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夕食

 すっかり日が暮れてしまい、城の中には明かりが灯っていた。

 魔王城食事の間で、毎晩食事をするのだが、いつもは私とメイシス様とザーク様で食事を取っていたのですが、いつのまにかクロリア様とアウス様も加わるようになってきました。


「いただきます」


 ザーク様が夕食を食べている。

 魔王の食事とあって、かなり豪華な物を揃えています。

 ザーク様が一番良い席に座っていて、その横にメイシス様がいます。

 その横に私たちメイドの席があるのですが、なんと今日はクロリア様もこの席に座っていました。

 いつもはザーク様の隣で食事をしているのですが、なんとクロリア様も、元は魔王城のメイドだったらしいのです。

 アウス様の話によると、メイドの仕事が板に合わず、独立を宣言して逃げたらしいのですが、結局の所、ここに所属しているようでした。

 ただ、本人は「妾はもうメイドでない、1人の悪魔クロリアじゃ!」と言い張っています。


「今日の晩御飯美味しい!」


 ザーク様がよく焼けたお肉に幸せそうにかぶりつくのを見て、私はほっこりした気分になりました。

 彼女が喜ぶように味付けを工夫しておいて良かった。

 基本的には家事全般は私の仕事です。

 食事も例外ではないのでした。

 メイシス様は私に厳しいのですが、食事の時は嫌味のようなことを言ってきません。

 きっとザーク様の成長を思っているだけなのでしょうが、私にとっては唯一安心できる時間です。

 不意にアウス様が話しを始めました。


「メイシス様、私は火の大陸の守護龍を討伐してきたのだけれど、報酬の方はどうなるのかしら?」


 いきなり報酬の話を切り出すアウスに、メイシスは表情をきつくする。


「アウスよ、そなたにしては随分と時間がかかっていたのではないのか?」


 ふふっと笑いながら彼女は彼に言葉を返す。


「それは他の大陸に向かった連中も同じことでしょう?、それに見たところ私が一番のりみたいだし、少しくらいは褒めて暮れても良いと思うのだけれど...」


 アウスの言葉のせいで、何だか全体の空気が重い。

 この2人の間でどんなやりとりがあったのかは分かりませんが、食事中の話題にしては少し重い気がします。


「まあいい...、後で私の部屋にきたまえ...、そこでお望みの報酬を渡そう...」


「ふふふ、楽しみね...」


 舌なめずりをするアウス様は少し不気味ですが、それよりも、アウス様が来てから大人しくなったクロリア様の方が心配です。

 いつもなら、ザーク様の隣でちょっかいを出しているのですが、流石にアウス様の前では何もできないようでした。

 皆の食事が終わった後、後片付けは私がするのですが。


「さあ、みんなでちゃちゃっとやってしまいましょう、クロリア、もちろんあなたもよ...」


「うへぇ〜...」


 クロリア様が舌を出して嫌そうな表情を浮かべています。

 アウス様が後片付けを手伝ってくれるというのは、正直嬉しいのですが...。


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