甘い物が好きなカラス
カラスたちは、みんな光り物を集めます。キラキラと光る物が大好きなのです。でも、カラスのアマカァは、ちょっぴり変わっていました。
「あっ、駄菓子屋さんのドアが開いたぞ!」
アマカァの、冒険の始まりです。止まっていた電線から飛び降りて、一気に駄菓子屋さんに潜入します。
「あっ、こら、ドロボウガラス! またしょうこりもなくやってきたな!」
駄菓子屋のおじさんが、ほうきを持ってアマカァを追い払おうとします。アマカァは、カァーと鳴いて怒ります。
「こんなにいっぱいあるんだし、ちょうだいよ!」
駄菓子屋のおじさんは、ほうきをふりまわしてどなります。
「金も払わんで、このドロボウが!」
アマカァは、小さなチョコレートだけをくちばしにくわえて、バサササッと逃げていきました。
「ねぇ、なんであのおじさん、ぼくのことドロボウなんて言うんだい?」
その晩、アマカァは、カラスたちの中で一番賢い、ハカァセに聞いてみました。
「それはきみ、お金を払ってないからだよ」
「オカネって、なに?」
「ぼくたちカラスは、光り物を集めるだろう? 人間たちも、お金を集めてるのさ。そのおじさんはきっと、アマカァにお金を払ってほしいって思ったんじゃないかなぁ」
アマカァは、なるほどと思いました。ハカァセに、お金の特徴を聞いて、アマカァは夜明けを待ちました。
夜が明けると、さっそくアマカァはお金を探します。ハカァセが「人間からは、お金をとったらいけないよ」と、注意してくれたので、落ちてるお金を探します。
「あっ、あった!」
さっそくお金を見つけました。くわえて巣へ持ち帰るアマカァを、仲間のカラスたちは、不思議そうに見ています。
「いつもは甘い物しか集めないアマカァが、光り物を集めてるぞ」
「甘い物ばかり食べてるから、変になっちゃったんじゃないか?」
うわさされても、アマカァは気にせずお金を集めます。やがて、たくさんのお金で巣がいっぱいになりました。
「それじゃあこれを、おじさんのところに届けよう」
アマカァは、ハカァセからもらった袋に、お金をひょいひょいつめていきました。けっこう重いですが、なんとかくわえて飛べそうです。
「よし、行くぞ」
アマカァは、おじさんの駄菓子屋へ飛んでいきました。
「このドロボウガラス、また来たか! …おや、なにかくわえてるぞ」
アマカァは、お店の入口に袋を置いて、バサササと去っていきました。おじさんはけげんそうに、袋をつまみます。
「こりゃ驚いた。中身はお金じゃないか。…あのカラス、こりゃたまげたなぁ」
それからというもの、駄菓子屋のおじさんは、アマカァが飛んできても、知らんぷりしてくれるようになりました。それどころか、たまにチョコやこんぺいとうを、道ばたにまいてくれるのです。仲間のカラスたちも食べて、目を丸くしていました。
「こりゃおいしいなぁ!」
それを聞いて、アマカァは誇らしげに「カァー」と鳴くのでした。