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それぞれ思惑

正式






「けっ、キザなやっちゃな」

「だが彼がいなければ騎士団は全滅しただろうな」

「わかっとるわ」

「それに彼は【救世】の補助無しで討伐してるからな」

「せやけどそれでも気に食わん!」

「やれやれ」



“黒閃”が会場から去り、クライス達が貴族達と談話し始めている

会場は三階まである吹き抜けのホールになっており、その二階にて二人の少年が同じテーブルで祝宴の料理を食べながら話していた


「我々は【救世】の力ありきで〔凶獣〕を討伐しているからな。彼との実力差は歴然だな」

「だから余計に気に食わんのや!」

「お前な、なん──」

「あの人にばかり無理をさせてるわいらと一人であそこまでできるあいつに腹がたつんや!」

「…そうだな」



帝国では各地で他の大陸よりも〔凶獣〕が発生し、その討伐を騎士団がすべて行っていたが、かの天災[三つの日堕ち]にて【救世】が一人帝国の保護下入った



その【救世】が【炎神斧の闘士】加藤(かとう)(まこと)である



しかし彼が〔凶獣〕討伐に参加する事を最初は断ったものの次には承諾し、進んで討伐に参加している


「兄貴のためにも、早よう強ならんと」

「焦っても変わらんぞ」

「一回一回言わんでもわかるわ!」



この二人は【炎神斧】の関係者である


一人は、制服を着た少年


小湊幹彦(こみなとみきひこ)

【人形師】のスキル持ちで加藤誠の義弟になるはずの少年


一人は、陰陽を連想させる伝統的な礼服を着た少年


久能蓮也(くのうれんや)

日本人なら誰でも知っている【陰陽師】を持ち、そのうえその陰陽師の家系を持つ次期当主候補の少年である


この二人がなぜ同じテーブルで料理を食べているのか


それは同級生であり、幼なじみだから


蓮也の家業は表では明かせないものが多い上、陰陽師と言う本来なら胡散臭いものと扱われるものである


しかし現在は異世界であり、帝国の戦力として数えられているため隠す事が逆に他の者にも危険であると判断し、彼は幼なじみの幹彦にすべてを話した


幹彦は気にしなかったものの、帝国の元老院がある人物に枷をつけたためその矛先が彼に剥かないよう護衛の意味合いで近くにいる


その事を幹彦は十分理解しているが、やはり感情的になってしまうものである


「………」

「?、どうした?」


ホールを見ていた幹彦がぼーっしているので蓮也が不思議に思い、声をかけた



「カーラ様はいつ見てもええなぁ~♪」

「お前…」


さっきまでの怒りはどこへいったのか


呆れていた蓮也だったが


「ずいぶんと余裕があるようだな」

「っ!」

「…グノーツ第一席殿」


二人が振り向いた先に約十人以上の男性


男性達のリーダー的存在が二人に声をかけた


リーダー的存在の初老の男性

クライス騎士団長の父であり、現在の元老院第一席


グノーツ・ウェルディア


この二人の一番会いたくない相手である


「これなら次の討伐は安心していいのだな?」

「次の討伐の準備等は滞りなく」

「…悪いな、こういうことはわからんから席外すわ」


蓮也は、事務的に幹彦は一秒でも居たくないとばかりにその場を離れる


幹彦が立ち去り、グノーツが


「ふん、平民風情が」


そう罵り、男性達を連れ立ち去る


その場に蓮也だけが残される


「ふぅ…」


蓮也は、現在は次期当主候補としてではなく代表として騎士団に協力している


そして現当主であり蓮也の父


久能蓮司(くのうれんじ)


