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第10話 図書館を汚す者を捕らえましょう

「それはですね。セレン先生……《封書》の件はこの方達に話しても宜しいんでしょうか?」


 シェフィールド君が私に目配せしながら質問してきました。ちゃんと私に確認を取ってから話そうとするなんて、真紅さんとは大違いですね。


「ええ、この子達は私の身内みたいなものですので大丈夫てすよ。シェフィールド君」


「了解しました。コホンッ! このミネルヴァ図書館には、意思を持つ魔本や魔力が強すぎる魔道書が幾つか保存されているのです。そして、セレン先生が最近、書かれた《セレンティシアの封書》という本もその一つです」


「……自分の書いた本のタイトルに自分の名前を付けたの? 普通はもっとセンスの良いタイトル名にするもんじゃないの?」


 何で本の事をよりも、なんで私が書いた本のタイトルにケチをつけているんですか? シェリーは。


「私は偉大で凄い魔法の使いなんですよ。シェリー、なので自分が書いた本に自分の名前を堂々と書いても何の文句も言われないのです」


「……それって誰もいさめる人がいなかっただけじゃない。《セレンティシアの封書》のとか、ダサいタイトルよね? シオン」

「だぅ!」


「な、なんですとー?!」


 この竜星の親子、正直者過ぎませんか? もっと私の顔を立てるくらいしてほしいものなんですけど。


「ハハハハ! 仲が宜しいのですね。セレン先生とシェリーさんは、まぁ、本のタイトルはその著者の者ですからね。セレン先生が何れだげネーミングセンスが悪くても本は本……特別な本へとなるわけです」


「特別な本?」


「はい。最初にも述べた様に、セレン先生の《セレンティシアの封書》には古の怨念の一部が封じ込められているのです。それゆえにそれを狙う方々も沢山います」


「それが今回の侵入者ってことですか? セレンティシア様を呼ぶ羽目になるくらいの?」


 シェリーは周囲を見渡して怪しげな人が居ないか確認し始めました。そんなのでミネルヴァ図書館に侵入したかもしれない人が見つかるわけありません……だつて侵入者は恐らくあの方なのでしょうからね。


「本を盗む為の侵入者……シェフィールド君。私、あの方しか思いつかないのですが」


「ええ……まぁ、そうですね。影の国『ラプンツェル』出身者侵入者では有名な盗賊。影盗賊ラニーで間違いありません」


「影盗賊ラニー? それって世界各国で指名手配されている重罪人の1人よね? たしか世界のタブーに触れたとかで有名な……セレンティシア様の有名な弟子よね?」


 シェリーって案外、俗世ぞくせの事について詳しいのですね。意外です。


「ええ、影盗賊ラニーは私の元弟子です。そして、世界の真実を知って、私の元から去って行きました」


「……セレン先生。赤子とは言え、子供の前です。それ以上の事は話さないほうがよろしいかと」


 おっと。いけません……そうでした。そうでした。世界の真実なんて聞いて知っただけで、とある国から犯罪者扱いされるんでしたね。口が軽すぎるのも良くないですね。私。


「そうでしたね。すみません。シェフィールド君……《封書》のある部屋まで案内して頂けますか?」


「はい。セレン先生……ご案内致します。副館長ミルナさん……禁書の部屋の鍵を持って来て下さい。セレン先生は後から合流するそうなので先に部屋に入りましょう」


 シェフィールド君が懐から念話魔道具を取り出して、誰かに連絡を入れていますね。副館長ミルナさん?……あれ? ミネルヴァ図書館に副館長なんて方、在籍していたでしょうか?


