表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

学校

僕達は学校に着くと、別々の教室に別れた。

クラスは1組から4組まであり、僕は4組でハチは2組である。


学校に着いたのは7時45分、教室には数人ほどの生徒しかいない。

他の生徒は大抵が部活に所属していて、僕達よりも早く学校に来て今も外で朝練をしているのだから、教室に人が少ないのは当然だろう。

さて、早起きの分を取り戻す為にも少し寝るとしよう。

僕は机に顔を伏せ、眠りについた。


――ザワザワ


周りで大勢が会話をしていて、その音で僕は目を覚ました。

顔を上げてみると、さっきまでスッキリとしていた教室が人で溢れていた。

溢れているとはいえ、せいぜい30人ちょっとなのだけれど。

そして同時に汗のニオイや思春期独特の体臭、制汗剤のニオイが教室に立ち込めていて、改めて学校に居るのだと認識させられた。

時計を見てみると8時半。

40分になったらホームルームが始まるので、それまでの雑談タイムといったところだ。


「おっはーカケルー!」

「おはようミヅキ」


声を掛けて来たのは米田美月(よねだみづき)、同じクラスで小学校からの同級生である。

色素の薄い黒髪ショートヘアで、陸上部に所属している。

身長は155cm、体重はタマちゃんと同じらしい。

ん?アザラシって結構重いんじゃない?って思ったけど、僕は何も言わなかった、言う必要もなかった。

なにせ見た目はスラッと引き締まっているし、余分な肉も付いていないように見える、いい意味で。


「もう、カケルいつも寝てるじゃん。これからはネボスケくんって呼ぼうかなー」

「ネボスケくん?壊滅的なネーミングセンスに脱帽だよ、ははは」

「む!許さん!」


腹を抱えて笑っていた僕はギラリと鋭い視線を視界の端に確認し身の危険を感じたが、運動部相手に反応速度で敵うはずも無く、無残に横っ腹をコチョコチョされた。


「あひっ!ちょっと!やめてっ!くすぐったいから!アハハハ!」

「ほれほれネボスケくん、謝りなさい?」

「ごめんなさいっ!アハハ!ごめんなさいっ!」

「え?なんて?」

「ごめんなさい!許してくださっアハハ!」

「仕方ないなぁ、許してあげましょう。これからはせいぜい私の機嫌を損ねないことだね」


僕の憐れな姿に満足した女王ミヅキの手はコチョコチョを止め、肩をポンポンと叩いた。


「ははー、ミヅキ様ー。ってなんで俺がミヅキに従わなきゃいかんのよ!」

「あはは!まぁいいじゃん!あ、そうだ。予約していい?」

「よくないだろ……ってなに、予約?なんの?」

「今日と明日一緒に帰るっていう予約」

「ふーん、いいけど部活は?」

「部活はね、休み!」

「へー、そっか、了解。じゃあいつも通りハチと一緒でいいよね」


中学の頃から部活がない日はハチとミヅキと僕の三人で下校していた。

ミヅキの家は僕の家から歩いて10分もすれば着くほど近くにある為、同じ鳴狭間駅で下車する。

中学三年生の後半に入った頃は毎日のように三人で帰ってたっけな。

最近は中々三人で一緒に帰れなかったから、懐かしい気分。

ちなみに行きも部活の日以外はミヅキと一緒に登校しようとも思ったのだが、どうやら親の運転での車通学に慣れてしまったようで、どうにも電車通学ができないらしい。

確かに、家を出てすぐ乗り込んで寝てればいつの間にか到着してる車通学に慣れちゃったら電車通学なんてできないよなー。

ましてや眠たい朝なんだから。


「いや、あの、二人がいいんだけど」

「へ?」

「あ、やっぱなんでもない!へーハチと三人で帰ろ!」

「うん、大丈夫?」

「大丈夫大丈夫!ごめんね!」


チラッと時計を見るミヅキ。


「あ、もう40分だ!席戻るね!また放課後ね!」

「うん」


慌ただしく席に戻っていったミヅキを可笑しく思いつつ、僕は少しだけ気になっていた。

二人がいいってまさかミヅキに限ってソウいうアレじゃないだろうし、なにか別の用事があるはず。

誰かにあげるプレゼント選びに付き合って欲しいとか、そんな感じかなぁ。


――ガラガラガラ


教室の引き戸がなだらかに開く、戸の開け方でその人の性格が分かるような気がする。

担任の楢葉巌(ならはいわお)先生だ。

おっとりとしていて恰幅の良い中年のおじさんであるが、マスコット的立ち位置で女子人気が高い。


「おはよう皆さん」


喋り方も声質も非常におっとりとしている。


――おはようございます

――おはよーございまーす

――おざまー

――うーっす

――ぐっどもうにんぐー!


