頂上
「うおおおおおおぉぉぉ!!!」
マオは俺を連れたまま崖を駆け登りきった。
「登りきったぞー!!!」
勢いがありすぎて少し飛びすぎたが、これほど早く頂きに到着するとは思わなかった。
「でかしたぞマオ!」
マオはキョトンとした顔で俺の方を不思議そうに見てくる。
俺は笑顔で彼女を褒めるが、少し経つとその行為に気がついて止める。
そして咳を込みながら、恥ずかしそうに誰もいない方向に向いて呟く。
「まあ、そのなんだ...、ありがとうな、お前がいたからこんなに早く頂上にたどり着けた」
ニヤニヤしているマオの顔が思い浮かぶが、いざマオを見ると、本当の笑顔で俺を見ていた。
「やっと言ってくれたな!、余はようやくユウリの役にたったんだな...、良かった...」
涙を拭くような仕草をする彼女を見て俺は目線をそらす。
なんかむず痒くなった俺は目線を大きな洞窟に向ける。
「あそこから匂うな...、行くぞマオ!」
俺が駆け出そうとすると、マオはその場から動かない。
不審に思って声をかける。
「どうした!?」
俺が近づいてマオを見ると、彼女の足が出血していることに気がついた。
尋常ではない出血量だ、下手をすれば命に関わる。
彼女は痛みに耐えながら笑顔を見せている。
「ははは...、ごめんユウリ、余はここまでみたいだ...、さっきから足が動かないんだ...、豪速!!フルスロットル!!は、今の余には扱えないレベルのスキル...、無理に使えばこうなると思ってた」
「馬鹿野郎!!、なんでそんな技使ったんだよ!、お前にはお前の人生があるだろうが!、他人の為に使ってんじゃねぇ!」
彼女は静か首を横に振った。
「それは違うよ...、ユウリとレスカは余の大切な友達だ...、他人じゃない、魔王だとか勇者だとかどうでもいい、余はユウリもレスカも大好きだ、だから足を犠牲にしてもレスカを救いたかった、ただそれだけだ」
「だからって...」
俺は彼女の意思を尊重しつつも、やはり犠牲にさせるつもりなどない。
回復魔法を何回も続けるが、傷を癒せても足への甚大なダメージまでは治せない。
もう一度足を動かせるようになるかは彼女の気力次第だ。
治療をした後に、小雪がちらほらと降ってきたので、彼女を洞窟内に入れて安静にさせる。
(さっきの冷たい物の正体はこれだったのか...)
妙に納得した俺は彼女に声をかける。
「ちょっとだけ待っていてくれ、すぐにレスカを取り戻してくるから」
「ユウリなら大丈夫...、レスカを救ってきてね!」
足の痛みがまだ走っているだろうに、俺に心配をかけないよう笑顔を作っているのが丸わかりだ。
俺はマオの心配をしながらも、今はレスカ救出を急いだ。




