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第1章 雑用係

「料理人のアミルです!よろしくお願いいたします!」


「お前か!公金横領したバカは!荷馬車に乗れ!行くぞ!」


は?どこへ?

 ヒョイと襟首捕られてそこにあったロープと天幕を畳んで載せてある荷馬車の上に無造作に載せられた。


「漏らすなよ?ハハハ」


結果を言うと、漏らした!止まってくれって頼んでも、丸っきり無視する御者に、ヒドく揺れる馬車、不安定な足元。

 踏ん張れない俺はやってしまったのだ。

しかし、僕には神様がくれた取って置きの魔法が使える。


クリーン。


体と天幕と服が綺麗になった。覚えていてよかった生活魔法。

 あ、食材持って行ってるのかな?行ってなさそう。

 アイテムボックスから弓矢を出してどうにか膝立ちして飛んでいる鳥を魔法で補正した矢で狙う。

一羽落とした!魔法で手元に移動させる。それを16回繰り返して今度は血抜きして解体。むしった毛は羽根枕にする。

肉はミンチにして、僕の朝ごはんのバケットとミルクをちぎって塩コショウと混ぜなんちゃってミートボールにしてアイテムボックスから出したバットの上に載せてアイテムボックスにしまう。

 馬車が止まった。

天幕を建て始めた人を避けて土魔法で目隠しの壁を作り、竃や、調理台を作るとミートボールのポトフを作った。

 コンソメキューブのズル仕様だが、美味しいのは間違いない。

 これだけじゃ物足りないだろうから、ナンを焼く。チーズのナンとか、美味しいだろう!と○けるスライスチーズを乗っけて出来上がりだ。丼とトレイをアイテムボックスから出し、ポトフとナンを載せて行けば上から盗られた。

 そこには頰に何かに噛み付かれた後がくっきり残っているざんばらの赤毛の大男がいた。


「ギャアアアアアーーーッ!!」


叫んだ僕は悪くない!

14部隊の皆が集まってきて、赤毛の大男をバシバシ殴った。


「新入りを手伝ったりするな!バーン。不愉快な目にお前が遭うだろう!新入り、お前も手伝ってもらってるのに叫んだりするな!もういつ魔獣が出てもおかしくないんだよ!息を潜めて、メシ作って、洗濯してろ!お前はここじゃ下っ端何だよ!賄賂なんか貰えねえからな!サッサと給仕しろ!」


「はい、申し訳ありませんでした!手伝ってくださった方に非礼でした。ありがとうございます。ただ、お小遣い程度でいいので、お金が幾らか欲しいのです!お願いします」


「そんなに金が欲しけりゃ俺の足を舐めたらやるよ!水虫だけどな!」


眼帯した黒髪の男が豪快に笑いながら言う。

 水虫か!キツいな!でも、ある程度金が欲しい!


「後で参ります!」


「おいおい、本気か?!」


「本気ですとも!冗談だったのですか?」


何故か下卑た笑みを浮かべご機嫌で夕食を盛ったトレイを奪って行った。


どんどん配膳してどんどん持って行かれて残っているのは1人前とちょっと。

ナンはないので全部食べていると手伝ってくれた赤毛の大男がまた、手伝ってくれている。汚れた丼とトレイを何十枚か重ねてやってきた。


「ありがとうございます。バーン様」


ちなみに僕以外は皆、貴族だ。

 様付けで呼ばなければ首が物理的に飛ぶ。

いかにも赤鬼的な容姿のバーン様は笑うと可愛かった。


「いいんだよ。夕食美味しかった!ギーヴのテントには行くな。アイツは、痛め付けて喜ぶ性癖がある。明日の朝には、歯が全部抜かれて爪が剥がれているなんて、事になりかぬない。何のためにお金がいる?」


