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深淵より深き闇の底
何も見えない暗闇で誰かに質問される。
お前に名は?
「ないです...」
敵が来たら?
「殺します...」
道を塞ぐ障害物は?
「壊します...」
お前に家族は?
「いないです...」
魔王様は?
「守ります...」
...ここで誓え、お前は魔王様の側近だと...。
「...、誓います...」
お前に与えよう...、この××を...。
いつ誓った言葉だろう、誰に誓った言葉だろう、そもそも自分の言葉なのだろうか?
いや、言わされているような気さえしてしまう。
私は...、誰...?
名前は...、あったような気がする...。
それさえも、もう思い出せない。
暗い寒い辛い...何より寂しい...。
ここはただ真っ暗な空間。
次に目を開いた時、私は私ではないだろう。
願わくば...、一度でいいからあの子の顔を...。
...あの子って誰だっけ...?
私は沈む...、深淵より深くて暗い闇の底へ...。