〖ザッ……ザッ……はい!……シェフィールドさん〗


「あぁ、ミルナさんですか? 最近『ファースト』と言う国から派遣された方なんです。議長のお気に入りらしく、入館を断り切れずにミネルヴァ図書館にまんまんと入られてしまいましてね」


「入られてしまいましてねって……それって、凄く怪しいじゃないですか」


「ええ、だからセレン先生に来て頂いたんですよ。その怪しいミルナさんが、セレン先生の元弟子なのかを確かめてもらう為に……たとえ変装をしていたとしても、修行時代にセレン先生と過ごした教え子は、セレン先生の魔力の影響を濃く受けますからね。ですのでミルナさんをセレン先生に見ていただければ分かるのですよ」


 ……成る程。その為に私を呼んだと。なんか私、シェフィールド君に利用されている気がするのですが気のせいでしょうか?


「……まぁ、元弟子とはいえ、弟子のの不始末は、師匠の不始末です。見てみて元弟子のラニーちゃんでしたら、軽くお仕置きしてあげましょうか。もう弟子ではないので特別なお仕置きをそえて」


「……うわぁ! もしかしてセレンティシア様。アンタ、その子にも私にやったみたいな事をする気なの?」


「フフフ……アレよりも凄い事をやりますよ。勝手に私の元から去ったんですから。お仕置き位しないと気がすみませんしね」


「セレン先生はこれでも結構根に持つタイプの方なんですよ。なので元弟子に対しては容赦ありません。過去にも勝手に逃げ出した弟子の方を矯正して性別を変える程き変貌させたくらいですからね」


「……それって例のナルカミとか言う奴に飲ませた性転換の薬を使ったって事じゃあ?」


「さぁ? どうですかね? 教えてあげませんのよ〜」


 などと言って、私はシェリーの追求をスルーしました。


《ミネルヴァ図書館 禁書の部屋前扉》


「シェフィールド館長〜! 禁書の部屋の鍵をお持ちしました〜! 遅くなってしまって申し訳ないです」


「ミルナさん。お疲れ様です……随分と遅かった様ですが、今までどこに居たのですか?」


「え? えっと……各職員に書簡の整理を伝えていたら遅くなっちゃいました。すみません」


「あぁ、そうだったんですか。それは仕方ありませんね……では禁書の部屋へと入りましょうか。後々、セレン先生もお着きになりますし。セレン先生が着くまいに《封書》を解放しておいた方が時間もかかりませんからね」


「……はい。そうしましょう。このタイミングをずっと待っていましたから」


「……タイミングですか?」


「ええ、万能の魔女が書いた『セレンティシアの封書』の原本を直接見れるなんて、普通では絶対にできませんからね。楽しみで仕方ありません」


「楽しみですか……それはの良かったですね」


「はい!」


「……では入りましょうか。部屋の中へと」


ギィィ……ガチャッ!


《禁書兼封印室 通称 ミネルヴァの寝床》


「この中で少し待ちましょうか。後数分もすれば、セレン先生もお着きになりま……」


「ご苦労様。シェフィールド館長……一か八だったけど賭けに勝てたわ」


ドスッ!


「……す?…………ミルナさん。何故、私のお腹にナイフを突き刺して……ぐはぁっ!」


「それは私が貴方の明確な敵だからよ。万能の魔女の筆頭派閥さん。世界の派遣を牛耳っているからっていい気になりすぎなのよ……あの女は危険よ。各国……いえ世界に取ってね」


「……だから闇の世界の住人に雇われて、この様な愚行を? セレン先生の弟子である僕を殺すのが目的だったのですか?」


「それとミネルヴァの寝床に眠る、セレンティシアが書いた《封書》を初めとした本を頂くためよ。シェフィールド館長をアンタは私がここで働き始めてから、ずっと私を警戒してたわよね。その為にミネルヴァの寝床の扉を絶対に開けなかったもの」


「……この部屋へ入る為には私の許可と鍵が必要不可欠です。なので、言鍵ロックキーは館長である僕が、部屋の鍵は副館長が持つ事が昔から決められていた」


「それが。師匠であるセレンティシアが来た途端に警戒を解いて、直ぐにミネルヴァの寝床の扉を開けちゃうなんて思いもしなかったわよ……どんだけ信用してるのよ。あの腹黒女の事を?」


