仕事が失くなり、失業者を生みます」


『セレンティシア……貴様。統治者の様な喋り方をするのだな。この300年でこの世界は良くなったのか?』


「いいえ。なっていませんよ。世界各地は未だに地殻変動を頻繁に起こしては、この世界の地理を大きく変えています。遥か昔の地球とは異なる別の大陸として……進化し続けていますよ」


『その進化の果てには破滅しかないがな。滑稽だな。そんな世界に住む奴等の為に動き、失業者が出るなどと叫ぶとは……昔の貴様はもっと冷酷だった筈だが? どうして変わった?』


「それは……弟子を取る様になったからかもしれません。さっき貴方の左腕を切断した子も私の弟子の1人ですよ。ベヒーモスさん」


『あの青年がか?……成る程。だから剣筋が貴様に似ていたのかセレンティシア……弟子か。かつての俺やファーストの様な事をしているのだな。貴様は』


「ですです……弟子を取ると色々な事を学ばせてもらえますからね。それと『歪みの刻』の対策もそこから学べます。ファーストさんの様に失敗しない様にです」


『始まりの暴走……奴の今の状態はどうなっているのだ? 暴走したあの日からどうなった』


「闇落ちした後ですか? それなら世界中で仲間を募っているようですよ。私はその邪魔をしていますがね。恐らくは今回のベヒーモスの祠からの解放にも関わっていると私は踏んでいます。なので直接、貴方の元へとやって来ました」


『闇落ちだと………奴も暴走か?』


「いえ。ミネルヴァ図書館の裏禁書庫なる場所で、世界の行く末という本を読んでから可笑しくなったみたいですね。気が狂ったというか……古代人の真実の一端を知ったのでしょう。私やナルカミさんなんかは全力で止めたんですけど。ファーストさんは好奇心には勝てなかったみたいです」


『……あの自制心が強いファーストが好奇心に負けた?……本当にそれが真実なのか? ミネルヴァをよく調べたのか? 奴等、神性持ちはズル賢い卑怯な奴等ばかりなのだぞ。ちゃんと調べなければ、真なる真実は見抜けまい』


「……恐らくはそれをしたせいで、ファーストさんは闇落ちさせられたんですよ」


『なんだと?』


「この世界には幾つものアンタッチャブルがあるんです。ベヒーモスさんもなにかしらのアンタッチャブルに触れたから、そんな姿に変えられたのでしょう?」


『あぁ、………ティアラ王国の『古源こげんの原石』を調べる様に王族側に依頼されたのだ。国民が豊かになるように調べてほしいと。そして、触れようとしたら、いつの間にか徐々にこんな姿になっていた』


「うわ~! それって世界最高峰のアンタッチャブルじゃないですか。ナルカミさん所の極東秘宝と同じ位の……とういうわけで、私はその『古源こげんの原石』で起こる巨獣化の呪いを300年かけて研究し、解呪できる薬をお注射として貴方にブッ射しますね……ヨイッショット!」


『何? セレンティシア……貴様。今なんと言った……ギャアアアアアア?!!!』


「何だ? 化物がいきなり雄叫びを上げた?! ギャアアア?! 怖い」

「こ、鼓膜が破れる!!」

「え、英雄マルスは何をしているんだ。さっさとベヒーモスなんか倒してくれよ!」



「何……アイツ等。さっきまで逃げ回ってるだけだったくせに。なんて言い草を」

「放って置いた方がいい。関わると面だ臭いからな。ティアラ王国の国民は皆が怠惰でな。自分達からはあまり動こうとしないのだ」

「な、何にそれ。最低な国民じゃない……それとセレンティシア様はベヒーモスに何の攻撃をかましているのよ?」



「ギャアアアアアア!! グギャアアアア!!……ハァハァハァハァ……俺の身体の細胞が沸騰している様だ』


「うるさいですね。さっさと人型に戻ってほしいんですけど。効いてますよね? メチャクチャ効いちゃってますよね? それ竜星の一族のとある女性の聖なる液体を接種して作った万能お薬なんですよ。ベヒーモスさんにかけられていた巨獣化の呪いも簡単に解けちゃうくらい強力なお薬なんです。どうですか? 効いてますか? 感想教えて下さいよ~!」


 万能の魔女セレンティシア・ティファレントの研究者としての側面、マッドサイエンティストの表れた。


 この状態のセレンティシアは容赦がない。


「く! 身体が変化する……縮む……身体が元に……」


「戻りませんか? ならもっとお強い薬を注入してあげますね。ヨイッショット! ヨイッショット! ヨイッショット!」


「や、止めろ! そんな強力な薬を3本も打つな!! これでは完全に元の姿に戻る……少しは獣の能力を残して起きた…ルオォオオ!!」


「「「ギャアアア?! また叫び出した?」」」


 ベヒーモスの身体全体が光出す……そして……


「………セレンティシア。何か被る物を寄越せ。それと金と旅道具があったらそれもだ」


「え~! 良いじゃないですか? そのイケメンの裸体で野を駆け回れば」


「黙れ……噛み殺すぞ」


「はいはい。冗談ですよ。冗談……はい。これが荷物と……300年前にベヒーモスさんを嵌めた人達のリストと先祖達の現在の居場所を書いたリストですよ」


「……この礼はいずれ必ず返してやる」


「はい。『歪みの刻』にはお待ちしておりますね」


「時間指定か……まぁ良い。獣種の統率が終わっていたら、行くとしよう。去らばだ……かつての仲間。セレンティシア・ティファレント」


「はい。またお会いしましょう。かつての仲間。ベヒーモス・ギルフォードさん」


 ベヒーモスだったその人物は最後にそう言い残すと地の果てへと走り去って行った。



〖ティアラ王国で起きた巨大獣ベヒーモスは、万能の魔女セレンティシア・ティファレントとその筆頭の弟子である英雄マルスによって討伐された。その後。戦場となったサバラン草原からはベヒーモスも万能の魔女一行も突然、姿を消したとその事。そして、その事件解決後、ティアラ王国内の王族、貴族、商人等の一部権力者が行方不明になるという事件も発生……ベヒーモス事件との結び付きを視野にティアラ王政は今もなお、事件を追っているとの事だ……〗

『影の国 魔法新聞記者 スイセナル・アバルギドの記事より抜粋』


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