ベッドの上
気がつくと、私は魔王城の医務室で眠っていた。
頭がズキズキして重い...。
ゆっくりと体を起こしてみると、ザーク様がすぐ傍で、うたた寝していたので驚く。
私の手を握ったまま、こっくりこっくりと体を揺らしている。
その姿に少し笑いそうになる。
幸せな空間に身を任せていると、彼女がゆっくりと目を開いた。
そして私の瞳に彼女の瞳が映ると、大げさげに声を上げて、私の体をゆっくりと倒す。
「アオ!?、まだ起きたらダメだよ、体がボロボロなんだから寝てないと...」
彼女の慌てる姿にふふっと笑みをこぼす。
ふと気になったので彼女に尋ねてみる。
「ザーク様、なんで私は医務室にいるのでしょう?、それにザーク様のその火傷...、何かあったのですか?」
ザークの火傷して腫れ上がった腕が心配で、眺めていると。
彼女は一瞬戸惑ったかのように表情を強張らせたが、すぐに笑顔になり、私にこう呟いた。
「大丈夫だよ、アオ...、ちょっと火事が起きただけだから...」
なんとなく彼女の笑顔が作り笑いであることがわかったのだが、深くは言及しないでおこうと思う。
何かが壊れるような恐怖感が、私の背中を潜り抜けたような気がしたからだ。
嫌な汗をかいてしまい、ベタベタになった服が気持ち悪い。
近くにあったタオルで自分の背中を拭こうとすると、彼女が先にタオルをとる。
「私が拭いてあげる」
彼女は無理矢理に私の服を剥ぎ取り、背中を向けさせて汗を拭き始める。
(正直、ちょっぴり恥ずかしい...です)
拙い手つきだが、主人に体を拭いて貰えるなど至高の喜びを与えられるのと同義なので、とても嬉しい。
主人から与えられる幸福に身を任せながら、私は余韻に浸る。
案外、怪我をするのも悪くはないのかもしれない...あれ?
私...、いつ怪我したんだっけ?
火事が起きたことなど、何も覚えていない。
覚えているのはクロリアと庭園で話した所までだ。
それに話した内容すら覚えていない。
混乱してくると、頭が痛くなる。
呼吸器が乱れて、息苦しくなる。
何か辛いことを思い出さないように、脳がロックをかけている感じだ。
自制しているような感覚だけが残り、不快感と疑心感で心が埋め尽くされる。
そんな私の様子を見てか、彼女は私の手を握りしめてくる。
「ほら、ザークはここにいるよ...、何処にも行ってないから安心して...」
確かな暖かさを噛みしめる。
(あったかい...)
小さくも柔らかいその手に、安堵のため息が溢れる。
さっきのようなマイナスの感情が全て吹き飛んだ。
私は彼女に甘えるような寝息を立てていた。
やっぱこの2人いいな〜。
本編そっちのけでこっち書きたくなる。




