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笑い

 私はぷるぷると震えながらお腹からくる振動に耐えている。


「どうじゃ?、ぬしはいい声で鳴くからのう、ほれもう一度鳴いてみよ」


 両手両足を拘束されて、無防備なお腹周りを筆のようにフサフサした羽で撫でられていた。

 さっきから何度も笑わされていたが、今度は耐えようと唇を噛みしめている。

 私の目の前にいる女は、私と同年代くらいだろうか?、身長がほとんど変わらないのでそう思っている。

 黒い髪のそいつは楽しそうに私のお腹周りをなぞる。

 何度も上下左右に動かされるので、だんだんと我慢できなくなってきてしまう。

 ついに吹き出して笑い始めてしまう。


「あははははははははは!!」


 私は赤い髪を揺らしながら勢いよく笑う。

 それを見る黒髪の女はとても楽しそうだ。


「良いな良いな、やはりおぬしがこの辺で一番笑いが似合う女子(おなご)じゃ」


 恍惚の笑みで私の笑い顔を楽しむ女に恐怖を覚える。

 身を震わせてもこのくすぐりからは逃れられない。

 私はつい彼の名前を口に出してしまう。


「ユウリ...」


「ユウリ?、とは誰じゃ?」


 私はハッとして口を閉じるが、くすぐられるとすぐに開く。


「さあ、早く言うのじゃ、言わねば一生これを続けるぞ...」


「い...言いません...」


 私は耐える、耐えられるだけ耐えてみせる。

 必ずユウリは助けに来てくれる、そう信じているのだ。

 その時だった、金髪の彼がチャラい男と共に、私の前に現れた。


「レスカ!」


 彼がそう叫んだので私は彼の名前を叫ぶ。


「ユウリ!」


 黒髪の女がユウリの方を見ると、不気味な笑顔を見せた。


「そうかおぬしがユウリか、よく見ると、ぬしもなかなか良さそうな女子(おなご)じゃな」


 黒髪の女の言葉に身震いするユウリ。


「ユウリ!、この人の瞳を見てはいけません!」


 その言葉を聞いた彼は瞳を閉じる。


「レスカ、どういうことだ!?」


「この人の瞳には催眠効果呪文が仕込まれています、さっき私はそれにやられました!」


 私の言葉が先に通じたので何とか間に合うが、目を閉じた状態では戦闘にならない。

 ユウリが目を瞑り、攻めれずにいると、黒髪の女がチャラい男に命令する。


「ユウリとやらの動きを止めよ!」


 チャラい男はユウリの体をしっかりと拘束する。


(なるほど、この男もこいつの呪文にやられたのか...)


 それがわかったところで何ができるわけでもないが、会話を試みる。


「まさか催眠術を使える奴がいたとはな...、もしかしてアイテム欄のロックもお前がしてるのか?」


「そうじゃ、おぬしは覚えとらんじゃろうが、一度おぬしの瞳に焼き付けた、妾の瞳がそうさせてあるんじゃ」


「相当強力なスキルだな...、お手上げだ...」


 ユウリは諦めたかのように呟くと、黒髪の女はペラペラと語り出す。


「意識がなくてもスキルとアイテムの使用を禁止するように瞳に焼き付けることはできる、他にも他人の瞳に自分を主人と認識させるスキルもある、それを定期的に続けることで相手を無力化できるんじゃが、それはずっと続けないといけないので、ここに拠点を構えていると言うわけじゃ」


 自分の能力を喋り、ここが拠点だということも知らせてくれた。

 アホだこいつと思う2人。


「妾は可愛い女子の笑顔が見たいだけじゃ、そのためならば手段は選ばぬ」


 それに目的がそれだけなら自分の笑顔でも見ておけよと思う。

 とはいえ、ピンチなことに変わりはない。

 ゆっくりとユウリに近づく女。

 羽を片手にユウリのお腹へと手を伸ばす。


「ぬしはどんな声で鳴いてくれるのかのう?」


 女がユウリの体を舐め回すように視聴する。

 お腹をさするように触ると、ついに羽をお腹に向けた。


「ユウリ!」


 つい叫んでいた。

 ユウリがこんな女に負けるなんていや...。

 そう思うと無性に腹が立ってきた、こんな時にすら拘束されて何もしてあげられない自分に対して怒りがこみ上げる。

 その時だ、どこからともなくそよ風が入り込んできたような気がした。

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