女刀士の秘めた心、そしてガルオンにて
ノーラン共和国の騎士団長と副団長が報告という名の雑談をしている同時刻
ノア・フォース大陸
フォルエラーダ共和国とガルティア探国との国境になっている巨大な湖“グレイレイク”
その湖に面している街グレイノール
この街は二つの国の国境に近く、関所の役割を担っている
湖に面しているので漁業に力が入っているがそれ以上に有名なものがあり、それが観光名所と畏怖の対象になっている
その場所があるのが領主の城である
領主の城の一室、湖が窓一面に見える部屋の窓
窓際で椅子に座りながらぼんやりと湖を眺める一人の女性
「風邪を引きますよ、美波さん」
「あっ…すいません…」
「あまり気にしないでください」
美波に話しかけながらケープをかける男性は耳が尖っている
この男性は領主の一人息子である
男性の名はフェルナンド・グレイク
ひと目見ただけでもエルフとわかるがそれでなくとも誰もが街を歩けば女性が見惚れるほどの美男子である
「…やっぱり気になりますよ」
「どちらかと言うとこちらが謝るべきなんですけどね…」
フェルナンドが申し訳なさそうに美波の両肩に手を置きながら話す
「いえ!保護してくれなかったらどうなるかわかりませんでしたし」
「それでも我が国の事に巻き込んでしまっていますし」
「それでもありがとうございます。ところでなにかあったんですか?」
美波は、フェルナンドが何故来たのか話題を変える様に聞くと
「ええ、“勇者”がこちらに向かってくれるそうです」
「えっ、それは大丈夫ですか?」
「本来なら大変なことなのですが今は逆に助かります」
「確かにそうですね…」
本来なら国に何か災いが起きた時か、国が救世主を歓待の為に呼ぶかのどちらかである
今のこの国の内情だと歓迎されるべき事であるが首都の城を制している人物には目障りだろう
「今は美波さんに不自由させてしまっていますが彼らが来たら状況が一気に変わります。それまでの辛抱ですね」
「そうですね…」
「…それではなんかありましたら侍女に」
フェルナンドはそう言うと部屋から出ていく
それを見送った美波は再度窓に顔を向ける
「お兄ちゃん、リュー…また会いたいよ…」
彼女はそう呟く
窓から見える湖の中央に浮かぶ巨大な影を見ながら
◇ ◇ ◇ ◇
美波とフェルナンドの二人が会話した翌日
ガルディア探国
首都ガルオン
ダンジョンに向かう道、そこは整備され街道にふさわしい装いである
全高約200メートルの城壁が首都を覆う。それは大きな何かから護る様に造られている
そこに造られた大門
全高65メートル全幅60メートルクラスの門
その横にある小さな門(馬車が2台すれ違っても余裕のある)を警備する二人の駐屯兵
朝もやで少し遠くをうまく見通す事ができないためなのか
「…ふぁ〜」
「…気を抜き過ぎだぞ」
現在門は閉められておりそこを護る様に二人が立っていたが何もなく一人が欠伸をし、もう一人がそれを嗜める
「…だって結構危険な場所だって聞いてたのに何もないんですもん」
「…まぁ、お前新人だし知らんのも無理ないが確かに何も起きないな…」
門の警備を新人と先輩兵士が担当しいろいろ教えている所なのだろう。新人が少し怠そうにしている
「…前は常に木々の奥から魔物が顔を覗かせていたがな」
「怖い事言わないで下さいよ!」
「…」
「先輩?」
先輩が木々の奥を見ながら話し始める
「…前は警備する兵士は十人体制だった」
「…え?」
「それでも帰れる奴は半分いるかいないかだった」
「ちょっと先輩?」
先輩の話に怯え始める新人
「それなのにあの天災からそれほどしない内に二人体制に切り替えたのが気になったが」
「そうなんすか?」
「ここに来てそれがすぐ分かった」
「何か分かったんすか?」
先輩兵士の話を聞き、安心した新人だったが
「小型の魔物はともかく大型まで来ないとなるとヤバい奴の縄張りになってるな」
「へっ?」
先輩兵士の言葉に新人はつい顔を先輩兵士に向けてしまう
「前は治癒術師を常に待機させてたくらいだぞ?。それさえ無いんだ」
「それって…」
「気を引き締めな。いつ―――」
先輩兵士が突然街道に向けて槍を構える
新人も続いて槍構えるが腰が引けている
先輩兵士も緊張からか構えたまま微動だにしないが額から汗が一滴流れている
そして街道から朝もやで黒い影に見えるものが歩いて来る
それは高さ3メートルクラスの4足歩行の動物に見える
そしてなぜかガラガラと荷車を引く様な音がする
「…動けるか新人?」
先輩兵士は新人に確認を取るが新人は歩いて来る影に怯え返答ができないらしい
(いざとなったらコイツだけでも)
先輩兵士が覚悟を決めて槍を握り直したが
「おっ、もう来たのか」
「「?!」」
兵士してはあってはならないはずだが後ろの呑気な声に反応して振り向いてしまう
しかし彼らが振り向いてしまうは仕方がない
後ろから声を出したのは
「「隊長?!」」
「テメーら何驚いてやがる?」
この門の警備をまとめる隊長が呑気な声を出していたのだ
「ですが隊長!」
「構え解いとけ。知り合いだ」
「へっ?。知り合い?」
隊長の言葉につい新人が聞き返してしまう
そうしているうちに影が近くまで来てその姿があらわになる
それを見た先輩兵士
「…エンシェントファング」
先輩兵士が言ったエンシェントファング