「……全幅の信頼を寄せていますよ。あの人は私達の様な身寄りの無い子供だった者を弟子にしては、こんなに立派に育てて来ましたからね。勿論、貴女もそう思っているのでしょう? 影盗賊ラニー」


「……アンタ。私の正体に気づいていたの? シェフィールド先輩。まぁ良いわ……セレンティシアも近くに居る事だし、目的の本を早く持ち帰らないとね」


「……そうはさせませんよ。セレン先生!」


 ようやくシェフィールド君から合図が来ましたね。ではでは盛大に捕らえちゃいましょうか。私の修行から逃走したいけない元弟子ちゃんを。


「お久しぶりですね。ラニーちゃん。お仕置きのお時間ですよ。『捕縛鎖ロックスチェイン』」


「その声はクソババ先生?! てっ! 何これ? いきなり床から大量の鎖が私に巻き付いてきてるじゃない。それになんだかヌルヌルしていて気持ち悪いし」


 グルグルグルグルと魔蛸の触手が元弟子のラニーちゃんを拘束していきますよ。壮観です。悪くて可愛い女の子が叫び声を上げているなんてなんて壮観なんでしょうか。たまりませんね。


「うわぁぁ……気持ち悪いわね。あの変な触手……あの女の子の服の中まで侵入しているじゃない。シオンがずっと寝ててくれて良かったわ。こんな光景絶対に魅せられないもの」

「スゥースゥー……アゥ……」


 シェリーがラニーちゃんの今の姿にひきつった顔をしていますが放っておきましょう。今、師弟の感動的な再会シーンなのですからね。


深淵アビスの特別な鎖ですよ。全く突然居なくなったと思ったら、外の世界で好き勝手に暴れているなんて、私は許しませんよ。ラニーちゃん、これは再教育が必要ですね」


「だ、黙りなさい。この世界の破壊者が」


「世界の破壊者? はて? 悪いラニーちゃんは何を言っているんですかね? シェフィールド君。ああ、もう刺された演技は良いですよ」


「……よっと。はい、セレン先生……それはですね。闇の世界にはセレン先生を良く思っていない者達がいるのです。そして、そこに居るラニーの様にそれを信じてしまい。可笑しな行動に出る者が最近は多くいる様です」


「影の国の方々ですかね? まぁ、裏でこそこそとしか出来ない人達の事なんて別にアウトオブ眼中ですが、それで元弟子を使って私に揺さぶりをかけてくるのはなんだかムカつきますね……そのうち潰しに行きましょか」


「ふ、ふじけんじゃないわよ。あそこの人達は皆、好い人なのよ。私の恩人なの。それを潰すとか言うアンタは私が絶対に許さな…そのうちンモモモ?!」


 はいはい。ラニーちゃんのうるさい口は鎖触手で塞ぎましょうね。私の屋敷に帰ったらじっくりコトコト再教育を施してあげますよと。


「反抗期のラニーちゃんは放っておいて、《封書》の儀式を始めましょうか。シェフィールド君」


「……はい。万能の魔女セレンティシア・ティファレント様……聖域を発動……今回の封印対象は『セレンティシアの封書』『レントの海中伝』『ミシアの生命記』の3つになります」


「畏まりました……この世界の秩序の一端を担う者。セレンティシアが命じます。知の神ミネルヴァよ。《封書》の力を奪い白紙に変えなさい。『封書封印』」


〖その願い。承った……〗


「……何これ? この部屋全体が白く輝いてる?」

「《封書》の儀式。完了ですね。セレン先生……お疲れ様でした。ではまた『ゆがみの刻』にお会いしましょう」

「ちょっと! こんな現象が起こるなんて聞いていないわよ。ファースト様……つっ! あれ? 私何でこんな事をしているのよ?」


 白い光がミネルヴァの寝床全体に広がった瞬間、私達はミネルヴァ図書館にはいませんでした。


「おや? お帰りなさいませ。セレンお嬢様とシェリーさんと……ヌメヌメの元お弟子さんのラニーちゃんですか?」


 そこは私の実家であるティファレント家の屋敷の庭園だったのです。



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