私の汚部屋
私の部屋は汚い。
溜まりに溜まったゴミ袋、壁についた大量のシミ。何度か壁のシミを掃除しようとホームセンターでシミ取りの掃除道具を買ってきては掃除しているのだけれどシミを放置しすぎたせいか壁にへばりついていて幾ら拭いても取れずゴミの処分には廃棄に困っていて何日もこの部屋に置きっぱなしになっている。
普通ならゴミ捨て場に置けばゴミ収集車が持って行ってくれるのだが訳あって普通のゴミ収集車は持って行ってくれない。
鼻に突き刺さる臭さを漂わせているが普段は消臭剤を入れて異臭を妨げさらにはこの部屋の鍵を閉めて用がある時だけ入るようにはしている。
勿論友達を家に連れてくる事はあるけどこの部屋は玄関から離れたところにあり見つかっても「両親の部屋だった場所」と言い訳してやり過ごしている。
何故「両親の部屋だった場所」と今は両親がいないような言い草をするのかというと数年前私の家に空き巣が入った時の事。
当時中学生だった私は塾を終え家に帰宅してみると床にはフローリングが見えないぐらいの真っ赤な血が、その上に横たわっている両親とありとあらゆる部屋が荒らされた痕跡が私の目に飛び込んできた。
私は一刻も早く警察と消防に連絡したが、時は既に遅く両親は亡くなってしまった。事件後すぐさま犯人の証拠、目撃情報の収集に取り組んだ警察だったが犯人の証拠も目撃情報も一切見つからず金品だけが奪われた状態で捜査は断念された。
証拠が見つからないも何もあの犯人は・・・・・
とそんな事を思っていると家のチャイムが鳴り響く。どうやら学校の友人が迎えに来たようなので私は急いで玄関の扉を閉め学校へ向かった.
まさかあの部屋の鍵を閉め忘れたとは思いもせずに。
学校に着き、チャイムが鳴ると担任のホームルームが始まった。
『皆さんにお知らせがあります。1週間前から隣の高校の生徒さんが友達の家に行くといってから行方不明になっています。警察の方によりますと事件に巻き込まれた可能性があると言うので皆さんも下校する時などは注意して下さい。』と担任から話があった。
行方不明になった生徒は1週間前、授業が終わった後一旦自宅に戻り、中学校の頃の友達と遊ぶと両親に告げたきり家に帰っていないそうだ。警察は友達に事情を聞いたところ『家に来ていない。そもそも遊ぶ約束をしていない。』と言い目撃者もいなく警察の捜査も難航しているらしい。
まるで数年前に私の一家を襲った事件と同じように
この話を聞いた生徒達は、『家出じゃない?』、『怖いねぇ』と言う声が聞こえたり、興味無さそうに聞いているものがいる。私もその中の一人で興味無さそうな顔をしてさっさと授業の準備をする。
放課後。
私は今朝迎えに来た友人と一緒に自宅へと向かっていた。
今日は友人が私の家で勉強したいと言い出したので私はそれを承諾し今私の家に向かっている最中だ。
家に着き早速勉強をしようと思ったのだが友人がトイレに行きたいと言い出したので友人をトイレに案内した後私は筆記用具を机に揃える。
しばらく待っても友人がトイレから帰ってこないのでトイレの方向へ向かってみると鍵を閉めたはずの汚部屋の扉が開いている事に気付く。
汚部屋に行き部屋を覗くと友人が部屋の真ん中で辺りを呆然と見回していた。
私は中に入り扉を閉める。扉を閉めた事で友人が驚き私の顔を怯えるように見つめて来た。
壁には乾ききった血が壁一面に広がっており床には誰か分からない程にバラバラにされゴミ袋に詰められている遺体が置いてある。
友人は恐る恐るもう一度周囲を見渡すとある物に気づきそれに目を凝らしている。
友人が見ていたのはとある高校の学生証。そこに記載されていた人物の名前は1週間前行方不明になった生徒のものであった。
友人はその学生証が1週間前に行方不明になった人物の学生証だと理解した途端、ゴミ袋と学生証を交互に見つめ始め暫く硬直したかと思うと何かを察したのか私の顔を怖がるように見つめてきた。
友人は全て理解したようなので私がしてきた事を全て話した。家族を殺した事。恋人を殺した事。そして1週間前に行方不明になった友達を殺した事。
全てを聞いた友人は震えて立てなくなったらしく床に座り込んでしまった。
この部屋を知られてしまったらもう二度とここからは出さない。何度かこの部屋を知られてしまった事はあるだけどその人達はこの部屋からは二度と出る事はない。この部屋を見たものたちはみんなそこのゴミ袋に詰められているんだもの。
今回も知られた以上はここから出すつもりはない。私は近くに置いてあったナイフを取り友人に向けた。
また部屋が汚れるのは困るけどこの部屋を知られた以上このまま返す訳にも行かないし私の欲望を抑えきれそうに無い。
家族、恋人、友達、どれが誰の血なんて一々覚えていない。覚えているのはこの人たちの最期だけ。
一途は必死に生きようともがくが徐々に弱っていく姿がとても楽しくなり後にそれが快楽になって私はその快楽が癖になり人を殺め続けている。
1週間前に私の家に遊びに来た中学校の頃の友達にもこの部屋を見られた。その時は友人が悲鳴をあげてしまいすぐに処理をしてしまったので楽しむ暇もなかった。
今回は悲鳴を上げなかったし楽しみがいのある子が来てくれた。この子はどのぐらい頑張ってくれるのだろう。頑張る子はやりがいあってとても楽しい。
そう思いナイフを友人に近づけた。
『あなたはどのぐらい頑張れる?』
こうしてまた私の部屋は汚さを増して行った。