表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/172

あの日

なんかシリアス...。

 私は始まりの街を歩いていた。

 私はあの子と一緒にいる。


「レスカ、俺は絶対勇者になって、レスカをお嫁さんにするぞ!」


 金髪の少年は私にそう叫ぶ。


「もう、ユウリは弱いんだから、勇者は私に任せなさい」


 私も少年に負けじと自分が勇者だと言い張る。


「レスカは女の子だからな、勇者は俺に任せとけって、レスカはそうだな、武闘家か僧侶あたりがいいんじゃないか?」


「何よそれ」


 私はふふっと笑う。

 このやり取りを楽しいと感じる。

 この頃のユウリの口癖は、勇者になる!と私をお嫁さんにするだった。

 私が勇者になるなんて無理だって分かっていたし、もちろんユウリが勇者になるって言っているのも子供の頃の戯言だと思っていた。

 このころの私は何だか大人ぶっていたと思う。

 お互いに親がおらず、国の施設で育っていた。

 ただ、私は本当に親がいないが、ユウリの親はただの行方不明ということは知っていた。

 ユウリ自身そのことは知っているようで、私に遠慮してか、親はいないと言っていた。

 私を嫁にするといっていたのは、私に家族が存在しないことを不憫に思ってそう言っていただけなのかもしれない。

 もしかしたら、今のユウリもそういう考えなのかも。


 数年後。

 ユウリ宛に王から手紙が届いた。

 私は何事かと思い、黙って内容を確認してしまった。

 内容は、ユウリの両親が旅の果てに死亡したというものだった。

 ユウリの両親は先代の勇者だったのだ。

 冒険の果てに命を落としたので、今度はユウリの番ということだった。


「そうか...、俺の番が来たか...」


 私はハッとしてユウリの方を見る。

 旅の支度を始めるユウリを止めるように叫ぶ。


「ユウリ!、行ってはダメ!、あなたの両親も勇者だったみたいだけど、それでも命を落としたのよ!」


 私は喉が枯れるほどの声でユウリに伝える。

 だが、ユウリは私に微笑みのような笑顔を向けた。


「だからこそ行くんだろ...、親の仇打ちなんて考えてないけど、この世界を平和にするのが勇者の血筋に生まれた俺の宿命だしな」


 簡単そうに言うユウリにムカついた私は、胸ぐらを掴む。


「分かって言っているの?、ユウリ...」


 私はユウリが許せずに拳を握りしめる。

 私はユウリの拳が震えているのがわかった。


「ユウリ?...」


「ああ、本当は怖いよ...、これから俺が戦う相手は魔物だ、生きて帰れる保証もない、でもな、誰かがやらなくちゃいけない、それが俺だったってだけさ」


 諦めにも似たユウリの表情は未だに忘れられない。


「レスカ、俺は必ずここに帰ってくる、それまでしばらくの別れだ...」


 その後のことは知っての通りだ。

 ユウリは私を置いて、一人で冒険の旅へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