彼からの命令が蓮也自身を苦しめていた


──小湊幹彦が裏切る事があれば消せ──


この命令により、幹彦には蓮也の式神が張り付いている


「…最低だな俺は」


家からも帝国からも監視され、親友を守るために式神で監視する


なんなんだろうなと蓮也は思いながら懐から一つの切れ端を取り出す


それはこの世界全体に発行されている新聞の切れ端


ノーラン共和国にて【歌姫】が保護されたという記事


葦原(あしはら)由仁(ゆに)の存在は知っていたがそれが【歌姫】として表に出てくるとは思わなかった


葦原家は、知らないがかなり昔に因縁がありそれにより久能家は今でも葦原家を目の敵にしていたためある程度情報があった


現在は地形事態が変わった為情報が得られないので全くわからなかったがこうして情報があるのは嬉しかった


それでも彼女が現当主と記事には書かれているため


「どこも地獄だな…」


蓮也は上の階で楽しく会話をしている男女を見る


一人は加藤誠、もう一人は小湊幹彦の姉であり加藤誠の婚約者である小湊(こみなと)(あおい)である


蓮也は悲しそうに彼女の首を見る


二人とも着飾っていたが小湊葵の首には無骨な首輪が付けられていた


隷属の首輪が











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




帝国から離れ




ノーラン共和国の王城の一室




【召喚の歌姫】の部屋として使われている部屋




王族が寝るのに使うベッドで一人の少女が寝ている


本来なら親と寝てもいいくらい広いのだが、二人ともかの天災で亡くなっているので彼女ひとりである


彼女の近くに趣味の悪いと言われても仕方ない男性の腕を模したものが


これもかの天災にてもらったものだが部屋に置きっぱなしの武器である


しかしなぜかその腕が光っている



翌朝、由仁は眠たい目を擦りながら夢で言われた事を思い出していた



──君の会いたい人に会わせてあげるよ──

──君の部屋にある腕を持ってきてね──

──それと連れて来るのは召喚した子達だけな──


この三つを思い出し、着替えるのも惜しいと言われた腕を持ち、部屋を飛び出す



廊下を少し走ったら姉と慕う女性

神埼(かんざき)千花(ちか)が何着かの服を持ち


「由仁ちゃん、今日はどれに──」

「お姉ちゃんごめんなさい、急ぐから」


由仁は千花の横を走り抜けて行く

千花は通り抜けられて少ししたあと彼女は崩れ落ちた


「神埼さん?!」

「何があったんですか?!」


驚きながら彼女に近づく二人

タクト達と学校の屋上で別れた二人

鍛原(かじはら)哲也(てつや)宮野(みやの)麻友(まゆ)である


「由仁が…由仁が~」

「ほんとで何が?!」

「神埼さん落ち着いて!?」


由仁に甘い千花があまりの取り乱しように二人は困惑する


「由仁が反抗期に~」

「はい?」

「えっ?」


先ほど由仁が寝間着のまま彼女の横を通りすぎたのを話した


「それは反抗期ではないのでは?」

「てか由仁ちゃんはどこいった?」


その時、侍女(メイド)の一人が慌てて駆け寄って来た


「千花様!由仁様が、由仁様が!」

「由仁様になにかあったの?」


先ほどまで泣きわめいていたとは思えないほどキリッ、としている

千花は侍女達の前では由仁に様をつけて話しているが仲のいい者達だと呼び捨てになる


「由仁様が白竜に乗って飛んでしまわれました!」


三人がそれを聞いて一拍


「「「ええェェェェェェェェ!!!!????」」」


三人が驚いている頃、由仁は白竜の背に乗りある場所に向かっていた


それは夢で言われた場所


そこは王城からあまり離れていない森で兵士があまり巡回に来ない岬


森の中にいる魔物はなかなか強く巡回する兵士では歯が立たない為、王も巡回のルートから外していた


その岬の先になぜか満開の桜の木が咲いていた


岬の手前で白竜から下りる由仁

由仁を下ろした白竜は、ポンッと音とともに小さくなる

由仁は小さくなった白竜を連れて桜の元へ

桜に近づくと由仁はあることに気づく


「何をすればいいのかな?」

「クゥ~?」


白竜とともに首をかしげる由仁

するといつの間にか着いてきていた青い肌の女性、水の精霊ウンディーネと炎を纏った魔獣イフリートがいた


イフリートは、周りを警戒している


ウンディーネは由仁を木の根元に連れて行く


「ここで寝ればいいの?」


召喚しているウンディーネが何を伝えているか召喚者の由仁は感覚的にわかっている


指示された通り、根元で寝てみる


するとスッと由仁は深い眠りについてしまった







由仁が木の根元で眠りについたとき、森に入る一団


ノーラン共和国の騎士達と侍女、そして千花と哲也と麻友である


「白竜が向かった方向はこっちか?」

「はい、この先かと」


侍女はシェリーといい、侍女長ではないが由仁に関しては侍女長並みにお世話の権限がある


「ところで由仁ちゃんはなんでここに?」

「そういえば普段部屋に置いてあるあれを持っていましたね」

「あれ?」

「天災で手にいれた武器ですね」

「あの趣味の悪いやつですね」

「趣味の悪いやつですか?」


朝の状況を確認しながら森の奥に進む一団


「天災で助けてもらった人が落としていったのをそのまま由仁様の護身にと思ってですね、この槍もそうです」

「その人に返さなかったんですか?」

「彼はそのまま行方不明になってしまって…」

「それなら早く会えるといいですね」

「また会えるとは思えないですね…」

「思えないってなんで?」

「それは彼が──」

───大方大怪我したまま行方不明になったってところさぁ

───ひひッ、ありきたりな顛末だな!

「「「「「っ!」」」」」


騎士達がそれぞれ武器を構える、千花も持っていた槍を隙無く構える

哲也も腕を前に出すと腕と足に電気が走り、その腕を一気に引くと神秘的な装飾が施された拳甲と脚甲を身に付けていた

哲也はそのまま構える

麻友も右手を出すと哲也と同じく神秘的な装飾施された逆三角の大盾が出現し、麻友はそれを前に構える


───【雷神拳の武闘士】と【氷神盾の女騎士】かさぁ

───ひはっ!珍しいもん見に来たら予想外の出会いだな!

───俺達も“破拳”のこと言えないさぁ

「お前達は何者だ?」


騎士の一人がいきなり念話で話して来た二人組に問う


声質は完全に機械音に近く男性か女性か判別が出来ないがしゃべり方と体格で二人とも男性とわかる


しかも片方は六芒星を模した仮面、もう片方は渦を模した仮面をつけ顔がわからない


───俺は“連魔”さぁ

───ひひッ、“圧脚”だ!

───俺達は“黒面の傭兵団”さぁ

「黒面だとっ!」


騎士達の隊長が一歩あとずさる


「どうしたんすか?!」

「なぜ帝国に雇われている奴等がここに…」


隊長は完全に萎縮していた

部下の騎士も名乗りを聞いて青ざめる者が多かった


「知ってるのですか?」

「帝国で一万以上の〔凶獣〕討伐を四人でやった傭兵団の名だ…」

「っ!」

「そんな…」


千花、哲也と麻友は〔凶獣〕がどれほどかは知らないがたった四人で一万以上を討伐するという異常差はわかっている


───とりあえず、小手調べさぁ

───ひはっ!楽しもうぜぇ!!




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