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あの日から、ずっと、そう。
もうかれこれ5年は経つだろうか。早いな。
ワタシから心が消えた。
感情を落としてしまったのだ。
「もしかしたらあの場所にあるかもしれない!」
そう思い連絡を試みるが
「そんなに必要なものではないか。これも縁だと思い忘れよう」
と、手元にあれば使うのに戻すことを自ら止める。……その繰り返し。
心が消えた2年後、唯一の癒しで生き甲斐だった愛犬が死んだ。
17年も生きてくれていていつもワタシを癒してくれた。
その日は朝から時間がなく水を与え忘れ、仕事中もずっと気が気ではなかった。
21:00、母と同じ時間に帰宅した。
玄関を開けると妙に静か。
胸騒ぎがして走ってリビングの扉を開き愛犬を確認した。
嘔吐し死んでいた。目を開いたまま。
絶望した。
ショックのあまり涙がでない。一粒も。
「ハチが死んだぁぁぁあぁああ‼︎!!いやだぁぁあ‼︎‼︎」
母は泣き叫んでいた。
ワタシは後悔と恐怖に襲われ震えて母の顔を見ることも、声を掛けることもできなかった。
それは私が殺したようなものだから。
死のうと思った。死んで詫びます。
亡骸の横で泣いている母の背中に「ありがとう、ごめんなさい」
と小さくつぶやき家を飛び出して車を走らせた。泣きながら夢中で。