様々な挨拶が教室を飛び交っているが、楢葉(ならは)先生は依然としてニッコリしている。


「うん、皆さん元気ですね。では出席を取りますからね」



「――うん、今日は全員揃っているようで何よりです。では、今日のお話ですが、どうしましょうかね」


4組のホームルームでは毎朝『今日のお話』と題して、楢葉先生が話をする。

ある日は石油ストーブの話、ある日は車の話、ある日は自分の子どもの話、お題は決まっていないらしい。

ちなみに去年も4組だった僕は、既に一年分『今日のお話』を聞いている訳で、たくさんの今日が堆積している。


「そうですねぇ、うん……今日は車のリアウイングについて話をしましょうかね」


――えーつまんなーい

――なにそれー

――お!車?せんせー!早く話してー!

――うぇーいりあういんぐりあういんぐー!


男子は興味があるようだが、女子は興味がないらしい。

ふとミヅキを見てみると意外に興味がある様子だった。

周りの女子の目がある為か声に出して表現する事はなかったが、目は死んでいない。


「うん、ではリアウイングの役割についてですが何か知っている人は居ますか?」


楢葉先生が質問すると、ウェーイ系ヤンチャ坊主の上伊那厚(うえいなあつし)が手を上げた。


「うん、上伊那くんどうぞ」

「かっけーからっすかー?」

「うん、確かにかっこいいですが、違います」

「えー!でざいんじゅーし(デザイン重視)ってやつじゃないんすかー?」

「うん、残念ですが」

「えぇー!まじざんねんっすわー」

「あっちゃんまじおちこむなしー」


あっちゃんまじおちこむなしー。って会話に入ってきたのは、上伊那厚の親友梁火野慈朗(はりひのじろう)である。

この二人は4組ウェーイ系のツートップで(この二人しかいないが)、他のクラスのウェーイ系とも親交を深めているらしい。

そんな二人の軽快な?トークを見て、クラスの皆は笑っていた。

かくいう僕も辛抱たまらず笑ってしまっていた。

ウェーイ系ヤンチャ坊主にも関わらず、何だか憎めない温かさがある。

それが二人の良いところなのだろう。

そして僕は二人から視線を外し、楢葉先生の方に視線を向けてみた。

するとキラリと光る何かが目の奥に宿り、こちらに顔を向けてくるではないか。


 う……目が合った。


理由は分からないが僕はこの先生に好かれているらしい。

なにかと僕に質問を投げかけてくるし、答えを求める。

一体僕の何を気に入ったのやら。

この視線は確実に振ってくる。

リアウイングについて。

上伊那と梁火野が座り、教室の笑いが引いた頃、楢葉先生は口を開いた。


「うん?星谷くん、分かるのかね?」


きたきた……いつものこの感じ。

僕は何も言ってないぞ!

まったく。


「えーっと、ダウンフォースがなんとかって本で読みましたけど、うーん……空気の流れを変えて車体を地面の方に押しつける……みたいな感じでしたっけ」

「うん、正解。さすが星谷くんだ」


――よく分かったなカケル!

――かっちゃんすげー!

――だうんふぉすだうんふぉすー!

――さっすがー!


