やばい...
俺たちは今、レベル上げのために山を登っていた。
「ゼェゼェ...、もうギブアッ〜〜〜プ...」
マオがその場にゆっくりと倒れる。
「そうか、なら置いていく」
俺が冷たく呟くと、マオは勢いよく立ち上がって「アトゥイ!!」と叫んでいた。
これだけ熱のこもった土の上に寝たらそりゃ暑い。
そんなことも知らずに叫んでいる彼女を見た一行は笑う。
「もう、マオちゃんたら、そんなこと当たり前じゃないですか」
レスカにも笑われたので、少し落ち込むマオ。
「まあ、元気出せって、もう少しで中間だからな」
「まだ中間なのか...、余はもうダメみたいだー」
と言いながら石に腰掛ける。
しばらくするとまた熱が尻に伝わったのか、マオが飛び上がる。
また先ほどのように騒ぎ立てるので、マオの学習能力は相当低いのだろうと俺は思う。
山道を進んでいると、大岩が邪魔をしていて進路を塞いでいた。
「こんなところに岩があるぞ...、ユウリが進路方向間違えたんじゃないか?」
「いや、以前ここを通った時にはこんなものなかったし、これは...」
ユウリが岩に触れて見ると、急に動き出した。
「やっぱりか、マオ!レスカ!構えろ!、こいつは魔物だ!」
かなり大きめの岩だ、大人3人分ほどの岩が動き出す。
それは人の形のようになり、数個の岩が重なっていく。
まるで巨人のようなそれは、タイタンゴーレムと呼ばれる種族だった。
岩の体は生半可な攻撃を全て弾き、魔法による攻撃でもそこまでのダメージはないだろう。
今のレベル帯で当たりたくはない相手だった。
ただ、こいつは動きが遅いので、戦うのではなく、すり抜けることを考えていた。
俺はマオとレスカに作戦を伝える。
「マオ!目からビームで奴の注意を弾きつつ加速ごっこで壁を駆け上がって向こう岸へ行け、俺とレスカはその隙に走り抜ける」
「おっ?、ユウリが余に頼み事とは珍しいな」
マオはユウリの方を見ながら感心していた。
「まあな、使える物はなんだって使ってやるさ」
「はん、そういう所嫌いではないぞ」
「きますよ!二人とも!」
レスカの言葉を最後にマオが駆け出してビームを放つ。
案の定、魔物のヘイトはマオに集中する。
魔物の剛腕が唸り、地面に激突する。
「当たるわけないだろ!ば〜か!」
マオは奴を挑発するように声を上げる。
作戦の意図がわかっているみたいで一安心する。
奴がマオに集中している隙に二人で走り抜ける。
「よし、マオ早くこっちへ来い!」
俺が指示を出した瞬間だった、天に赤い斑点模様が浮かび上がりそれは唐突に現れた。
凄まじい地響きとともに魔物は跡形もなく踏み潰された。
一瞬だった...、目を開けて閉じた一瞬で魔物を仕留めた存在がそこにはいた。
「あれは...!」
俺は開いた口がふさがらずに真紅に染まるその存在を眺めていた。




