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錨の灯台

「大型船が出られないとはどういうことだ?」


 ユウリは受付と揉めていた。


「ですから、大型船の運行は現在見合わせているんですよ」


「だからなぜ出られないのか聞いている!」


 声を荒げて威嚇するような素振りを取ってしまう。

 ユウリ余裕のなさがこのような行為へと向かわせた。

 大きな声に受付の人物が怯えていると、ユウリに声をかけてくる者がいた。


「実はですね、巨大なタコの怪物が最近この海に現われましてね...、大型船は出なくなったんですよ...」


 急に後ろから声をかけられたので振り返って見ると、見るからに怪しい小太りの成金みたいな男が立っていた。

 見た目からして金持ち風な衣装を身にまとい、豪華そうな扇で風を起こして涼んでいる。


「誰だお前は?」


 ユウリは警戒しながらもその男と話を始める。

 男はニヤッと不気味な笑顔を見せると発言し始める。


「どうも金髪のお嬢さん、私はこの大型船で人と物を運ぶ会社の立ち上げ人です」


「立ち上げ人?、つまりは社長か?」


 ユウリは首を傾げて質問する。


「いかにも!、この仕事を営む社長がこの私なのです!」


 大きな声でユウリにそういうが、にわかに信じがたい。

 ユウリが立ち去ろうとすると、慌てて止めてくる。


「見た所、お嬢さんは腕の立つ冒険者といったところでしょう?」


「なぜそう思うんだ?」


 男は鼻でクンクンとユウリの匂いを嗅ぐ。


「この匂い、闇の大地に住む爆弾ゴーレムの匂いですな、最近そういう魔物やりあったんでしょう?」


(こいつ...、爆弾ゴーレムのことを知っていて匂いでわかるのか?、なるほど、こいつが本当に社長だということに信憑性が増したな)


 爆弾ゴーレムは始まりの大地ではそこまで名前の知られている魔物ではない。

 これは交易盛んに行う大型船で頻繁に取り扱っているから知っているのだろう。

 見切りのスキルで男の戦闘レベルを確認したが、レベルは1だったので、こいつが爆弾ゴーレムを倒すことは不可能なのも確認済みだ。

 男はユウリに大型船を出す代わりの条件として、タコの討伐を依頼してくる。

 この男は本当に困っているようで、俺以外にも数パーティの冒険者に依頼を出しているようだ。


「報酬は?」


 俺は率直に報酬の話を持ちかけると、男は再び笑っていた。


「率直な報酬のせびり...、嫌いではありませんぞ、今私が考えているのは1パーティ1万ゴールドと、火の大陸への移動代金無償ですな」


「一万ゴールドに大陸移動費用無料か...」


(多少は旅の足しになるな)


「わかった、俺も引き受けよう」


「交渉成立ですな」


 男の仕事を受けることにしたユウリ。

 実際のところ、お金にはまだ余裕があるが、儲けれるところで儲けておいて損はないと考える。

 それに今は正直金よりも、一刻も早くこの大陸から抜け出したいと考えていたので好都合だ。

 ユウリはさっさと大型船を出してタコの魔物のところまで行くように男に言うが。

 どうやら、今日の昼に討伐を決行するらしく、それまでは暇になってしまった。


(ちっ、どうせこうなるならマオ達と一緒に来るんだったぜ)


 少しでも早く大型船の船室を買おうとしていたのだが、とんだ邪魔が入ってしまった。

 ユウリはため息をつけながらも、レベル上げのチャンスと割り切ることにした。

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