ふぅ、良かった。

楢葉先生が担当してる理科の授業でもそうだけど、毎回心臓が痛い……。

ミヅキの方を見てみると、ニカッと笑い右手でグッドサインを作ってこちらを見ていた。

僕もなんとかグッドサインを返し、一度息を吐いた。



「うん、ではもう少し詳しく話すと――」


その後リアウイングの説明を続けた楢葉先生の話はうまく纏まり、ホームルーム終了時刻の8時50分に丁度終わった。


――キーンコーンカーン


「――という訳で今日のお話はここまで、一時間目は数学ですからね。準備を済ませておいてくださいね」


――分かりましたー

――はーい

――うぃーっす

――すーがくめんぢー


話を終えた楢葉先生は荷物をまとめ、教室を出ていった。


「カケルー、リアウイングの事よく知ってたね!」


数学の準備をしようと鞄に手をかけた時、ミヅキが話しかけてきた。


「まーね、たまたま本読んでて良かったよー。ホント心臓に悪い。ミヅキはどう?分かった?」

「あはは、うん、分かったよ?」

「へー!すごいな……あれ?ミヅキって車好きだったっけ」

「ううん、別に好きって訳じゃないけど、テレビで見たの」

「そっか、好きでもない車の番組見るなんて物好きだなぁ」

「知識はいくらあっても損しないからね!」

「おー、今後ろに向上心の神様が見えたわ」

「え!うそ!ほんとに!」

「嘘に決まってんだろが。そのくらいミヅキの向上心に感心したってこと」

「えー!嬉しいけど……嬉しくない!」

「いやいや、喜んでよ。褒めてるんだよ?」

「嬉しくない!」

「ねえ」

「嬉しくない!」


口の中に餌を貯め込むリスのような顔をするミヅキ。


「ははは!」

「なんで笑うんだよー、あはは」

「いや、顔が面白くて、ははは!一人変顔大会でもしてんの?」

「え、私の顔変だった?」

「変っていうか、面白かった」

「え、うそ」

「嘘じゃないよ、リスみたいで可愛かったブフォハハハ!」

「あ、ほんとに?そんな顔してたんだ私!あはは!」

「うん、あ、そろそろ準備しよっか。次数学だよ」

「ほんとだ、準備しないと……じゃ!」


本当に面白い奴だなミヅキは。

はぁ、ハチといいミヅキといい、俺は良い友達に恵まれたなぁ。



――昼休み


「――でさ、プロ太が飛び乗ってきたのね?そしたらパン太も飛びついてきて大変だったんだよー」

「ハハハ!そりゃ大変だわ。プロパン兄弟は本当ハチの事が好きなんだなー」


僕は今、2組でハチと一緒にご飯を食べている。

一体何の話をしているのやら気になって耳を傾ける人も居るだろうが、聞けば途方もなくつまらない話だと分かり呆れ返ってしまうだろう。

ハチの家に住んでいる猫のプロ太とパン太、通称プロパン兄弟が寝ているハチの上に乗ってきて、そのままそこで遊び始めたという話である。

こんな話、僕とハチの間柄でなきゃ続かないであろう。

僕はハチと居ればどんな話も輝いて見えるのだ。

楽しくて仕方がない。


「あ、そういえばさ、知ってる?」

「ん?なにを?」

「丸鷹居からカケルん家がある鳴狭間までの間に瀬囃子(せばやし)っていう駅あるよね?」

「うん?あーうん、あるね」

「あそこの駅で降りてしばらく進むと河川敷があるらしいんだけどさ、そこでメチャクチャ美人な女性が歌を歌ってるらしいんだよ」

「歌?なにそれ心霊スポット的なやつ?」

「違う違う!本当に歌ってるの!すっごい上手なんだと。カケルさ、帰りに寄ってみてくれよ」

「うーん、まぁ気が向いたら行ってみるよ。でもあそこ人なんて滅多にいないよ?あんまり期待しないでくれー?」

「うん、居なかったら居ないで構わん。でもさ、歌の練習をするってんだから、人がいない場所を選ぶんじゃない?だから結構確率高いと思うけどな」

