お前は...美しい...
暗い通路を渡り歩いて、ある場所に私は向かう。
独房、鉄格子の奥に見える存在に、私は目を奪われた。
だが、そんな私を親の仇のように睨みつけてくる。
「お前は、なぜ私をそんな目で睨む...」
私を見る彼女の視線は冷たい。
彼女の風貌は、家畜の豚のように汚れてはいたが、青く光る眼光は鋭く美しい...。
桜色の長い髪を汗でべたつかせてはいるが、それでも、彼女の本質を私が見誤ることはない。
両足を鎖で繋がれた彼女は、私を軽蔑したような目で見てくる。
ガチャガチャという、鎖の音を独房中に響かせながら動き続ける。
「あぇ..、..し.て...!」
よろよろと拘束された両手を私に伸ばして、何かを口走っている。
何を言っているかは分からないが、何のことを話そうとしているのかは分かる。
彼女は口を動かしているが、私のかけた術式の効力により、上手に話すことができない。
いつまで抵抗の意思を見せ続けるのだろうか?、かれこれ数年にわたった拷問でも、彼女を屈服させるには至らなかった。
彼女の体には生々しい拷問の跡が残っている。
手と足には無数の数えきれない生傷が見えていた。
本心を屈服させるのは諦めて、洗脳や催眠によるコントロールを試した方が良さそうだと思い始めていた。
できれば心から屈服させたかったのだが、これ以上は時間の無駄だろう。
私はため息を吐きながら、血まみれで弱り切った彼女を見下ろす。
白い簡素な服は、彼女の血と汗と涙で染まっていた。
その光景に、私は胸を震わせる。
(ああ、子を思う親の姿は実に美しい...、だからこそ...、我が物にしたい)
私に少しでも近づこうとする彼女の這い寄ってくる姿に、愉悦を感じながらも蹴り飛ばす。
一度倒れ伏した彼女だが、再び立ち上がってくる。
何度倒れても、その眼光の鋭さが消えることはなかった。
どれだけキツイ拷問をしようとも、腕を引きちぎられるような感触を与えても、彼女の心は壊れなかった。
何度拷問しても無駄なのだ。
彼女の心はまさしく××だった...。
その心は絶対に折れることはない。
そのことをよく知っているのは自分だった。
無理だと分かっていたが、こればかりはどうしようもないことだと諦めきれない自分がいた。
彼女に触れようとすると、腕の拘束具で殴りかかろうとしてくる。
無駄だと分かっていても、彼女は抵抗をやめない。
私は彼女の首に手を当ててゆっくりと持ち上げる。
少しずつ力を入れてゆっくりと息ができないようにしていく。
必死に足をばたつかせながら、腕の拘束具で殴りかかってくるが痛くもかゆくもない。
声にならない絶叫を上げながら、決死の形相で私を本気で殺そうとしている彼女に敬意を表したい。
口をパクパクさせながら空気を求める彼女は、静かに意識を失っていく。
完全に意識がなくなったのを確認すると、力を緩める。
ダランと力なく崩れ去る彼女に見とれてれてしまう。
床に寝かしつけると、ベタつく髪を少しかき分けて素顔を確認する、思わず声が漏れてしまった。
「お前は...、美しい...」
彼女の血だらけの手を握りしめる。
ほのかに暖かさを感じる。
「もう一度、お前の笑顔が見てみたいものだな...」
静かに呟きながら、独房の鍵をかけてその場を後にした。
桜色の髪...。
これは誰の物語?




