王都ローケン
王都ローケン。
それは始まりの国の中では最大規模の国である。
周囲を囲うように建築された壁で魔物達は1匹たりとも入ることを許さない。
また、始まりの国の中では衛兵達が強いことでも有名だ。
今日も心優しい衛兵達によってローケンの平和は守られ...。
「そこどけぇ!!」
てはいないようだ...。
衛兵達が血眼で民衆を蹴散らし勇者達に迫る。
「おいおい、見境いなしかよ!、民が傷ついてるぞ!」
「はん、俺たちは金さえもらえればいいんだ、ここの王様は馬鹿だからな、大金を民衆から絞り上げ軍資金と称して俺たちがいただくって寸法さ、さあ!俺たちの糧になりやがれ!」
「言っちゃダメなことをペラペラと喋るやつだな、オツムの程度が魔王と同レベルだな!」
「それ、どういう意味だ!」
魔王は勇者に対して怒りの視線を送るが勇者は軽い態度で返す。
「2人とも!、今は逃げることに集中!」
レスカになだめれられた2人は逃走に集中するが、魔王の体力が限界近くまでに達していた。
体が子供なのでどうしても体力が落ちていたのである。
徐々に走る速度が落ちていくのを勇者も感じていた。
魔王の足がもつれかかった瞬間に勇者は手を伸ばし言葉をかける。
「頑張れ」
たった一言だったが、魔王の心に火を灯した。
「誰に物を言っているのだ...余は魔王だぞ!、この程度で音を上げるわけないだろうが!」
魔王の弱気な眼差しが元の勝気なものへと変貌する。
「そこの角を曲がるぞ!」
勇者が指差しして指示を出す。
2人はうなづいて勇者と共に方向転換する。
そして裏路地へと入るが、ここで勇者は致命的なミスをしてしまったことに気がついた。
そこは建物が並んでいて進む為の道がなかったのだ。
建物の壁を背にした3人は衛兵達が迫ってくるのをただ見ておることしかできない。
「まずった...」
勇者の本音が溢れる。
衛兵達はついに勇者達に追いつき、意気揚々と近づいてくる。
「さあ、鬼ごっこはもう終わりだ!、大人しくお縄についてもらおうか!」
勇者達は今や魔王を倒した英雄ではなく、王に楯突いた反逆者扱いなのだろう。
もし捕まればよくて拷問、悪ければ打ち首なのは目に見えていた。
勇者は考えた、この状況を突破する方法を。
落ち着いてアイテム欄を開いて使えそうなものを選出し選び抜く。
(空獣の爪....!)
勇者は勢いよくそれをアイテム欄から取り出して地面に叩きつける。
すると、奇妙なことに、その爪が砕けた場所から旋風が巻き起こり風を作り出す。
「すごいな!勇者よ、余は今飛んでいるぞ!」
魔王は目を輝かせながらこの現象を楽しんでいた。
その風に乗った3人は建物の屋根へと飛ばされた。
勇者と魔王は下にいる衛兵達に思いっきり馬鹿にしているような素振りをして走り去った。
衛兵達の怒りを買う勇者魔王だった。
「みたか!勇者よ、あいつらの悔しそうな顔!、余は今晩ぐっすり眠れそうだ」
「まあ面白かったな、あいつらの顔!、猿みたいだったよな!」
勇者と魔王は年甲斐もなくそんなことで笑っている。
そんな2人を見ていたレスカは静かに微笑んでいた。
ユウト達は大丈夫だろうか...、不意にそんなことを考える勇者は迷いを振り払った。
...もうすぐこの町から逃げ出せる。
気を引き締めて町の門へと向かう。