「あー、確かに!じゃあ少し期待してもいいぞ?」

「んー、80%!」

「それ高すぎる!せめて40%で頼むわ」

「しょうがない、それで手を打とう」

「ははは!……とりあえず今日行ってみる」

「お、行動的だな」

「実際俺も気になってきたしな」

「よし、じゃあ頼んだぜ」

「おう。……それにしてもハチのお母さん料理上手だなー」

「だろ?ただやっぱり量がな……」

「確かに、これは一人じゃキツい」




――帰りのホームルーム


「――という事ですので、皆さん不審者には気をつけてくださいね」


――はーい

――りょーかいでーす

――うぃー


話を終えた楢葉先生が荷物をまとめ始めると、ガタガタという椅子の音と共に各々動き始めた。

雑談を始める人、今日の復習を始める人、ダッシュで帰る人、楢葉先生と話をする人、手を繋いで帰るカップル。


さて、僕も帰ろう。

ミヅキは……まだ話してるな。

少し待ってるか。


「ほ、星谷くん、ちょっといいかな」

「ん?どうした?」


話しかけてきたのは姫野梅(ひめのうめ)、同じクラスの女子で、高校1年からの同級生である。

髪は黒のセミロングで黒縁メガネをかけている。

身長はミヅキよりも少し高いくらい……160cmくらいだろうか。

校内での男子人気はそれ程高くないが、一部の男子には熱烈なファンもいるらしい。

可愛いくて性格も良いのだから当然だろう。

むしろ一部にしか人気が無い事に疑問を抱いてしまう。


「あの、これを……」

「……シャーペン?ははは、貰っていいの?」

「うん!貰って!」

「ありがとう、明日からこれ使おーっと。でもなんでシャーペン?」

「え?だって星谷くん今日誕生日でしょ?だからプレゼントだよ」

「あれ、俺って今日誕生日だっけ、忘れてた。ハハハ!……ん?いやいや、俺の誕生日5月20日だよ?来月の今日!」

「え……そっか!あれー、5月かぁ!ごめんね!あ、じゃあどうしよう、一回返してもらってまた、あれ!それじゃ意味ない!」

「どうしたどうした!落ち着いて梅ちゃん!」

「だって!え!どうしよう!」

「あ、じゃあさ、梅ちゃんって誕生日7月7日だったよね、だから俺6月7日に誕生日プレゼントあげるわ!いいアイデアでしょ」

「う、うん!……なんかごめんね、星谷くん。気使わせちゃって」

「気なんて使ってないよ!むしろ嬉しくて気が緩んじゃったくらいだし」

「星谷くんは優しいね」

「え?俺が?優しいのは梅ちゃんだよ。間違ってたとはいえ誕生日を覚えてくれていて、プレゼントまで用意してくれた訳だし。本当にありがとね」

「そんな……あの!よかったら一緒――」

「カケルー!お待たせー!あれ?姫野さん?二人で何話してんのー?」

「あぁミヅキ、梅ちゃんがプレゼントくれてさ。ほらこのシャーペン、いいだろー!」


僕はプレゼントで貰ったシャーペンをミヅキに見せびらかした。

このシャーペンは決して安くないはず、高校生の財布にとっては痛手だったろうに。

本当に感謝だ。

しかしなぜ梅ちゃんはプレゼントをくれたんだ?

普段あんまり接点ないし……まぁたまに話すけど、その程度だし。

うーん。


「うわー、人のもの奪っておいてプレゼントとか言ってんの?カケルサイテー。えい!」

「おいっ!」


手に持っていたシャーペンは見事に拐われていった。

僕が人のものを奪う訳がないだろう。

まったく。


「ほら姫野さん、これカケルに盗られたんでしょ?」

「ううん、星谷くんへのプレゼントだよ」

「え!あ、ごめん!本当にプレゼントだったんだ!もうカケルが紛らわしい事するから!」

「俺がいつ紛らわしい事をしたよ!ミヅキが勝手に拐ってったんだろーが。分かったら早く返してくれ」

「はいはい、あっ!」

「ちょっ!」


――バキッ!


