干渉
しっかし奇妙な夢を見せてくれるな。世界が消えたみたいだ。
なんも見えねー触れねー動けねー。
おまけに自分が何時に寝たか覚えてないってことはゲーム関連の貴重な情報を整理できないとみた。
せっかく夢の中で意志を持って考える脳があるってのに時間の無駄だぜ。
真っ白な世界に一人で何もできねーのかよ。昼間か?朝か?眩しくて大体の時間すら分からねー。
そういや飯食ったっけ。風呂は?明日学校じゃね?
学校行く前にランク戦行っときたいんだけど俺君、いつ起きるんだい?
昨日は水曜……いや、火曜か?
火曜だったら体育と音…………いやいや、昨日は休みだったか。…あれ、おかしいな。長いこと学校には行っていないような気がする…………。
いやいやいやいや。体育祭のサッカー対決でクラスが優勝……………って、いつのこと思い出してんだ。
これは半年以上前の事で………。
そうだよな?半年以上前のことだよな?
昨日は?昨日は何してた?俺は誰と話して、何を食べて、どんなゲームを────、、
『おーい』
『起きなさーい』
『そんなに寝てると×して早々に×っちゃうぞー』
────誰だ。親…?より若い女の声。
里美?いやいや。そんな訳ねー。なんで俺の家にいるんだって話。
『起きないと。本当に×しちゃうぞ』
姿の見えない女がなんて言ったのか。
それはそれは楽しそうにクスクスと笑う声が聞こえる…。
──────うぁっ、痛い、痛い、なんだこれ、足が、腕が、ない、ない、ない、ない!
砂嵐のように途切れる映像。
──────父さんっ、母さんっ、俺は…俺はぁっ、まだ、死にたくねえ、死にたくねえよ…………
死にたくない。
ガバッと飛び起きた先に見えたのは花畑の中にぽつんと佇む白いテーブル。
三人分の椅子とティーカップが置かれたその場所には誰も座っていない。
日除けの大きな傘は黒い水滴で濡れている。
──なんだ、ここ。どこだ?誰もいないのか?
まさかこれも夢?俺は今飛び起きたもんだと思ってい……あれ。
今、布団をめくった感覚をハッキリ感じた。
なのにどこにも、布団なんてない。
あるのは俺の体と、花畑。それに誰もいないお茶会セット。
なんなんださっきから。
夢の中で夢から醒めてまた夢見てんのかよ。
いい加減起きろよ。ログインボーナス切れちゃうだろ。
『おーい』
ゾワッ…………。
「え…?」
真後ろで囁かれた名の知らぬ女の声に全身が震撼した。夢のくせにやけにリアルな鳥肌感覚。
ぼんやりとフィルターをかけられたような声に反応し反射的に振り返った。