それは街でも生活の一部となっている約2メートル程、頭に角が生えた虎の魔物ラガーファング
街では温厚過ぎて戦闘には不向きだが野生のラガーファングは群れで行動し力の強い成体は群れを護る為に体に電気を纏い、群れの脅威と戦う
その魔物の最強種の名前で、見たら軍隊を呼ばなければ対処出来ない最強の魔物
基本的になんの脅威が無ければ只大きいだけの虎なのだが、一度脅威と見なされれば最低でも半径10キロは焼け野原に空は常に人を一瞬で塵に変える落雷が降り注ぐ地形に変えてしまう魔物である
エンシェントファングは稀にしか出ない
それは群れの規模が300以上で何年もその地域で縄張りが存在しなければ出て来ない言われており、現在は書物のみに記載される程度だがかなり詳細を書かれておりその脅威は押して測るべきである
「…隊長、俺まだ彼女もいないのですが?」
先輩兵士が隊長にそう言ったが
「だから知り合いだ。大丈夫、変な事しなきゃ死なん」
だが先輩兵士と新人は青ざめながらエンシェントファングの咥えているものを見る
「隊長?。人が咥えられているんですが?」
エンシェントファングが咥えているのは成人男性らしき人物
意識が無いのか下を向いて顔がわからない
「ま〜た運んでる最中にくしゃみしたのか…」
「「はい?」」
隊長の言葉が理解出来ず呆けてる二人を置いてエンシェントファングに近づき
「起きろ!ラグ!」
豪快に拳骨を食らわせる隊長
「ちょ、隊長?!」
「何してるんすか?!」
二人が驚き声を荒げるが
「ん?着いたのか?」
ものすごく軽い感じで聞いてくるラグと呼ばれた男性
顔を上げたが顔の上半分が隠れる仮面を着けていて表情が読み取りづらい
「あっ。すいませんビルツさん、今カード出します」
「はぁ…その前に降ろしてもらえ」
「へっ?あぁ!ラガルありがとな」
まるで抜けてる知人が来たような軽いやり取りに開いた口が塞がらない先輩兵士と新人
「つーかお前荷車誰が手綱にぎってるんだ?」
その言葉に驚いて先輩兵士と新人はエンシェントファングの後ろに荷車を引いたラガーファング達と護衛の様なラガーファング達がいることに初めて気づく
「ん?ファイ達がやってくれたみたいッス」
「お前な…」
ビルツ隊長が呆れていると
「隊長この人は?」
「てかこの男性しか人種いなくないっすか?」
先輩兵士と新人がやっと再起動し隊長に男性の事を聞く
「ん?ああ、そうかお前たちこっちに配属されたの三日前だもんな」
「再編されてから初めて来た人か?。ビルツさん話してなかったん?」
「キュ?」
「「?!」」
いきなり男性の頭に赤み掛かった橙色の小狐が出て来る
「「エレメントフォックス?!」」
彼らが言ったエレメントフォックスはぱっと見ヌイグルミにしか見えない愛らしい狐だが立派な魔物である
一匹一匹6属性(火水風土雷氷)を一つだけ持っており、危険があれば魔法を使いその危険から逃れる
性格は様々だが基本臆病で人を見かけたら全力で逃げる程である
只愛らしい見た目なので愛玩動物として貴族の間では高額な捕獲依頼を出すほどである
「隊長?。俺目がイカれたんすかね?」
「大丈夫だ新人。俺もエレメントフォックスの群れが見える」
ラガーファング達が引いている荷車の上に鳴き声を出しながら器用にペンを持ち、紙に何かを書いているエレメントフォックスや護衛のラガーファングの背に乗って寝ているエレメントフォックス、上げればきりがない程ラガーファング達よりは少ないが群れと呼べる程のエレメントフォックス達がそこにはいた
「コイツの農場仲間だぞ?」
「ガウ」
「「?!」」
ラガーファングの内2体が荷車に積んであったであろう木箱を一つ先輩兵士と新人の前に運んで来た
「ん?いいのか?」
「まだ先ですけど俺の引き継ぎが来るまでは街に入る時、ビルツさんが案内してくれないかと」
「そうか…もう少し先だと思っていたが…」
ビルツ隊長は木箱に近寄り蓋を開ける
「あれ?。これアコルの実【リンゴ】ですか?」
「それにミンジの実【ミカン】も!」
「とりあえず詰所の中に運べ。他の奴らに分けてやれ、それと俺はこのままコイツに着いて行く」
ビルツ隊長がそう言うと
「隊長、さ」
「お前ら城壁掃除やりたいか?」
「「急いで運びます!」」
「それと交代してこい。お前ら今日はこれで終わりな」
「「マジっすか!」」
「明日は通常勤務だがな」
隊長の言葉に文句を出しかけた二人だが睨まれて脱兎の如く木箱を詰所に運んで行く
「んで、いつ出発るんだ?」
「早めにはなるが局長のとこ行ってから出発ろって」
「なんで局長の…もしかしてあれか?」
男性が詰所から出て来た知り合いの兵士に手を振りながら隊長に返答する
その返答にある事を思い出す隊長
「なんかあったん?」
「いつもとこ行くだろ?。そこで話そう」
「まぁ、荷車の一つはそこに運ぶしな。了解」
隊長と男性が話してる間、後ろでエレメントフォックス達と知り合いの兵士達は馴れた感じで門を通過する手続きをしていた
そのまま男性はビルツ隊長と共にガルオンに入って行く
男性の名はラグ·ブレカフーイ
中堅と呼ばれるアンダーシルバー
“十二の仮面”の二つ名を持つ探索者である
久々の更新…
あとで追加するかも?
2020/5/6に完了!
2020/5/12サブタイ変更…遅いな俺