ミヅキの手から滑り落ちたシャーペンは床に落ち、跳ねたシャーペンを避けようとしたミヅキの足によって真っ二つに踏み潰された。

無残にも2つに折れたシャーペンを拾い上げると、途端に怒りが込み上げてくる。

シャーペンをポケットに入れ、俺はミヅキを睨んだ。

せっかく悩んで選んで買ってくれたシャーペンを一瞬で壊して、いくら相手がミヅキでも許せない。


「あ……ごめんなさい!わざとじゃないよ!」

「おいミヅキ……お前――」

「星谷くん!怖い顔しないで!ね?安いシャーペンだし、またプレゼントするから。今度はちゃんと誕生日に」

「そういう問題じゃない。ミヅキ、梅ちゃんに謝れよ。頭下げて」

「謝ったじゃん!」

「ちゃんと頭を下げろって言ってんだよ」

「なんでカケルに指図されないといけないわけ!?」

「は?」


俺は思わず手を上げそうになったが、その衝動が沸き立つのと同時に、まだ教室で生徒と話をしていた楢葉先生が間に入った。


「星谷くん、米田さん、どうしたんですか?」


楢葉先生の落ち着いた声を聞くと、僕は冷静になった。

その時初めて周りの注目を集めていた事に気がつく。

とはいえ教室に残っていた生徒は10人程度であったのでまだよかった。


「ミヅキが梅ちゃんに失礼な事をしたので頭を下げて謝れって言ったんですけど、どうやら頭を下げたくないようで」

「なにテキトーな事言ってんの!私謝ったもん!」

「だから頭を下げて謝れって!」

「二人共。……事情は分かりました。では姫野さん、あなたはどうですか?どう思ってますか?」

「私は……大丈夫です」

「大丈夫というのは?」

「あの……気にしてないですから」

「本当にいいの?梅ちゃん」

「うん、もう過ぎた事だから」

「ほら!カケルが勝手に話進めてさ、姫野さんかわいそー!あー疲れた。私帰るから」

「おい!ミヅキ!」


乱暴に鞄を持ち、誰が見ても機嫌が悪そうな様相で教室を出ていった。


「はぁ」

「星谷くん、君の言っている事は間違っていない。でも正しさが全てではないんですよ。潤滑に解決できる問題があるのならその方がいい。現に君と米田さんの仲は悪くなってしまった。仲直りはなるべく早く済ませるようにね」

「はい、ご迷惑をおかけしました」


楢葉先生は先程まで話していた生徒のところに戻り、また雑談を始めた。

そしてタイミング良くというべきか悪くと言うべきか、ハチがキョロキョロしながら4組にやって来た。

相変わらずのイケメンだ。


「おいどうしたんだ?ミヅキが凄い顔して歩いてったけど」

「ちょっと喧嘩しちゃってね。今日は二人で帰ろう」

「ん?元々そのつもりだけど」

「あ、そっか。話すの忘れてたけど、本当は今日ミヅキとハチと俺の三人で帰る予定だったんだよ」

「そうだったんだ。まぁどっちでもいいや、カケルと帰れれば」

「ははは、ありがとうハチ」

「ねぇ星谷くん」

「どうした?」

「私も一緒に帰っていいかな?」

「うん?俺は別にいいけど。ハチは?」

「僕も良いけど、えっとどなた?」

「あ、すみません、星谷くんの友達の姫野梅です、よろしく」


さらっと友達って言うけどそこまで仲良い訳じゃ……まぁ誕生日プレゼントをくれた訳だし、もう立派な友達か。


「へぇーカケルの友達か。僕は長峰平八、よろしく姫野さん」

「……よし、じゃあ帰ろっか!ってそういえば梅ちゃんって帰る方向一緒なの?」

「うん、星谷くんの家の近くだよ?」

「え?でも小中違うよね。うーん姫野なんて表札見た事……あったようなないような」

「ふふ、私の家というか祖母の家なんだけどね。中学卒業した頃に引っ越してきたの」

「そっか、でも今まで見た事ないよ?」

「うん、いつも車で通ってるし帰りも車だから」

「そりゃ見たことない訳だ。今日はお迎えないの?」

「うん、今日は星谷くんと帰るって決めてたから」

「断られるっていう考えはなかったのかよ、ハハハ」

「だって星谷くんは優しいから」

「過大評価だよ」

「いや、僕からも言わせてもらおう。カケルは優しいよ」

「だよね!」

「うん!責任を持って言える」

「これじゃ俺は一生善人じゃないといけなさそうだなぁ……」

「ハハハ!そうだぞー?カケルは一生善人でいなきゃダメだ!」

「そうだそうだー」


梅ちゃんもノリノリになって来てるし……。


「将来は神父にでもなるかねぇ。まぁいいや、じゃそろそろ帰ろっか」

「「うん」」


僕達は雑談をしながら糸多良駅に向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