桜炎の悪魔
焼けるように体が熱い...。
立っているのがやっとだ...。
ふと目の前を見ると、ザーク様の敵が見える。
炎のせいで赤く変色して見えてるが間違いない。
私はゆっくりと足を踏みしめて進む。
一歩また一歩、確実に距離を縮める。
「ーーーーーーー」
何か言っていることは分かる、標的の口が動くのが見えたからだ。
だが何を言っているかまではわからない、私の周囲を包んでいる豪炎が、すべての音をかき消していた。
無数の傷口がパックリと開き、出血を始めるが全く痛くない。
いや、意識していないだけだったのかも知れない。
ただ、今は目の前の敵を倒すことだけを考える。
奴はなぜか動かない、あれだけの実力差を見せつけた上でまだ余力を残しているようだ。
奴がザーク様の方に移動して、あの人の手を握ろうとしている。
それが憎らしく、許せない私は、眉間にシワを寄せる。
「離れろ...、ザーク様から離れろ!」
私は大声で叫び、片手を奴に向ける。
すると、周りの豪炎が奴に向かって咆哮を上げた。
まるで私の意見を尊重するかのように、奴だけを炎の渦へと誘う。
奴は炎の中で悶え苦しんでいる。
「死ねっ、死ねっ、死ねっ!」
私はつい嬉しくなって、狂ったように死ねを連呼する。
あの人の敵が苦しむ姿を見ると、謎の達成感があり、私の精神を汚染する。
(敵が苦しむのを見るのが気持ちいい...)
私は人には見せられない程の凶悪な顔を見せていた。
もうすぐ奴が灰になる...。
嬉しさのあまり気分が高揚する。
私の気分が上がると、周りの炎も比例して炎熱が上がっていく。
自分の感情がそのまま炎に変換されているような感覚さえ覚える。
「ウグッ...」
急に頭に痛みが走り抑えると、一瞬だったが気をとられた。
その隙に奴は炎の渦から脱出していた。
「逃がさない!」
私が手を振りかざすと、周りの炎達が踊り始める。
私の命令を聞き入れ、まるで自分の手足のように、自由自在に操れる。
それを駆使し奴を追い詰める。
奴の逃げ場を囲い込み、殺しにかかる。
「これで...、終わり...」
後は手を振り下ろすだけ。
手を振り下ろそうとした瞬間、私の瞳は恍惚の光景を映し出していた。