この人だったら、いいかもしれない。相談して見よう。


「僕、スキルで調味料出せるんだけど、お金と引き換えなの」


「ひょっとして横領罪はソレか!」


「騙されてパーティーの資金に、って渡されたの。僕、バカだった」


「何で宰相閣下に言わなかった!」


「……また、利用されて捨てられるんじゃないかって、思ったのと、あんまりこのスキルの事話したくなかったから、黙ってた」


「こんな怖い所まで来て私に話すくらいなら言ってしまっても良かったのに」


そう言って頭を撫でられて、今になって悔しさが込み上げて来て涙になった。


「僕は、簡単に、宮廷、料理人にな、った、から、これ、が、罰なん、だ、って、思ってた、うわぁああああん」


泣き止むまで、抱っこ&ナデナデしてくれたバーン様はそのまま俺を抱っこして黒髪眼帯男のテントを訪ねた。


「ギーヴ、すまない。コイツを譲ってくれ。私もそろそろ小姓が欲しかったんだ。まだ、壊れてないから金貨100枚でどうだ?」


「金貨100枚ぃ~?そんなに出せるのか、バーン」


「実家に頼んでみる」


「はあ~。仕方ねえな明後日まで待ってやる。それ以降に金が届かなきゃそいつをよこせ」


「……わかった。ちゃんと払うよ」


その日はバーン様達の天幕におじゃまして、眠った。星が空に浮かぶ内に起き出す。

鶏ガラとクズ野菜でフォンを取ってベシャメルソースを作って野菜しか入ってないコーンクリームシチューをたっぷり作って、ピタパンを焼く。挟むのは焼き肉のタレで炒めたモヤシとニラ。小麦粉がこれで無くなった。

 近衛第14部隊は43名の小部隊。野外訓練でもするのだろうか?

 バーン様が起きてきたら聞いてみよう。


◆○◆○◆sideバーン=オルコット


もう、起きてやがる。寝床が冷たい。

 ロクに寝てないのに大丈夫か?

着替えて天幕の外に出ると甘い匂いと香ばしいタレの匂いがする。

 朝もやでよく見えないがいい匂いがするのはこっちの方向。胸元までの土壁の中で次々来る隊員たちに給仕しているアミルの姿を見て元気そうだと私は一つ頷く。

 忙しくしている様が小動物の仕草に似ていてホッコリする。

 押しかけてるバカもいるので列に並ばせる。こういった時私の顔と体格はいい仕事をする。ミノタウロスとか、不本意な名前で呼ぶ対価だ。


「あ、バーン様!聞きたいことがあるんですけど、今いいですか?」


「何だ?どうした」


「この野外訓練は何日続くのですか?」


「おい、新入り。この部隊は野外訓練なんかしねえよ!スタンピード対応部隊だから、危ない場所に行って何十日か、生きるか死ぬかをやって、スタンピードを乗り切ると帰れるそんな仕事をしてる部隊だ。舐めてんじゃねえよ!」


スタンピードと聞いて顔色が悪くなったアミルに手を伸ばして抱っこしてやる。

 今までペラペラしゃべってたロズウェルが眉間にシワを寄せている。


「バーン!構うな。ギーヴがうるさいぞ」


「それなのだが、話がある。ロズウェル給金を前払いしてくれ、アミルと私の分」


ロズウェルは部隊の金庫番だ。

 頷くと自分のテントに私達を連れて行った。


「幾らあったらいい?」


「金貨100枚づつ」


「新入りにそんな価値あるか?」


「美味かったろう?昨日の煮込みも今日の煮込みも。内緒だが、金と交換して調味料が出せるスキルがあるらしい。1カ月は様子見にテメェの給金でやりくりさせてみて、良かったら、2カ月目からは、食費を出してやれ」


「なるほどな、成り上がったのには種があったわけか。食費は出してやる。出さないほど鬼畜じゃない。ただし一日に金貨1枚が上限だ。新入りの給金の前払いはしない!お前はすぐ持って行け!ヤツはうるさいからな」


さすがロズウェル!解ってる!

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