帝国にて
うーむ
日が落ち、少し暗い豪華な廊下を1人の侍女が歩いている
ここはエルヴォン帝国の王宮
その奥にある王族達が住まう区画
この侍女はある人物達に祝宴に出る時間を伝えに来ていた
(う~、やっぱり先輩に一緒に来てもらえばよかった~)
この侍女はまだ新人で、今回初めて1人で仕事をしていた
他の侍女達が祝宴で手一杯だったからである
この祝宴は、騎士団と傭兵がこの世界で一番の脅威を討伐に成功したそのお祝いに開かれている
(……?、あんなのあったっけ?)
ふと新人侍女が左側の廊下を見たら黒い鎧が立っていた
廊下のど真ん中に
彼女は見たこともない鎧だったが
(早く行こう、やっぱり怖いよ~)
鎧は窓の外を見ているし、距離も30メートルも離れていると触らぬ神に祟り無しの感覚で彼女が身震いしながら一歩を踏み出───
───すまない、騎士団長殿はどこにいるだろうか?
侍女が固まる
頭に直接言葉が来たのだ
本来ならそれだけでは方向がわからないはずだが何故か方向がわかってしまった
侍女が涙目になりながら左側を見る
そこに鎧の胸部が
そしてそこから見上げる
そこに鎧の兜
───大丈夫か?
「きゃあああああああああああ!!!!!!!!!!!」
彼女は恐怖で腰を抜かし、その場で尻もちをつくそのまま頭を抑え、ガタガタと震え始めた
鎧が少しあたふたしているとナイフを構えた他の侍女が一人来た
「何事です!賊ですか……」
現場を見た侍女は、新人侍女に
「何をしているのです、キャリー?」
「ぐすっ、パメラ侍女長~」
新人侍女キャリーがパメラ侍女長に抱きつこうと───
バスっ
「はうっ!?」
脳天にチョップを食らい、蹲るキャリー
「申し訳ありません、“黒閃“様」
───いえこちらも驚かせてしまいましたので
蹲る侍女を放って会話(念話?)をする鎧と侍女長
「あう?“黒閃“?」
「そうですよ。本来この祝宴の主役になるはずのね」
───仕事をしただけだが?
それを聞いたキャリーは、青ざめながらガバッと勢いよく立つとそれは見事なお辞儀をすると、
「“黒閃“様とは知らず粗相を申し訳ありません!」
───いや気にしていない
“黒閃“と呼ばれた鎧の傭兵は簡単に返した後、パメラ侍女長に
───ところで騎士団長殿は今どこに?
「お二方共奥の庭園に」
───相変わらず仲の良いことで……
「あれを継がなければ心の底から喜べましたのに…」
───致し方ないものだよ、割り切れと言われても難しいだろうが
「“黒閃“様は〔凶獣〕討伐報告に来て迷ったのですね?」
───うむ…
二人の会話に入らず、只固まっているキャリー
しかし、〔凶獣〕の言葉が出るとビクッとした
この世界において〔凶獣〕とは抗えない災害に等しい
〔凶獣〕
憎悪や殺意などの怨念が獣の死体や鉱物などに憑依し形を成したもの
生きている生き物を徹底的に襲うため一体でも残ったら都市でも半壊するほどの破壊能力と耐久性を持つ
体の一部を破壊または切断されてもコアがあるかぎり活動可能
魔物級、堅破級、都市壊級、天災級があり魔物級でも騎士団クラスを投入しなければ甚大な被害になるほどである
「相変わらずですね」
───パメラ侍女長もな
「それでは案内いたします。キャリーも来なさい」
「ひゃい!」
緊張で声が裏返るキャリーだった
しばらく廊下を歩く三人
案内の為、先頭を歩く侍女の二人
ふと新人侍女キャリーが気になる事をパメラ侍女長に小声で聞く
「そういえばパメラ侍女長、祝宴の主役ってどういう──」
「そのままの意味よ」
パメラ侍女長は、キャリーに簡単に返す
「〔凶獣〕討伐の半分は彼がやったものよ」
「え!?」
───契約で騎士団の功績だが?
「ひゃい!?」
驚いて変な声をあげるキャリー
「ここが庭園です、キャリーもしっかりなさい」
扉に手をかけたパメラ侍女長に注意され、落ち込むキャリーだが今回の討伐の規模がわからなかったのでそのままパメラ侍女長の反対の扉に手をかける
二人がゆっくりと扉を開ける
扉の先には空中庭園と言っても過言ではないほどの立派に庭園
その中心の噴水に扉に背を向けている二人の男女の姿
この二人こそ話に出ていた二人
騎士団長 クライス・ウェルディア
第二王女 ノーラ・エルグ・ヴォルグラン
その二人である
なかなか書けない




