あの日
なんかシリアス...。
私は始まりの街を歩いていた。
私はあの子と一緒にいる。
「レスカ、俺は絶対勇者になって、レスカをお嫁さんにするぞ!」
金髪の少年は私にそう叫ぶ。
「もう、ユウリは弱いんだから、勇者は私に任せなさい」
私も少年に負けじと自分が勇者だと言い張る。
「レスカは女の子だからな、勇者は俺に任せとけって、レスカはそうだな、武闘家か僧侶あたりがいいんじゃないか?」
「何よそれ」
私はふふっと笑う。
このやり取りを楽しいと感じる。
この頃のユウリの口癖は、勇者になる!と私をお嫁さんにするだった。
私が勇者になるなんて無理だって分かっていたし、もちろんユウリが勇者になるって言っているのも子供の頃の戯言だと思っていた。
このころの私は何だか大人ぶっていたと思う。
お互いに親がおらず、国の施設で育っていた。
ただ、私は本当に親がいないが、ユウリの親はただの行方不明ということは知っていた。
ユウリ自身そのことは知っているようで、私に遠慮してか、親はいないと言っていた。
私を嫁にするといっていたのは、私に家族が存在しないことを不憫に思ってそう言っていただけなのかもしれない。
もしかしたら、今のユウリもそういう考えなのかも。
数年後。
ユウリ宛に王から手紙が届いた。
私は何事かと思い、黙って内容を確認してしまった。
内容は、ユウリの両親が旅の果てに死亡したというものだった。
ユウリの両親は先代の勇者だったのだ。
冒険の果てに命を落としたので、今度はユウリの番ということだった。
「そうか...、俺の番が来たか...」
私はハッとしてユウリの方を見る。
旅の支度を始めるユウリを止めるように叫ぶ。
「ユウリ!、行ってはダメ!、あなたの両親も勇者だったみたいだけど、それでも命を落としたのよ!」
私は喉が枯れるほどの声でユウリに伝える。
だが、ユウリは私に微笑みのような笑顔を向けた。
「だからこそ行くんだろ...、親の仇打ちなんて考えてないけど、この世界を平和にするのが勇者の血筋に生まれた俺の宿命だしな」
簡単そうに言うユウリにムカついた私は、胸ぐらを掴む。
「分かって言っているの?、ユウリ...」
私はユウリが許せずに拳を握りしめる。
私はユウリの拳が震えているのがわかった。
「ユウリ?...」
「ああ、本当は怖いよ...、これから俺が戦う相手は魔物だ、生きて帰れる保証もない、でもな、誰かがやらなくちゃいけない、それが俺だったってだけさ」
諦めにも似たユウリの表情は未だに忘れられない。
「レスカ、俺は必ずここに帰ってくる、それまでしばらくの別れだ...」
その後のことは知っての通りだ。
ユウリは私を置いて、一人で冒険の旅へと向かった。