1日目 私の引っかかり
最近ネットやテレビで、ADHDやHSPなんて言葉をよく聞く。
それこそ、YuuTuberと呼ばれるネットの有名人が、発達障害だなんだと動画で流してから、人々の関心が向いたことに起因するんだと思う。
まぁ、大体の人は自分が発達障害なのかどうかということに興味がある。
ある人は他人と違うことに対して優越感を得るために、また別の人は他人と違うことがないのだと、自分は他人と同じなのだと信じ込ませるために、多くの人が1度は症例を調べたり、見たり聞いたりしたことがあるのではないだろうか。
かく言う私も、人と違うことを憧れながら人と違うことを恐れて、面白半分で調べてしまう部類だと知っている。
「……あ…。ねぇ、みあさんってば!!!」
耳元がキーンとする…。
横を振り向くと、本当に目に入れても痛くないほど、可愛い可愛い私の最近推しのバイトの後輩がいる。
くりっとした目で、こっちを不思議そうに見つめている。
「ん?どした??何してたんだっけ笑」
「何してたって、今、私にレアチーズの作り方を教えてくれてる途中ですよ!?この次どうしたらいいんですか!?どんどん固まってきちゃってますよ〜!助けてください〜!!」
手元を見ると、あと生クリームを混ぜたら終わりだと言うのに、律儀に次の指示を待っている私の可愛い可愛い後輩ちゃん(大事なことなので2回言います。)が、半泣きになっている。
「あ〜、これは失敗してるかも?」
「え、そんなぁ〜…!!!」
「嘘、嘘。あとは生クリームを入れてゴムベラで混ぜて、型に流し込んで終わりだよ〜。」
私は笑いながら冗談を言いつつ、しっかりと指示を出して、後輩がケーキを仕上げていく過程を眺めながら自分のしていたことを思い出す。
そうだった。
バイトでケーキ作りを後輩に教えながら、自分は仕込みをしていたんだった。
そうしたら、昨日あれこれとOnstagramで見ていた投稿のことを思い出したのだ。
「みあさん、終わりましたよ〜。確認お願いします!」
本当に後輩はこういう所が可愛いんだから。
今回は初めてだが、今まで教えてきたケーキも少しでも不安要素があれば、しっかりと聞いてきて、最後に確認をお願いしてきてくれるあたり、本当に可愛い。
これだから、甘やかしたくなるんだよな〜。
「んっ!おっけいだよ〜。じゃあ、これを冷蔵庫に入れて冷やしたら終わり!お疲れ様!」
「ありがとうございます〜!!疲れました〜。冷蔵庫入れてきます!」
私も、もしかしたら、こうやって振る舞う子になっていたかもしれない。
昨日見た投稿が引っかかって、私は人と違うのでは無いだろうかという不安は、なかなか拭えない。
それも、たびたび人と違うのでは無いかと感じていた点が気になり始めたら、どうしても引っ込みがつかず、ずっと気になり続けてしまう。
けれどもっと発達障害にしても、どんな症例でも、目に見えるほど酷い人がいて、そういう人が相談所やカウンセリングに行くものだと思うからこそ、自分の、この少しの引っかかりだけで行く気にはなれず、どうしても1人で思い悩むだけで終わってしまう。
私はいままでにあった引っかかりを、一つ一つ思い出してみる。