リダさんの追憶【4】
「俺は......いや、俺達は自分でも知らない内に、輪廻の枠を越えた大きなゲームに参加しているんだよ」
「輪廻の枠を越えた......ゲームだと?」
いよいよ訳が分からない。
コイツは、何が言いたいのか?
そして、何が目的なんだろうか?
「ああ、ゲームだ......もっとも? 俺やお前がいた世界で手軽にプレイしていたゲームとは規模が違う。世界その物を丸々一つ使ったゲームだ。壮大過ぎて笑えもしない......」
「私は、お前の妄言に辟易してて笑えないんだがな」
「まだ分からないのか? この世界は確かにリアルだ。現実にある世界とでも言い換えるか? つまり、仮想世界なんかじゃない......が、創られた世界なんだよ」
アインは真剣な眼差しで私に説明して行く。
しかし、理解しようにも、話しが突飛過ぎて......混乱する事しか出来ない。
そもそも、謎でしかない。
例えば、この世界が創られた物だとする。
これに対する私の答えはこうだ。
『だからどうした?』
理由は言うまでもないだろう。
何処の世界も同じ事だからだ。
どんな形であったにせよ、何かしらの理由から世界が生まれた。
素因に異なりこそあれ、創生と言う概念はどんな世界であっても存在するのだ。
「創られた世界だとしても、この世界が特殊だと言う所以にはなっていないと思うのだが?」
「......それが、ゲームをするだけの為に創られた世界だとしたら?」
「......はぁ?」
「この世界は本当に現実だが、俺達がいた世界とは明らかに違う。ここはゲームをするだけの為に世界を丸々一つ創生させた......狂った世界だ」
.........。
いや、あり得ないだろ?
そもそも、なんだその目的は?
この世界に存在する全ての万物は、ゲームをするだけの為に存在しているとでも言うのか?
「流石に馬鹿げてるだろ......それは」
「ああ、馬鹿げてるんだよ。本当にな」
吐き捨てる様に答えた。
全てが嫌になった人間が見せる目をしていた。
なんだろう、コイツが嘘を言ってる様には見えなかった。
もっとも、全てを鵜呑みに出来る様な内容でもなかったが。
「俺が見せた一番最初の夢を覚えているか?」
「夢?......ああ、小さい時の私がいた夢の事か」
私は思い出す様に答えた。
なんて事はない夢でもある。
小さい頃......まだ、ここらも都市開発が進んでなくて、結構原っぱとかあって......それで、一緒に幼馴染みの男の子と......。
「.........」
私は無言になった。
いや、絶句と述べても良い。
いや、まさか......そんな事が。
しかし、私には確かに幼馴染みの男の子がいた。
年齢的にも一緒だ。
そう......だから、色々と辻褄も合う。
いや、合ってしまう。
「気付いたろう? それは、俺の過去でもある」
「し、信じられない......」
ワナワナと、手を震わせた。
だが、全てに置いて、それを否定する事が出来ない私がいた。
そうだ......そうだったよ。
私の子供時代の幼馴染み。
名前はアイン・リッチ。
偶然、産まれた日も同じで、家も隣同士だった。
私にとって初恋の相手でもある。
「ここに色々と答えが眠っている。まず一つ。お前と産まれた場所が同じだったのは、俺が道化師に頼んだ」
「......」
「次に、お前と俺の産まれた日が同じだったのは、俺とお前の死んだ日が同じだったからだ」
「......っ!」
私は再び絶句する。
恐らく、それは......いや、違うっ!
夢には続きがあった。
良くは覚えていない。
ただ、最後。
私が覚醒する寸前に見た夢。
何もかも平凡な毎日を送っていた私が、最後に巨大な荷車の様な物に轢かれて死ぬんだ。
トラックとか言ってた様な気がする。
......そして。
その巨大な荷車から助けようと、一人の少年が必死の形相で私に突っ込んで来るんだが、結局は一緒に轢かれてしまう。
キキキキキィッ!
ドンッ!
......甲高い音と同時に衝撃音。
私の夢は、ここで覚めた。
これが真実であり、私の歩んだ過去であったとするのなら、今の私はアインの言った通り、ゲームをする為だけに創られた世界へと転生して来た事になる。
「こんな事があって良いのか......?」
無意識に瞳から涙が出た。
バカにしてるとしか思えない。
私は......やりたくもないゲームを、勝手にやらされていたんだ。
しかも、この世界にやって来て何年になる?
きっと、もう......私が前に生きていた世界よりも長い。




