船室
「火の大陸から出るのは初めてね...」
急にそんなことを言い出したので、俺とマオが声の方向に向いた。
「そうなのか?」
「ええ、私は生まれも育ちも火の大陸だったから、他所の大陸の事情は何も知らない」
「余も全く知らないから、アイカと同じだな!」
「あなたよりかは、火の大陸の事情を知っている分、マシだと思うけど...」
澄ました顔でマオに視線を送るアイカ。
少し悔しそうにしているが、事実なのでしょうがない。
「はいはい、そこまで、全くお前たちは喧嘩ばっかりだな、少しは自重してくれ」
俺はやれやれと手を振るが、マオは気に入らないとでも言うような顔のまま口を尖らせる。
「ムゥ...、でも余は悪くないし、生意気な態度とるアイカが悪い...」
「あらあら、そんなことを言うマオの方が悪いと思うけど?」
この状態になると言い合いが始まるので本当に困る。
喧嘩するほど仲が良いとは言うが、これでは今後の戦闘などにも影響しかねない。
「言ったそばから喧嘩すな!、いちいち仲裁する身にもなってくれ!!」
一触即発の状況が続くので、俺の精神力がゴリゴリ剥られる。
この二人が一緒にいると本当に疲れる...。
二人ともそっぽを向いてしまい会話にならない。
俺がため息を吐いて、船室から離れていく火の大陸をボーっと見ていた。
(これから先大丈夫か...?)
そう思いながらも、船は水の大陸を目指して進んでいた。




