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マオちゃん初めての戦闘経験

「うお〜!!!」


 魔王は叫び声を上げながらスライム相手に全力で挑んでいる。

 思いっきり片手を振るって、爪で引っ掻くが、大したダメージを与えられない。

 魔王の攻撃が終わると、スライムが魔王にのしかかる攻撃をする。

 大した攻撃ではないはずだが、魔王は半泣きになりながら勇者の方に近寄ってくる。


「グスッ、勇者ぁ〜、あいつ強すぎる、もっと弱い相手はいないの?」


 魔王の根性のなさに一喝を入れる。


「ふざけんな!、腐っても魔王だろ!、スライムごときに苦戦してんじゃねぇぞ!」


「だってぇ〜...」


 なんて情けない魔王なんだと勇者が見下しているとレスカに注意される。


「ユウリ!、マオちゃんはまだ子供なんです!、早く強くなって欲しいのはわかりますけど、その言い方はないと思います!」


 レスカにはマオの正体が魔王だということは伏せてある。

 余計な心配をされたくないというのもあるが、何よりも魔王の身を案じてのことだった。

 もしも魔王だということがばれたら、他の勇者と魔王軍の両方に狙われることとなる。

 それだけは避けたい勇者はとりあえず黙っておく。

 それに魔王が死ぬと二度と男に戻れないかもしれない。

 今この場で魔王のレベルを上げているのも、レベルが上がれば性転換の魔法を覚え直すかもしれないから仕方なく手伝っているだけだ。

 とはいえレベルを上げるのも一苦労だ、魔王があまりにも弱すぎる。

 勇者が十匹スライムを倒している間に一匹も倒せないどころか半泣きになって返り討ちにあっているところをみると少し笑える。

 バカにしたような笑い声が漏れたのを魔王は見すごさなかった。


「今笑ったな〜!」


 魔王は人差し指を指を勇者に突きつけて半泣きのまま怒りをあらわにする。


「すまんな、あまりにも弱すぎて滑稽に思えてな...」


 まあ、もともと敵対する者同士、そう仲良くなどできないのだろう。

 魔王は泣きべそをかいたまま俯向き、悔しそうな顔を見せている。

 そんな魔王を見たレスカは勇者に注意する。


「ユウリ!、ちょっと言い過ぎでは?、マオちゃんと何があったかは知りませんけど、マオちゃんと話す時のユウリはちょっと怖いです...」


 レスカに内心を見通されている気分になった勇者は後ずさる。

 その後レスカは魔王の目線に屈み込み頭を撫でながら優しく接する。


「マオちゃん、いいんですよ、今は弱くてもちょっとずつ強くなればいいんですから...」


 彼女の優しさに魔王は泣きながら抱きつく。


「ママ〜」


「ま...ママ!?」


 レスカはママと呼ばれたことに喜び感じた。


「マオちゃん、ママですよ〜」


 魔王にママと呼びかけるレスカを見た勇者は「やめろ」と注意するが、レスカはそれをやめない。

 勇者が唸っていると、魔王は勇者にだけ見えるように舌を出して馬鹿にしてくる。

 向っ腹がたった勇者は魔王に怖い顔で近づくが、レスカに止められる。


「ユウリ!、そんな怖い顔で子供に近づいたらいけません!」


「子供って...、そいつは...」


 勇者は魔王が5000歳だということを言いかけてやめる。

 言う言葉が見つからなくなった勇者はため息交じりに歩き始めた。


「まあいい、それよりも腹が減った、昼食を食いに町に戻るぞ..」


 勇者の言葉に魔王ははしゃぎ始める。


「ご飯!、昼食!、メシ!」


「同じ意味の言葉を三回使うなよ...」


 そう言いながらもフッと笑う勇者。

 言葉では悪く言っても今の魔王は可愛く見えるのだろう。


(スライム一匹倒せない奴相手に俺は世界を旅したのか...)


 少し虚しい気分になったが魔王のはしゃぎようを見ているとそんなことも忘れる。


「二人だけで盛り上がって、ずるいですよ!」


 レスカも混ぜて欲しそうに会話に入ってくる。

 勇者は久し振りに平和な時間を過ごしている気分を味わっていた。

次回、昼食

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